「緊急事態宣言」再々延長も解除条件は不明ー難問山積のオリ/パラ強行開催が条件になる公算大(オリ/パラ追記)
CREATOR: gd-jpeg v1.0 (using IJG JPEG v62), quality = 100

本日3月7日に解除されるはずだった「緊急事態宣言」再延長は再び2週間後に延長されることになった。問題は「緊急事態宣言」解除の条件が明確でないことだ。菅義偉首相は東京オリンピック/パラリンピックの中止は政治的生命を断たれることになるので、遅くとも聖火リレーの始まる今月3月25日までには「解除」することになる公算が大きい。

3月7日コロナ感染状況
複数のメディアによると本日3月7日日曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の2月28日土曜日の329人から92人減少して237人だった。東京都基準の重症者数は前日比1人増加して52人になった。7日間移動平均での新規感染者数は前週日曜日比で91.6%になった。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は254.1人、前週日曜日比率は91.6%。PCR検・抗原査人数は6105.6人。陽性率は東京都独自の計算方式(7日間移動平均での7日間移動平均での新規感染者を、同じく7日間移動平均の検査人数で除したもの)は3.3%。感染経路不明率は49.74%。ステージ3/4の50%から脱していない。「濃厚接触者」を追跡調査する「積極的疫学調査」は限界に来ている。全国では午後20時59分の時点で新規感染者数は1065人、死亡者数は25人、重症者数は前日比2人減の373人。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、3月6日時点の実効再生産数は全国が前日比0.02人減の1.00人、東京都も前日比0.03人減の0.99人だった。このところ反転減少の兆しが見えるが、なお1.00人程度だ。

マスコミ各社の報道によると、緊急事態宣言後の新規感染者数の減少、医療体制の再建に向けての新たな対策はあまり変わりはない。例えば、朝日新聞が3月6日付で掲載している政府=菅政権が東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県に求める要請は次のようなものでしかない。これに対する1都3県の腰も定まらない(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14823363.html?iref=pc_ss_date_article)。

  1. 一体感のあるメッセージの発信、年度切り替わりの恒例行事を控える注意喚起の徹底。
  2. 高感染リスク集団の軽症者・無症状者の検査。
  3. 「隠れた感染源」の調査(注:感染震源地と見られる地域でのモニタリングPCR検査)。
  4. 変異ウイルスのPCR検査を迅速化(注:PCR検査で発見された新型コロナウイルスの遺伝子解析を迅速に行うこと)。
  5. 感染拡大の予兆がみられた場合には「まん延防止等重点措置」を含め対策を行う。
  6. 高齢者施設職員への定期検査。
  7. 病床確保・療養者支援の強化。

■1都3県、時短要請継続へ

東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏4都県の知事は5日、テレビ会議を開き、今後の対策を確認した。花見や歓送迎会、卒業旅行の時期を控え、改めて不要不急の外出自粛を求め、飲食店などへの午後8時までの営業時間短縮要請を継続する。

一方、解除を政府に要請する目標の設定では対応が分かれた。東京都は独自の目標の設定を見送り、神奈川県も解除の目安を示さなかった。埼玉県は週平均の入院者数が500人、1週間の10万人あたりの新規感染者が7人を下回ることを目標とし、千葉県は政府の指標で「ステージ3相当で、ステージ2に近い状態」とした。

こういう具合で、政府新型コロナ感染症対策本部(本部長・菅義偉首相)が打ち出した1都3県への要請は変わり映えがしない。基本的には感染経路不明者が東京都では50%近くなのに、「濃厚接触者」を追跡する「積極的疫学調査」の範囲を出ていない。これに対する1都3県の対応もばらばらになってきており、東京都では7日移動平均での新規感染者数を70%以下に抑えるという目標は撤廃した。

季節的には新春から梅雨の時期までは、新型コロナウイルスの不活性期に入るが、感染患者を重症化させる力は弱まってくるという季節的要因はあるけれども、コロナウイルスの感染が収まったわけではない。コロナの最大の特徴である無症状感染者がステルス・スプレッダーになり、感染を拡大させていることに変わりはない。加えて、感染力と重症化力の強い英国や南アフリカ、ブラジルなどで変異した変異株は空港検疫をくぐり抜けて、市中感染の段階に入りつつある。また、これらの変異株(英国型は南ア型、ブラジル型に近い変異株に再変異した)欧米やイスラエルなどで期待が高まっている新型ワクチンは効かないとされている。なお、英国型の変異株はステルス・スプレッダーによって機内感染が起こされている。

これに加えて、4月前後は送別会や入社式、入学式で日本中で人の移動は活発化する。その後は、5月の大型連休に入る。これも大きな人の移動活発化要因だ。これに加えて、東京オリンピック/パラリンピックの強行開催も最大24万人前後の選手団、報道陣が訪れることになり、海外から変異株を持ち込む要因になる公算が大きい。そうなれば、夏場はコロナ第4波が日本全国を根底から揺るがすことになる。だから、米国のバイデン大統領も「東京オリンピック/パラリンピック開催は安全に開催できる科学的事実(証拠=エビデンス)が必要だ」との発言を変えてはいない。G7共同声明では「日本の決意を支持する」と菅首相の顔を立てただけで、ホンネは「まあ、世界標準のコロナ禍対策もしないのに、よく言うよ」というところだ。

実務的なところでは、全国47都道府県に所在する区市町村(基礎自治体)がホストタウン事業(国別競技別に選手団を受け入れ、本大会に向けての練習を支援する事業)からの撤退を余儀なくされていることだ。例えば、「地方の反乱」で聖火リレー、オリ/パラ拒否を打ち出している丸山達也知事(50、3月5日県体育協会の会長職を辞任)率いる島根県の奥出雲町(人口1万人)では年間の税収が10億円程度なのに、練習施設設営費などで既に6億円を投じている。これにコロナ対策と新型ワクチン準備が重なるわけだから、インドのホッケーチームを受け入れるホストタウン事業からの撤退もやむ無しだ。

他の基礎自治体も、体育館の改築などで多大の財政措置を講じている。新型ワクチンの接種会場確保に困難が生じるというのは、島根県奥出雲町と同じだ。ただし、選手団がホストタウンに行くことは現段階では、禁じられるようになっている。「選手団は来日して競技が終わったら、すぐ帰国して下さい」というわけだ。ホストタウン事業に名乗りを挙げた基礎自治体はたまったものではない。

博報堂出身の作家である本間龍氏によると、「既に(オリ/パラ開催の)外堀は埋められ、(新型コロナによって)大手門に攻め入れられている状況であり、いつ本丸の天守閣が燃え盛るか」という状況だ(https://www.youtube.com/watch?v=5DXSrWRfVMU)。今後とも難問が襲いかかるが、国際オリンピック委員会やパラリンピック委員会禍、政府、東京都、大会組織委などは、外国からの観戦客お断りを打ち出しただけで、すべて結論を先送りだ。ただし、外国からの観戦客を締め出せば、政府や東京都が宣伝してきたインバウンド収入(観光収入)はなくなる。

G7共同声明
G7共同声明
敏腕検事を務めた郷原信郎弁護士の危惧
敏腕検事を務めた郷原信郎弁護士の危惧

 

こうした中で、3月4日発売の週刊文春3月11日号では、理論疫学(感染症学)の数少ない日本の専門家の一人である西浦博京大教授が、実効再生産数が1.0人以上になったら「緊急事態宣言」を発令するという「サーキット・ブレーカー」論を提案している。「サーキット・ブレーカー」というのはもともと株式市場で用いられる用語で、日経平均などの総合株価指数が一定の限度まで上下すれば、自動的に株式売買取引を停止するというもので、これを新型コロナウイルスの感染拡大に応用した考えだ。「株式売買取引停止」は「日本国民の行動自粛」という形になる。

しかし、専門家の誰もが認める「実効再生産数」の計算法が存在するか否かは不明だ。また、「緊急事態宣言」の発令・解除の繰り返しでは、国民に心理的・経済的打撃は大きい。なお、西浦教授も「観客を入れた開催が難しいのはもとより、せめて来年に延期することでさまざまな対策もスムーズに済むなら、可能な限り英断を下していただきたいというのが私の思いです」と語っている。ただし、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長やオリ/パラ組織委の森喜朗前会長(同じ清和会に属する橋本聖子会長をコントロールしていると見られる)も、「再延期」は有り得ないとしているから、事実上は中止になる。

時事通信社の報道によると(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021030401419&g=pol)、自民党の下村博文政調会長も「4日のBS11番組で、東京五輪・パラリンピックの開催の可否について『主力国の選手が(注:訪日した際のコロナ感染が不安で)大量に来られない場合は国際オリンピック委員会(IOC)も考えざるを得ないだろう』」と発言し始めた。次の総裁選を狙った発言であることは確かだが、それをさて置けばまともな判断である。

中国は徹底的な全員PCR検査と都市封鎖(ロックダウン)を行うことによって、世界の有力国の中ではG7諸国を押しのけて、2020年はプラス成長(前年比2.3%成長)になった。3月5日から始まった全国人民代表大会(日本の国会に相当)では、「経済安全保障」のため、輸出依存型経済構造から内需依存型経済構造への転換(産業構造の抜本的転換)を目指し、内需を振興することを条件に、経済専門家の李克強首相が今年は6%以上の実質経済成長率達成を目標にすると演説した。なお、一人当たりの国内総生産でも中等先進国入りすることを目指すと発表している。

加えて、ワクチン開発でも後進国に陥っている日本とは異なり、中国は自国製のコロナ用ワクチンを開発(https://www.bbc.com/japanese/video-55915102)して、世界の20カ国程度から承認されている。シノヴァク・バイオテック(科興控股生物技術)とシノファーム(中国医薬集団)の2社が先頭を走っている。評判が悪いとの指摘がなされているが、「日の丸ワクチン」が接種段階にない日本よりはましだろう。全人代でも参加者全員に接種した模様である(https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210305/mcb2103051400026-n1.htm)。

なお、ロシアの「スプートニクⅤ」も一定の評価を得ているようだ(https://news.yahoo.co.jp/articles/818dd1e1b55632a8943879f15d7b433fb888b568)。「変異株」と言ってもやはり、「新型コロナウイルス」である。「コロナの幹」(東大先端研の児玉龍彦名誉教授)の部分に対して、安全かつ有効性のあるワクチンの開発が急がれる。日本のワクチン開発状況は二番目だが(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00223.html)、米国と英国に押されてやる気がなくなっているかも知れない。

東大先端研の児玉龍彦東大名誉教授による
東大先端研の児玉龍彦東大名誉教授による

 

日本でのワクチン開発状況
日本でのワクチン開発状況

十分な生活・営業補償を前提として、全員検査体制の確立と安全性・有効性・持続性のある新型ワクチンの開発と接種の双方が両輪の輪のごとく回転するようになれば、新型コロナの脅威は収束してくる。東京都で感染経路不明率がステージ3/4相当になっていて、なかなか下がっていない。こうした状況のもとでは、「積極的疫学調査」も「おまじない」の域を出ないとしか言いようがない。第4波以降は、変異株が新型コロナの主流になると言われている。

「カネだけ、今だけ、自分だけ」の新自由放任主義に洗脳された「菅利権集団」(身内には公助、よそ者には自助)である政府=菅政権の暴走を止めなければ、日本の将来は存続さえ厳しくなる。なお、自民党は戦前の家父長制制度の復活・再建を目論んでいるが、これには大反対だ。

しかし、サイト管理者(筆者)の考え方を述べさせていただければ、事実婚にさえ至らない「人工妊娠中絶」が横行している日本では、安易に「選択制夫婦別姓制度」導入を既定路線化するには、十分に慎重であるべきだと思う。男女が結婚して、子女を育みその才能を活かして成人することを支えるという歴史の鉄則から逸脱すれば、社会保険制度は崩壊し、日本民族の将来はない。コロナ禍の中で、「火事場泥棒」を働いている政府=安倍、菅政権の早期退陣は当然のこと(放置しておけば、消費税率は15%から20%になり、大増税低福祉社会が到来してしまう)として、行き過ぎた「リベラル主義」もいただけない。


この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう