自民総裁選より合流新党の行方と理念・政策が重要ー山本代表率いるれいわの動向がカギ

自民党の新総裁選びについての報道がかまびすしいが、より重要なのは首班指名のために開かれる臨時国会以降、年内に行われる解散・総選挙への対策だ。このため、解党する立憲民主党と分党する国民民主党のうち、立民と合流を目指す合流新党の政策・理念が重要だ。また、政党要件を確保したと見られる玉木新党(民主党、民進党の後継政党)の動向、理念・政策も気になる。立憲・国民の合流新党、玉木新党の政策がまともでなければ、山本代表率いるれいわ新選組の別対応をする。両者はれいわと共闘できるまともな政策を打ち出さなければならない。

◎追記:月末8月31日の新型コロナ新規確認者は、朝日デジタル絵NHKWebでは2日連続200人を下回る100人、東京都基準の重症者は前日比2人減少の30人。しかし、3人が亡くなられたという。20人台〜30人台の若者を除く新規感染者は50人。一週間の移動平均では感染者数は198.4 人、陽性率は4.1%。東京都によると「ここ3週間ぐらい減少している。短縮営業や外出自粛などの効果が出ていると思う」(朝日デジタル)という。ただし、NHKのWebサイトによると「8月の1か月での感染確認は、月別で最も多かった先月の6466人を上回り8126人でした」という。国内では午後22時00分現在で429人が感染、 12人がなくなられたという。重症者は前日比2人増加の236人。PCR検査検査人数はここ3日間27日の検査人数しか発表されていない。

自民党の総裁選をめぐっては、総理・総裁になるつもりはないと「言明」した菅義偉内閣官房長官が総裁選出馬の意向を示したことで、今回の安倍首相辞任劇が安倍晋三首相(総裁)、麻生太郎副総理兼財務省、二階俊博自民党幹事長、首相側近の甘利明衆院議員(千葉県の建設会社「薩摩興業」が2013年に道路建設をめぐり甘利側に都市再生機構(UR)に対する口利きを依頼し、見返りに総額1200万円を現金や接待で甘利側に提供した疑惑で、内閣府特命大臣を辞任したが結局、2016年8月20日、告発可能な全ての事実について公訴時効成立)ら5人組が描いたシナリオであることが明らかになった。

なお、新5人組に加えて、経済産業省出身の今井尚也(たかや)補佐官(叔父の今井善衛は通商産業省=現在の経済産業省=で事務次官を務めた後、新日鉄社長に天下りし、経済団体連合会の会長を務め、一般社団法人日本原子力産業協会理事長などを務めた)が関与していた可能性が高い。要するに、「密室」による新総裁選出劇が書かれていたわけだ。今回の新総裁選挙では党員が相殺選出選挙に参加できない「緊急時」の特別措置選挙(衆参両院議員各1票と1県3票の地方票との合計)で選ばれるが、菅新総裁で決まるシナリオだ。

新総裁の「有力候補」とされる3候補(NHKのWebサイトより)
新総裁の「有力候補」とされる3候補(NHKのWebサイトより)

これについては、

を参考にされたい。シナリオ通りに進めば菅総裁・総理の誕生になり、安倍政治の継続になる。その下で解散・総選挙になるだろう。新型コロナウイルスの新規感染者が公表では「少なくなってきている」ことから、(追記31日18時:オリンピック来夏開催決定の時期が10月中であることとコロナウイルス感染拡大の襲来の恐れがあることから)10月25日にも総選挙を強行する可能性も出てきた。ただし、遺伝子工学や抗体検査、精密医療に詳しい児玉龍彦東大名誉教授(東京大学先端科学技術センター所属)らは、表面的に新規感染者が少なくなってきた時こそ、PCR検査、抗体検査を含めて地域の実情に応じた大規模検査が必要だとしている。

解散・総選挙は日本型に変異した新型コロナウイルスの新規感染人数の動向(厳密には陽性率や実効再生産数)に左右される。ただし、あくまでも「安倍首相辞任」の同情票を買える時までに中央突破を図るだろう。石破元幹事長が総理・総裁になるチャンスはなくなる。自民党党員100万人が参加する通常の総裁選を主張している石破氏は、石破派と同氏に近い衆参の国会議員を引き連れて自民党を離党、自民党支持層の票を二分すると脅しをかけるしか道はないが、それだけの信念・理念・政策・軍資金は持ち合わせていないと思われる。

◎追記(31日午後18時30分):朝日デジタルが2020年8月31日17時12分に公開した「新政権発足後に『解散総選挙やるべき』 維新・松井氏」と題する記事によると、日本維新の会代表の松井松井一郎大阪市長は、①自公新政権は新総裁選直後に解散・総選挙を実施すべきだ②総選挙に際しては期間限定の消費税の減税は公約の中心に据えるー旨、大阪市の記者団に言明した。



今回の「安倍首相辞任劇」は新5人組(ないし6人組)が描いたシナリオで解散・総選挙に持ち込み、中央突破を図るためのものだから、日本国憲法・日本の経済社会を破壊尽くした「安倍政治」を打倒するためには、野党側が合流新党も含め、「無党派層」と呼ばれる政治不信層・政治無関心を余儀なくされている層の信頼を回復することが必要だ。

そのためには、理念(共生主義)と共通政策(①大規模検査を柱と改正インフル特措法の再改定=新型コロナウイルス感染症を政令で指定感染症Ⅱ類にしてしまったことの見直しと十二分の休業補償をセットにすることなど=)②緊縮財政とリフレ金融量的緩和政策の破綻を明らかにし、それを踏まえて「異次元の積極財政へ転換し、金融市場に混乱を起こさないための金融政策という新たな財政・金融政策の転換③消費税廃止を含む不公平税制の抜本的敵改革)③原発再稼働を止め、原発ゼロ社会を実現すること)を打ち出すことーが必須の条件である。原発はコストが極めて高いうえに、危険度も非常に高く、もはや時代遅れというのが、世界の常識になっている。

そうすれば現在、東京都の下町を中心にゲリラ街頭演説を行っている山本太郎代表率いるれいわ新選組も野党共闘に加わる可能性も出てくる。山本代表は与党と野党の既得権益派の馴れ合い政治になる「新55年体制」の復活を許さないからだ。ところが、合流新党も玉木新党も、電力総連、自動車総連、電機連合など原発再稼働、消費税増税に大賛成の旧同名系の産別労組に支配されている日本労働組合総連合会(連合)の新たな圧力を防ぎきれないようだ。

朝日デジタルが2020年8月28日午前05時00分に配信した「合流新党と連合、共有理念 『改革中道路線』配慮/『原発ゼロ』明記せず 間口広げ参加促す 立憲・国民」の記事では、次のように報道している。
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立憲民主党と国民民主党は27日、合流新党の結成を前に連合とともに「共有する理念」をまとめた。国民が掲げる改革中道路線に配慮する文言を盛り込む一方、立憲が訴えてきた「原発ゼロ」は明記しなかった。新党の間口を広げ、合流を決めていない議員らの参加を促すねらいがある(中略)。

焦点となったのは、エネルギー政策だ。「理念」は立憲が主張してきた「原発ゼロ」には触れず、「二項対立的思考に陥ることなく、科学的な知見に依拠する」と記した。将来の脱原発の必要性は示しつつ、当面は原発を維持する方針をにじませたものだ。

また「中道の精神を重んじ」とも明記し、国民側が求めてきた「改革中道」という路線への配慮も示した。平野氏は記者会見で「新党の中で具体的な政策、考え方を共有しながら動かしていく」と評価した。「理念」をてこに、国民の議員の合流新党への参加を増やしたい考えだ(中略)。

連合の神津里季生会長は27日午後、立憲の枝野幸男代表と会談し、「『原発ゼロ』という表現に強く懸念する。発言の際も『原発ゼロ』を使わない配慮を求めたい」と訴えた。立憲が国会に提出している、原発再稼働を認めないことや法施行後5年以内の原発の廃炉などを柱とする「原発ゼロ基本法案」の見直しも求めた。
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ただし、「(立憲の)枝野(幸雄)氏は会談後の記者会見で、原発ゼロ基本法案の扱いについては明確な考えを示さず、神津氏の要求についても『懸念はしっかりと受け止めたい』などと述べるにとどめた」としており、合流新党綱領案に掲げている「原発ゼロ社会」の実現の最終的な取り扱いは、来月の9月15日にも予定されている合流新党の結成大会まで待たねばならない。

ただし、水面下では合流新党への国民国会議員への多数派工作とともに、原発ゼロ社会に反対する国民議員との闘い、立憲では不足している軍資金をまかなうための、政党助成金(その他に国民がパーティや寄付金で集めた資金がある)が大きな原資になっている国民(巨大野党だった民主党、民進党の正当な後継政党は国民)保有の40億円強の「軍資金」の争奪戦が活発になっている。

このほか、事実上は国民を吸収する立憲は、①枝野代表が新自由主義を批判したものの、消費税の増税には反対しないなど「緊縮財政」を維持しそうな構えであること②共生社会の実現や社会保障の充実は挙げているものの、そのためには不可欠の財源には触れていない③東京都議選では山本代表が求めている「最低でも消費税率の5%の引き下げ」でさえ、事実上拒否したーという前歴がある。これでは、れいわの支持・野党共闘入りは得られるはずがない。小選挙区制で野党候補が複数になる可能性がある。

れいわは50人程度は擁立する構えだ。古川元久国民代行代表が、5人の国会議員の署名を集めて、玉木代表に分党を求めてきたことから、玉木新党の形成される可能性が強い。

ここで、立憲と国民の政策の違いをまとめてみる(愛知7区選出の衆院議員であり、不倫問題=本人は否定=で離婚したが今なお野党のジャンヌ・ダルクとして存在感がある愛知7区選出のの山本志桜里=しおり=衆院議員が出演したYoutubeの動画https://www.youtube.com/watch?v=djC-lkLfUIM)からキャプチャしたもの。

政策は、原発ゼロでは立憲が先んじており、財政・金融政策では国民が国民の期待に応えている。なお、建前としては国民が政策・理念の一致を求めているのに対して、立憲は政策は二の次で「合流」が先だという考えだ。なお、国民の憲法改正論議については、東京大学法学部出身で憲法に詳しく検察庁に入庁、検察官の経験もある山尾しおり衆院議員の「憲法改正論」が基本的内容になるだろう。

山尾しおり衆院議院
山尾しおり衆院議院

憲法9条2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」は、日本が敗戦した第二次世界大差県終結後)に国際連合が結成され、国連軍が創設されたことを前提にしているが、当時のソ連が共産革命を輸出したため、連合国軍総司令部GHQの命令で「警察予備隊」が創設され、「自衛隊」に名称変更、着実に防衛力が強化され今や、米軍の指揮下で米日合同演習が繰り返されている。それとともに、ドイツなどとは全く性格の異なる「日米地位協定」で在日米軍基地が事実上の治外法権地帯になっている現状からすれば、現実離れしているのは確かだろう。

このため、自民党政府といえども、歴代の内閣法制局は「解釈改憲」を行い、「自衛権は自然権」として国際法条認められているとしたうえで、①急迫不正の状況に陥っている②外交手段などによるあらゆる紛争解決の努力は行ったものの、侵略を阻止することはできなかった③自然権としての自衛力(自衛のための軍事力)を行使する以外に侵略を防ぐことができないー場合に限り、自然権としての自衛措置を自衛隊によって軍事力を行使することができるとしてきた。

山尾松陰議員の考え方は、この考えを憲法九条に盛り込むというもので、「集団的自衛権」を認めない立場から提起されているものだ。

山尾しおり議員の「憲法改正私案」
山尾しおり議員の「憲法改正私案」

政界の重鎮であり、立民合流の立役者ともなっている小沢一郎衆衆院議員は、自衛隊を国連軍の指揮下のもとに置くことを提唱しており、サイト管理者(筆者)もその考え方を尊重したいが、「新米国対中露冷戦」が始まっている今日、まだ先のことかと思う。そこで、①安倍政権とその亜流政権が権力の座を占めている時は改憲論議には加わらない(狙いは、憲法9条の改悪と緊急事態条項の盛り込み、基本的人権の抑圧にあるため)②真正野党が政権を奪取した後、安倍政権が強行成立させた集団的自衛権を認める「安保法制」は廃止する③米国の軍産複合体が暗躍して日本政府に締結させた日米地位協定を抜本的に改革し、米国との「日米同盟」の条約的基盤になっている「日米安保条約」は廃棄して、「日米平和友好条約」を締結するーことを憲法改正の前提にする。

なお、数々の日米密約とその弊害も明らかにする。

そのうえで、真正野党勢力が政権を継続中に、①日本国憲法の民主化徹底(基本的人権の尊重・国民主権・平和主義を徹底化させること。憲法9条の問題の他にも、最高裁判所の長官とその他の裁判官は内閣が指名、任命するという三権分立制度の確立からは有り得ない内容が含まれている)を改正の目的にすることを国民に宣言したうえで、憲法審査会で徹底論議を行い、衆参両院の3分の2以上の多数を得られた場合のみ、憲法改正の国会発議を行う② 国民投票を行い、主権者たる国民に対して憲法改正の是非を問うーことも一案かと思う。

ただし、安倍亜流政権の下で進められる「敵基地攻撃論」には徹底的に反対し、これを総選挙の目玉公約のひとつにすることが必要だろう。なお、いつの日にか国際連合が本来の姿を取り戻すことを期待したい。

国民とれいわが懇談
国民とれいわが懇談

さて、話を元に戻すと年内の解散・総選挙において、新生野党として「野党共闘」を組むためには、①改正インフル特措法を改めて改革し、①補償財源の明確化を行い、都道府県の知事を通して基礎的自治体に権限と財源を委譲するが、責任は政府が持つ②新型コロナウイルス感染症を指定感染症Ⅱ類に政令指定したことを見直し、地域ごとの感染状況を把握し、エピセンター、周辺地帯、非エピセンターなど地域の特性に応じて大規模PCR検査や抗体検査を行う②コロナ感染者やその家族、企業に対して攻撃する「自警団」への罰則規定を盛り込むーなどを中心に、合法的なコロナ禍対策に抜本転換するーことがまず肝要だ。

なお、山尾しおり衆院議員のコロナ禍対策を含む最近の政治情勢については、こちらのYoutube動画サイト(https://www.youtube.com/watch?v=OhHkN1L_yEo)に詳しい。

そのうえで、①日本の経済社会を崩壊させてきた財政・金融政策を抜本的に転換する②消費税の廃止を含め、不公平税制を改める(所得税の累進化の強化と法人税への累進制度の導入)とともに、社会保険料制度も見直す③原発ゼロ社会実現に曖昧さを残さないーという共通公約を掲げるーことが肝要だ。玉木新党は原発ゼロ社会実現に曖昧さを残さないようにしなけばならない。さもなければ、自公政権の補完勢力になってしまう。

◎追記:31日19時:産経新聞社のサイトが2020年8月30日午後22時03分に公開した「次期支援策で家計支援策 枝野氏消費税減税など検討」と題する記事によると、立憲の枝野幸男代表は30日のBS朝日の番組で、コロナ禍に伴う家計支援策として「消費税を下げることや、一時的にゼロにする」ことも選択肢として検討すると語ったという。この記事が本当なら、一歩前進だが、合流新党でよく検討して消費税廃止を打ち出す必要がある。なお、朝日新聞社を始め大手マスコミは消費税減税について財政を悪化させるとして反対しているが、財務省支援勢力としての役割を遺憾なく発揮している。

なお、日本共産党は、スターリン主義、毛沢東主義、中国の赤い資本主義いずれも否定しているが、「共産主義」は捨てないという。サイト管理者は現在の共産党の提言は支持するが、共産主義というのはやはり、思想である。市場経済型社会主義にふさわしい「共産主義思想」を明確にすべきだ。そのうえで、かつて出版していたスターリン主義の入門書であった「共産主義読本」に代わる入門書を発刊すべきだ。それができなければ、共産主義なるものは捨て。党名は変更すべきである。国民が共産主義を信奉する日本共産党とは相容れないと主張する言い訳を、本気で覆す必要がある。



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