今年は特別に危機的な夏だ。恒例の8月6日、9日の原爆投下慰霊祭のあと、15日に「終戦記念日」がやってくる。「終戦記念日」は本来、「敗戦責任追及、不戦の誓いの日」にすべきところだ。しかし、今年は世界の中で日本だけが新型コロナ感染の第二波に見舞われており、首都圏、大阪府、愛知県、福岡県など日本を支える中核大都市圏を中心に新規感染者が急増、感染経路を追えない感染者の割合も増加、死亡者も徐々に増えている。政府=安倍政権は、野党が憲法第53条に基づいて召集を求める臨時国会は開かず、無為無策で一貫している。その背後には、日本国憲法の伝統的な解釈を無視して「集団安全保障体制」を構築する法的根拠を「安保法制」で整えたと同じように、「敵基地攻撃能力」を法制化し、「国家安全保障政策」を大転換しようとしている政府=安倍晋三政権の画策があるようだ。
◎追記:NHKがサイトで報道したところによると、本日8月7日午後15時時点の新型コロナウイルス新規感染確認者は462人。ある程度の詳細内容は夜になります。沖縄県では県民100人、在日米軍基地4人の感染が確認されています。医療体制が非常に懸念され、総務省は座視していないで行動をおこさねばなりません。全国では午後23時00分時点で過去最多の1605人、死亡者数7人。
以下の投稿記事は、デモクラシータイムスが報じた東京新聞論説兼編集委員を経て現在、獨協大学非常勤講師・法政大学兼任講師で防衛ジャーナリストの半田蕃(しげる)氏のインタビュー番組に負う。ただし、サイト管理者(筆者)の理解による。Youtubeのアドレスはhttps://www.youtube.com/watch?v=XIf9A_-xGwg&t=1234sです。
その前に、昨日8月6日の新型コロナウイルスの新規感染状況などから注意しておきたいことがある。
朝日デジタルが2020年8月7日午前1時21分に報道したところによると、「新型コロナウイルスの国内感染者は6日、午後11時半現在で新たに1484人確認され、3日続けて1千人を超えた。神奈川県、千葉県、山梨県、大阪府、佐賀県で1日あたりの最多を更新した」という状況だ。注意すべき記事は、2020年8月7日 5時00分に投稿した「陽性者の絶対数増、医療体制深刻化も 都の会議、判断は維持 新型コロナ」と題する記事の中で報道された東京都のモニタリング専門家会議のメンバーである帝京大学付属病院の坂本哲也病院長の指摘だ。
坂本病院長は重症患者数が(少し前までは16人で小池百合子都知事が言い訳に利用した)5日時点で21人と前週と同数にとどまっていることを踏まえながら、このまま感染者が増えてくると重症患者が増えてくるため集中治療室をたくさん占めるようになるため、コロナ以外の救急救命医療やがん治療へのさらなる圧迫につながるとして、コロナ重症患者も含め医療体制圧迫が懸念されると意見を述べている。なお、5日は大阪府をはじめ大都市圏で5人が死亡した。そのうえで「坂本氏は4日までの7日間平均の検査人数が前週の約1・3倍の4158人になったにもかかわらず、陽性率が前週の6・5%から、6・9%に上昇した点にも着目。『陽性者の絶対数の増加を示すもので、都内全域での感染拡大が危惧される』と現状を分析した上で、医療提供体制について『このままでいくといずれ赤(最も深刻なレベル)ということがあると思う』と危機感を示した」という。事態は深刻だ。
東大先端科学技術センターで遺伝子工学が専門の児玉龍彦東大名誉教授が指摘しているように、第二波は東京都が感染震源地(エピセンター化)して全国に拡大したものと想定されるから、大阪府、愛知県、福岡県、神奈川県など日本を支える大都市圏も東京都と同じような状況に見舞われている公算が大きい。さて、政府=安倍政権や小池百合子都知事など為政者は、本来の責務からすれば、PCR検査や抗体検査の大規模検査体制を構築し、実際に検査人数を拡大して、陽性判定者を「保護・隔離・治療」できるよう、コロナ禍対策の抜本転換を図るのが筋だ。東京都(人口1400万人)のPCR検査人数が1日当たり6000人を少々上回っているのは、人口2000万人の米国ニューヨーク州のPCR検査人数が1日6万7000人(人口800万人のニューヨーク市でさえ1日当たり3万2000人)と比較すれば、話にならない。
こうした事態にもかかわらず、安倍晋三首相は昨日の広島原爆慰霊祭での恒例の記者会見(たった15分)で、「(第一波とは)医療体制は逼迫しておらず、死亡者も少ない。状況が異なる。非常事態宣言を発令するような状況ではない」といつもの発言を繰り返し、高齢者が感染しないよう高い緊張感を持って全国の地方自治体と連携しつつ、注視して行くと語るのみの無為無策だ。情勢判断は明らかに誤っている。特に、人口10万人当たりの感染者数が最多の沖縄県は医療体制も限られている上、在日米軍基地から感染者が大量に発生しており、非常に厳しい状況と推察される。地盤が軟弱で作業すら困難と言われている辺野古の基地建設現場ではコロナ感染者が発生したが、建設は続行するという。
要するに、すべてで「自己責任原則」が貫かれ、政府=安倍政権は無為無策というのが実態だ。そのくせ、8月7日付け朝日新聞3面の首相記者会見の記事によると、広島での記者会見では、「敵のミサイル基地などを攻撃する『敵基地攻撃能力』の保有を検討するよう政府に求める(7月31日の)自民党の提言については『新しい方向性をしっかりと打ち出し、速やかに実行していく考えだ』」と述べたという。安倍首相が事実上、雲隠れしているのはどうもこの点にありそうだ。
河野太郎防衛相が6月15日夕、①レーダーと管制室②迎撃ミサイル発射基地−の2つの部分からなるイージス・アショアについて、「(ミサイルのブースターが市街地に落ちないようにするための)コストと時期に鑑みて、イージス・アショアの配備のプロセスを停止する」旨の「進言」を行い、安倍首相と菅義偉官房長官はいとも簡単に河野防衛相の「進言」を了承した。イージス・アショアの建設計画は米国と約束したものであり、政府=安倍政権の対米従属敵性格からすれば「進言」を簡単に了承するのはやりり、「裏がある」と見ていいだろう。まずは、レーダーはすでに米国で製造しており、その実験費用も日本で負担することになっている。
また、キャンセル料も当然発生する。それらの資金の工面をどうするのか。考えられるのは、2020年度第二次補正予算で確保した財政民主主義に反する10兆円の予備費から捻出することが考えられる。コロナ対策として編成された補正予算であるから、本来なら国会で審議すべきだが、予備費だから内閣の都合でどうにでもなる。国会ではいつもの詭弁答弁を行えば良い。また、イージス・アショア計画破棄宣言の後、自民党から国防部会を中心に急に「敵基地攻撃論」が飛び出してきた。
敵基地攻撃論・政策は、①明らかに専守防衛を明確にした日本国憲法違反の政策である②敵基地攻撃は確証がない限り(実際は確証を示し、国際世界に認知してもらうのは事実上と言って良いほど無理)、法理上は「先制攻撃」と見なされ、国際法違反になる公算が極めて大きい−という重大な難点がある。半田氏によると、日本の防衛計画大綱は2013年までは防衛省が作成していたが、それ以降は第二次安倍政権の成立をきっかけに、安倍政権が官邸に権力を集中させるようになり、2018年から官邸に設けられた「国家安全保障会議」で「国家安全保障戦略」が練られるようになり、毎年「防衛計画大綱」を改定して閣議決定してきた。
日本国憲法は、平和主義を理念として外交政策としては平和外交路線を基軸にしている。このため、原則として日本は専守防衛に立ち、外国からの攻撃に対しては日米安保条約に頼るという国是を採用してきた。
安倍首相の母方の祖父である岸信介首相もこの点では鳩山一郎首相とは異ならなかったと考えられる。しかし、「積極的平和外交主義」という文言を盛り込むことによって、自民党内では「敵基地攻撃論」が2013年以降、急速に盛り上がってきた。その延長線上にあるのが、イージス・アショア計画の断念を利用した今回の敵基地攻撃論ではないか。
朝日新聞8月1日付は1面で「敵基地攻撃能力の保有に踏み切れば、日本の安全保障政策の転換点となる。首相官邸は前向きだが与党・公明党は慎重で、首相の残り任期が来年9月までとなり、内閣支持率が低迷するなか、導入を決められるかは不透明だ」と観測しているが、甘いのではないか。公明党が反対しても、少なくとも日本維新の会の閣外協力は得られる。だから、政府=安倍政権が従来の内閣法制局による集団的自衛権保有禁止とする憲法解釈を強制的に変更して「安保法制」を強行採決したように、新たに内閣で国家安全保障政策をさらに抜本的に転換し、日本国憲法が禁じた「日本を戦う国」に変えてしまう公算は大きい。半田氏は。安倍首相の在任機関中には憲法改正はできないと見ての判断だとする。
これは、対北朝鮮のみならず、中国に対しても向けられる。米国のマイク・ポンペオ国務長官は7月23日、訪問先のカリフォルニア州で強烈な中国脅威論をぶちあげ、これまでの米国の対中外交は完全に失敗であるとしているが、半田氏は「対中包有志国連合」を結成するつもりでいるという。次は、参考サイト(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61895920U0A720C2000000/。なお、半田氏は防衛省が、既に敵基地攻撃用に使用できる①空中給油機②AWACS(大型の全周囲レーダーを用いて敵の捜索・追尾を行うと同時に、友軍機の指揮管制を行う航空機)③JSM (F35用の対艦/対地/巡航ミサイル)④JASSM( 長射程の巡航ミサイル)−などを保有していることを紹介している。
◎追記:中国・湖北省武漢市で新型コロナウイルスが発見・確認された際、中国習近平政権は1月23日に武漢市を都市封鎖(ロックダウン)したが、台湾も同時に武漢市からの入国を禁止した。しかし、これに対して安倍首相は武漢市が封鎖された翌日の1月24日に、在中国日本大使館のHPを通じて、中国国民に春節の休みを利用しての訪日を呼びかけた。これが、日本での新型コロナウイルス感染の第一波の発端になった。また、習近平国家主席の国賓としての来日にこだわったことも初動対策としては間違っていた。中国からの訪日旅行客はもちろん、日本の経済は中国に大きく依存敷いてる。日本の政府=安倍政権は米国と中国の二股外交で失敗している。米国も経済は中国に大きく依存敷いてる。ブッシュ政権の対中強行路線は秋の大統領選挙で不利になっていることへの対策と思われるが、米国を支配している軍産複合体は中国の経済・軍事大国化を許せないだろう。安倍政権の二股外構は破綻しており、政権内部の親中派は一層されるとの見方も出ている(参考:ニューズウイーク日本版https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-94075.php参照。なお、ニューズウイークも中立言論機関としては問題があるとの指摘が出ている。外務省の情報局長・防衛大学教授を歴任した孫崎享「戦後日本史の正体」参照)。
政府=安倍政権によって、日本の「国家安全保障政策」が抜本的に大転換された場合でも、日本が単独で敵基地攻撃するということはあり得ないだろう。「対中・対北朝鮮有志国連合」に参加してのことだ。英国もイラク攻撃の有志国連合に加わって、イラク戦争に参加したことがある。安倍首相らが、ユーロ圏から離脱した英国との自由貿易協定を締結した後なら、国会を消臭するとしていることも気がかりだ。
第二次安倍政権が成立してから、政権は「疑惑のデパート」になっているが、より重要なことは事実上、日本国憲法を破壊してきていることだ。野党は立憲民主と国民民主が合流をめぐって暗唱に乗り上げているが、「国民生活が第一」と「共生主義」でまとまり、①コロナ禍抜本対策②予測される大デフレ不況(最悪の事態は大規模なスタグフレーション)からの脱却③日本国憲法に則った「平和国家安全保障政策」の確立④原発から自然エネルギーを中心としたエネルギー政策の抜本転換−など安倍政治に対抗できる理念と政策を打ち出さなければならない。そうでなければ、投票率は上がらず、政権は奪取できない。国民のために、状況の深刻さを考慮スべきだ。