労働基準法に定める「休業補償」をコロナ禍に適用するのは誤り-平均月収の補償が必要

労働基準法では「平均賃金」なるものを定め、その60%を休業補償に定めているがこれは労働者(勤労者)が「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合」に補償すべきものとしている。この場合の労働者(勤労者)の手取りは極めて少なくなる。しかし、現在のコロナ禍はこの条件に当てはまらない。本来なら特別立法を行って、過去3カ月分の平均給与を補償に充てるべきで、コロナ禍に対応した特別雇用調整助成金も、これに役立つものでなければならない。

前置きが長くなるが、休業補償について述べる前に最近の新型コロナ感染確認者数が少なくなっている理由について改めて確認しておきたい。結論的に言えば、ゴールデンウイークを含めてそれより以前にPCR検査を行い、その結果陽性と判明した者の人数が「本日の感染確認者」として公表されているのであるが、➀ゴールデンウイークだったため、PCR検査数そのものが少なくなっている可能性が強い②厚生労働省や地方自治体の検査結果把握システムが古く、リアルタイムでもないので、ゴールデンウィーク中に実施した検査結果が反映されていない-などのためである。

朝日デジタルが2020年5月8日0時12分に投稿した「新型コロナ感染、新たに98人 5日連続100人下回る」と題する記事によると、「新型コロナウイルスの感染者は7日、午後10時半時点で98人が新たに確認され、6日確認分の108人も合わせた国内感染者の合計は1万5586人となった。1日の感染者数が100人を下回るのは3月30日以来。東京都では6日に38人、7日に23人の感染が確認された。大阪府では6日が15人、7日が9人だった。計4人はいったん陰性と判断された後、陽性と判定された」という。

厚労省のサイトで時系列的に明らかにしているPCR検査数を調べてみると。次のようである。

ゴールデンウイークのため、検査数が暫く前の1日8000人程度から若干減り始め、6000人程度に鈍化している。安倍晋三首相の発言ではいつも「検査能力」との但書きペテンがあるが、それはそれとして、検査能力をフル活用した場合の1日2万件の検査数(目標)には遠く及ばない。また、最近やっと主役になってきた民間調査会社をはじめ大学の研究機関や「帰国者・接触者」外来を持つ医療機関からの報告がカウントされていない。

PCR検査の結果が判明するには6時間ほどかかると言われているから、長期間にわたってこれら、特に民間調査機関と帰国者・接触者外来を持つ医療機関(全国で860機関程度であるが、非公表)で相当数のPCR検査を受けている患者が存在するが、その結果が判明している者が少ないということだろう。だから、「5日連続100人下回る」という表現に騙されてはいけない。

繰り返しになるが、その日に「陽性確認者」と報告された患者さんの検査を受けた日から結果、判明した日、どの検査機関で検査を受けたのかなど、検査を受けた日のPCR検査総数など詳細なデータが必要だ。ただし、そんなリアルタイムで検査結果が分かるシステムは採用していないだろうから、結局、「報告はしているけれども詳細は不明」というのが正直なところだろう。

昨日7日、日本共産党の志位和夫委員長が記者会見で語ったところによると、専門家会議の西浦博北海道大学大学院医学研究院教授はもちろん、副座長の尾見茂独立行政法人地域医療機能推進機構理事長でさえ、日本国内の感染者数は現在の10倍は存在していることを「お認めになった」ということである。

まだまだ全く油断は出来ない。もっとも、政府の新型コロナ対策感染症対策本部(本部長・安倍首相)は、5月4日にまとめた新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針 (令和2年3月28(令和2年5月4日変更))では、
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●さらに患者が増加し、増設した帰国者・接触者外来や地域外来・検査センターでの医療提供の限度を超えるおそれがあると判断する特定都道府県では、厚生労働省に相談の上、必要な感染予防策を講じた上で、一般の医療機関での外来診療を行うこと。
●こうした状況では、感染への不安から安易に医療機関を受診することでかえって感染するリスクを高める可能性があることも踏まえ、症状が軽度である場合は、自宅での安静・療養を原則とし、肺炎が疑われるような強いだるさや息苦しさがあるなど状態が変化した場合は、すぐにでもかかりつけ医等に相談した上で、受診するよう周知すること。
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としている。玉虫色の表現ではあるがやはり、「新型コロナウイルス感染の疑いがあるものは全員検査する」という方針の切り替え=行動様式=の抜本変容(転換)ではなく、「相談所」を設けてPCR検査は抑制するという 方針に変わりはないと思われる。

これではなお、国内の感染実態を掴むことは出来ず、出口戦略も含めた正しい対策は不可能である。

前置きが長くなったが、労基法では、企業の勤務する勤務者(労働者)の休業補償として次のように定めている。その第七十五条において、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない」。そして、その具体額として第七十六条において、「労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない」と定めているのである。

普通は平均賃金と言えば、例えば過去三カ月間の平均月収と思うだろう。しかし、労基法にいう「平均賃金」とはこれと異なる。平均賃金については、第十二条に記載されている。
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第十二条 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。

一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
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例を示すために、次の仮定を置いてみよう。ある会社に契約社員(非正規労働者)として働いている勤労者がいるとして、その給与が時給1200円、1日8時間労働、週休2日として月20日の勤務とする。この場合の月収は、1200円×8時間×20日=19万2000円になる。過去、3カ月間無欠勤で勤務したとすると、平均賃金と言えば19万2000円×3カ月÷3カ月=19万2000円になると勘違いしやすい。
しかし、労基法第十二条によれば、この19万2000円もひとつの候補であるが、二番目の候補としてその60%の192000円×60%=11万2000円も第二番目の候補になる。そして、第三番目の候補は、3カ月勤務して3倍したものを歴数の90日に割ったものに20日の勤務手当を乗じた、19万2000円×3カ月÷90日=6400円が1日の休業手当になり、これに勤務日数の20日を乗じたもの6400円×20日=12万8000円になる。
社員が契約社員など非正規労働者の場合、このうち、最も安い11万2000円の60%、つまり、11万2000円×60%=6万7200円が休業補償になる。政府が、勤労者が納付する雇用保険料を原資とした雇用法保険料積み高残高が原資として雇用調整助成金が支給されることになっているが、下記のように新型コロナ禍で雇用値要請助成金の加算額がプラスされても、並みの非正規労働者には役に立ちません。
この低レベルの休業補償額は、現在の労基法が「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合」しか想定されていないことによる。大災害とか今回のような重大なコロナ禍の場合は別途、休業補償の既定があってもよいはずだ。例えば、労基法に定義している「平均賃金」ではなくて、実際の「平均月収」をそのまま支給すべきだろう。その場合は、上記の雇用調整助成金も役に立つ。第二次補正予算案は早急に策定しなければならないが、その中では自然大災害時や今回の新型コロナ感染症のような場合には、特例措置を設けるよう労基法を改正すべきだろう。こうした事態については、労基法は想定していないのだから。
なお、通常時においても、日本の経済社会の格差拡大を阻止するため、最低賃金の1500円への引き上げは必要である。
※追伸(2020年5月9日記):
朝日新聞5月9日土曜日付朝刊3面に掲載の「休業者に失業手当検討」と題する記事で、「雇用調整助成金だけでは、働き手にお金が行き渡らないとみるため(つまり、労働基準法に基づく休業補償額が少ないため)「災害時の特例を応用して、『失業手当』を支給してはどうかという意見が現場から出ている。政府も検討を始めた(中略)」とある。ただし、政府=安倍政権のことだから、最終的にどうなるかは不明だ。

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