安倍政権6月17日国会終了で逃げ切りも、会期内に河井夫妻のXデーも(加筆)

阿部晋三政権は今月16日の通常国会閉幕をもって逃げ切り、都合の良い頃を見計らって解散・総選挙に打って出る意向だ。しかし、今国会会期中に稲田伸夫検事総長、林真琴東京高検検事長ら検察庁幹部が河井克行元法相・案里参院議員対して国会に逮捕許諾請求を行うとの見方もあり、会期末まで重大な局面を迎えている。

安倍首相は「日本型のクラスター対策が成功した」と自画自賛している。しかし、人口100万人当たりの死亡者数でみると、東アジア諸国は突出して少ないが、日本はその中でフィリピンについで死亡者数が多い。ワースト2なのだ。また、台湾など死亡者数がほとんどいない国も多数存在する。嘘とペテン、はぐらかしで国民を騙し続けてきた同首相のことだから、そのことの重要な問題点・深刻さにはまったく触れない。

「私(安倍首相)は、朕は国家であると言ったルイ16世ではない(実際はルイ14世。安倍首相の知的レベルを示す端的な例だ)」と弁解したが今日、憲法無視、法律無視、従来の法律解釈無視と「ステルス・独裁国家体制」を敷いたのはルイ14世ならぬ安倍首相である。コロナウイルス感染防止のため、国民に対して自宅待機を強制に近い形で要請してきたため、国民の目には国会中継を通して安倍政治の本質に気づく国民が多くなったた。

また、コロナ禍対策として本来は第一次補正予算案の中に第二次補正予算案を盛り込むべきだったが、それをしなかったために、国民に対する生活支援金や中小企業・個人業種向けの持続化給付金の支給も大幅に遅れている。その一方で、持続化給付金の給付業務委託会社として「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」という実質的なダミー団体を選定、同協議会を通して電通、パソナ、トランスコスモスなどお決まりの利権取得企業に国民の血税を与える。こうした構図は、今国会で成立したスーパーシティ法案と同様だ。

安倍政権としてはこうした悪徳行為が致命的な世論の支持率の低下を招くことを防ぐために、16日に予定されている通常国会の幕を閉じ、適切な次期を見計らって年内解散・総選挙を打ちたいところだろう。来年への持ち込みを余儀なくされれば、追い込まれ解散で惨敗は避けられない。

しかし、黒川弘務東京高検検事長の法律違反の定年延長と常習賭博による辞職が拍車をかけて、安倍内閣と検察庁との関係はかなりこじれている。このため、今国会会期中に検察庁幹部が河井克行元法相・案里参院議員対して公職選挙法違反(買収)容疑で国会に逮捕許諾請求を行うとの見方もそれなりに根強い。買収資金の原資は自民党本部であり、安倍首相による指示との見方もあるだけに、今国会内にXデーを迎えれば、内閣総辞職沙汰になる。直接的には、検察庁が国会運営委員会に許諾請求を行うことになるが、そのXデーが今月10日との見方も出ている。

だから、野党としては「黒川東京高検検事長問題」の集中審議と「予備費10兆円」という第二次補正予算案の重大な憲法違反問題(予算は国会で決めるという当然のことが守られていない。そのうち、予算案全額が予備費になってしまう恐れは濃厚だ)を厳しく追求し、通常国会を延長させることも必要だ。ただし、検察庁が戦前・戦後と従来からの「検察ファッショ」体制を改めない限り(もともと、検察庁に公正な立件・逮捕・起訴を要求するのは無理がある)、強行閉会になる。

その場合に重要になるのは6月7日投開票の沖縄県議選(定数48立候補者64人)と7月5日投開票の東京都知事選挙だ。沖縄県議選は圧倒的な県民の支持を得て成立した玉城デニー知事の与党が過半数議席を維持できるかどうかが焦点になる。玉城デニー知事は「辺野古に基地を作らせない」ことを訴えて知事選に圧勝した。

日本国憲法は地方自治の尊重をうたっている。玉木知事は沖縄県の辺野古に基地を作らせないことで県民の圧倒的な支持を得たが、それにもかかわらず、安倍内閣は辺野古のかけがえのない美しい海を破壊する基地建設を強行している。しかし、辺野古の海の地盤は軟弱であり、工事計画を変更しなければ基地を建設すること自体が不可能である。現実には普天間基地は閉鎖されず、辺野古の美しい海は破壊される。この地盤工事には10年はかかると言われている。辺野古の工事は普天間基地の早期の変換を「目的」としていた。政府=安倍政権、防衛省はこの事実を知っていたはずだ。これでは、普天間に基地を建設する意義がなくなる。ただし、そのことにはまともに説明しない。

しかも、辺野古基地建設関係者によると、滑走路は陸上部と海上部に分かれる。辺野古の海の地盤強化を適切に行わなければ、滑走路が折れ、航空機は離発着ができない状況になる。しかも、国は建設計画の変更を沖縄県に許可してもらう必要がある。地盤強化についての詳細な設計計画を検討し、そのそも辺野古の海に基地をけんせすることは不可能との判断を行えば、辺野古地帯での建設を差し止めることができる。

沖縄県の対応によって基地建設を断念させることは、いまなお可能なのだ。玉城知事の行政運営をサポートするために、沖縄県議会の構成において、玉城知事の与党を支援することが必要なのだ。コロナ禍の下での選挙であるが、期日前投票を活用して玉城県政を支えるために全県民が同知事を支えることだ。政府=安倍政権は、独自性の強い公明党・創価学会の票を切り崩そうとしている。これを跳ね除ける形での県民の投票が強く求められており、県議会の過半数を獲得しなければならない。

7月5日投開票の東京知事選挙は、元日弁連会長の宇都宮健児氏が最初に立候補した。小池百合子都知事も事実上立候補を予定しているが、6月2日夕刻熊本県の小野泰輔(おのたいすけ)氏が出馬を表明した。ツイッターのフォロワーを見てみると、ジャーナリストの櫻井氏、タレントの田村淳氏、デーブ・スペクター氏、元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏、作家の百田尚樹氏らの名前があった。有力候補と言われている堀江貴文氏もフォローしている。全体として、右派の支持を受けていることから、「都民ファースト」を棚に上げて「オリンピックファースト」の正体を明らかにした小池都知事の支持勢力を分断する可能性はある。

元日弁連会長の宇都宮氏は3度目の挑戦になり、知名度はある。同氏は「緊急の3課題」として、①PCR検査の拡充や自粛・休業要請に対する補償の徹底などの新型コロナウイルス対策②都立・公社病院の独立行政法人化の中止③都が検討するカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致反対――を公約とした。学校給食の完全無償化や羽田空港の新飛行ルート運用による都心の低空飛行の反対など「重視する8課題」も掲げた。

6月2日、立憲民主党は宇都宮氏の支持を表明した。日本共産党も同氏の出馬を歓迎している。Youtubeで勢力的に安倍政権の政策を批判しているれいわ新選組の山本太郎は都知事選への出馬の可能性を否定はしていないが、最終的には宇都宮氏の支持に回る公算がお大きい。国民民主党には内部に異論が出ているようだが、支援を表明し「野党統一候補」にしなければ、同党の地盤沈下はさらにひどくなるだろう。

7月5日東京都知事選挙では、小池現都知事圧勝との見方が強かった。しかし、新型コロナウイルス感染者が日本国内で初めて確認された1月以降、東京オリンピックの来夏への延長が決まるまではまともな対応がなされなかった。そして、都内の都立、市立病院の「独立行政法人化」に協力するなど、東京都の保健行政を始めとした社会保障行政を切り捨てる傾向が濃厚だった。

その結果として、東京都内において院内感染が多発したが、情報公開が極めて不徹底だった。そして、新型インフル特捜に基づく非常宣言が5月26日、最後に解除されたが、6月2日は新たに34人の感染が確認されたことから「東京アラート」の発動に追い込まれるなど、コロナ禍対策は完全に支離滅裂、行き詰まっている。

なお、小池都知事は、コロナ禍で世界的な規模で大規模な赤字が見込まれるカジノ業界の現状を理解できず、安倍政権、日本維新の会とともにカジノを含む統合型リゾート構想(IR)の実現に執着しているようだ。

宇都宮健児氏の政策メニューがはるかに妥当である。今国会中にXデーを迎えるなら別だが、検察庁がなお時の政権との癒着を続けることもあり得る。その場合は特に、国民は沖縄県の県議会選挙、東京都知事選で勝利し、安倍政権を打倒しなければならない。コロナ禍は、日本の経済社会を崩壊させてきた新自由主義を撲滅するために「天が与えた好機」と理解しなければならない。

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