専門家会議報告、対策破綻と韓国方式導入示唆−出口戦略見えず政争勃発(加筆・補強)

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(座長・脇田隆宇国立感染症研究所長)が5月1日、最新の対策リポートを発表した。提言のポイントは緊急事態宣言による休業・自宅待機要請などで接触率が低下し、感染者数の増加スピードは低下したが、「(まん延を収束に向かわせる)8割の接触機会の低減の徹底が重要」として、①感染の状況が厳しい地域②新たな感染者数が限定的となった地域−の2つの地域差に考慮しながらも、休業・自宅待機要請を継続すべきとの見解を述べた。ただし、ワクチンの開発や集団免疫の獲得には期待できないとして、出口戦略は明示できないでいる。これに対して、大阪府の吉村洋文知事が同日、政府・専門家会議には「出口戦略」がないとして独自の「対策」を取ると公言して、政争が勃発した。しかし、吉村知事は日本維新の会に所属していることから、吉村洋文大阪府知事−橋下徹大阪維新の会法律顧問−小池百合子東京都知事のラインで、新自由(放任主義)に固執する新たな「新自由主義勢力」の結集を目指していると思われる。共生共栄の理念に基いて、韓国方式を応用したコロナ禍対策を樹立し、政策連合の結成を急ぐべき時に来ている。

専門家会議が、3蜜(密閉・密集・密接)による「感染者拡大」を避けるために休業・自宅待機の自粛継続を求めるのは、自粛で国内での感染は減少してきているが「緩やか」であり、自粛を緩めると「感染者の爆発的増加(オーバーシュート)」が起きるとの「見解」に基づく。それでは、どの程度まで自粛継続すれば良いと見ているのか。

5月1日に行われた新型コロナウイルス専門家会議記者会見

ここで、専門家会議が持ち出して来たのは、「実効基本再生産数」という言葉だ。見解にはこの言葉の説明はないが、東京都の0.4以下に抑える必要があるとしているので、言葉の意味は理解しておく必要がある。その前に、基本再生産数という言葉の理解が必要だ。キヤノングローバル戦略研究所の鎌江伊三夫研究主幹によると、「要は、一人の感染者が、ウイルスを次に何人の人に移すのかの数値である。基本2次感染数と呼ぶ方が分かりやすいかもしれない」。ただし、社会の中にウイルスに対する抗体を持っている人がいれば普通、その人には感染しないと考えられるから、基本再生産数は修正する必要が出てくる。

それが、「実効基本再生産数」だ。「感染を受ける対象集団のうち何%かの人が既に免疫をもつ場合、1人の感染者が他人に移す期待人数」は、「基本再生産数×免疫をもたない人の割合」で、これが「実効基本再生産数」ということになる。免疫をもたない人の割合をpとすると、実効基本再生産数=基本再生産数×pとなる。厚生労働省クラスター対策班メンバーである北海道大学・西浦博教授は基本再生産指数を2.5としたが、この場合は2.5×(1-p) < 1、つまり、p=60%で感染拡大がストップする。つまり、社会を構成するメンバーの60%が再感染しない免疫力を確保していることが必要だ。

専門家会議の下図によると、実効再生産数は東京都の0.5以下が必要としている。世界保健機関(WHO)は基本再生産数を1.5ないし2.5程度としている。専門家会議では、基本再生産指数を2.0程度としていると見られる。この場合は、免疫を確保した人の割合は50%程度になる。しかし、この免疫獲得割合は大きすぎるのではないか。また、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は様々な薬が投与され、耐性と毒性が強くなっている。PCR検査で陽性になった方が一時的に2度陰性の判定が下されため退院されたが、再度発症し、PCR陽性と判定され再入院したというニュースがしばしば報道される。

加えて、専門家会議のこの図には大きな欠陥がある。それは、日本のPCR検査の数が絶対的に不足していることだ。植草一秀氏のメールマガジン「第2619号OECD36ヵ国第35位PCR検査後進国日本」によると、「OECD(経済協力開発機構)が4月28日、加盟36ヵ国を対象に人口1000人当たりのPCR検査実施件数を公表した。日本の検査件数は1000人当たり1.8人。36ヵ国中35位である。日本は完全なPCR検査後進国、PCR検査妨害国になっている」。

4月下旬から東京都を始め全国の感染確認者数が少なくなりだしたが、これはPCR検査数が少ないためだ。検査数が多ければ多いほど、感染確認者は増える。実際、植草氏のメルマガによると、4月末のPCR検査数は、
4月25日(土) 6667
4月26日(日) 3968
4月27日(月) 5576
4月28日(火) 4149
と減っている。

ところで、朝日デジタルが2020年5月2日午前零時時13分に投稿した記事によると、「新型コロナウイルスの感染者は1日午後10時半現在、新たに266人確認され、国内の感染者の総数は1万4572人になった。4月29、30日にそれぞれ50人を下回った東京都では再び100人台に増えた」。具体的には、東京都で「新たに確認されたのは感染者165人と死者6人。都内の感染者は計4317人、死者は126人になった」。PCR検査数最後進国日本では検査実績が少ない上、厚労省からその日ごとに垂れ流される情報が、どの検査機関でどの検査機関で何時(いつ)、何人に対して行われたかの情報開示がないため、正確なことは不明だ。従って、日本では感染の実態も不明なままだ。あまりにも少ない情報でデータ分析を行っても、有効性は低いだろう。

国内の識者の批判で、PCR検査数が少ないことは専門家会議も認めざるをえなくなっている。このため、「他方、PCR 等検査数が諸外国と比べ限定的な中、感染者数が減少しているとなぜ判断できるのかとの指摘がされている。これに関しては、医師が必要と判断した場合及び濃厚接触者を中心に PCR 等検査を実施してきたため、感染者の全てが把握されているわけではない。しかし、検査件数が徐々に増加している中で、陽性件数は全国的に減少傾向にあること、また、東京などで倍加時間が伸びていることなどから、新規感染者数が減少の傾向にあることは間違いないと判断される。なお、さらに詳細なデータについては近日中に開催する専門家会議において別途お示しする」と言い訳さぜるを得なくなっている。

また、専門家会議では「概要」で
「患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」については、
・医療機関の役割分担の促進、
・PCR等検査の実施体制の強化、
・保健所体制の強化、業務の効率等等に関し、都道府県知事等による更なるリーダーシップが求められる」
としているが、よく読むとPCR検査については都道府県地方自治体に丸投げしている。

その一方で、専門家会議は見解に参考資料を付属し、その中の参考2の、インペリアル・カレッジ・ロンドンが3月16日に発表した「COVID-19 による死亡率と医療需要の低減を目的とした非薬物的介入(NPI)の影響 」では、「「(感染拡大防止のための国民の行動)抑制」のために使用される対策は、時間とともに進化する可能性がある。症例数を十分減少させることで、今日の韓国で採用されている戦略(集中的な検査、接触履歴の追跡、隔離措置)に類似した戦略を採用することがより現実的になる。携帯電話アプリによる追跡機能のテクノロジーは、プライバシーの懸念を克服できれば、上述のクラスター対策をより効果的かつ大規模に実施することを可能とする」との見解を引用している。これは、大規模なPCR検査を行って一応の成果を収めた韓国の手法を学べという意味であろう。

大規模なPCR等の検査の是非についてあいまいな見解を示し続け、結果として政府=安倍政権のPCR検査を妨害しているのが、「専門家会議」と称する「専門家」の実態である。WHOの「検査・検査・検査と隔離」という勧告を無視し続け、支離滅裂な「新型コロナウイルス感染症対策」を行っているのが政府=安倍政権と「専門家会議」である。もちろん、PCR検査には感度(陽性であることを正確に判定できること)が70%、特異度(陰性であることを正確に判定できること。注意:陽性であるのに陰性(=偽陰性)と判定してしまう誤判定が少なからずあること)99%などの誤判定がある。下図では、1312人の患者さんが陽性なのに陰性と判定されてしまい、見逃されてしまう例があることを示している。4373=3061+1371、3353=3319+34。要するに、「陰性」と判定されても安心できないということだ(参考文献・「新型コロナウイルスの真実」岩田健太郎著ベストセラーズ出版社)。

これについては、➀検体抽出技術の向上②抗体検査やその他の民間が開発した検査キットとの併用③CT検査との併用−などでカバーする必要がある。また、検査機関からは検査に必要なツールが足りないという悲鳴も上がっているが、民間が様々な検査ツールキットを開発している。例えば、楽天が販売している自己検査可能な検査ツールキットである。少なくとも楽天販売の検査ツールキットについては、自民党の支持基盤である日本医師会が批判している。

しかし、PCR検査を含め各種の検査を積極的に行わない限り、日本国内の新型コロナウイルス感染の実態は掴めないし、早期に陽性であることが確定できればアビガンなどを服用することによってウイルスの増殖を抑制し、軽快できる可能性も高まる。また、軽症の状態から急に重症化、重篤化、死亡するという状況(5%程度)も緩和できよう。なお、厚労省や地方自治体の保健所にコネのある人物はすぐにPCR検査を受け、アビガンなどを処方してもらっているようだ。日本国憲法が政府や地方自治体に義務付けている、国民の生存権を等しく守る義務は、意図的に放棄されている。

さて、専門家会議の提言では一応、「対策が長期化する中で、まん延防止を第一としつつ、社会経済活動との両立を図ることが課題となるため、政府においては、長期的な対策の継続が市民生活や経済社会に与える影響という観点から必要な検討を行うべきである」とはしている。

しかし、PCR等の検査数が極端に少ないため、新型コロナウイルス感染の実態はつかめない。このため、自粛を要請するだけで、「出口戦略」は示し得ていない。自粛要請で既に、日本の経済社会の現実は、非正規労働者を中心に極端に低い休業手当(労働基準法に定められる最も低い「平均賃金」の60%)が出れば良い方で、雇い止め、解雇や中小企業の倒産、個人事業主(フリーランサー含む)の廃業が続出しており、自粛要請(強制)が続けば、この状況はさらに悪化することになる。

コロナ禍大不況から大恐慌への道である。これについての、政府=安倍政権の危機意識は薄く、しかも、弱肉強食の新自由(放任)主義を根本に据えているため、大規模な財政出動には反対で、日本国憲法が政府や地方自治体に命じている国民の生存権の保証を脅かしている。また、大規模な財政出動は確かに必要だが、生産が縮小し、サプライチェーンが崩壊すれば、生産・在庫が急激に減少し、これまでの極端な金融緩和と相まって、猛烈なインフレーションを招く。大規模なスタグフレーションの到来である。

これに対して、政府と専門家会議の新型コロナ禍対策を批判したのが、大阪府の吉村洋文知事である。朝日デジタルが2020年5月1日 21時36分に投稿した「大阪府、休業要請を段階解除へ−国は出口戦略がない」という記事によると、「吉村知事はこれまで『経済を完全に止めると今度は倒産、失業者、そこで失われる命が必ず出てくる』と主張。1日も『出口戦略がない今の国の方針は大問題だ。国が作らないなら、大阪モデルを作ろうと決めた』と述べた」という。

ただし、吉村知事は、日本維新の会副代表、大阪維新の会代表代行である。オールジャパン平和と共生・政策連合の植草一秀氏は、米国のCIAが日本の戦後史を操ってきたことを戦後史に基づいて実証的に分析しているから、このところマスコミによく出てくる橋下徹大阪維新の会法律顧問、そしてマスコミを通して5月の都知事選挙活動を行っている小池百合子東京都知事らに働きかけ、米国CIAの主導の下に米国型二大政党制を作らせようと分析している。日本維新の会は自民党の補完勢力であり、実態は弱肉強食の新自由(放任)主義に立脚していることは明らかだ。

このため、サイト管理者もその見解に賛成するが、小池都知事は自民党幹事長の二階二階俊博幹事長の軍門に下っている。安倍政権は閣議決定した2020年度補正予算案を組み替えるという醜態をさらけ出したが、組み換えを主導したのは、二階幹事長である。だから、米国型二大政党制の構築から、それを超えて大連立を組み、現在の日本国憲法に「緊急事態条項」を組み込んで、現憲法を破壊してしまう恐れがある。もちろん、これらの勢力が大規模なスタグフレーションを想定していることはないだろう。

このため、共生共栄の理念をもとに、出口戦略を持った新型コロナウイルス感染症対策を構築、立憲民主党、国民民主党の有志議員が結集するとともに、日本共産党(そろそろ共産主義の呪縛から脱却する必要がある)がこれを支援、山本太郎代表の令和新選組などが政策連合を構築していく必要があると考える。政策連合が出口戦略を持った新型コロナウイルス感染症対策を構築する際に参考になるのが、新自由(放任)主義に反対する立場を取る、次のデモクラシーニュースの東大先端研がん・代謝プロジェクトリーダーの児玉龍彦氏と立教大学特任教授の金子勝氏の対談番組だ。

この番組では、新型コロナウイルスの分析から政策対応に至るまで、優れた分析を示している。児玉氏は新型コロナウイルス感染症対策にも、韓国の事例を参考に、遺伝子工学と情報工学を組み合わせたプレシジョン・メディシン(精密医療)を応用すべきだと主張している。その詳細については後日、紹介したい。