本日3月18日、21日まで延長された1都3県の「緊急解除宣言」が解除されるが、東京新聞の独自報道によると3月12日に開かれた東京都の専門家会合(モニタリング会合)では今後の見通しについて、「『第3波を大きく超える可能性』と盛り込む方向で検討していたものの、公表直前に削除された」という。3月25日から聖火リレーが開始される予定であることを意識したものだと思われるが、想定される事態を東京都民に隠したことはいただけない。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は297.1人、前週木曜日比率は108.8%だった模様(東京都は前週比率を発表しなくなった)。PCR検査・抗原検査人数は6704.0人。陽性率は東京都独自の計算方式(7日間移動平均での7日間移動平均での新規感染者数を、同じく7日間移動平均の検査人数で除したもの)は3.5%。感染経路不明率は47.83%。
全国では午後23時59分の時点で1499人が新規感染、32人の死亡、重症者は前日比10人減の325人が確認されている。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、3月17日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増の1.07人、東京都は同じ17日時点で前日比0.02人増の1.09人だった。簡易計算だが実効再生産数で見る限り、基調的に感染が再拡大しつつある。
東京都3月18日新規コロナ感染者数の推移
3月8日以来11日ぶりに前週の同じ金曜日から減少したが、7日移動平均では8日連続して前週の同じ曜日を上回っている(下図では、日曜日から土曜日まで)。
首都圏の緊急事態宣言21日解除、諮問委員会が了承
3月18日午前9時55分のNHKWebサイト(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210318/k10012921211000.html)によると、「専門家諮問会議」は宣言解除諮問を了承した。ろ
首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言について、感染症の専門家などでつくる諮問委員会は、期限の今月21日で解除する政府の方針を了承しました。
政府は、18日夕方に対策本部を開いて宣言の解除を正式に決定することにしています。(中略)
3月18日午後17時前、菅首相は衆参の議員運営委員会で首都圏1都3県に発令していた「緊急事態宣言」を21日で解除するとの報告を行った。その後、午後18時前に政府新型コロナ感染症対策本部(本部長・菅首相)を開き、21日をもって「緊急事態宣言」を正式に解除することを決定した。再拡大(リバウンド)防止策として、改正インフル特措法に盛り込んだ「まん延防止措置」を使いながら、「足元の微増傾向にある感染状況を踏まえ、感染再拡大を防止するため、都道府県と緊密に連携しながら モニタリング検査や、変異株のPCR検査、高齢者施設への集中的検査などの取り組みを徹底していく」(西村康稔経済財政担当相)方針。菅首相は記者会見で、①飲食を通じた感染の防止策継続②変異ウイルスの監視体制の強化③感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査(変異ウイルスの感染状況を把握するため、全陽性者の10%程度を抽出して行っている検査を、40%程度に引き上げ、無症状者に繁華街などで幅広く行う検査を4月には1日5千件規模に拡大)④安全・迅速なワクチン接種⑤次の感染拡大に備えた医療体制の強化ーを挙げた。
しかし、これらの内容は既に現時点で実施が表明されているものであり、規模は極めて限られている。一方で、感染症専門家の間などでは、東京都、埼玉県など首都圏や大阪府など関西圏では既にリバウントが始まっているとの見方が強い。政府=菅政権の「手詰まり感」は否めなず、コロナ禍対策の抜本転換をしない限りリバウンドの阻止には限界が出てくる。ただし、立憲民主党は衆院議員運営委員会で、第4波が起こった場合の菅首相の政治責任について質したが、菅首相は明言しなかった。なお、記者会見で菅首相は一応、否定したものの、一部では5月には解散・総選挙を行うとの観測も流れている。新規感染者を抑え込まない限り、「自己都合解散」では国民の支持を得られないだろう。
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東京新聞が3月18日付26面で明らかにした。Webサイトでは年3月18日午前06時00分、サイトに「宣言解除への影響懸念『第3波大きく超える可能性』の文言を削除 東京都の感染分析」とのタイトルで公開した。一部紹介させていただきたい。
新型コロナウイルス対策を巡り、東京都の感染状況を分析する都モニタリング会議が今月12日、今後の見通しに「第3波を大きく超える可能性」と盛り込む方向で検討していたものの、公表直前に削除されたことが分かった。表現が厳しいとして慎重論が上がったという。政府は17日に緊急事態宣言の解除方針を明らかにしたが、専門家には都内の感染状況に強い懸念があることが浮き彫りになった。
関係者によると、修正されたのは12日にモニタリング会議が公表した「総括コメント」。前日夜、会議メンバーの感染症医ら専門家が議論し、新規感染者数について「下げ止まりが見られる」とした上で「今後、変異株等により第3波を大きく超える再拡大が起こる可能性がある」との見解をまとめ、公表用文案を作成したという。
第3波は1月上旬に、1日あたり2500人を超える新規感染者が報告されており、今後のピーク時の可能性は3000人以上を想定していたとみられる。(中略)会議に参加した医師は変更理由について、本紙の取材に「『大きく超える』と明記する科学的根拠に乏しい。議論の結果取り下げた」と説明。別の会議関係者は「言い過ぎではないか、との議論になった気もする」としつつ「無策なら、第3波を超える可能性はかなりの確率であると思う。そうならない手を打たなくては」と危機感を語った。
一方、11日夜に変更前の文案を見たという都職員は「宣言期間終了が迫る中、強すぎる表現があると解除に言及しにくくなる。政策判断の手足を縛ることになりかねず、懸念を持った」と証言。(以下、略)
将来の予測だから、外れる場合もある。しかし、東京都民・日本の国民にとってはできるだけ分かりやすい表現であるべきだ。「第3波を大きく超える再拡大が起こる可能性がある」の表現のほうが、「急激に感染の拡大が起こる可能性がある」の表現よりもイメージしやすいのは明らかだ。コロナ感染の波は季節要因とともに、各国で変異した変異株の日本への流入・市中感染拡大によっても起こる。
東大先端研の児玉龍彦東大名誉教授によると、昨年7-9月期以降の第2波は東京・埼玉で変異した変異株によって引き起こされており、第2波が収まりきらないうちにGo To トラベルという実態としては「Go To トラブル」と揶揄される「愚策」によって第2波が加速し、新規感染者の急増と、「濃厚接触者の追跡調査」の制限を余儀なくされ、入院待ちや自宅待機の感染患者が急増するなどの事実上の医療体制の崩壊が起こった。
今回の重大な変異株は英国、南アフリカ、ブラジル、フィリピンなどで起こっているが、英国エクセター大学などの研究チームが同国の医学論文雑誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に寄稿した論文では、英国株は感染力(最大1.9倍)だけでなく致死率(従来型の1.3倍〜2倍)にも及ぶことが示された。また、新型ワクチンが変異株に対して安全かつ有効であるかは不明だ。米国の大手製薬会社ファイザー社やモデルナ社が開発したmRNA型ワクチンでも、同じ製薬会社の2種類以上のワクチンの接種が必要との意見もある。
政府=菅義偉政権の新型コロナウイルス感染症対策本部分科会の尾身茂座長(独立行政法人地域医療推進機構理事長、社会保険関連の医療機関を統合したもの)は衆院予算委員会などで、「今後の新型コロナウイルスの主流は従来型から変異株に移る」と述べており、厚生労働省としてもコロナウイルスの遺伝子解析の効率を高めるようにしている(これまでは陽性検体のうち5%から10%の遺伝子を解析してきたが、その引き上げに取り掛かった)。
ただし、東京都(国立感染研究所傘下の地方衛生研究所)でのコロナウイルスのゲノム解析は立ち後れているようだ。日刊ゲンダイ3月16日号「小池知事『直筆檄文』パフォーマンス」(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/286476)は次のように述べている(一部抜粋)。
変異株の検査も緩んでいる。厚労省が2月に自治体に求めた検査の目安は、新規感染者の「5~10%」。都の検査率は2月第2週=13.8%、第3週=10.08%と何とか目安を上回っていたが、2月最終週は9.63%にダウンした。
3月第1週(1~7日)は4.5%とついに目安を下回り、14日時点で最新結果の8、9日は2.95%。変異株蔓延への懸念は日々増しているのに、逆に検査を減らすのはアベコベだ。緊急事態宣言下の自治体トップとして小池知事はなぜ、60%超の(ゲノム解析)検査を実施する神戸市(注:38%程度が変異株との調査結果が出ている)を見習わないのか。
厚生労働省は当初、陽性検体の「5%〜10%」のゲノム解析を行うことにしていたが、この比率を引き上げるように地方自治体(地方衛生研究所と保健所など)を支援・指導し始めた。日本全国の感染震源地(エピセンター)になっている東京都では感染減少の下げ止まりから、再拡大(リバウンド)に転じている可能性が濃厚である。
それだけに、コロナウイルスのゲノム解析には注力しなければならない。ただし、児玉東大名誉教授によると、検査に使う医薬品の種類を変更することで、陽性検体に発見されたコロナウイルスのゲノム解析が可能になるとされている(https://www.youtube.com/watch?v=fRhdKsB2pkM&list=PLtvuS8Y1umY9sfiqMlek4Bg2D_e2naby3)。
東京新聞のWebサイト(https://www.tokyo-np.co.jp/article/92119)によると、3月16日の時点で「変異株感染、20都府県に拡大 クラスターも発生、『第4波』懸念」と題する記事を公開している(https://www.tokyo-np.co.jp/article/92119)。一部引用させていただきたい。その下の図はNHKのWebサイト(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/newvariant/)
厚生労働省は16日時点で、国内で変異株の感染者が399人確認されたと発表した。9日時点と比べて128人増で、地域は21都府県から26都道府県に拡大。内訳は英国株が374人、ブラジル株が17人、南アフリカ株が8人。(以下、略)
なお、世界保健機関(WHO)は変異株による感染実態の報告を求めている(3月18日午前6時44分公開「新たな変異ウイルス WHOが各国に特徴など情報提供求める」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210318/k10012920991000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_001)。本サイトでも繰り返し指摘させていただいているように、コロナ感染の波は、➀季節的要因②変異株出現要因ーによって引き起こされ、その波の高さは「人の移動指数」によって決まる。本日は政府が午前中に、専門家による諮問委員会に対して3月21日の「緊急事態宣言解除」の「諮問」を行い、諮問会議は政府の諮問を容認する形になるが、NHKでも次のように解除後に対する懸念は報道せざるを得なくなっている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210318/k10012921031000.html)。
新型コロナウイルスの新規感染者数は17日、東京で1か月ぶりに400人を超えるなど下げ止まりの傾向が顕著になっていますが、政府としては、医療提供体制が確保されていることなどを考慮して、解除を判断したものとみられます。また、政府関係者は、「みな、疲弊しており、このままでは次の波が来た時に頑張れない」と述べ、これ以上宣言を延長しても、自粛疲れなどで十分な効果が見込めないという認識を示しました。
政府=菅政権には「手詰まり感」が漂っている。コロナ禍対策の抜本的転換を行わなければ、東京オリンピック/パラリンピック開催前に深刻な事態になる可能性が濃厚だ。その場合、政府=菅政権が決定的なダメージを受ける公算が大きい。