「緊急事態宣言」解除、まん延防止策を講じても解決にならず。コロナ禍対策の抜本転換必要

3月21日で解除予定の1都3県の「緊急事態宣言」についてさまざまな観測が出ている。基本的には、政府=菅義偉政権は今週18日にも緊急事態宣言を解除し、政令で「まん延防止策」を発動する方向性だろう。聖火リレーが25日に開始される予定だからだ。しかし、首都圏の新規感染は下げ止まりから反転増加の兆しが出ている。本サイトなどで繰り返し主張させていただいているように、残された道はコロナ禍対策の抜本転換以外にはなく当然、早期に東京オリンピック/パラリンピックの中止を公表し、日本の全資源をコロナ禍対策に振り向け、「コロナ禍対策一直線」で進む以外に道はない。ただし、政府=菅政権にはその選択を取りえないから、「最良のコロナ禍対策」、「最良のワクチン」は内閣総辞職・政権交代ということになる。真正野党は国民の生命と生業を守るため、「政策連合」を早期に結成して戦いを挑むべきだ。

3月14日コロナ感染状況

複数のメディアによると本日3月14日日曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の3月7日日曜日の237人から2人増加して239人だった。7日移動平均では279.1人になり前週日曜日の254.1人から前週比で109.8%になった模様。死亡者は3人。東京都基準の重症者数は1213日より1人増加して41人だった。世代構成では65歳以上の高齢者は57人だったが、20代は46人と次に多かった。東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は279.1人、前週日曜日比率は109.8%だった模様(東京都は前週比率を発表しなくなった)。PCR検査・抗原検査人数は6159.3人。陽性率は東京都独自の計算方式(7日間移動平均での7日間移動平均での新規感染者数を、同じく7日間移動平均の検査人数で除したもの)は3.5%。感染経路不明率は48.98%。

全国では午後23時59分の時点で989人が新規感染、21人の死亡、重症者は前日比9人減の328人が確認されている。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、3月13日時点の実効再生産数は全国が前日比0.04人増の1.08人、東京都は同じ13日時点で前日比0.03人増の1.03人だった。簡易ながら実効再生産数が全国、東京都ともに1.0人を上回っているのは新規感染者数が拡大していくことを示唆している。

新型コロナウイルスの感染は波を描くが、その理由としては、➀季節的要因②新たな変異株の出現ーが主要因であり、これによってできる波の振幅を人の移動(指数)が大きくする。過去のコロナの波を見てみると、下図のようになる。

コロナの波
コロナの波

 

第三波前期は東京・埼玉型であり、後期はGo To トラベルで振幅が大きくなった。これを「支離滅裂・後手後手・右往左往」という。今回の変異株についても同じだ。菅首相は昨年2020年12月28日に「水際対策強化」なるものを発表したが、主としてアジア諸国からの入国者の太宗を占めるビジネストラック(日本の労働力不足を補うためのベトナムなど東南アジア諸国からの労働者の入国)、レジデンストラックの入国停止を排除した。ざるとも言える「水際対策強化」に識者や医療関係者、一般の国民からも批判が強まったが、強硬に封じ込めた。

しかし、結局のところ、1月13日になってやっとビジネストラック、レジデンストラックの入国を禁止した。これも、「支離滅裂・後手後手・右往左往」だ。このため、英国で変異した英国株、南アフリカ株、ブラジル株、フィリピン株などが「水際対策」をすり抜けて、日本の市中で広がり始めた。首相官邸がマスコミにリークしているように「まん延防止対策」では、季節要因、変異株要因、人の移動指数要因が複合的に重なることで起きるコロナ第4波を食い止めることはできないだろう。

以下、もう少し補足させていただきたい。まず、日本で主流の変異株になっている英国株についてのその後のマスコミ報道を紹介させていただきたい。英国株は、当初は感染力が強いだけかと思われていたが、致死力も強いという研究成果が発表された(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/286388https://digital.asahi.com/articles/ASP3F76DZP3DULBJ005.html)。日刊ゲンダイから若干引用させていただく。

研究結果は10日、英エクセター大などの研究チームが英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)で発表した。研究チームは昨年10月から今年1月までの期間に英国型変異株に感染した約5万5000人と、年齢、性別、居住地、感染時期などがよく似た従来型の感染者約5万5000人とを比較した。死者は従来型141人に対し、変異株は227人だった。変異株の感染者の致死率は従来型の1.3~2倍になる。英国型は感染力が最大1.9倍とされてきたが、致死率まで2倍とは驚きだ。

他の変異株については、感染力、致死力ともに強いことが知られている。日本では取り敢えず、英国変異株が変異株の主流のようだが、実際の感染状況は厳しいと思われる。上記の朝日デジタルの記事を引用させていただきたい(https://digital.asahi.com/articles/ASP3F7SVFP3DULFA035.html?iref=comtop_7_02)。

神戸市で11日にあった会見。保健所の担当者は英国型の変異株の危機感をこう話した。検体を採った日で見ると、市内の英国型の感染者は4日までに64人。4割にあたる26人は4日までの1週間に集中している。

神戸市では1月29日以降、市内で新たに感染がわかった人の60%で変異株の検査をしてきた。厚生労働省が2月に自治体に求めた検査の目安は、感染が確認された人の「5~10%」。(神戸市では)ほかの地域よりも変異株の感染者が多さが際立つが、市によると、多くは変異株の感染が確認された人の濃厚接触者だ。検査数の多さで変異株の存在が見えてきた面もある。厚労省の専門家組織のメンバーの一人は「(変異株の検査が)都内でもせいぜい10%ぐらいと考えると、今見えている数の何倍かになることは間違いない」と話す。

新規感染者のうちの6割の解析で、65%の新規感染者が英国株に感染していることが判明した。全検体でウイルスの型を調査していれば、英国株その他の変異株による感染率はもっと高くなっていた可能性は否定できない。厚生労働省はこれまで新規感染者のうち5%から10%の検体を検査すれば良いとしていたようだが、ここにきて、遺伝子構造を検査する検体の割合を大幅に増やす方向だ。ただし、東大先端研の児玉龍彦東大名誉教授によると、検体の検査薬を工夫することですべての検体で、従来型に感染しているか変異株に感染しているかが分かるという。

変異株の種類
変異株の種類

 

なお、児玉東大名誉教授は、変異株は自壊しやすいという。このため、感染震源地(エピセンター)で、抗体検査(過去に感染したことがあるか、または、重症化しやすいかが分かるが、厚労省は保険扱いをしていない)とPCR検査を大規模に行い、変異のもとになる「幹ウイルス」に無症状で感染している人(ステルス・スプレッダー)の早期発見と保護・隔離・(抗ウイルス薬による)治療に努めることが不可欠だという。併せて、変異株がワクチンに対して効き目がないという一般の理解については、複数のタイプのmRNA型ワクチンの接種で解決され、コロナに収束の道が見えてくるとしている。もっとも、短期間でそのような状況になるか否かについては、サイト管理者(筆者)には分からない。また、北欧で出ているファイザー社やベクター・ウイルス型のアストラゼネカ社の健康被害の問題についての見解は、まだ明らかでない。

いずれにせよ、今後の新規感染の主流は英国型を中心にした変異株が中心になり、春の人の移動指数の上昇、夏場にかけての季節的要因からの相乗効果で、首都圏で第3波が終わりきらないうちに、第4波の波が形成されてくる可能性はかなり高いと言ってよいだろう。政府=菅政権は、首都圏での緊急事態宣言再々延長の際、「病床ひっ迫の状況が続いているから、再々延長を行った」と語った。つまり、「病床に余裕が出てきたら解除するのは当然のこと」ということになる。そこで、早々と13日夜からリークし始めたと考えられる。

しかし、首都圏では新規感染者が下げ止まりから再拡大(リバウンド)に転じてきている。リバウンドすれば、病床がまたひっ迫することは、当然のことだ。つまり、飲食店をターゲットにした限定的な「緊急事態宣言」は何の効果もなかったということだ。緊急事態宣言発令後に、新規感染者数が減少に転じたのは冬の終わりから春先にかけてコロナウイルスの活性化が鈍るという「季節的要因」によるところが大きいと考えられる。

季節的要因からすれば、夏場にかけて新たな波がやってくる可能性がある。しかし、今回は、➀3月末から4月にかけて人の移動指数が上昇する②感染力と毒性の強い変異株が感染源の主流になる③オリ/パラ選手団関係者に加え、国際オリンピック(IOC)のVIPによる国費(血税)での東京オリンピック/パラリンピックのための訪日か、日本全国からのある程度の競技間先客の東京訪日が、第二の「Go To トラベル」になる可能性があるーことから、前倒しで第4波が発生する可能性がある。朝日デジタルは、「緊急事態、解除か延長か18日にも判断 再拡大懸念も」次のように伝えていてる(https://digital.asahi.com/articles/ASP3F7SVFP3DULFA035.html?iref=comtop_7_02)。

(中略)11日に非公式会合を開いた厚労省の専門家組織(アドバイザリーボード)は、首都圏の医療提供体制の逼迫(ひっぱく)は改善してきていると分析。一方で、新規感染者数の下げ止まりが続き、変異株が国内で広がりつつあることへの危機感を確認した。宣言の再々延長については「十分な効果があるか分からず、国民の理解が得られない」などと、複数人が難色を示したという。出席者の1人は「社会への負荷を考えると、とても難しい判断だ」と話した。

内閣官房のまとめによると、東京の直近1週間の新規感染者数は11日から前週を上回る。ただ、政府は解除の目安として病床の使用率を重視する。首相周辺は「感染者数が微増なら、解除して再拡大(リバウンド)の防止策を考える」。官邸幹部らは経済への打撃を懸念し、感染状況が大きく悪化しなければ21日で解除したいと口をそろえる。

一方、専門家の間ではリバウンドへの懸念が根強い。昨年はこの時期に花見や卒業旅行などで人出が増え、その後の4~5月の緊急事態宣言の要因にもなった。従来のウイルスより感染力が強いとされる変異株も、大きな不安要素だ。厚労省の9日時点の集計では、21都府県の271人で変異株の感染が判明。260人は英国型だが、感染力の高さに加え、従来のウイルスに対する免疫が効きにくくなるおそれもある南アフリカ型とブラジル型も計11人確認されている。(以下略)

要するに、限定的な「緊急事態宣言」では効果がないことを政府=菅政権サイドは認めている。効果のあるコロナ対策としては日本の持てる全資源をコロナ対策に投じることだろう。そのためには、東京オリンピック/パラリンピックに情熱を注いできた選手団には申し訳ないが、今回のオリ/パラは中止せざるを得ないし、中止が当然でもある。立憲民主党の枝野幸男代表は衆院予算委員会で「ノーコロナ」対策を打ち出した。

立憲枝野幸男代表によるノーコロナ・政策
立憲枝野幸男代表によるノーコロナ・政策

 

日本共産党の志位和夫委員長も、東京オリンピック/パラリンピックは中止し、日本の全資源をコロナ対策に充てるべきだとしている。3月12日には、政府感染症対策の実務上の責任者である西村康稔経済再生担当相と会い、要望内容を伝えるとともに、要望書を菅首相に手渡すように依頼した(https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-03-13/2021031301_01_1.html)。具体的内容は、➀高齢者施設等への社会的検査を医療機関、障害福祉施設などにも広げ、職員に対し頻回(ひんかい、繰り返して行うこと)・定期的(週1回程度)に行い、対象を利用者にも広げ、感染防御をはかること②モニタリング検査を「1日10万」の桁で大規模に行い、感染封じ込めをはかること③変異株の疑いを確認する検査の割合を大幅に引き上げること―が主な内容だ。

政府=安倍晋三、菅政権はこれまでPCR検査抑制政策を行ってきたが、その失敗を曖昧にしたまま、PCR検査に力を入れることを主張し始めたが、規模の面(1日1万件)では全く話にならない。

1日1万人程度のモニタリング検査の必要性を唱える要望
1日1万人程度のモニタリング検査の必要性を唱える要望

 

こういう状況であれば本来なら、東京オリンピック/パラリンピックは中止を発表、限定的な緊急事態宣言を止めるとともに、オリ/パラの資源をコロナ禍対策に回し、そのの抜本転換を図ることが、国民の生命や生業を守る上で、政府の重要な務めのはずだ。しかし、各種メディアに政府=菅政権がリークしたところによれば、首都圏下の緊急事態宣言は終結し、その後は「まん延防止策」で対応するつもりだ。その意図は、「聖火リレー」を目前に控えているから、「緊急事態宣言」は解除しておかねばならないためだと推察される。

さて、「まん延防止策」については、こちらのページに詳しい(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000731946.pdf)。その骨子は、「政府対策本部長は、特定の区域において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるまん延を防止するため、『まん延防止等重点措置』を集中的に実施する必要があるものとして、政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるときは、措置を実施すべき期間、区域(基本的に都道府県単位を想定)等を公示する」ことにある。そして、政令に従わないものに対して、行政罰と過料を課すというものだ(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020301058&g=pol)。

一応、「事業者及び地方公共団体に対する支援」は設けられているが、緊急事態宣言の際に営業を短縮する飲食店に対しては、規模にかかわらず1日あたり6万円支給され、その後は納入業者にも支援金が支給されたが、経済というものはすべて相互関連性を有している。限定的な支援措置では必ず、国庫負担(今のところ、血税が原資)の及ばないところが出てくる。「まん延防止策」では、立憲が主張し始め、日本共産党、れいわ新選組も早くから主張しているような「コロナ禍対策」の抜本転換は望めない。

むしろ、すべてが「政令」つまり菅首相率いる「自公連立内閣」の手によって決められ、国会には事後報告がなされるだけだから、これまでの経験からして有効なリバウンド対策を講じることはできないだろう。その結果としてまた、医療ひっ迫も起きてくる可能性が極めて濃厚だ。政権交代こそが最良の「コロナ禍対策」であり、「コロナ用ワクチン」ということにならざるを得ない。なお、世界各国のオリンピック委員会(NOC)も、日本のコロナ感染状況について状況を把握しておく必要がある。


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