さる2月13日午後11時7分、福島県沖でマグニチュード7.3、最大震度が6強の地震が起こった。この事故でフクシマ第一原発1号機、3号機で冷却水の水位が低下していることが19日、東京電力の発表で分かった。24日のサイト発表では「問題はない」としている。しかし、東電の発表では真相が隠されていることが多いことに加えて、最悪の場合は水素爆発の恐れもある。このため、専門家による調査と場合によっては厳重な対策・警戒体制を敷く必要がある。通常国会での追及・究明も必要だ。
複数のメディアによると本日2月26日金曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の2月19日金曜日の353人から83人減少して270人だった。減少幅はこのところ縮小している。東京都基準の重症患者数は25日より1人減って70人。ただし、30人の方が亡くなられた。サイト管理者(筆者)の試算によると、7日移動平均の新規感染者数は267.9人で、前週比は74.1%。この水準が続くとすれば、小池百合率いる子東京都知事が目指している140人まで減少するには2.16週間(約半月)かかる見通しだ。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は267.9人、PCR検査人数は5972.1人で、陽性率は東京都独自の計算方式(7日間移動平均での7日間移動平均での検査人数を、同じく7日間移動平均の新規観戦者数で除したもの)は3.7%。感染経路不明率は49.79%。感染経路不明率は依然としてステージ3/4の段階と言える。
全国では午後23時59分の時点で新規感染者数は1056人、死亡者数は80人、重症者数は前日比15人減の457人。累計の死亡者数は内船扱いの豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号を含めて7839人になった。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月25日時点の実効再生産数は全国が前日比0.03人減の0.85人、東京都も前日比0.04減の0.84人だった。実効再生産数は最近まで反転上昇していたが上昇が一服し、下落に転じている模様だ。
※緊急事態宣言が延長されていた10都府県のうち、首都圏1都3件を除く6府県は今月2月末で宣言が解除されることになった。首都圏1都3県は3月7日に解除の予定だが来週のコロナ感染状況を見極めたうえでの判断になる。なお、Go To トラベルの再開は宣言解除後も暫く見送りになる見通し。
※本投稿記事は政治経済評論家の植草一秀氏のメールマガジン第2680号「原発事故放置して五輪に走る背徳性」(2月25日発行)とデモクラシータイムスが2月24日に配信した「山田厚の週中生ニュース」を参考に、サイト管理者(筆者)が最新の情報を交えて記したものです。
東電が19日発表した内容は大手メディアが一斉に報道した。東京新聞がWebサイトで報道した内容を紹介させていただきたい(https://www.tokyo-np.co.jp/article/87052)。
東京電力は19日、事故収束作業を続けている福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の1、3号機で、原子炉格納容器内の水位が30センチ以上低下し、1日数センチのペースで続いていると発表した。13日夜に両町で観測された震度6弱の地震の影響で、10年前の事故で損傷した部分が広がり、原子炉建屋内に漏れ出る量が増えているとみられる。
炉内には事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)が残っており、冷却のため1時間3トンの注水を継続。注水量を増やすことを検討している。原子炉の温度や、周囲の放射線量に変化はない。東電によると、1号機で15日から、3号機で17日以降に、それぞれの格納容器内の温度計の一部で測定温度が低下。温度計が水につかっていないと判断し、水位低下と結論付けた。温度計の位置から、1号機で1.9メートルの水位が40~70センチ低下し、3号機も6.3メートルあった水位が約30センチ下がったとみられる。
今回の地震が2011年3月11日に発生した東北大震災の余震である可能性もある。原子炉建屋に格納されている原子炉には核燃料(デリブ)を束ねた核燃料棒があり、建屋に数1時間3トン規模の冷却水を注入している。冷却水は高濃度汚染水(作業員が高濃度放射線を浴びれば1時間で死亡する)となって建屋から排出されているため、取り敢えず、フクシマ第一原発近くの敷地に多数の貯蔵タンクを敷設して注入、多核種除去設備(ALPS)を使って放射性物質を取り除く「処理」と称する作業を行っている。ただし、取り除くことができる放射性物質はセシウムやストロンチウムなど限られており、トリチウムなどは除去できない。政府=安倍晋三政権や菅義偉政権、東電は「処理水」と呼んでいるが、トリチウムをはじめとした危険な(生物に有害な)放射性物質が含まれていることには変わりがない。つまり、「処理水」という名の「汚染水」でしかない。
政府=菅義偉政権は、貯蔵タンク建設の空き地がなくなってきたため、この「処理水」という名の「汚染水」を海洋投棄することにしているが、言語同断であり、福島県漁業協同組合連合会が猛反対しているのは当然だ。漁業という生業(なりわい)が成り立たなくなる。太平洋諸国にも被害が生じ、国際問題に発展する。
国際原子力機関=IAEA=のグロッシ事務局長が、政府=菅政権(もしくは自民党と他の党=公明党、日本維新の会、国民民主党=の連立政権、創価学会婦人部の圧力で公明党が連立与党から離脱せざるを得なくなる可能性もある)がトリチウムなどの汚染水の処理方法を最終決定した場合、地元漁民の説得に協力するそうだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210225/k10012884581000.html)が、海洋投棄決定では説得不可能だろう。
これに関連して、福島第一原発 除染の廃棄物処分 4000億円以上必要になるそうだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210226/k10012886191000.html)が政府の公式見解ではなく、しかも、最小費用に過ぎない。歴代の政府や東電の責任を問わないで、処理費用を国民の血税に押し付けるというのなら、日本国憲法が全文に定めた「国民主権」を無視した異常なことになる。ただし、自民党主導の連立政権では、日本国憲法の破壊が最大の狙いであるから、この政権が続けば、そういうことになる。
さて、第1号機、第3号機で水位が低下しているのは、今回の地震で冷却水を貯蔵タンクまで送る、原子炉格納機を含むシステムに何らかの損傷が生じた疑いがある。2号機は水位が変わっていないとされているため、原子炉を格納している建屋が破損している可能性が残る。さて、第1号機、第3号機で水位が低下し、核燃料棒が冷却水の水面上に突き出るようになれば、水素が大量に発生し、空気中の酸素と結合して水素爆発が起きる。
東電としては水素と酸素が結合して水素爆発が起こるのを防ぐため、窒素を注入しているが、窒素を注入すれば原子炉格納器内の圧力が高まるはずだが、どうもそうなっていないようである。政府系の読売新聞でさえ(https://news.infoseek.co.jp/article/20210223_yol_oyt1t50023/?l-id=RNBreakingNews)、➀東電の発表によると、1号機の圧力の時系列状態は、通常では約1.2キロ・パスカルに保たれている内圧が、21日午後6時頃から落ち始め、5時間半後に0.15〜0.2キロ・パスカルまで下がった(要するに、原子炉格納容器が破損して窒素が漏れている疑いが濃厚で、水素爆発の危険性が高まっているということだ)②(3号機については、その原子炉格納容器の内圧の低下は東電側から報告されていないが)昨年3月に設置した地震計2台が、雨水などで故障していたけれども、故障を知りながら交換していなかったため、今回の宮城県沖の震度データを取得できなかったーと伝えている。東電の杜撰(ずさん)な体質に変化はない。
東電はその後、24日に次のような報告を出している(https://www.tepco.co.jp/press/report/2021/1578076_8989.html)。
- 原子炉格納容器水位、温度等のパラメータを監視していたところ、2月18日に1号機の原子炉格納容器水位に低下が見られたことから、他のパラメータを確認したところ、1号機において2月15日以降、3号機において2月17日以降に原子炉格納容器温度計の一部に低下傾向が見られた。このため、2月18日に関連パラメータを評価していたところ、1、3号機ともに原子炉格納容器水位が低下傾向にあると判断。(ただし)原子炉圧力容器底部温度、格納容器ガス管理システムの放射能(希ガスモニタ含む)、敷地境界のモニタリングポスト及びダストモニタ、構内ダストモニタに有意な変動は認められていないことから、外部への影響はないと判断。地震後の点検において、原子炉注水設備のパラメータ及び目視点検では異常が確認されておらず、原子炉への注水は適切に行われていることを確認しており、原子炉格納容器水位低下の要因としては地震による原子炉格納容器損傷部の状況変化も考えられるが、今後もパラメータを注視して監視していく。原子炉建屋水位については現状では有意な変動は確認されていないが、パラメータの詳細評価及び監視を行っていく。
「原子炉建屋水位については現状では有意な変動は確認されていない」から問題はないということのようだが、➀3号機の原子炉各納期の内圧の低下の時系列的な状況②1,3号機の地震後の水位の時系列での変化状況ーについては、言及がない。水位については2月24日午前11時時点の状況が述べられているだけだが、専門用語を使っていることもあり、フクシマ第一原発近くの基礎自治体や住民、そして国民が状況を正確に理解するのは困難だ。
東電のこの発表は、さすがの原発再稼働・新設推進派の梶山弘志経済産業相が住民、国民に対して分かりやすいように説明するように「指導(実際は指示)」した(https://jp.reuters.com/article/fukushima-tepco-idJPKBN2AO06M)ためだと思われるが、分かりやすく安心できるものにはなっていない。上述のように専門用語を使って東電のサイトに分かりにくいページを載せただけだ。文字サイズも小さい。なお、上記のロイター通信の配信記事の一部を引用させていただきたい。
梶山弘志経済産業相は24日の閣議後会見で、福島第1原子力発電所1、3号機の原子炉格納容器内の水位低下などが起きていることについて、東京電力ホールディングスに対して、(安全性は確保できているとしても)近隣住民を含む国民に分かりやすく説明するよう求めた。(中略)
ただ、東電に対しては「なぜ水位低下が生じたのか、どういう対応をしているから心配がないのかを含めて、しっかりとリスクコミュニケーションして欲しい。お願いと言うより指導だ」と指摘した。また、福島第1原発の地震計の故障を放置していた問題にも言及し、「原子炉建屋への地震の影響を丁寧に把握することは重要であり、早急に復旧すべきだった。誠に遺憾」とした上で、「東電に対して不十分な対応の改善と地元への丁寧な説明や情報発信について、不断の見直しを行うようにあらためて指示した」と述べた。
東電は基礎自治体や住民に対して、分かりやすく正しい事実を説明する集会を持つべきだ。さて、複数のメディアの報道によると今月2月22日に、福島県沖で行われている漁業で水揚げされたクロソイ(北海道・三陸の鯛=たい=とも称される高級魚で刺し身にして食べる)から、政府や福島県漁業協同組合連合会(魚連)の食品基準を大幅に上回る1キロ500ベクレルの濃度の放射性物質が検出された。政府が定めた基準の5倍、福島県魚連の自主基準の10倍だ。このため、福島県魚連はクロソイの漁獲や出荷を自主的に取り止めた(例えば、https://digital.asahi.com/articles/ASP2Q6R8HP2QUGTB00S.html)。
福島県漁業協同組合連合会は22日、新地町沖での試験操業で同日漁獲されたクロソイ1検体から、国の基準(1キロ当たり100ベクレル)を超える500ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。県漁連は同日付でクロソイの出荷を停止し、漁獲自粛措置をとった。県漁連によると、基準超えの検体が見つかったのは、2019年1月に広野町沖で漁獲されたエイの一種、コモンカスベ(161ベクレル)以来2年ぶり。(以下、略)
安倍晋三首相(当時)は2013年9月7日、アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた、2020年のオリンピックを開催する都市を決めるために行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、「The situation in Fukushima is under control」と発言して、誘致を決めるひとつの条件として使った。これに加えて、当時、東京五輪招致委員会の竹田恒和理事長(当時)が森喜朗氏(前東京オリンピック/パラリンピック組織委会長)と組んで、森氏が理事長になっている「嘉納治五郎財団」を使ってマネーロンダリングを行い、アフリカIOC理事の買収を行ったことが大きい(フランスで捜査中)。
原子力発電所は原子炉容器の冷却のために海岸近辺に建設されるが、本来は原発のための港湾と外海との間に遮蔽壁を築く必要がある。しかし、原発事故は起こらないという盲信から、事故が起きた際には何の役にも立たない網を張ることでお茶を濁している。実際のところは、その可能性を認識していると思われるが、莫大なコストがかかるため原発事故対策はおざなりにしている。というよりも、いくら莫大なコストをかけても大自然が引き起こす地震や津波には全く無力であり、原発事故は必ず起きる。そもそも、現代の原子物理学の水準では、高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉になったことに象徴されるように、核燃料サイクル処理システムの構築は不可能であり、放射性核廃棄物の最終処理・処分もまったく出来ない。これが、「原発ゼロ社会」を求める最大の根拠だ。
日本を除く世界各国は既に原発を見捨てており、再生可能な自然エネルギーを使った分散型社会システムに移行するのが本命になっている。安倍政権時代の原発プラント輸出振興策は見事なまでに破綻した。2025年以降には世界各国でハイブリッド自動車も走行が禁止され、電気とモーターで走行する電気自動車の時代に本格突入していることやIT産業も苦境に立たされていることと併せて、日本は自公連立政権の時代に産業構造の転換に遅れ、東アジア諸国の後進国になりつつある。
なお、2011年3月11日に発令された原子力緊急事態宣言は未だに解除されていない。国際放射線防護委員会=ICRP=が定めた人の年間放射線被曝量の上限は1ミリシーベルトだが、これが20ミリシーベルトに引き上げられている。フクシマ第一原発近辺の住民は危険な中での生活を余儀なくされ、他の地域に転居することもできない。経済支援を含む各種の支援策が打ち切られたことも大きい。こうした状況では人道的にも「復興五輪」などは有り得ない。
新型コロナの影響で、昨夏開催予定だった東京オリンピック/パラリンピックは今夏に延期されたが、今夏の開催もオリンピック憲章(フェアプレイの精神、アスリートの倫理観の重要視、多様性の尊重、政治からの独立性など)違反はもとより商業主義・利権主義にまみれていることに加え、開催に向けてのスケジュールが遅れに遅れており、コロナ対策も不明なことなど実務的な観点からしても、開催は事実上不可能な情勢だ。「天罰」と言うほかない。オリ/パラ開催は「復興五輪」の「大義名分」がいつしか、「人類がコロナに打ち勝った証としての五輪」と唱えられるようになったが、それさえ不可能になった。
自民党からは離党したが実質的に自民党清和会系の無所属議員橋本聖子オリ/パラ組織委会長(政治的に非中立でオリンピック憲章に違反する)は、聖火リレー開始予定の3月25日までに競技観戦者数について発表するとしているが、新型コロナ感染状況を見極めるためで、実務的なスケジュールはどんどん立てにくくなっていくだろう。
このほど行われた先進国首脳会議(G7)では、「コロナに打ち勝つための人類の結束の証」に格下げされ、しかも、「開催したい」という日本の「努力(実質は希望ないし夢)」を支持するという形で共同宣言が出された。コロナ禍対策が「後手後手、小出し、支離滅裂」(植草一秀氏)を繰り返してきているのも、もとを正せば東京オリンピック/パラリンピック開催を戦中の「国体護持」のように扱ってきたからだ。オリ/パラ強行開催は誤ったコロナ禍対策は連動している。フクシマ第一原発の今回の地震による被害・問題点は詳細に検討され、国民の前に公開されなければならない。今通常国会での重要テーマのひとつにするべきだ。それにしても、悪事は処罰される時が必ず来る。