玉木代表の国民民主党はもう分裂・消滅か−国民民主党さん、さようなら!

6月2日に枝野幸男代表の立憲民主党が7月5日の東京都知事選で元日弁連会長の宇都宮健児氏の推薦を正式に決めた一方、玉木雄一郎代表の国民民主党はこれを拒否した。枝野代表が5月29日に、私案ながら同党国会議員の賛同を得ている、従来の新自由主義路線を抜本転換する政権構想を発表したことと併せ、立憲はリベラルな路線を鮮明にしつつある。これに対して、推薦を断った支持率1%の国民は、政府=安倍政権を支持する御用組合の連合の呪縛から逃れられず、安倍政権の支持勢力であることが鮮明になった。安倍内閣の支持率が急落し、余命幾ばくもない現在、国民の分裂と消滅は必然的だ。

新自由主義は1970年代にケインズ経済学を否定し、市場原理万能主義と金融資本主義を賛美した「ノーベル経済学賞」受賞者の経済学者ミルトン・フリードマンを開祖とする経済理論の一派。①小さな政府(「民でできることは民で」と称して民営化を強調、究極の狙いは政府の民営化=私物化)②裁量的財政支出(景気対策や社会保障のための政府の経済への支援)を否定し、金融政策を万能視する市場原理主義(市場に委ねればすべて上手くことが進む)③自己責任主義−を基本とする。1980年代にレーガン大統領(当時)が採用したのが始まりで、米ソ冷戦に勝利したことから、冷戦後のグローバリズムの基本理念となった。

新自由主義の開祖ミルトン・フリードマン

しかし、新自由主義路線の本質は結局のところ、弱肉強食主義であり、社会保障の切り捨て、貧富の格差の拡大など根本的な欠陥を露呈し、現下の新型コロナウイルス感染症の対策の前に全く無力であることが明らかになっている。コロナ禍は新自由主義に最後通帳を突きつけるものだった。コロナ禍の克服のためには、①財政による積極的な政策②社会保障政策の拡充③自己責任原則から共生社会(助け合う)の理念への転換−が不可欠だ。新自由主義は米国のリバータリアニズム(利己主義)から来ているが、共生主義は市場性資本主義の遺産を踏まえた真正社会主義(リベラリズムの本質)から来ている。

独善的との批判を受けていた立憲の枝野代表が新自由主義を批判し、それに代替する新しい理念を提示し始めたことは同党が本来の立ち位置に戻りつつあることを示すものとして期待はしたい。枝野代表が提唱した私案を以下に示す。立憲のサイトより転載したものです。

現段階では理念にとどまっているが、新自由主義を批判し、代案を保有する識者は少なくない。それらのアイデアを踏まえて、解散・総選挙前に外交・安全保障政策も踏まえた政策体系を提示するはずだ。政府=安倍政権の御用メディア、御用ジャーナリスト、御用学者は否定的な情報しか流さないが、枝野代表が新自由主義批判の旗幟(きし)を鮮明にしたことは評価できる。

枝の代表の私案はもちろん、安倍政権による今通常国会後の解散・総選挙を踏まえたものである。しかし、コロナ禍対策や第二次補正予算案の重大な欠陥(財政民主主義に反する予備費10兆円問題)、黒川弘務東京高検検事長の定年延長をめぐる一連の疑惑、一般社団法人サービスデザイン協議会関連企業への不当な業務委託契約など、今通常国会は延長してでも集中審議を行うべき事案が多い。

※追記(2020年6月5日17時32分)第二次補正予算案のうちの予備費10兆円のうち5兆円について5日午前、自民党の森山裕国会対策委員長と立憲民主党の安住淳国対委員長が会談し、その中身について森山国対委員長が、コロナ禍に対応するための①雇用調整助成金など雇用維持や生活支援に1兆円程度②持続化給付金や家賃支援給付金など事業継続に2兆円程度③地方向けの医療・介護の交付金など医療提供体制強化に2兆円程度④残りの5兆円も含め適時適切に国会に報告する−などと説明した。

これに対して安住国体委員長は「コロナウイルスの事案は非常に広範囲に予算の支出を伴うものであることを鑑みれば、やむを得ない部分もある。ここは妥協した」との考えから、両国対委員長の間で文書で合意した(朝日デジタル2020年6月5日 12時45分)とのことだ。しかし、これは最大与野党の国対委員長だけで決めたものであり、予算は国会で決定するという財政民主主義に反するものだ。

使途がほぼ決まっているのなら、第二次補正予算案を組み替えれば良いし、それほど時間もかからないはずだ。また、残りの5兆円も含めて、国会に使途を報告すると言っても、国会で監視できる担保もないことに変わりはなく、内閣の一存で財政支出を決定できることには代わりはない。安住国対委員長は野党の代表として交渉しているだけだから、いったん立憲を始め各野党に持ち帰って協議しなければならないはずだ。なお、10兆円の財源があれば、新たな特別定額給付金または消費税率の10%から5%への引き下げも可能であり、どちらでも第二次補正予算案の組み換えは簡単にできる。

枝野代表がいくら新自由主義路線との決別を宣言したとしても、財政民主主義違反の第二次補正予算案予備費10兆円の決着がこのままでは、立憲への期待も難しい。枝野代表、福山哲郎幹事長、安住国対委員長はこのことを肝に銘じるべきだ。下図は選挙ドットコムの5月の世論調査である。立憲は電話、ネットとも支持率が上昇しているが、新自由主義から完全に決別して共生主義に転換、政策体系を掘り下げなければ、国民の期待は一過性のものになる。

加えて、広島3区が地元の河井克行衆院議員(元法相)・河井案里参院議員の公職選挙法違反容疑(昨夏の参議院選前に首長や県議、市議らの大規模な買収工作を展開した容疑)での検察庁による逮捕が予想される現在、仮に予定通り6月16日に今通常国会を閉じても、安倍政権が解散・総選挙に打って出ることは不可能だ。総選挙を取り仕切る二階俊博幹事長や安倍首相と仲が悪くなっている菅義偉官房長官は、阿部首相の解散権を封じ込めている。

そうなると、最初の決戦は6月7日投開票の沖縄県議選、7月5日投開票の東京都知事選になる。特に、自民党の二階幹事長の軍門に下っている小池百合子東京都知事が再選を狙っている東京都知事選は重要だ。一般的な見方は、れいわ新選組の山本太郎代表も語るように「コロナ禍対策を選挙活動に利用している小池都知事の圧勝」である。しかし、支持を受ける安倍内閣、自民党の支持率が急落していることに加え、日本維新会系の長崎県の副知事が参戦したこと、堀江貴文氏も出馬を伺っていることで、いわゆる「保守層」が分裂する可能性が高いことも予想されている。

これに加えて、宇都宮氏の支持に立憲、日本共産党、社会民主党、社民党から独立した新社会党(国会での議席は有していない)が回ったことで、いわゆるリベラル陣営に勢いが出てくるだろう。れいわの山本太郎代表も支援する可能性がある。最大の問題は小池都政がひどいものであったことの認識が静かに浸透している。待機児童や介護離職、残業、都道電柱、満員電車、多摩格差、ペット殺処分などの七項目のゼロを公約したが、達成したのはペット処分だけ。満員電車の多少の改善はコロナ禍によるもので、小池都知事の力とはいえない。ましてや、二階建て電車による満員解消などはどこも考えていない。築地市場の移転問題でも揺れに揺れて、関係者に大きな損害を与えた。来夏に延長された東京オリンピックも都民の血税が大量に使われる見込みだ。

最大の問題は、小池都知事の原点である「カイロ大学首席卒業」に対する疑惑だ。このことを選挙公報に盛り込めば、当選を確保するための「虚偽事項公表罪」に問われる公算が非常に大きい。東京地検に対して告発状が出され、受理されれば東京地検特捜部との全面対決になる。

こうした今後の推移を検討すれば、宇都宮氏を支援しないと公言した玉木・国民民主は行き場が無くなる。国民には政府=安倍政権との対立を当然のこととしている小沢一郎氏、森ゆう子氏ら旧自由党系出身の議員ら反安倍政権の国会議員が存在しているから、分裂する可能性が高い。そうなれば、国民は自然に消滅、残留組は自民党に流れることになるだろう。そうした方が、双方にとって幸せだ。

国民には分裂していただいて今後、新自由主義対共生共栄主義の構図での選挙が行われることが期待される。国民にはもっとも分かりやすい構図で、投票率も上昇するだろう。

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