広島県地元紙の中国新聞が6月24日、河井克行前法相容疑者が妻であり参院議員の河井案里容疑者を昨夏の参議院選で当選させるため、巨額の買収資金を地元県市町村議会の首長、議員ら多数に配っていた際、一部に「安倍(自民党総裁)さんからです」と証言したことを報道、25日に全国紙や通信社が後追い報道を行った。野党は事態を重く見て、国会で安倍晋三首相を徹底追求することにしている。また、世界的にコロナウイルス流行第二波が心配されてきた中、政府・東京都が「自粛」から「経済活動再開」に切り替えたことで、新型コロナウイルス感染者はこのところ増加傾向にあり、やはり、専門家は問題にしている。
河井克行容疑者からの買収資金が自民党の安倍総裁からのものであると語ったことを証言したのは、河井案里容疑者の後援会長を務めた広島県府中町の秀子町議(78)。中国新聞によると、「繁政町議は中国新聞の取材に、参院選公示前の昨年5月、(河井案里容疑者の事務所に行った際に)克行容疑者から白い封筒に入った現金30万円を渡されたと認めた。現金を受け取った理由について、自民党支部の女性部長に戴いており(河井克行容疑者の)『安倍さんの名前を聞き、断れなかった。すごく嫌だったが、(安倍総裁の名前を)聞いたから受け取った』と振り返った」という。
この証言については、朝日新聞などの全国紙などが後追い取材をしている。朝日デジタルが2020年6月25日11時44分に投稿した「河井前法相『安倍さんからです』と現金渡す 町議が証言」の記事で、報道各社の取材に対して、繁政町議は「広島市内の河井案里議員(46)の事務所に行った際、「安倍(晋三総裁)さんからです」と言われ、現金が入った封筒を手渡されたという。首相の名前を出されたため断りきれず、『現在も使わないまま持っている』と話した」という。河井克行・案里容疑者は買収資金の受け取りを固辞しそうな首帳や県市町村議員に対して、安倍総裁の名前を出していたと思われる。
事態を重く見た野党側は、河井克行・案里夫妻容疑者の買収疑惑事件に詳しい郷原コンプライアンス法律事務所の責任者で、豪腕検事として活躍した郷原信郎主任弁護士を招き、説明を受けた。同弁護士は、1億5000万円もの巨額の資金を提供した自民党本部の中枢(安倍総裁と推定される)は、公職選挙法第二百二十一条5項「第一号から第三号までに掲げる行為をさせる目的をもつて選挙運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾したとき」に定める「交付罪」にあたるとの説明を行った。
国会は既に閉じられたが、閉会中でも審議は出来ることになっており、野党側は安倍首相(自民党総裁)を国会に呼び、徹底的に追及する構えだ。朝日デジタルは2020年6月25日22時04分に投稿した「石破氏『原資、税金なら理解得られない』 河井夫妻事件」と題する記事で、「石破茂・元幹事長は25日の派閥会合で、克行容疑者から現金を受け取ったとする証言が次々と明らかになる現状に『事実だとすれば、こんなものは見たこともない』と批判した。『(買収の)原資が税金であり、党費であれば、党費払って党員増やしてちょうだいということには理解が得られない』とも語った。自民党中堅は『世の中的にはそれが原資だろうと結びつけて考えられてしまう』と述べ、疑念が深まったとの見方を示した」としている。
国民の血税である政党助成金が買収資金であったことはほぼ疑いがない。安倍自民党総裁が広島県の地方自治体の県市町村首長や議会議員に対する買収工作を指示したこともほぼ明らかだ。こうした状況下ではまず、解散・総選挙には踏み切れない。有権者の批判・非難もどんどん強まってくるし、総選挙のための軍資金が集まらないことが輪をかける。このため、検察の自民党本部の捜査や安倍総裁・二階俊博自民党総裁への任意での事情聴衆や8月24日に迎える佐藤栄作首相のもつ首相在任期間最長記録を更新する時点での「花道論」をきっかけに、9月に予定されている自民党執行部の人事改造で安倍総裁が退き、併せて内閣総辞職、解散・総選挙に踏み切るというシナリオも考えられる。
ただし、一時は落ち着きを見せたかに見える新型コロナウイルス感染状況だが、①米国・欧州など先進諸国で経済活動を優先させていること②南半球が冬入りを始めたこと−などから、感染者が再び増加している。朝日デジタルが2020年6月25日13時30分に投稿した「米国を再び襲うコロナ感染拡大 ディズニーは再開延期も」と題する投稿記事によると、「米紙ワシントン・ポストの集計では、全米で24日に確認された新規感染者は3万8千人を超え、これまで最大だった4月25日(約3万4200人)を抜いて過去最多となった。米国内では、『秋以降に感染第2波が広がることを懸念していたが、それが目の前で起きている』(米エコノミスト)との驚きが広がっている」という。
北朝鮮が軟化路線に転じたのも、①北京市など中国内陸部で感染者が相当増えていることから、中国との国境を閉鎖せざるを得ず、経済支援・食糧支援も断たれている②配給制も破綻し、金正恩に忠実な「人民」が大半の平壌市内まで配給制が崩れかけている−という現実のためと思われる。
朝日新聞社のまとめによると25日は日本では全国で82人の感染者が確認され、その大半は東京の48人。朝日デジタルが020年6月25日 21時40分に投稿した「小池氏『第2波ではない』 警戒の中、コロナとの共存へ」と題する記事によると、「小池百合子知事は25日、『急激に感染者が増加する第2波の状況ではないという見解を専門家からもらっている』と話した。(中略)東京都のこうした状況に、政府の専門家会議の脇田隆字座長(国立感染症研究所長)は『感染経路が追えない感染者はおり、市中感染に広がっていかないか非常に警戒している』とクギを刺す」としている。
東京都知事線の最中にあり、衆院解散・総選挙も近いと予想されているが、新型コロナウイルス感染確認者の動向、コロナ禍対策によっては、選挙情勢も変わり得る。