ノルド・ストリーム爆破とF22による中国製気球の「撃墜」
こうした田中氏の見解を裏付ける内容が明らかにされた。第一は、「現代ビジネス」が報道した「『ノルドストリーム爆破』は米国の仕業だった…!? 新説急浮上でバイデン政権に噴出するいくつもの疑惑」(https://news.yahoo.co.jp/articles/b6b2cf32c6bcc2c400e3f0ceef60696649a47438?page=1)だ。この論考は、「米国の犯罪」を追及してきた現在85歳になるベテランジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏の報道を受けてのものだ。
「ノルドストリーム1」のパイプ2本、「ノルドストリーム2」のパイプ2本、合計4本の海底パイプラインのうち3本が破壊され、使用不能になった。西側からはロシアの犯行だろうとの見方が示される一方で、ロシア側からは西側、とりわけイギリスの工作を疑う声が上がっていた。こうした中で、バイデン政権内部の秘密工作に関わったとする筋からの情報として、ノルドストリーム爆破はアメリカ政府が行ったものだという新情報が出てきた。
今回それを発表したのは、現在85歳になるベテランジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏だ。ハーシュ氏はベトナム戦争のソンミ村の虐殺報道でピューリッツァー賞を受賞した。ウォーターゲート事件にCIAが関わっていたこと、イラク戦争時にイラク兵捕虜を収容したアブグレイブ刑務所で米軍による拷問が行われていることを暴露したことでも知られる。
ハーシュ氏は、計画に携わった匿名の関係者の話として、ノルドストリーム破壊工作の決定は、バイデン米大統領が、国家安全保障チームと9ヵ月以上にわたって秘密裏に協議した結果下したものだとしている。政権中枢ではサリバン国家安全保障担当大統領補佐官が深く関与し、米軍、CIA,国務省などの米政府機関に加え、ノルウェー政府とノルウェー軍も関わっていたという。
ハーシュ氏は高名なジャーナリストだが、情報源としては「隠れ多極主義者」である可能性が強い。要するに、ドイツとロシアとの関係を断たせる意味で、バイデン政権がバルト海の海底に敷いた原油のパイプラインであるノルド・ストリームを破壊したという趣旨である。田中氏の言う「隠れ多極主義者」は対米従属国を自滅させる政策を展開しているが、その傘下にあるバイデン政権がノルド・ストリームを破壊させたとしても不思議ではない。また、同解説記事では、バイデン大統領親子が中国で不正行為を行ってきたことも大々的に報じられている。「隠れ多極主義勢力」によって牛耳られている米国諜報界=ディープ・ステートにとって、バイデン民主党政権はもはや御用済みになったということだろう。
なお、バイデン親子の中国での不正活動については、習近平体制以前の貧富の格差をもたらした江沢民、胡錦濤体制時代のこと。習近平国家主席は毛沢東を重要視しているようだが、これは文化大革命で経済を破壊した毛沢東ではなく、貧富の格差をなくし、中間層の厚い経済社会に変革したということで歴史に名を残したいのだろう。
ところで、上記の解説記事では「米空軍航空機動軍団司令官のマイク・ミニハン大将が、台湾をめぐって2025年に中国と戦うことになるから、これに対して準備を進めよとの指示を部下に出していたことが明らかになった。ミニハン大将は、2024年の米大統領選挙の直後の選挙結果をめぐる混乱からアメリカが二分される事態に陥った中で、中国が動き出すというシナリオを描いているようだ」と述べている。しかし、世界の大勢は台湾を中国の不可分の領土として認めていて、台湾に独立運動を起こさせるのは国連憲章で定められた「内政不干渉」の根本原則に反する。
だから、習近平政権側から台湾有事を起こす理由はない。同政権としても、TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー )など超優良な企業が存在する台湾の武力制圧は望んでいないはずで、根底には「平和統一」志向だろう。しかし、米国が台湾独立運動を起こし、規模が大きくなれば話は変わる。その場合、米国は日本の在日米軍基地と自衛隊基地を使うことを大前提にしている(https://www.youtube.com/watch?v=IxPQUc1VRSg)。
そうなると、日本としては1972年9月の日中共同声明や1978年8月の日中平和友好条約を維持するか、または、憲法違反だが集団的自衛権を加味して解釈した「日米安保条約」を取るかの選択を迫られる。岸田文雄政権としては後者を前提として「防衛費」の増額などと言っているが、日中共同声明と日中平和友好条約を破棄した場合は、中国の習近平政権から外交・経済・軍事面で深刻な報復措置を被るだろう。ただし、「隠れ多極主義勢力」からすれば、日本を自滅の方向に持っていく狙いがあるから、そういうこともあり得る。岸田政権はそのことを覚悟しなければならない。
さて、第二に伝えておきたいことは、米国に飛来した中国製気球の最新鋭ステルス戦闘機F22による撃墜事件である。最新鋭の新幹線で電気自転車を追い越す、または、襲いかかるようなものだ。そもそも、中国の習近平政権が制御の極めて難しい気球で米国内の米軍基地を偵察するなどということは有り得ない。米軍基地の偵察を行うとすれば、静止衛星を使うというのが常識だ。田中氏は、「中国国内で警察など治安当局が、上空からの交通の監視や電波通信傍受用に飛ばしていた国内監視・治安維持用の気球だったのでないかというものだ。軍事と並び、国内治安維持や国民監視の分野も、システムを国家秘密にしておかねばならない。だから中国政府は、気球の正体を正確に発表できず、民間の気象観測気球だとウソを発表せざるを得なかった」(https://tanakanews.com/index.html)としている。
結果としては、プリンケン国務長官の中国訪中(ウクライナ戦争の「勝利」のために実質的なロシア支持・支援を止めさせる狙いがあった)の延期という事態を招いた(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230217/k10013983071000.html)。
アメリカ本土の上空を飛行した中国の気球を巡っては、アメリカ側は偵察用だったとしてブリンケン国務長官が今月上旬に予定していた中国への訪問を延期したのに対し、中国側はアメリカ軍が気球を撃墜したことに強く反発するなど米中間で応酬が続いています。バイデン大統領は16日、演説し、気球を撃墜したことについて「主権の侵害は受け入れられない。謝罪するつもりはない」と述べ撃墜は正当だったと主張しました。
一方で、アメリカ軍が10日から3日連続で撃墜した飛行物体については「中国やそのほかの国の偵察活動であることを示すものは何もない」と述べ、民間による商用や研究の目的だった可能性が高いという見方を示しました。
中国は、「アメリカ軍が気球を撃墜したことに強く反発し『アメリカの気球が中国の領空を違法に飛行している』と主張」するなど強く反発している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230216/k10013982011000.html)。バイデン政権のブリンケン国務長官は、中国共産党で外交を統括する王毅政治局委員と17日から3日間の予定でドイツで開かれる国際会議(ミュンヘン安全保障会議)で接触するかどうかが注目されている。ただし、バイデン民主党政権の醜態であり、米中関係の悪化をもたらしたことは否めない。背景にはやはり、米国の「隠れ多極主義勢力」が存在する可能性がある。
【追記:2022年02月19日】ミュンヘン安全保障会議では、米国のハリス副大統領と中国で外交を統括する王毅政治局委員が互いに牽制し合う演説を行ったほか、プリンケン国務長官と王毅政治局委員が約1時間にわたって会談した模様だが、米国側は中国に対して事実上のロシア支援を断念させることはできなかったようだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230218/k10013984731000.html、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230219/k10013984941000.html)。外相級会談での中国側の発表はNHKの報道では触れていない。
ドイツで開かれているミュンヘン安全保障会議では18日、アメリカのハリス副大統領と中国で外交を統括する王毅政治局委員がそれぞれ演説しました。この中でハリス副大統領はロシアによるウクライナ侵攻に関連して中国に言及し「戦争が始まって以降、中国がロシアと関係を深めていることを懸念している」と指摘しました。その上で「中国が今後、ロシアに軍事的な支援を行うようなことがあればルールに基づく秩序がさらに損なわれるだろう」とけん制しました。
これに対して王氏はアメリカ軍がアメリカ本土の上空を横断した中国の気球を撃墜したことについて発言し「常軌を逸脱した想像もできない行為だ」などと非難しました。その上で「アメリカが誠意を示して過ちを正し、今回の事態が両国関係に与えた損害を直視して解決するよう要求する」と述べました。
アメリカのブリンケン国務長官は18日夜、中国で外交を統括する王毅政治局委員と訪問先のドイツで会談し、中国の気球がアメリカ本土の上空を飛行したことについて「このような無責任な行為は2度と起こしてはならない」と改めて非難する一方、両国が対話を維持する重要性を強調しました。
本投稿記事の最後だが、米国一極覇権体制は完全に終焉している。今後は中露を中心としたBRICSや上海機構、中東産油国、中国からの直接投資を受け入れているASEAN諸国など非米側陣営が政治・経済・外交・軍事面で興隆していくだろう。その趨勢は避けられない。ただし、非米側陣営が欧米文明圏の発展の原因になったキリスト教がもたらした普遍的価値観を受け入れているとは言い難い。この面で、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会:略称統一教会)は重大な使命を担っているはずだ。同連合はそのことに気づく必要がある。