朝日の「コロナ禍を利用して中小企業の整理・淘汰を」の社説は行き過ぎ
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朝日新聞は11月12日の社説で雇用調整助成金の縮小や持続化給付金支給の問題点を指摘し、「コロナ禍を利用して中小企業の整理・淘汰を」と言わんばかりの論を展開した。コロナの第3波の襲来が確実視されている中でのこの社説は、財務省の「財政再建原理主義」と菅義偉首相の政策ブレーンであるデービッド・アトキンソン氏の中小企業淘汰・再編論に与するもので、少なくとも「行き過ぎ」だ。なお、12日は1日の全国の感染者数が過去最多の1661人の感染者と死亡者が10人が確認された。西村康稔経済再生担当相は「大きな流行が起きつつあることは間違いない」と断言しているが、本当にそう思っているなら「Go To」政策は即、中止すべきだ。

11月12日コロナ感染状況
本日11月12日木曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では午後15時の速報値で新規感染確認者は1週間前の5日水曜日の269人より124人も多い393人(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)、東京都基準の重症者も前日比1人増加の39人だった。東京都のモニタリング会議では「急速な感染拡大の始まり」 としているが、小池百合子都知事は警戒レベルを上から2番目の3に据え置くことに同意した。小池都知事は「クラスター対策」を呼びかけるだけに終始している。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は269.3人、PCR検査人数は4599.3人だから、陽性率は5.86%。東京都独自の計算方式でも5.3%。感染者のうち感染経路不明率は57.70%だった。
全国では午後21時59分の時点で過去最多の1661人の新規感染者と10人の死亡者が確認されている。全国各都道府県の状況はこちらのサイト(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/)で示されている。東洋ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、11月11日時点の実効再生産数は全国が前日比0.14人増加してと1.40人、東京都では前日比0.15人増加の1.34人と急激に悪化している。
各種メディアの報道によると西村康稔経済再生相は、この12日夜開かれた政府の新型コロナウイルス対策分科会(尾身茂会長、専門家会合)後の会見で「大きな流行が起きつつあることは間違いない」と語った。本当にそう認識しているのなら、「Go To」キャンペーンは即時、中止にすべきだ。さもなければ、閣僚の言行不一致か閣内不一致だ。

サイト管理者(筆者)が問題にしたのは、朝日社説が政府=菅政権サイドで次期総選挙向けに大型の第3次補正予算案を編成しようとしていることに警鐘を鳴らすものだとしても、この20年間にわたって深刻なデフレ不況が続く原因となっている「財政再建原理主義=緊縮財政政策」と菅首相のブレーンであるデービッド・アトキンソンの中小企業淘汰・再編論に与するものであるからであ。全くいただけない論陣だ。

菅首相の頭になったデービッド・アトキンソン氏

菅首相の頭になったデービッド・アトキンソン氏

朝日新聞の社説を下記に引用させて頂く。
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雇調金(雇用調整助成金)の特例は、失業を防ぐ上で大きな効果を発揮したが、成長分野への労働移動を阻害する副作用がある。(中略)
日本経済の生産性の低さは、既存の働き手や企業を守ることを優先した結果、デジタル化などの世界の潮流に乗り遅れたことが一因とも指摘される。転職に向けた教育訓練や、企業の異業種転換への助成を手厚くしたうえで、雇調金の特例などは縮小を検討すべきだろう。(中略)
今年度の2回の大型補正予算では、持続化給付金や旅行支援策などで、不透明な業者への事務委託や不正受給などの問題が続発した。原因を検証し、再発防止に知恵を絞ることも欠かせない。
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朝日新聞東京本社(東京本社)

朝日新聞東京本社(東京都中央区築地、Wikipediaによる)

本日11月12日の朝日新聞1面トップ記事では、日本医師会の中川俊男会長の「(コロナの)第3波」と考えてもいいのではないか」との見解を報道している。今回の雇用調整助成金の特例や主に中小企業を対象にした持続化給付金は、コロナ第1波、2波で打撃を受けた企業が営業を続けるための特例措置である。確かに、朝日が社説で主張しているように「不正受給などの問題が続発」した面もあるだろう。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大という異常な状態がなければ、企業活動を正常に継続できていた中小企業も多く、コロナ禍で企業が倒産に追い込まれることを防ぐためのものだ。

改正新型インフルエンザ特措法には、企業の営業活動の自粛や停止要請に対する政府や地方自治体の補償が明記されていないという重大な欠陥があった。これに対して、野党側が国会で補償の重要性を強調し、政府=安倍晋三政権が1人当たり10万円の定額給付金や雇用調整助成金、持続化給付金支給などの実施に踏み切ったものである。朝日新聞社は財務省の指示に基づいて「財政再建原理主義=緊縮財政論」の立場を取っているが、日本医師会の中川俊男会長が指摘するようにコロナの第3派の襲来はほぼ確実なものになっている。冬の到来を迎えての第3波は日本の経済社会に対して、今春から夏にかけての第1波、第2波よりもより大きな打撃を与える公算が大きい。

このような状況の中で、中小企業や中小企業の従業員に対して、雇用調整助成金の特例の縮小や「持続化給付金」延長を否定する内容の論陣を張るのはいかがと思わざるを得ない。また、朝日社説は日本の企業は生産性が低い、デジタル化が遅れていると捉えている。正確には、「一因とも指摘される」と書いて、判断を明確にしていることは「ずるい」としか言いようがない。これは中小企業の「生産性の低さ」を問題とし、中小企業の整理・淘汰を主張するゴールドマン・サックス出身のデービッド・アトキンソン小西美術工藝社社長の主張の受け売りと言ってよい。生産性が低く見えるのは、日本の政府が小泉純一郎政権以降採用してきた「財政再建原理主義=緊縮財政路線」で20年間に及ぶ長期デフレ不況に陥ったことに直接的な原因がある。これについては、本サイトの次の投稿記事をご覧頂きたい。

日銀や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が市中金融機関から国債や株式を大量に購入せず、政府が日本経済底上げのための新発国債を発行、その資金を民間経済に流せば、20年ものデフレ不況に陥ることなく、民間企業は活性化し、設備投資を積極的に行って産業構造の転換・高度化やIT化の推進を行うことができたはずだ。当然、中小企業の生産性も上昇し、雇用も守られる。政府発行の新発国債はいったん、民間金融機関が購入することになるが、その市中金融機関が購入した国債を日銀が購入すれば(日銀による国債の間接的購入)、金利が上昇することもない。国債発行の上限は、国債残高ではなくインフレ率である。これはMMTの登場以前のはるか前にノーベル経済楽章受賞のジェームス・トービンが指摘していたところである。

国債発行の上限はインフレ率によることを示したトービン教授(当時)

国債発行の上限はインフレ率によることを示したトービン教授(当時)

現代貨幣理論(MMT)の指摘するところだが、インフレ率さえコントロールできれば、中長期的には為替相場はインフレ率の格差を反映した購買力平価に落ち着くから(この点については、別に投稿します)、日本の円相場が暴落することもない。

現在は。日銀や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が市中金融機関から国債や株式を大量に購入している(日銀は投資信託の一種であるETF=上場投資信託=)から、国債市場や株式市場はバブルに陥っている。なお、日銀やGPIFはこれらの金融商品を売却できない。暴落の引き金になるからだ。また、民間経済に資金が流れないから芸剤活性化にも役立たず、本来の目標であったインフレ率2%の達成は不可能になった。その一方で、金利は大幅に低下し、地方銀行は大変な苦境に陥っている。地方銀行の淘汰・再編になれば、中小企業の倒産多発・失業者の増大を招き、第3次コロナの襲来で日本の経済社会は全国的に大変な混乱に陥る。

朝日新聞社をはじめとして、日本のマスコミ界は財務省のコントロール下に置かれているが、政府が積極財政に転じなければ、より強力なコロナ第3波の襲来とともに、日本の経済社会は危機的状況に陥る。