新型コロナは変異株よりも「幹ウイルス」対策がかなめー感染震源地での全員検査が必要(感染状況追記)

遺伝子工学に詳しい東大先端研所属で医学博士の児玉龍彦東大名誉教授によると、新型コロナウイルス感染症対策は変異株対策よりも「幹ウイルス」対策が要(かなめ)だという。変異株は増殖のスピードが速い半面、自壊しやすいためで、このためコロナ感染の波が起こるという。児玉教授は「コロナ幹ウイルス」に対する基本対策として、➀感染震源地(エピセンター)の特定とそこでの全員検査による無症状感染者の早期発見と治療②米国のファイザー社やビオンテック社が開発したmRNA型ワクチンの接種ーを挙げている。ただし、変異の最終段階で感染力と症状悪化力(毒性)の強い変異株が出現する可能性があるため、強い警戒心が必要であるとも指摘している。

3月9日火曜日コロナ感染状況
複数のメディアによると本日3月9日火曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の2月28日土曜日3月2日火曜日の232人から58人増加して290人だった。東京都基準の重症者数は前日比7人減少して39人になった。死亡者は21人。7日間移動平均での新規感染者数は261.7人で、前週火曜日比で99.5%になった模様。新規感染者数は下げ止まっている。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は261.7人、前週火曜日比率は99.5%の模様(東京都は前週比率を発表しなくなった)。PCR検査・抗原検査人数は6481.3人。陽性率は東京都独自の計算方式(7日間移動平均での7日間移動平均での新規感染者数を、同じく7日間移動平均の検査人数で除したもの)は3.3%。感染経路不明率は48.26%。全国では午後23時59分の時点で1128人が新規感染、58人の死亡が確認されている。重症者数は前日比8人増の381人になっている。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、3月8日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人減の1.01人、東京都は前日比0.02人増の0.96人だった。警戒を緩めれば、再拡大(リバウンド)する数値だ。

※2021年3月8日の東京都での感染者数は、新型コロナウイルスの感染者が新たに116人だったが、1週間前の3月1日の121人より5人減ったものの、ほぼ同水準だった。死亡者数は17人。8日までの1週間平均の感染者は253.4人で前週比は94.1%だった。全国では午後18時30分時点で新規感染者数は600人、死亡者数は45人。重症者は、前日比7人増加の380人になっている。

このところの東京都のコロナ感染者数の推移を下図に示す。PCR検査・抗原検査人数の対象制限がなされているかは不明だ。やはり、児玉東大名誉教授の指摘するように、➀感染震源地(エピセンター)の住民とソーシャル・ワーカーの全員検査②安全性と有効性、持続性のある新型コロナ対応ワクチン(現段階では、新型mRNA型ワクチン)の早期接種ーの「両輪の輪」が必要だ。ただし、新型ワクチンについては、接種を受けた国民に異変が生じた場合の補償体制を明確に確立する必要がある。サイト管理者(筆者)の理解では、児玉東大名誉教授の見解は、第四波の到来を否定するものではないと思われる。

東京都のコロナ感染状況の推移
東京都のコロナ感染状況の推移

さて、本論に入らせていただく。冒頭内容は、デモクラシータイムスがYoutubeで3月7日に公開した金子勝立教大学特任教授との対談で、児玉東大名誉教授が明らかにした(https://www.youtube.com/watch?v=fRhdKsB2pkM)。なお、対談番組のトップ画面の「見出し」では新型コロナウイルスが自壊して、コロナ禍が自然に収束するかの印象を受けるが、サイト管理者(筆者)はそうではないと理解している。新型コロナウイルス感染は波を描くがその理由として、➀NPO法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長・臨床医師が指摘した季節要因②児玉東大名誉教授が指摘した変異株の出現と崩壊ーの2つの要因があると思われる。人の移動による「3密(密閉・密集・密接)」は感染のきっかけであり、感染拡大を助長しても、感染の波を引き起こす主因ではないと思われる。

下図に示すように、新型コロナウイルス感染症の表面化が波を描いているのは周知の通り。現在の波は一般的に第三波と呼ばれているが、厳密に言えば東京・埼玉型の変異株によって引き起こされた第二波が収まり切らないうちに、Go To トラベルを急いだことにより、東京・埼玉での変異株に加えて欧米でのスペイン株が空港検疫をくぐり抜け、両株の相乗作用によって昨年2020年の10月から今年2021年2月前半までの第三波が起こったと見られる(下図では東京・埼玉型第二波と指摘されている)。

なお、昨年2020年は春と夏にも感染の波が起こっている。上理事長の指摘されるように、「季節要因(冬場と夏場にコロナが活性化しやすい)」だけで、感染の波を説明できるわけではない。ただし、第三波は下げ止まってきている。この状態で、英国や南アフリカ、ブラジルなどで変異した変異株が既に空港検疫をくぐり抜けて市中感染が広まっており、第四波の兆候が出てきている。

 

新型コロナ感染の波(日本)
新型コロナ感染の波(日本)

 

本投稿記事では、児玉東大名誉教授の指摘された「変異株」要因に焦点を当ててみたい。新型コロナウイルスが感染の波を繰り返す要因について、児玉東大名誉教授は次のように指摘されている。併せて、新型コロナウイルスの模式図を下図に示しておきたい。

 

系統樹で示した変異ウイルス。「幹部分」に咲いた「あだ花」
系統樹で示した変異ウイルス。「幹部分」に咲いた「あだ花」

 

何故、新型コロナ感染症は波を描くのか

  • コロナウイルスは増える時(注:併せてヒトへの感染も拡大する)一定の割合で変異する(注:1本の螺旋形状であるRNA型のウイルスであるため、完全な複製には失敗する)。
  • 変異の大半は(新型コロナウイルスとしての)機能を失うが、一部に増殖の速い「変異株」が生まれる。
  • 「変異株」は急速に増える(注:併せてヒトへの感染も拡大する)が、また変異が入ると急速に自壊する。
  • 波の繰り返しの間に、増殖のあまり早くない、症状(の悪化を引き起こす力)も強くない株(「幹ウイルス」)が増え、(この幹株が新たに)変異株を生み出していくことがある(感染の震源地=エピセンター化)

 

児玉東大名誉教授はその典型として下図の型のウイルスを挙げておられる。

新型コロナウイルスの欠失変異
新型コロナウイルスの欠失変異

 

このH69-V70欠失変異(注:変異はもともと欠失変異)が抗体の効かない(ヒトの免疫力の効かない)変異株を作るが、(急速に増えるとしても)もっと欠失変異すると(恐らく新型コロナウイルスとは言えなくなり)感染できなくなる(感染力を失う)。変異株サイクル説からすれば、第三波は波の底に到達することになるが、まだその前の段階だろう。サイト管理者(筆者)の解釈によれば、東京都や神奈川県がつい最近まで「積極的疫学調査」という名の「濃厚接触者」の追跡対象者を、基礎疾患のある都民・県民や高齢者に絞ってきたからだ。児玉東大名誉教授は次の図で説明しておられる。

 

東京都新宿区のコロナ感染状況
東京都新宿区のコロナ感染状況

 

この東京都心の新宿区では、受診者数=PCR検査・抗原検査を受けた人数が大幅に低下しているが、陽性率は10月のレベルよりも高い。このため、街中での感染者(市中感染者)はずっと多いのではないかと推定される。このことは、下図に示した児玉東大名誉教授らが行った大規模な抗体検査でも分かる。

 

東京都の大学や研究機関が行った大規模な抗体検査
東京都の大学や研究機関が行った大規模な抗体検査

 

上図によれば、大規模な抗体検査を行った結果、若い世代の陽性率が増加していることが分かる。抗体検査は新型コロナウイルスに感染したことがあることが分かる検査である(重要な検査であるが、政府=菅義偉政権は保険扱いにしない)ため、東京都や神奈川県で検査対象を絞ってきたことで、若い世代の感染者を補足できなくなっているということだ。今後はコロナの第三波が終わりきらないうちに、英国株や南アフリカ株、ブラジル株などの変異株が感染の主流になって行くことが予想されている。これらの変異株も感染の波を描くと予想されるが、第四波がいつから本格化し、いつ谷を迎えるのかは現在では予想がつかない(児玉東大名誉教授の指摘は残念ながら、なかった)。

児玉東大名誉教授がコロナの波に翻弄されないために、次の三つの点を挙げている。第一は、空港での検疫体制を徹底的に強化することだ。サイト管理者(筆者)なりに補足すれば、東京オリンピック/パラリンピックは早急に開催中止を宣言することが必要だ。今や、全国47都道府県の基礎自治体(区市町村)が自前の財源(税収と地方交付税交付金)で行ってきたホストタウン事業(競技ごとに世界各国の選手団を受け入れ、本大会のための練習を支援する事業)は全くの無駄骨に終わってきている。オリ/パラ組織委などは海外からの観戦客の入国を認めない方針で、選手団の日本での滞在場所もオリ/パラの選手村に限られ、競技の数日前に入国を許可し、競技が終われば即座に出国を要請するつもりだからだ。

 

空港検疫とえぴセンターでの検査体制の大幅強化
空港検疫とえぴセンターでの検査体制の大幅強化

 

第二は、感染震源地(エピセンター)を特定し、全員検査を行うことによって、ステルス・スプレッダーになっている無症状感染者を早期に発見し、保護・隔離・治療(高ウィルス剤の投与)を行うことである。なお、児玉東大名誉教授によると、PCR検査では試薬を変更することにより、変異株に感染しているか否かを即座に調べることができるという。この点については国立感染研究所と見解が異なる。この点は、明確にしなければならない。また、ソーシャル・ワーカーに対する全員検査も不可欠であることは言うまでもない。

PCR検査で同体出来る変異株
PCR検査で同体出来る変異株
感染震源地での全員検査(PCR検査・抗原検査と抗体検査)
感染震源地での全員検査(PCR検査・抗原検査と抗体検査)

 

第三は、新型mRNAワクチンの安全性と有効性は極めて高く、新型コロナウイルスの「幹株」を除去するための治療として有効であり、巷間効かないと伝えられている変異株にも効果があるため、積極的に新型mRNAワクチンを活用する(接種する)ことである。変異株に合わせて開発しなおすことが容易であることの意味かも知れない。児玉名誉教授は新型mRNAワクチン開発は、「ノーベル賞級」とされている。

従来は、安全で有効なワクチン開発・生産までは時間を要するとしておられたが、新型mRNAワクチンが早い段階から開発されていたことと、欧米での接種状況と学術論文を参考にされて、新たな見地に立たれたようだ。なお、海外での変異株に対処するためには、2種類(注:サイト管理者=筆者=の予想としては複数の種類)の新型mRNAワクチンの開発が必要だと指摘している。ただし、マスメディアの報道では、mRNAワクチンは南アやブラジルでの変異株には効かないというのが通説だから、この点は留保する必要はある。

なお、児玉東大名誉教授は「ワクチン一本足打法」に考えを改められたわけではない。サイト管理者(筆者)の理解では、➀新型mRNAの入手のスケジュールがはっきりせず、注射針の問題で一本で何回摂取できるか不明なため接種完了までかなりの時間がかかる②変異株を主流にした感染再拡大(リバウンド)、第四波が起きる可能性は否定されていない③幹ウイルスを保有している無症状感染者の体内で変異株が新たに発生する➃後述させていただくが、収束に至る最終段階で最も狂暴なな変異株が出現するーなどのためと考えている。

新型コロナ用ワクチンの種類
新型コロナ用ワクチンの種類

なお、児玉東大名誉教授は、新型コロナウイルス感染症が収束する前に、恐らくは強い感染力と症状を悪化させる力を持った(毒性の強い)変異株が最期に出現する可能性を指摘しておられる(可能性ではなく断定)。この点については強い警戒心が要求される。


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