中国新聞デジタルが2020年6月4日午前2時までに投稿した「河井克行氏、国会閉会後立件へ 買収容疑で検察当局、案里氏も」との記事によると、検察庁が河井克行元法相・案里参院議員夫妻、常会終了後の17日に逮捕する意思を固めたという。当然のことだが、逮捕時期については疑問だ。
検事総長の任期は3年だが、2年で勇退することが慣例になっている。このため、稲田伸夫検事総長は今年7月にも任期を1年残して勇退すると見られている。その勇退の「花向け」として、検察庁の「信頼回復」のために河井克行元法相・案里参院議員夫妻を公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕すると見られている。
中国新聞デジタル版は本日4日未明、「昨年7月の参院選広島選挙区で初当選した自民党の河井案里氏(46)と夫の克行前法相(57)=衆院広島3区=が広島県内の地方議員らに現金を配ったとされる買収疑惑で検察当局が、克行氏を17日の国会閉会後に公選法違反(買収)容疑で立件する方向で最終調整に入ったことが3日、関係者への取材で分かった。案里氏も同法違反容疑で立件する方針を固めたもようだ」と伝えている。
逮捕は当然のことだが、国会終了後に逮捕するというのは理解に苦しむ。政府=安倍政権は16日が会期末の今通常国会で閉じて、逃げ切りを図る構えで、10−12月期の実質国内総生産(GDP)増加率(経済成長率)がプラスに転じたことを見計らって、年末に解散・総選挙に出る可能性がもっとも高い。
通常国会閉幕後に河井夫妻が逮捕になるとすれば、河井克行元法相が使った買収資金の出所が自民党本部であり、安倍晋三首相の直接の指示によるとの見方が強いため、政界に激震が走ることは確実だから、通常国会直後の解散・総選挙はまずあり得ない。日刊ゲンダイに寄稿した政治評論家によると、「自民党の二階幹事長は1日の会見で『特に今、早期解散の必要性を感じているわけではない。今は新型コロナウイルス問題の解決に懸命の努力をするべきだ』と否定的な見解を示した」という。
続けて、「事実上、首相の解散権を封じ、引導を渡したに等しい。秋の党役員人事で、安倍首相は二階幹事長を交代させる意向だと言われていました。それを二階氏が黙って受け入れるとも思えない。首相と溝が深まっているという菅官房長官、あるいは石破元幹事長と連携して、安倍降ろしに動くのではないか。解散権を封じられた安倍首相に残された道は退陣しかありません」という。
これでは、検察庁が新自由主義路線=極端に言えば「政府の民営化」=をひた走る自公両党の延命に手を貸すことになる。こういう中途半端な時期の逮捕では、検察庁の信頼は回復しない。
加えて、①第一次補正予算の執行の大幅な遅れ②事実上のダミー団体「一般社団法人サービスデザイン機構」を通じた電通やパソナ、トランスコスモスなど利権企業への不透明な業務委託③予備費10兆円という第二次補正予算案は日本国憲法「第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」違反④法律違反の黒川弘務東京高検検事長閣議決定による定年延長と常習賭博容疑の同検事長に対する甘い訓告処分、検察庁改革法案の行方⑤コロナ禍対策に万全を期すこと−など、今国会での集中審議が必要な案件が多数ある。通常国会の任期延長は、国民に真実を伝えるという意味で当然のことだ。
それにもかかわらず、検察庁が、当然の河井夫妻の逮捕を国会終了後に行うなどのことは、国民主権・議会制民主主義に反することになり、やはり、政府と検察庁が癒着し続けていることを明らかにするものでしかない。検察庁は今通常国会の会期内に衆参両院の議員運営委員会に河井夫妻の逮捕許諾請求状を出し、真の意味での検察庁の改革の発端とすべきだ。