国民の生命を守るための医学・科学よりも「利権政治」最優先の安倍首相

今年も8月9日、長崎県長崎市松山町の平和記念公園で恒例の「平和記念式典」が行われた。けれども、次の言葉で避難される「偽造・捏造・安倍晋三」首相は毎度のことながら、原水爆の「核のジレンマ」から脱出するための「核兵器禁止条約」の批准の声に耳を塞ぐとともに、政府の傘下にある政府新型コロナ感染症対策本部分科会(専門家会議から格下げ)の「専門家」の提案にも従わない「利権政治屋」の姿を国民の目の前に晒した。

◎追記:朝日デジタル2020年8月10日15時28分の投稿記事などによると、8月10日午後15時時点の新型コロナウイルスの新規感染確認者は7月27日以来200人を下回る197人。ただし、入院患者数は初の1600人超えの1601人になり、重症者は前日から1人増えて24人になった。陽性率は推定で約6.1%。東京都の公式発表では7日移動平均で7.0%。全国ではNHKのWebサイトの情報で午後20時41分の段階で833人。沖縄県で3人、和歌山県で1人が亡くなられとの報道。

「平和記念式典」後のたった17分間の記者会見で安倍首相が語ったのは事実上、①「核兵器禁止条約」を批准する考えはないこと②分科会が「感染爆発の第4ステージ」では改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく「緊急事態宣言」の発出するべきだとの提案を実行することを曖昧にして、事実上一蹴すること−の2点。

核兵器禁止条約は本来なら、世界唯一の原子力爆弾被投下国であり広島県では11万5千人、長崎県では7万5千人の尊い生命が一瞬にして、そして戦後の長い間に失われた日本としては、国際平和主義の理念と積極的平和外交を求めている日本国憲法(第99条では「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」として、真っ先に天皇陛下と内閣総理大臣が従わなければならないと定めている)に従う限り、世界の先頭を切って核兵器禁止条約を批准しなければならない国のはずである。

核兵器大国の米中露の三カ国の中で中露が接近しており、米国が孤立しているリアリズムの中では、積極的平和外交を実践するなどのことは「机上の空論」との立場もある。しかし、①人類史的に見て欧米800年の時代は過ぎ去り、東アジアが文明の中心地帯になっていくことが予想されている(関市社会学で人類歴史をマックス・ウエーバー=大塚史学の観点から鳥瞰します)②中露の「赤い資本主義」の下で貧富の格差が激しくなり、中国共産党指導層も共産党、中国結成100周年を目標に貧富の格差是正に取り組まなければならないこと③文明の発展には、国民の自由の保証が欠かせないこと−などの点があることも確かである。だから、米中路の弱みを突いた積極的平和外交を追求すべきである。東南アジア諸国連合(ASEAN)外交も踏まえるべきだ。

長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典
長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典(https://www.at-nagasaki.jp/event/50862/)

核兵器禁止条約が国際連合で採択されてから3年が経つが、既に世界のうちで44カ国が批准を行いあと6カ国が批准すれば、「批准国が50カ国に達してから90日後」に発効することになっている。核兵器大国には圧力になる。最近では北大西洋条約機構(NATO)加盟国のオランダで条約批准の動きが活発化している。政府=安倍政権としては。全ての「政策」が破綻した現在、核禁条約だけには前向きに取り組むことをお勧めしたい。

以下、少し政府=安倍政権が失敗に終わっていることを述べる。ロシアではプーチン大統領が憲法改正の動きに着手しており、「北方領土問題なるものは存在しない」との条文を追加する意向だと伝えられる。こうなると、「北方領土問題」で日本側との交渉に応じることさえ、ロシア政府にとっては憲法違反になる。安倍首相が自慢していた「安倍首相・プーチン大統領の信頼関係」なるものは一体何処に言ったのか。

次に、内閣府の「景気動向指数研究会」が2018年10月に日本が景気後退局面入りをしたことをひた隠しにせさてきた結果と思われるが、政府=安倍政権は景気後退期の最中の昨年10月に消費税増税の強行を行った。お陰様で、昨年の実質国内総生産(GDP)は前期比年率7.1%減のさんたんたる有様になった。財務省事務次官出身の黒田東彦日銀総裁のリフレ政策(市中国債はもちろんコマーシャル・ペーパー=CP=などの大量の買い入れ、年金積立金管理運用独立行政法人=GPIF=の公的年金積立金の運用対象の株式投資比率の引き上げの長い目で見ての失敗)も年間物価上昇率2%はいまだ達成できず、完全に失敗。これに今年に入ってからのコロナ禍が追い打ちをかけ、今年・今年度は戦前の大恐慌を凌ぐとさえ囁かれる経済情勢の悪化が続いている。アベノミクスの破綻・崩壊は今や、誰の目にも明らかである。

さらに、コロナ禍対策では利権優先のため、政府=安倍政権の対応は支離滅裂になった。中国・習近平国家主席の国賓としての来日を強行するためもあり、武漢市からの来日は拒否する一方、中国春節訪日客を狙って、安倍首相は中国の北京大使館のホームページ(サイト)に中国人訪日客の「熱烈歓迎」の観光客誘致宣伝を掲載させたが、これが第一波の原因になり、初動態勢を完全に誤った。台湾は即座に、蔡英文総統率いるテクノクラートの行政院閣僚(日本の内閣に総統)が中国との往来を禁止、最新の遺伝子工学に基づいた最先端の感染症対策と情報科学技術を併用し、新型コロナウイルスの蔓延を制圧した。話を元に戻すと、東京オリンピック開催強行のため、小池百合子率いる東京都が3月1日に街道応援者の3蜜をもたらす「東京マラソン」を平気で行うことに、何の注意もしなかった。初動対策としては、完全に誤りだった。極めつけは、「検査・保護・隔離」が世界では常識なのに、時代にそぐわない「感染症法」を盾に取って、PCR検査を妨害した。初動対策は完全に間違った。

今や、来夏の東京オリンピック開催などは、「夢のまた夢」で、医療専門家の間では「中止」が常識。早く中止を決めなければ、本来はコロナ禍対策に回すべき財政資金をドブに捨てることになり、スペンサー企業にも多大の負担をかける。株主訴訟も出てくるだろう。日本政府や東京都、オリンピック大会組織委員会もそのことは承知しているのだろうが、自らは言えない。オリンピックの来夏開催への一年延期のきっかけを作ってくれた米国のトランプ大統領にでも期待しているかも知れない状況だ。そうは言っても、トランプ大統領は民主党のバーデン候補にリードを許しており、東京オリンピックどころではない。

なお、米国が有志国連合を募って包囲しようとしている中国について、少し触れておきます。中国はコロナ禍対策として超大規模なPCR検査を行った(第二波が起こりかけた人口800万人の北京市では少なくとも200万人に対してPCR検査を行い、400人の感染者を割り出し、第二波を封じ込めた)ことで、今年は世界の経済大国の中で唯一プラス成長になる見込みだ。

主な国の論文数の推移
主な国の論文数の推移(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14581148.html?iref=pc_ss_date)

朝日新聞8月9日付3面の「中国、科学論文数で首位」(朝日デジタルは2020年8月9日午前5時00分公開)と題する記事によると、文部科学技術省の調べで、一国の経済・産業の競争力の基本的な先行指標になる自然科学系の学術論文数はついに米国を追い抜いた。また、日独両国の論文数の低迷もはっきりしている。日本の大学の世界ランキングもどんどん低下(https://globaledu.jp/THEworlduniversityrankings2020-33992.html)しており、このままの文部科学行政が続けば、日本は先進国のクラブである経済協力開発機構(OECD)諸国の中でも、更新国に転落することは確実だ。これも、アベノミクスの「成果=実態」だ。

さらに付け加えれば、中国が10年後にはGDPレベルで世界最大の経済大国になるとの見方もあちこちで出ている。米国のポンペオ国務長官が7月23日、実質的には対中包囲網有志国を募る「対中外交の戦略的転換」を打ち出したものの、自国の経済は製造業で中国に絶対的に依存しているため、本当のところは歯切れが悪い。今や、AndroidスマートフォンやiPhoneの大規模生産基地は中国。Asusなど一部の台湾企業がAndroidスマートフォンを世界に出荷している程度だ。また、クリスマスの米国家庭のクリスマスプレゼントは中国から輸入している。対中包囲網を結成したところで、返り血を浴びるのは米国経済だ。「中国は習近平国家主席が米国に降参した」というYoutube動画も上がっているが、コトはそう簡単ではない。

政府=安倍政権も政治・軍事は米国に依存、中国とは経済関係を前進させるという「二股外交」を続けてきたので今後、外交面では「股裂き」の憂き目に合う。安倍首相には臨時国会を招集する意思も能力もないから、9月の自民党執行部の改編人事しか頭にない。ただし、敵基地攻撃を柱とする日本国憲法違反の国家安全保障政策転換だけは、血迷ったように熱意がある。それはさておき、9月の当執行部人事では、二階俊博幹事長ら親中派の更迭が予想される。加えて、健康悪化説も後を立たない。もっとも、英国との経済連携協定締結後に、自己都合で臨時国会を召集し、「敵基地攻撃策」を中心とする憲法違反の「国家安全保障戦略・政策」の憲法違反の抜本的大転換を行う可能性はある。ただし、コロナ第二波の広がりと安倍首相自身の健康状態によっては、それも不可能になることを考慮に入れておかねばならない。

長々と安倍政権の失政を書きましたが、そういう時であればあるほど、核禁条約承認に前向きに取り組んだ方が、後世の歴史家に「集団安保に道を切り開き、日本を再び当時の日本国憲法違反の対米従軍戦争に加わることに道を開いた」首相とだけ評価されるよりは、少しでもましではないか。ただし、今の安倍首相にそれを期待をするのは無理な話だ。

さて、今回の長崎での「平和記念式典」でのもうひとつの問題点は、格下げされた分科会(尾身茂会長)でさえ、「感染爆発」の第4ステージでは改正インフル特措法に基づく「緊急事態宣言」を発出することを基本対策の柱として挙げていたが事実上、それすら行わないことを暗に示したことだ。下図は、分科会が示した「感染爆発」の場合の「分科会」がまとめた対処法。

コロナ第二波の「爆発的感染拡大」への対処策
コロナ第二波の「爆発的感染拡大」への対処策

これは、政府=安倍政権が「経済再活動」の大義名分の下、如何に既得権益にしがみついていることの証左だろう。尾身会長が、PCR検査には1%の誤りがあると言って、厚生労働省の指示通りPCR検査を抑制したことは周知の事実(https://www.youtube.com/watch?v=vcJkqqmc8cw)だが、その尾身会長(独立行政法人地域医療機能推進機構理事長、傘下の新宿メディカルセンター=旧厚生年金病院では新型コロナウイルスの院内感染が発生した=https://shinjuku.jcho.go.jp/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E5%AF%BE%E7%AD%96/=)でさえ、「感染爆発」の第4ステージでは、「(改正インフル特措法に基づく)緊急事態宣言(の発出)を検討せざるを得ない」としている。分科会の原文は「緊急事態宣言を発出する」となっていたのだろうが、西村康俊経済再生担当相らの手で「検討せざるを得ない」とトーンダウンさせられたのだろう。

医療関係者など専門的医学に詳しくあるべき専門家が、政権の支配下に入ってはいけない。

JCH東京新宿メディカルセンター
JCH東京新宿メディカルセンター(https://shinjuku.jcho.go.jp/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E5%AF%BE%E7%AD%96/)

この表現が、長崎での平和記念式典後のたった17分の記者会見で、安倍首相が「緊急事態宣言を発出する」と明言しなくても良かったことの布石だ。しかし、いくら政府よりの尾身会長といえども、「医を仁術」と考えるべき医師であることを踏まえると「感染爆発」の段階では「緊急事態宣言」の再発出には踏み切る必要があると思っていると考えるのが自然だ。感染防止に無防備のままで営業活動・移動活動を野放しにすれば、新型コロナウイルスは無症状感染者でもウイルスを大量に放出する危険性があるから結局のところ、「営業活動・移動活動」も出来なくなる。「形だけ二兎追っても一兎も得ず」になるのは当然だ。

老子73章に「天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず)」という教えがある。天の網は目が荒いようで悪事を見逃すように見えるが、最終的には悪事を犯せば必ずその報いは受けなければならないという意味だ。とりわけ、政府=安倍政権はこの言葉を噛みしめる必要がある。





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