立憲主義・消費税・原発・コロナ禍対策が総選挙の焦点に

自民党の新総裁になることが確実な菅義偉内閣官房長官が5日の読売テレビの番組で消費税減税を否定する発言をしたことで、早ければ首班指名のために開く臨時国会で衆院解散を行い、10月25日に予定されている総選挙では、コロナ禍対策・立憲主義・消費税減税を含む抜本的税制改革・原発ゼロ社会実現が総選挙の最も重要な争点になる。

◎追記:6日の新型コロナウイルス新規感染者は、東京都では午後15辞時点で3日連続200人を下回り、116人だった。20代ないし30代の若者42人を除く感染者の割合は、63.8%。東京都基準の重症者は前日と変わらず27人。全国では午後19時の時点で448人が新規感染、少なくとも3人が亡くなられた。台風10号の影響で3県が発表を見送った。関連記事は後述。

菅官房長官は5日の政府系読売テレビ番組に出演し、野党側からはもちろん自民党の安藤裕衆院議員や西田昌司参院議員ら中堅・若手議員約100人の間でも根強い消費税減税ないし消費税廃止の要求に対して、「社会保障の基調な財源であり、継続性を考えたらいまのままでと思っている」と語り、消費税減税拒否で総選挙に臨む考えだ。

総選挙で消費税現在はしないと語った菅官房長官

総選挙で消費税現在はしないと語った菅官房長官

選挙対策もあり発言を信頼できないことも考慮する必要はある。しかし、菅氏がこの見解を翻さなければ、総選挙の主な争点は、①PCR検査の大規模拡大を中心とするコロナ禍対策の抜本改革②消費税減税・廃止を中心とした不公平税制の抜本改革③緊縮財政から積極財政への転換④原発ゼロ社会の実現ーが主要な争点になる。特に、消費税減税問題とこれに関連した緊縮財政から積極財政への転換が大きな争点になる。「新5人組」に騙された石破茂元幹事長は、自公政権が総選挙で敗北するまで臥薪嘗胆するか、自民党を離党するしか残された道はない。

また、現代貨幣理論(MMT)の立場から消費税減税を主張していた安藤裕衆院議員や西田昌司参院議員ら消費税減税が喫緊の課題としていた中堅・若手議員は自らの主張を止めるか、自民党を離党すべきだ。菅氏が新総裁に選出されれば、官邸を牛耳ってきた経済産業省を追い落とし、財務省が復活するだろうから、自らの信念を実現させることは絶対に不可能になるからだ。

消費税減税は菅氏の言うように、社会保障の財源に充てられてきたわけではない。一般財源だがあえて言うならば、①大企業と高所得者層優遇(法人税の減税・累進所得税制のほとんど破壊)に利益を与えるための財源②過去に発行した国債の元利返済(国税としての税収入のうちのだいたい5分の4)ーに主として使われてきた。財務相のサイト(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/011.htm)によると、法人税、所得税の税収を抜いて消費税の税収は平成27年度にトップに躍り出た。

税収の項目別推移

税収の項目別推移

財務省は令和2年度(見込み)までの図を示していないが、令和2年度はコロナ禍で所得税、法人税の現象が大幅に減少すると見込まれることから、消費税の税収割合は相当高くなるだろう。加えて、既に述べたが、菅氏が首相になった場合は、コロナ禍対策などで事実上の失政を繰り返してきた今井今井尚哉(たかや)首相補佐官ら経済産業省官僚出身の首相ブレーンや経済産業省の力そのものが一掃され、財務省が復権するため、緊縮財政が元のように強化される。恐らく、コロナ禍復興特別税制のようなものが創設されるだろう。

しかし、弱肉強食・共生主義否定で、「自己責任・政府無責任原則・利権主義」の新自由主義に基づいた消費税増税強行やプライマリーバランスの早期黒字化達成を目標にしてきた緊縮財政路線こそ、「失われた30年」と称される長期デフレ不況と中間層の没落、格差拡大による日本国民の大分裂をもたらし、ドルベースでの国内総生産(GDP)のゼロ成長を続けさせて、日本の経済社会を崩壊させてきた元凶である。

これに対して、野党側が消費税減税・廃止を中心とした不公平税制の抜本改革とそれに関連して、緊縮財政から積極財政への転換を明確に打ち出せるか否かが総選挙の最大の争点になる。野党側がこの基本政策で大同団結し、れいわ新選組を含む「野党共闘体制」を確立できれば、来る総選挙で政権を奪還できる可能性は出来てくるし、そうしなければならない。

なお、最近の新型コロナウイルス感染者の減少傾向や陽性率の低下は、反政府系のエコノミストの森永拓郎氏や非政府系の感染症専門家によると、猛暑によるものである可能性が高い。涼しくなる秋から冷たくなる冬にかけて、新型コロナ感染の第三波が襲ってくるとの見方を示している。これについては、下記のYoutube動画をご覧下さい。

東京大学先端科学・技術センターで遺伝子工学や抗体検査に詳しい児玉龍彦教授は、感染者数が減少している時こそ、感染震源地(エピセンター)地域、周辺地域、非エピセンター地域に応じて、技術革新が劇的に進んだPCR検査と抗体検査を大規模かつ徹底的に行わなければならないと提言されている。厚生労働省の指示でPCR検査に代わる検査法として用いられている抗原検査には、検査キットによってPCR検査と比べて精度が落ちるという欠陥があると見られている。

残暑が厳しい今こそ、地域に応じた大規模検査を行って、無症状感染者を見出し適切な処置を行わなければ、インフルエンザの流行とともに今冬は新型コロナ感染と経済の落ち込みが激しくなる可能性が高い。合流新党の代表になると思われる立憲民主党の枝野幸男代表が「消費税減税と中間層に対する所得税減税、低所得者層の免税などをハイブリットで打ち出す」などと呑気なことを言っていては駄目である。もはや、勤労者のうち40%が非正規労働者になり、企業が消費税のために正規労働者さえ非正規化している現在、中間層は没落しており、「中間層」という言葉を使用すること事態、日本経済の現状を正しく把握できていないことの証左だ。

なお、非正規労働者の給与は、納めるべき消費税から仕入れ税額控除でき、消費税代理納税額を減らすことができる。持続化給付金も、企業が仕入れに対して消費税を支払うことによって消費税額を落ち込まないようにすることが重要な目的であることも付け加えておきたい。

これに対して、本日6日曜日のNHK討論会で、泉健太国民民主党政調会長は「一つは消費減税だ。期間は1年とかではなく、コロナが収束するまでと。インフレ率2%に至るまで、こういった施策を続ける必要もあるのではないかというぐらいに思う」と述べている。財政・金融政策については、国民民主党の政策が優れている。枝野代表は、謙虚に受け止めるべきだ。泉政調会長の発言の背景には、「機能的財政論」(通貨発行自主権のある国では、財政支出の規模は問題にならず、積極財政によってインフレ率がどの程度上昇するかが問題であり、インフレ率を2%程度に抑えられるならば問題はないという主張)を提唱している現代貨幣経済論(MMT)が存在することは明らかだ。

ケネディ大統領とノーベル経済楽章受賞のトービン教授との対話

ケネディ大統領とノーベル経済楽章受賞のトービン教授との対話

ただし、日本ではMMTに対する正しい理解がなされていない(むしろ、正しい理解を妨げる流言飛語が意図的に流されている)現状があるため、取りあえずは伝統的な税制の抜本改革(所得税の累進化の強化、法人税への累進精度の導入、利子配当所得に対する分離課税を廃止し、総合課税に移行する)で対処すれば良い。それだけでも、かなりの税収が見込める。

日本の政治・経済情勢に極めて詳しい政経アナリストの植草一秀氏が著した「25%の人が政治を私物化する国」(詩想社)によると、①(高所得層優遇のために分離課税になっている)利子配当課税の税率を20%から5%引き上げれば2.5兆円の税収増になるため、分離課税の税率を40%に引き上げれば10兆円の税収増になる②利権まみれの政府支出50兆円を2割カットすれば、年間10兆円の資金を捻出することができる③さらに、法人税負担の適正化ーなどを実施すれば、消費税を廃止できると提言している(138頁〜139頁)。

ただし、2020年度はコロナ禍による所得税、法人税が激減することが予想されるうえ、株価が年度末の時点においても元の状況に戻ることは必ずしも担保されないことから、最終的にはMMTに頼らざるを得なくなるだろう。その場合に重要なことは、経済の供給能力を低下させないことである。コロナ禍が経済に与える悪影響の最も重要な点は、経済の供給能力を大幅に低下させる可能性があることである。特に、穀物など食糧分野が問題だ。

このため、経済の供給能力を落とさないよう、万全の手立てを打っておかなければならない。国内での第一次産業、製造業を守り抜くことは最重要の課題である。しかし、日本の経済は、中国の経済に大きく依存している。習近平政権が国益第一主義から、極めて危険な行動を展開し、米国も当初は予想しなかった「米中戦争」に突入していることは確かだ。

しかし、だからと言って、「敵基地攻撃能力確保」と言って、米国が開発中の精密中長距離弾道ミサイルを自衛隊ないし在日米軍に配置して中国を完全に敵に回せば、日本の経済は大打撃を被る。その場合は、MMTを適用できなくなる。日本は日本国憲法を遵守し、ノルウェーの社会学者、数学者であり平和主義者として活躍したヨハン・ガルトゥング(1930年生まれ)が1958年に提唱した正しい意味での「積極的平和主義」(構造的暴力や貧困のない平和な社会)に基づく「積極的平和主義外交」を徹底的に追求・実践して、難局を乗り越えて行かなければならない。

いずれにしても、合流新党が真正面から消費税減税ないし凍結を打ち出せば、山本太郎代表率いるれいわ新選組が「野党共闘」に乗ってくる。なお、玉木新党(国民民主党の名称を受け継ぐ模様)の財政・金融政策は立憲よりも優れているが、日本共産党と共闘するか否かが自公与党の補完勢力であるかどうかの「踏み絵」になる。日本維新の会も消費税率の5%への引き下げを主張しているから、玉木新党が日本共産党とも共闘することを明確にしなければ、同党は「野党共闘」の仲間入りをするべきではない。自公政権支持を明確にすべきだ。

なお、日本共産党は近い将来、同党が提唱する「市場経済型社会主義」を含む「先進国型共産主義」の全体像(哲学・歴史観・経済論)を明示すべきだ。それをしないから、いつまでも自公支持派から野党共闘側が「反共攻撃」にさらされ、「野党共闘」の重荷になる。