接触率8割以上の削減不可なら都市封鎖も-山中伸哉教授のサイトに論文掲載

4月16日に非常事態宣言が全国に拡大されたが、目標は人と人との接触率を8割以下に削減することである。しかし、現状ではそこまで行っていない。感染確認者増加も止まらない。ノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸哉京大iPS細胞研究所長の新型コロナウイルス対策サイトに紹介された専門家の論文では、端的に行って日本でも「都市封鎖(ロックダウン)」が必要だと結論づけている。

山中伸哉京大iPS細胞研究所長のサイトに紹介された論文は、前岐阜大学学長で現在東京大学名誉教授、日本学術振興会学術システム研究センターの黒木登志夫相談役が執筆した論文。黒木相談役は著名な癌研究者であり、サイエンスライターでもある。黒木氏の論文は、https://shard.toriaez.jp/q1541/0.pdfに掲載。

黒木登志夫前岐阜大学学長・東大名誉教授

世界各国の新型コロナ感染者の推移を数学的手法を使って分析し、将来推計、政策提言を行ったもの。数学を用いているため、国立研究開発法人理化学研究所計算科学研究機構の宇川彰副機構長(素粒⼦物理学、数値解析専門)の論文も引用している。詳細は上記PDFをご覧いただきたいが、結論の部分を以下に引用させていただく。

まず、黒木東大名誉久寿の論文の結論部分は、
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ついに、全国に緊急事態宣⾔が出されました(4 ⽉ 16 ⽇)。専⾨家会議の⻄浦博委員(北⼤教 授)は、⼈と⼈の接触を 8 割下げなければ、重症患者が累計 85 万 3000 ⼈になり、その 49% (41 万 8000 ⼈)が死亡することを警告しました(4 ⽉ 15 ⽇)。しかし、8 割減の必要性を 理解できなかった⼈も多かったことと思います。第 6 報では、Imperial College London の 研究チームによる分析をお届けします。(都市)封鎖(lockdown)以外に感染を⾷い⽌める⽅法はな いと⾔うのがその結論です。
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サイト管理者は、欧州の感染確認者数の拡大と都市封鎖(ロックダウン)の効果の分析を基に、日本でも同様のロックダウンが必要との結論付けたと理解している。

直接の言及は、宇川副機構長の論文の次の箇所に記載されている。
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報告感染者数の増加のペースは 2 ⽉以降ほぼ⼀定である。この間、再⽣産数は概ね 1 から 3 の間を上下動しつつ、それでも三⽉半ばまでは全体的には少し減少していたが、その後は逆に増加の傾向にある。再⽣産数の推定値が上下動しているのは報告感染者数が⽇毎に揺れるからである。また、実際の感染から報告までは1−2週間のラグがあるので再⽣産数の推定値も1−2週間前の値と考えるのが妥当である。しかし、⽇本の再⽣産数が概ね2程度の値を持ち、結果としてゆっくりではあるが感染の指数関数的拡⼤が続いていることに疑問の余地はない。

⽇本の感染拡⼤はゆっくりだからと⾔って、のんびり構えている余裕はない。このペースで拡⼤が進むと、現在(4 ⽉ 15 ⽇)8,300 ⼈の感染者数は 5 ⽉ 15 ⽇には 140,000 ⼈に増え、死亡者は 3,000 ⼈に近付くことになる。再⽣産数が1を超えている限り、感染爆発はゆっくりとではあれ確実に起こるのである。さらに、今後感染者数が増えて⾏くと、経路不明感染者の増加によって⼈々がもはや接触を避けることができなくなり、再⽣産数が増加して、現在までより遥かに急激な拡⼤が起こる可能性も否定できない。接触を8割減らすと、1から3の再⽣産数は 0.2 から 0.6 程度になる。中国の⼆⽉半ばから三⽉半ばの⽔準である。これによって中国ではピーク時に毎⽇ 3,000 ⼈の感染が報告されていたところを約⼀ヶ⽉で数⼗⼈のレベルまで下げることができた。それでも、感染者数はその後横ばいから緩増加の傾向にある。四⽉半ばになって武漢のロックダウンはある程度解除されたが収束には程遠い。

接触 8 割削減は⼤変厳しい要請である。7 割か 6 割でも良いのではないか考えるかもしれない。しかし、削減割合は、時間的に、地理的に、そして社会的に、バラツキがある。実際の削減割合が⼩さいほど収束には時間がかかり、また、再⽣産数が1を超える部分が残れば感染症はそこから再び指数関数的に拡⼤する。厳しい削減に国⺠が納得して取り組めるように、政府は情報公開と説明を徹底し、同時に⽀援策を早期に実⾏に移すことが重要ではないだろうか。
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強力な都市封鎖(ロックダウン)を行使した中国湖北省・武漢市の例を示して、日本政府に提言していることから、日本でも都市封鎖の必要性を訴えているものと理解できる。現在、改正インフルエンザ等特別措置法に盛り込まれている非常事態宣言は「地方自治体の首長(都道府県知事)」に、私権制限のある程度の権限を与えているが、基本的には「要請」に力点を置いている。また、経済社会の混乱・国民の生存対策については、しっかりした言及がない。都市封鎖(ロックダウン)のような強力な措置を講じる権限はない。都市封鎖を実行するには、改正インフル特措法に盛り込むか、新規立法が必要である。

ただし、都市封鎖を立法化するには、➀既に破綻した政府と専門家会議が失敗を謙虚に認めること②新型コロナ感染症対策の抜本転換(PCR検査と補助検査の抗体検査の徹底推進と症状の段階に応じた隔離施設の確保ないし新設)と大胆な罪再出動による生活保障支援金の継続的給付と消費税税率ゼロ%への引き下げなどの本物の緊急経済対策の一体的実施)-が必要である。

現在の安倍晋三政権は、ダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナウイルス感染症対策に完全失敗したにもかかわらず、その教訓を全く生かせていない。そもそも、ダイヤモンド・プリンセス号が危機的状況に陥った際でも、新型コロナウイルス感染拡大対策が東京オリンピック開催に優先すべ最重要の認識であることの認識すら持たなかった。このため、武漢市が都市封鎖という強力な措置を講じている間も、中国の春節時に中国人に訪日を呼びかけ、水際対策を打ち出せなかった。国内においても、3月1日に東京マラソンなどの大きなスポーツイベントを実施するなど、対策は支離滅裂を極めた。

現政府=安倍政権とその御用諮問機関と化した専門家会議に、都市封鎖(ロックダウン)を打ち出す資格はない。

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