安保法制案=戦争法案廃案のために④ー法案は安保改悪「日米新ガイドライン」運用のための「口実」(改題)

今回の安保法案=戦争法案は、今年4月に再改定した日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)を実行に移せるようにすることが目的で作成された。これが、安保法案=戦争法案の正体である。新ガイドラインは、「極東条項」が入り、日米両国による極東有事の際の軍事行動のみを容認している日米安全保障条約を事実上、国会の審議なしに改悪、両国による軍事行動を世界的に拡大するものである。これは、現行の日本国憲法を破壊するものであり、到底容認できない。

新ガイドラインについてはその策定時から「生活の党と山本太郎となかまたち」の小沢一郎共同代表が、「憲法違反」と重大な懸念を表明していた。生活の党では、国会を無視して日米安保を「大改悪」する新ガイドラインを実行に移すことが目的で今回の安保法制法案が作成されたと見て、調査している。このことが、昨日8月11日の参議院安保法制委員会で、小池晃参院議員(日本共産党)の追及によって初めて明らかになった。

12日付の東京新聞は次のように伝えている。
−−転載開始−−
安全保障関連法案に関する参院特別委員会は十一日、関係閣僚が出席して一般質疑を行った。共産党の小池晃氏は、自衛隊が法案の成立を前提に武器使用基準の見直しや日米間の具体的な調整内容をまとめた資料を独自に入手したとして自衛隊の独走だと追及。中谷元・防衛相は同名の内部文書の存在を認め、「国会の審議中に内容を先取りするようなことは控えなければならない」と釈明した。

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小池氏によると、資料は陸海空の各自衛隊を束ねる統合幕僚監部が作成し、四月に再改定した日米防衛協力のための指針(ガイドライン)と安保法案に沿って検討項目を列挙。南シナ海の警戒監視への「関与のあり方を検討していく」と明記し、南スーダンに派遣している国連平和維持活動(PKO)に関しても「駆け付け警護が業務に追加される可能性がある」と見通しを示している。五月に作成されたとみられ、法案の成立時期も「八月」と明記されていた。

小池氏は「戦前の軍部の独走(と同じ)だ。絶対に許されず、議論できない」と批判した。他の野党も同調し、委員会は紛糾。予定した審議時間を一時間半以上残して散会した。

これに先立つ審議で、中谷氏は核兵器の輸送が条文上排除されていないことに関し「非核三原則を国是として堅持し、核拡散防止条約(NPT)も批准している日本が大量破壊兵器を輸送しないのは当然だ」と強調。他国軍の武器や弾薬を運ぶ際には、目録の提出を求めるなどして内容の把握に努める考えを示した。

<駆け付け警護> PKOに参加する自衛隊が、離れた場所にいる他国部隊や国連職員が武装集団に襲われた際に現場へ向かい、武器を使用して助ける任務。現行のPKO協力法では、武装集団が「国や国に準ずる組織」に当たる場合には、憲法9条が禁じる海外での武力行使につながる恐れがあることから認めてこなかった。
−−転載終わり−−

【※追記】
日本共産党の小池晃参院議員が入手した統合幕僚監部の内部文書「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)及び平和安全法制関連法案について」は、こちらで入手できる。

自衛隊(制服組)のトップは統合幕僚長であり、統合幕僚長を中心とした少人数の幹部グループが自衛隊の軍事作戦を指揮(オペレート)する。この幹部グループが法案の成立を前提に、成立後の軍事オペレーションを検討しているのである。これで分かることは、第一に、新ガイドラインが先にあって、その運用を正当化するために今回の安保法制案が作成された、ということである。

第二に、政権中枢と高級官僚が日本国憲法で国権の最高機関として規定されている国会を無視して、事実上の権力を握っていることがまたまた明らかになった。実は、政権中枢は飾りだけの存在で、実質は米国に隷属した各省庁の高級官僚が日本国及び日本国民を支配しており、米国による具体的な対日指令は日米安保条約第6条に規定された「日米地位協定」の中の「日米合同委員会」で米側から明らかにされ、これを「承知致しました」として高級官僚が受け入れ、政権に追認させる構造になっている。いわゆる、「米官業ピラミッド型支配体制」である。

日米合同委員会は事実上の日本国の最高意思決定機関であるが、日米の高級官僚同士の会議であるため、主権者たる国民の意思は全く反映されない。軍産複合体および米系多国籍企業の利益が最優先される。60年安保条約は具体的な内容を「日米地位協定」に委ねるとすることで、主権者国民の意思を反映することができないようにしている。かろうじて、当時の岸信介首相は日本国政府・国民の意思が反映されるように事前協議制度(①米軍の基地の再構成、つまり、新型兵器や大量破壊兵器などで再武装する②核兵器搭載艦船が寄港する③米軍が日本の基地を日米安保条約の目的とは関係ない目的に利用するーなどの場合は、日米政府の事前の協議を必要とすることが日米安保条約の付属文書として明記されている)を設けた。しかし、これも①日米密約の存在疑惑②日本政府・官僚の異常な対米従属性ーによって死文化している。岸田文雄外相が力説する「非核三原則」も米軍を含めれば、有名無実の言葉でしかない。みんな、知っていることだ。

第三に、小池氏が入手した防衛省の内部資料では、米軍と自衛隊の関係を「軍・軍」関係と記述している箇所があるという。自衛隊の統合幕僚監部の間では、自衛隊はすでに自らを「国軍」と認識しているのである。国軍というのは、「自衛のための先制攻撃」(イラク戦争がひとつの代表)というのが「主たる任務」であり、専守防衛を鉄則とする日本国憲法の基本精神違反であるとともに、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」という憲法9条2項違反である。自衛隊は米国軍産複合体の要請で自らその任務を放棄し、既に憲法違反の存在になっている。

中谷元防衛大臣の答弁を聞いていると、統合幕僚監部が安保法制案の成立を前提としてオペレーション・シミュレーションを行なっているのを知っているようである。ここまでくると、日本はもはや主権在民の議会制民主主義国家とは言えず、戦前の官僚独裁国家と同じであり、「戦前の軍部独創と全く同じ」である。安保法制案=戦争法案審議特別委員会が紛糾して、審議時間を1時間半残して散会になったのも当然である。

次に、日米新ガイドラインの重大な憲法違反問題を指摘した小沢代表の見解を引用する。
−−転載開始−−
危険極まりない日米防衛協力ガイドライン改定(談話)

2015年4月28日

生活の党と山本太郎となかまたち
代表 小沢一郎

日米両政府は18年ぶりに「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の改定で合意しました。これは内容においても手法においても非常に問題が多いものです。まず内容面ですが、「切れ目のない日米共同対応」ということで、従来のガイドラインにあった「周辺事態」の項目が削除されています。それは、世界中で日米が共同で軍事行動を行うことを意味しており、極めて重大な変更であります。

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もちろん、日本の防衛・安全のために日米の共同軍事行動は必要です。私は、そのこと自体を否定するつもりはありません。しかし、「周辺事態」の概念を削除すれば、世界のどこまでも自衛隊を派遣することができるようになり、これは明らかに憲法違反です。

1999年に「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」(周辺事態法)が成立しました。しかしその政府原案では、「周辺事態」に対して何の制約もなく、日本の周りで何かあった時はすべからく日米共同で軍事行動をとるという内容になっていました。恐らく政府、特に外務省は、そういう内容にするようアメリカから強く言われていたのだと思います。

当時、私は自由党でたまたま自民党と連立を組んでいましたが、「この内容では日本国憲法の基本理念に反する」と主張し、原案に強く反対しました。その結果、周辺事態の定義を「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と変更し、そういう事態になって初めて日米は共同軍事行動をとることができるという内容に、半ば強引に修正した経緯があります。

しかし、今回の改定ではその「周辺事態」という概念がなくなっており、無制限に日米が共同軍事作業を行うという内容です。これは安倍内閣が昨年7月1日の閣議決定で集団的自衛権の行使を可能としたことと符号していますが、いずれも憲法の理念、条項で言えば第9条に反するものであり、明確な憲法違反です。

安倍内閣がどうしても集団的自衛権の行使を容認し、ガイドラインから「周辺事態」を削除したいのなら、まず憲法の改正を国民に訴え、国会で審議し、国民にその賛否を問うべきです。その点、今回の改定は政治手法としても問題があり、手順が全く逆なのです。もし国民が支持するのならば憲法を改正し、その後に集団的自衛権の行使容認やガイドラインからの「周辺事態」削除をするというのが順序のはずです。

しかし、安倍首相のやり方は、まず日米間でガイドラインについて合意し、その既成事実のもとに日本の法律を変えようというものです。アメリカからの圧力をいいことに既成事実を積み重ねていき、自分たちが思う方向に進めていこうという手法です。しかしそれは、立憲主義を謳う自立した主権国家としてあるまじき行為です。

戦前の戦争に至った経緯をみても、国民は「そこまで行っちゃったのだからもうしようがない。仕方がない」と軍部の独走を黙認し続け、結局日米戦争に至ってしまいました。そのように、なし崩し的な「まあ、仕方がないか」という雰囲気をつくって物事を進めていくのは、日本人独特のやり方です。しかし、過去の反省を踏まえて、再びそういう手法で物事を進めていくのは絶対にやめなくてはいけません。今回のガイドライン改定の手法はその意味で、非常に危険で最も姑息なやり方だと思います。

私は、日米同盟は最も大事な二国間関係であると常々言っています。しかし、同盟というのは対等な立場で意見を交換し、お互いが納得して結論を出し、協力していくのが本来の姿です。「アメリカがそう言うのだから仕方がない」というのでは、対等な同盟ではなく単なる従属関係でしかありません。

アメリカの言いなりになるということについては、安倍首相も本当は腹の中でそれほど積極的ではないのだと思います。しかし、日本が軍事的に憲法に縛られず、世界に国威を発揚できるようにしたいという自らの信条を実現できるのなら、アメリカの圧力を上手く利用しながらやっていこう、というのが安倍首相の腹の内ではないでしょうか。

そうした手法は本当に危うく、安倍政権の歩む道は日本の将来にとって非常に危険な方向だと思います。国民の皆さんにはぜひ、このことをきちんと理解していただきたいと思います。
−−転載終わり−−

こうした危険な情勢から祖国・日本国と国民を守るためには、まず第一に、日米行政協定を抜本的に改正することである。しかし、米国は改正に応じないだろうから、安保条約第10条2項を利用して同条約の廃棄を通告すること、つまり、対米独立革命を良識ある国民の意思で選んだ政府の手で行うことである。日本が受諾したポツダム宣言では、「占領軍は撤退すべし」となっているから、戦後70年にもなって、あるいは譲りに譲って冷戦終結後25年も経っているのに外国軍がまだ、主権国家に治外法権の状態で常駐し、米国が創作した戦争を行うため、世界各地への出撃の基地として利用し続けているというのは、まことに異常なことである。

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