全国的な新規コロナ感染下げ止まりの中でGo To トラベル段階的再開は危険

厚生労働省の専門家会議(アドバイザリーボード)は昨日24日会合を開き、「全国的に新規感染者数に下げ止まる可能性がある」と指摘したが、政府=菅義偉政権は3月7日までの10都府県の緊急事態宣言解除後、Go To トラベルを段階的ながら早々と再開する意向だ。➀春は新年度入り前後と大型連休で人の移動が増える時期であること②英国での変異株を中心に南アフリカやブラジルで変異した変異株の市中感染が徐々に増えてきている③夏場にかけて感染拡大する季節要因があるーことを考えると、第3波が十分に終わり切らないうちに春から夏にかけて。予想より早い段階で第4波が訪れる可能性がある。

2月25日コロナ感染状況

複数のメディアによると本日225日木曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の2月18日木曜日の445人から105人減少して340人だった。減少幅が24日よりも少なかったため、5日ぶりに300人台に乗せた。東京都基準の重症患者数は前日比2人増の71人だった。ただし、亡くなられた方は23人にのぼった。7日間移動平均の新規感染者数は279.7人で、前週比は78・8%だった。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は279.7人、PCR検査人数は5972.1人だから、瞬間陽性率は4.68%。東京都独自の計算方式では3.7%。感染経路不明率は49.70%。感染経路不明率は依然としてステージ3/4の段階と言える。
全国では午後23時59分の時点で新規感染者数は1071人、死亡者数は74人、重症者数は前日比15人減の472人。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月24日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人減の0.88人、東京都も前日比0.02減の0.88人だった。実効再生産数は最近まで反転上昇していたが、上昇が一服している模様だ。

厚労省サイトのアドバイザリボードのページはこちら(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00216.html)だが、参考までにNHKのWebサイトから引用させていただきたい。

厚生労働省アドバイザリーボード2月24日資料

厚生労働省アドバイザリーボード2月24日資料

なお、大雑把に言えば、E484系統の変異は英国で起こったもので、これがさらに南アフリカでの変異株、ブラジルでの変異株に近いE484Kへと変異している(https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-britain-mutation-idJPKBN2A220B)。また、N501系列は南アフリカで変異した変異株(https://www.jiji.com/jc/article?k=20210107041021a&g=afp)。これらの変異株は感染力が強いうえ、毒性(感染者の症状を悪化させる)が強いとされており、新型ワクチンの有効性に疑問がつく変異株だ。

厚労省のアドバイザリーボードでは、再拡大(リバウンド)を防ぐための必要な対策としては、次の項目を挙げている。

  1. 新規感染者の減少傾向を継続させ、リバウンドを防止し、重症者数、死亡者数を確実に減少させる。さらに今後、ワクチン接種に対応する医療機関の負荷を減少させ、地域の変異株探知を的確に行えるようにするためにも、対策の徹底が必要。
  2. 感染者数の下げ止まりや医療提供体制等への負荷の継続、変異株のリスクもあり、そうした中で緊急事態宣言の解除がリバウンドを誘発することへの懸念に留意が必要である。緊急事態宣言が解除されたとしても、ステージⅡ水準以下を目指し、地域の感染状況等に応じ、飲食の場面など引き続き感染を減少させる取組を行っていくことが必要。昨年夏の感染減少の後、一定の感染が継続し再拡大に繋がったことを踏まえ、感染源を探知し減少を継続させる取組が必要。このため、感染リスクに応じた積極的検査や積極的疫学調査を再度強化できる体制が求められる。また、今般の取組の評価も踏まえ、次の波に備えた対応を行うことが重要。
  3. 再拡大防止には、恒例行事など節目での人々の行動が鍵である。今後、大人数の会食を避けるなどの観点から、年度末及び年度初めに向けては、歓送迎会、謝恩会、卒業旅行、お花見に伴う宴会等は避けていただくことに協力が得られるよう、効果的なメッセージの発信が必要。
  4. 「高齢者を守る」ために、クラスターの発生が継続している福祉施設等における感染拡大を阻止する取組が必要である。計画に基づく施設等の職員への検査の着実な実施や専門家派遣等による感染症対策の支援等が求められる。
  5. ワクチン接種が医療従事者から開始された。接種を踏まえた感染状況への影響を継続的に評価・分析していくことが必要。

 

特に、変異株に対する警戒感(危機意識)を強めている。

  • 検疫体制の強化の継続とともに、今後、変異株の影響がより大きくなってくることを踏まえた対応が必要。このため、国内の変異株のサーベイランス体制の早急な強化(民間検査機関や大学等とも連携。国は自治体の検査数等を定期的に把握)により、変異株感染者の早期検知、積極的疫学調査による感染源の特定や速やかな拡大防止策の実施や広域事例への支援等が求められる。併せて感染性や病原性の特徴等疫学情報についての評価・分析が必要。 N501Y変異を有さないE484K変異を有する変異株についても実態把握の継続が必要。個人の基本的な感染予防策は、従来と同様に、接触機会の削減(3密、特にリスクの高い5つの場面の回避等)、マスクの着用、手洗いなどが推奨される。併せて、症状のある場合は適切な検査・受診が必要。また、こうした取組の全体像を示していくことが必要。

厚労省のアドバイザリーボードは「感染源を探知し減少を継続させる取組が必要。このため、感染リスクに応じた積極的検査」と表現しているが、感染源(エピセンター)を突き止めて社会的検査(希望者全員に対する検査)の意味だろうが、「積極的疫学調査」を中心とすることは辞めていないため、世界各国では標準になっている「誰でも、いつでも、どこでも、何回でも」安心してPCR検査を受けられる体制の確立ーコロナ禍対策の抜本転換ーを低減するまでには至っていない。

また、変異株を検出するために、厚労省医療技官と国立感染研を頂点とした保健所を中心とする検査体制を打破し、大学や民間調査機関との連携(厚労省と文部科学省の縦割り行政を撤廃すること)を主張しているが、これは東大先端研の児玉龍彦東大名誉教授らが指摘してきたことであり、本サイトでも紹介させて頂いた。リバウンド対策と変異株対策を考慮すれば、従来のコロナ禍対策の抜本転換が必要と示唆しているようにも思えるが、そこまでは明言していない。

さて、NHKのWebサイト(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210224/k10012883831000.html)の「厚労省 専門家会合『感染者の減少スピード鈍化 下げ止まりも』」の投稿記事から。

新型コロナウイルス対策について助言を行う厚生労働省の専門家会合が開かれ、現在の感染状況について2月中旬以降、感染者の減少のスピードが鈍化していて、下げ止まる可能性があると分析しました。(中略)

報告されたデータを見ると、新規感染者数は23日までの1週間の平均(注:当日を含む7日移動平均での新規感染者数)を前の週(前週と同じ曜日)と比べると、全国では0.85倍に、前倒しでの緊急事態宣言解除を要請している大阪府は0.82倍、兵庫県は0.72倍、京都府は0.65倍、愛知県は0.70倍、福岡県は0.76倍となっています。また、岐阜県は0.53倍と、緊急事態宣言が出されている地域で減少幅が最も大きくなっています。一方で首都圏では、東京都で0.86倍、神奈川県で0.88倍、埼玉県で0.92倍と減少していますが、千葉県では1.03倍と増加に転じています。

また、感染者の集団=クラスターの発生は、医療機関や福祉施設、家庭内などが中心だが、地域によって飲食店でも引き続き発生し、各地で若年層の感染者の下げ止まりの傾向も見られるとしています。

こうしたことから、専門家会合は感染状況について「新規感染者の数は減少が継続しているが、今月中旬以降、減少スピードが鈍化していて下げ止まる可能性もある」と分析し、注意が必要だとしています。(中略)

感染源を見つけ出すための積極的な検査や疫学調査の強化が求められるとしています。このほか、専門家会合は感染力が高いとされる変異ウイルスや、抗体の攻撃から逃れやすくなっていると考えられる変異ウイルスについて、国内での感染によるとみられるケースが継続して起きているとして、民間の検査機関や大学などとも連携して検査体制を早急に強化して拡大を防ぐことが必要だと指摘しています。

NHKのサイトでは、従来のコロナ禍対策の抜本転換の必要性を示唆しているとまでは報道していないようだ。それはともかく、季節要因(季節の移り変わり要因)から日本を含む全世界で新規感染者の減少傾向が出ているが、厚労省の専門家会議では季節要因には触れずに、日本に限っては減少傾向に下げ止まりの傾向が出ているとしている。NHKの報道が引用しているように、7日移動平均での新規感染者数を前週の同じ曜日と比較することによって、新規感染者数の減少の下げ止まり傾向が分かる。ただし、政府のコロナウイルス感染症対策分科会のステージ指標では、7日移動平均での新規感染者数の前週の同じ曜日に対する比率の許容水準を明確に示していない。

政府コロナ対策分科会のステージ

政府コロナ対策分科会のステージ

東京都では緊急事態宣言解除のためなどの要件として、前週比率を70%程度で抑えることを目標にしているが、その達成は厳しい。朝日デジタルのサイト(https://digital.asahi.com/articles/ASP2P6CVWP2PUTIL012.html?iref=comtop_7_01)を再掲させていただき、その後の前週比率を付け足しておきたい。

(東京都は)2度目の緊急事態宣言が3月7日まで延長される中、都は新規感染者数(1週間平均)を前週比7割に抑える目標を掲げる(中略)。

19日の定例会見で、小池百合子知事は危機感を示した。都内では前日の18日、445人の感染が確認され、前週の同じ曜日(11日、434人)を約1カ月ぶりに上回った。小池知事は緊急事態宣言を3月7日まで延長した際、前週比が7割以下になれば3月初旬には1日あたりの新規感染者が140人以下まで減らせるとの見通しを示していた。

ところが、先週からその減少幅が鈍化し始めた。週平均の感染者数が355・1人だった18日時点の前週比は76・3%、翌19日が84・7%、20日は91・6%と9割超に。21日は89・9%に下がったが、それでも都が目標とする7割を大きく超える。

その後の前週比率を掲げてみると、22日は86.9%、23日は86.1%、24日は83.3%、25日は78.8%で傾向的に下がっているが、この水準(25日の水準)が続けば、7日移動平均で東京都が目標にしている140人に達するのは4.072.91週間後ということになる(スマートフォンの関数電卓で、(7日移動平均での新規感染者数×(前週比)^x=140)の両辺の対数を取って計算すればxが分かる。

上記引用のNHKの投稿記事では前週比86%は23日時点の数値だが、7日移動平均での1日あたり新規感染者数(24日は294.7人、25日は279.7人でステージ3以下)とその前週比が大きく低下しない限り、3月7日までに7日移動平均の新規感染者数が東京都目標の140人以下になる可能性はそれほど高くはないと見られる。ただし、7日移動平均での1日の新規感染者数がステージ3以下の水準(300人以下の水準)が続けば、3月7日には緊急事態宣言が解除される可能性はある。問題は感染経路不明率をどう扱うかにかかっている。

それに、理論疫学専門の西浦博京大教授のシミュレーションによれば、いくつかの仮定を置いているものの、7日移動平均の新規感染者数を100人以下に引き下げたとしても、時間の経過とともに新規感染者数は再拡大(リバウンド)していくとの予想だ。

西浦博教だた教授のコロナ感染者のシミュレーション

西浦博教だた教授のコロナ感染者のシミュレーション

これに加えて年度変わりの4月前後と5月のゴールデンウイークは全国的に人の移動が活発化する。また、専門家会議が指摘しているように、新型コロナの変異株の市中感染が国内で徐々に広まりつつあることも注視しなければならない。朝日デジタルによると(https://digital.asahi.com/articles/ASP2S7WG2P2SUTIL02R.html?iref=comtop_BreakingNews_list)、24日時点の変異株への国内感染(空港での検疫、市中感染状況)は次のようになっている。なお、厚労省では次のページでhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16630.htmlで変異株の国内での発生状況を伝えているが、新規感染者の1割程度しか遺伝子解析ができていないようだ。だから、以下の報道記事よりも市中感染が広がっている可能性がある。

厚生労働省は24日、英国で報告された変異ウイルスが、兵庫県9人と福島県1人の計10人から確認されたと発表した。いずれも海外渡航歴はなかった。変異株の感染は、国内と空港検疫で計188人となった。

さらに、首都圏でも神奈川県、東京都ではなお医療体制が逼迫していることから、PCR検査対象者を基礎疾患のある住民や高齢者の住民に限定したことから、変異株を含めた無症状感染者(ステルス・スプレッダー)を発見できていない可能性が高い。加えて、全国の感染震源地になっている東京都では、感染経路不明率はいまだにステージ3/4の50%前後の水準にとどまっている。新型ワクチンの接種も首都圏では高齢者を対象に4月12日から開始するとしているが、仮に安全性・有効性・持続性が確認されたとしても、供給のスケジュールが明らかでない。実際のところは、変異株に対しては作り直しが必要とされており、正確な情報が錯綜している。

こうしたことから、今回の飲食店をやり玉にあげた限定的な緊急事態宣言の解除が発令されたとしても、感染の再拡大(リバウンド)は必ず起きてきてしまう。こうした中で、Go To トラベルをまた再開するというのであるから、リバウンドを大きく助長することは確実だ。本来は、野党側が体を張ってでも、2020年度第三次補正予算に組み込まれたGo To トラベル予算をコロナ対策費に充当するべきだった。

このリバウンドと新型ワクチン接種が、取りあえずは強行開催を狙っている東京オリンピック/パラリンピック大会の準備・実施と重なれば、対処の責任主体である基礎自治体はパンクし、国民も非常に混乱してしまう。なお、G7でのオリ/パラへの言及は、「日本が安全かつ安心な東京オリンピック/パラリンピックを開催しようと努力していることは評価する」というものであって、オリ/パラ開催で合意したというものではない。また、菅首相の「新型コロナウイルスに打ち勝った証としてのオリ/パラの開催」という通常国会での所信表明が、「新型コロナに打ち勝つ世界の結束の証」というように変更されている。菅首相も「コロナに打ち勝った証」としてオリ/パラを開催するというのは諦めたわけだ。

G7共同声明の東京オリンピック/パラリンピック関連内容

G7共同声明の東京オリンピック/パラリンピック関連内容

ただし、当初の実務的なスケジュールは遅れに遅れており、どうスケジュールを組み立てるのも定かでない。橋本聖子新会長は組織委の女性理事を増やすとか透明性を確保するといった発言をしているが、実務的なスケジュールを公表するのが最大の仕事のはずだ。上記のことを考えれば、オリンピック憲章の「平等・フェアプレー」の精神に反する今回の商業主義一本槍の東京オリンピック/パラリンピックは一刻も早く中止宣言を行ったほうが良い。本サイトで繰り返し指摘してきたように、東京オリンピック/パラリンピック開催を戦中の「国体護持」のように扱ってきたから、日本のコロナ対策は「後手後手、小出し、右往左往」(政治経済評論家・植草一秀氏)を繰り返してきた。

政府よりの「感染症対策専門家」でさえ、新型コロナ新規感染者減少の下げ止まりを指摘している状況だ。再拡大(リバウンド)を避ける対策が必要と言っても、これまでの「積極的疫学調査」を中心としたコロナ禍対策の枠組みでは不可能だ。中国や台湾、韓国、ニュージーランド、オーストラリアが行ってきたように、十分な補償を大前提として抜本的な検査の拡充を中心としたコロナ禍対策に抜本転換することが急務だ。


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