話を米国バイデン政権に戻すと、ディープステートは、欧州のロスチャイルド家(ナポレオン戦争でナポレオンが1806年に堕した大陸封鎖令の情報をいち早く握り、富の基盤を築いた)や米国のロックフェラー家(石油で富の基盤を確立した)なども加わって、「陰謀論」として伝えられる。それが真実なら、両家などによってマックス・ウェーバーの近代資本主義は、「人類の歴史とともに古い資本主義(今だけ、カネだけ、自分だけ)」に「堕落」したと考えられるが、それはともかく、ディープステートが米国を支配していることは確かだ。朝日新聞21日付2面(朝日デジタルhttps://digital.asahi.com/articles/DA3S14770947.html?iref=pc_ss_date_article)の「家族も分断、埋まらぬ溝」もひとつの参考になる。
議事堂襲撃事件の衝撃が冷めぬワシントンは、厳戒態勢が続く。2万人以上の州兵が動員され、通常の就任式と異なり、一般の人が見ることはできない。それでも、南部テキサス州ウェーコに暮らすメアリー・デューティーさん(70)は19日、ワシントンへ来た。「新しい米国を近くで感じたかった」と話す。(中略)
米国を一つにするのは「私たちの仕事でもある」と考える。「なぜ、議事堂が襲われたのか。隣人同士で考えないといけない」だが、そう語るデューティーさんも、家庭内の「分断」を抱える。大統領選を前に、共和党員で夫のロランドさん(75)の説得を試みたが、4年前に続いてトランプ氏に投票した。結婚して40年。トランプ氏の就任後、夫婦で政治の話をする機会がぐっと減った。自宅でもテレビは別々で、自身はリベラルなMSNBCを、夫は保守的なFOXニュースを好む。
「エスタブリッシュメント(既得権層)が決める政治」にうんざりというロランドさんは、「トランプはワシントンの常識の枠外にいる。腐敗した、つまらない議論のループの外側だ」と評価し、バイデン氏の呼びかける「団結」にも懐疑的だ。「分断してても、別にいいじゃないか」
ディープステートは時に、「(東部)エスタブリッシュメント」とも言われる。トランプ前大統領は20日の大統領就任式には参加せず、ヘリコプターで去ったが、政界に復帰する可能性は否定していない。2024年の大統領選挙を目指して活動すると伝えられている。全米での世論調査でも共和党候補者は第一位がトランプ氏の35%、副大統領を努めたペンス氏が19%、トランプ・ジュニアが11%だ。共和党員に限れば、71%がトランプ氏が共和党候補者になると予想し、民主党当院でも10%がそう思っている。NYダウ平均やナスダックの株価は上昇したし、何よりも7400万票を獲得したことの重みは否定できない。
なお、バイデン大統領は78歳と高齢であり、二期目はない。2024年の大統領選挙の民主党候補はカマラ・ハリス副大統領ということになるが、政策面での発信力が弱い。民主党の候補者選びは難航するだろう。
大統領選挙の結果を確定する米国議会襲撃事件が起こった。トランプ氏は自らの責任は示さなかったが、「政治を暴力で覆すことは民主主義に反する」旨の談話を発表している。トランプ氏は謎の暗殺で殺されたケネディ大統領(と同様)ディープステートには与しない。トランプ氏は大統領時代に日本に対して「F35A」や「F35B」105機を「爆買い」させた。ディープステートの顔を立てる意味もあっただろうが、基本的には「それなりの最新鋭の戦闘機」という経済学的には「消費財」を購入させて、貿易利益を得ることが目的だったと思われる。
余談だが、日本の戦闘機・航空機開発の主体は三菱重工業で、これまではライセンス生産(戦闘機の内部情報)を認めていたが、今後はノックダウン方式(部品の組み立て)だけにするようだ。これでは、日本の航空機産業は育たない。防衛省は2035年の第6世代戦闘機は三菱重工を生産の主役にしようとしているが、世界最大の軍事企業のロッキード・マーチン社が「手伝う」ということだから、無駄な望みだろう(参考:https://www.youtube.com/watch?v=Q8YfUIdYwfE&t=809s)
次に、外交政策に入る。朝日デジタルの上院発言骨子にも見て取れるように、ブリンケン国務長官候補とオースティン国防長官候補は明らかにタカ派だ。プリンケン国務長官(候補)はフランスで教育を受け、リベラル的な性格の強い国際派と報道されているが、イラク戦争、シリア戦争、リビアへの軍事攻撃を支持・指示した経歴を持ち、他国への軍事介入積極推進派の人物だ。オースティン国防長官(候補)は黒人であることが取り上げられるが、大量破壊兵器は存在しなかったのに起こしたイラク戦争の総責任者だ。中央軍総司令官として、シリア戦争や対テロ戦争の指揮を取ってきた。オバマ政権時代から、第6代型の無人戦闘機の開発に努めており、軍事介入には躊躇しない。
11月27日にイランの核兵器関連の科学者モフセン・ファクリザデ氏が首都テヘランの郊外で暗殺されたが、これはイスラエルの諜報機関であるモサドによるものとの見方が強い。イランの外務省は米国との融和関係を築きたい意向だが、これはイランの最高指導者ハメネイ師の決済を受けてのこと。イスラエルに報復をせず、隠忍自重しているのは、米国を通してイランに対する核攻撃を止めさせたい意向があると見られる。しかし、孫崎氏によるとプリンケン国務長官(候補)とオースティン国防長官(候補)は。イスラエルに対して(微妙な)シグナルを送るだろうと見ている。既に核兵器を保有しているイスラエルの立場を考慮し、米国とイランとの関係改善を積極的に進めるかどうか、ディープステートの意向に関わっている。
また、トランプ氏は大統領時代に北朝鮮の金正恩総書記との会談を試み、米朝関係との改善にそれなりに力を尽くした。しかし、ブリンケン国務長官候補とオースティン国防長官候補にはその意思がない。北朝鮮ではコロナ禍で最悪の状況に陥っている。公式的には新型コロナ感染者はゼロとのことだが、感染者は刑務所入りか銃殺されているとの噂も流れている。韓国・中国、それに日本が、国際保険機構(WHO)と連携して手を差し伸べなければならないところだが、日本は医療崩壊が進行中であり、また、韓国・北朝鮮との関係は最悪だ。ついでながら、拉致問題には全く手が回らない。菅首相は拉致問題について、「念仏」を繰り返すだけだ。
そして、最も重要な外交問題は中国との関係だ。米国は中長距離ミサイルの性能・保有数で中国に抜かれている。日本でイージス・アショア建設を打ち切りにすると同時に、「敵基地攻撃能力」の確保や洋上イージス艦の建設を言い始めた。安倍晋三首相(当時)は辞任記者意見で、敵基地攻撃能力の確保を求めたが、軍事ジャーナリストの半田滋氏によると、結局のところ菅首相は「敵基地攻撃能力」の確保は目指している。
ただし、日本の在日米軍基地(自衛隊基地含む)に、開発した中長距離ミサイルを設置して、例えば尖閣諸島などに軍事的な攻撃があった場合に、中長距離ミサイルを発射するとの覚悟を決めたとしても、在日米軍基地(自衛隊基地含む)が先に攻撃を受け、使用不能になることは確実だ。一応、バイデン大統領は尖閣諸島は日米安保条約の対象になるとは発言している。
しかし、第5条の「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、た自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するめに必要な措置を執つたときは、終止しなければならない」とある。
「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」とあるのが防衛の条件であって、自動的に「日本の領土」を防衛するわけではない。米国が軍事攻撃を行う際には議会の承認が必要であるし、1948年6月 11日にトルーマン大統領に勧告した「バーデンバーグ決議」というものがある。要するに、日本に対して言えば、日本の防衛努力義務と相互防衛義務を勧告したもので、日本国憲法に完全に違反する「集団安全保障体制」を構築することを求めた決議である。
日米安保条約を過信してはいけない。そもそも、ディープステートに属すると見られるポンペオ前国務長官が、ぶっちゃけて言えば対中政策の抜本転換、つまり、中国敵視政策を表明したが、ブリンケン国務長官候補とオースティン国防長官候補もこれを踏襲するだろう。米ソ冷戦は、ソ連が市場経済を否定し、古代化社会主義政策(国有企業とコルホーズの創設。日本で言えば、大化の改新による律令国家体制の構築。参考文献は林道義東京女子大学教授の「スターリニズムの歴史的根源」)を展開したから、経済的には極めてもろかった。米国が勝利したと言えば、当然である。
なお、バイデン大統領はインドインド太平洋調整間に、元国務次官補のカート・キャンベル氏を起用している。マイケル・グリーンらジャパン・ハンドラーズの統括責任者であり、民主党第一政権の鳩山由紀夫首相ー小沢一郎幹事長体制を崩壊に追いやった人物であることに注意が必要だ。
しかし、中国はニクソン・キッシンジャーの忍者外交で、経済特区を設けて外資を導入、資本と技術の移転を受けてれて「赤い資本主義」体制を築いた。購買力平価で見た国内総生産は既に世界第一位だし、実際の為替レート換算でも2020年台後半に米国に追いつき、追い抜くとの英国のシンクタンクの予想(https://www.bbc.com/japanese/55457085#:~:text=%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%80%81%E7%B1%B3,%E3%81%AE%E6%88%90%E9%95%B7%E3%81%8C%E8%A6%8B%E8%BE%BC%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82)が出ている。コロナ禍にあって世界各国とも2020年のGDPがマイナス成長になると見込まれている中、中国は2.3%のプラス成長を達成した。
【英国のシンクタンク・経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)の予測】
科学・技術の論文数も世界最多水準で、IT、AI、エネルギー政策の転換と内需振興に力を入れている。現在普及しつつある5G通信技術では世界で最も特許件数が多い。特に、エネルギー政策の転換を目指して、廉価モデル(補助金付きで150万円〜170万円)の電気自動車の開発・普及に力を入れている。
このため、アジア諸国はインドを除き、特に韓国、日本で対中輸出が対中輸出より多くなっている。日本は昨年2020年は中国が一応、コロナ禍の制圧に力を入れたため、対中輸出がさらに伸びている。RCEPを発足させ、TPPにも加盟の意向を示し、世界経済の主導権を握るつもりだろう。米国のディプステートがこれを許すはずはない。バイデン新政権は内政、外交とも多難な政権運営を余儀なくされるだろう。日本の対米隷属外交はすでに破綻している。中国の「赤い資本主義化」は鄧小平副主席の来日に始まる。資金と技術しか供与していないが、近代社会に確立されてきた基本的理念である基本的人権の尊重・国民主権・平和主義をも伝える言葉の真の意味での積極的平和主義外交政策に転換する必要がある。