河井元法相裁判判決で自民党1億5千万円拠出も公選法違反の可能性ー郷原弁護士指摘(追記菅首相、オリ/パラ中止で主導権?)

2019年7月の参院選広島選挙区参院選での河井克行元法相・案里元参院議員(ともに議員辞職。案里氏は買収罪が確定し、失職)の大型買収事案は、4月30日に検察官の諭告(最後に求刑)と弁護人の弁論が行われ後日、河井被告に判決が言い渡される。この判決では、河井被告の主張するように「寄付金」だとしても、違法・脱法的なものであれば、買収罪に該当する可能性があることが示されそうだ。ひいては、自民党が安倍晋三総裁、二階俊博幹事長(いずれも当時、以下特別な事情がない限り、同じ)による正式な手続きを経ての河井陣営に交付した1億5千万円(ただし、1億2千万円程度の使徒はなお不明)も公選法違反に相当する可能性が出てきた。要するに、自民党的政治資金の供与に買収罪が成立する要素・可能性があるというのである。遅くとも次期総選挙までには判決は言い渡されるから、大きな影響を与える。金権政治一層のチャンスではある。敏腕検事を歴任して現在、郷原総合コンプライアンス法律事務所の郷原信郎代表弁護士が指摘した。

4月15日コロナ感染状況
複数のメディアによると本日4月15日木曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の4月8日木曜日の533人から184人増加して729人になった。新規感染者が700人を上回ったのは、734人だった2月4日以来。7日移動平均では523.0人になり500人を突破した。前週木曜日比では122.6%になった。年代別では、20代が156人と最多が続いている。東京都基準の重症者は37人になった。20代が203人と最多を続けている。
全国では、23時59分の時点で4756人が新規感染、死亡者は35人、重症者631人になっている。東京都の死亡者数は9人、大阪府は新規感染者数が過去最多を更新して、3日連続の1000人超えの1208人になった。死亡者数は4人。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、4月14日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増加の1.19人、東京都は同じく4月14日時点で前日比0.04人減の1.13人だった。前日比上昇、下落を繰り返しているが基調的には上昇傾向のようだ。ただし、1.10人は超えているので指数関数的に増加していくことが懸念される。

コロナ感染と自民二階幹事長の東京オリンピック/パラリンピック中止言及ー日米首脳会談でオリ/パラ中止とワクチン支援で合意も

複数のメディアによると、自民党の二階俊博幹事長は関西圏での変異株によるコロナ新規感染が東京都を中心とした首都圏にも及んで来たことを背景に、「(新型コロナ感染深刻で)とても(開催が無理)なら東京オリンピック/パラリンピック中止も選択肢に」と述べ、政権中枢としてオリ/パラの中止に初めて言及した。オリ/パラは清和会(細田派)が仕切っているので、「オリンピック利権」とは無縁の二階グループとしては、思い切った発言をすることができるとの見方もある。また、二階幹事長が高齢であることが今回の発言につながったという指摘もある。

ただし、菅義偉首相訪米、日米首脳会談とも関係があるかどうか明確なところは不明だがとの関係性も考慮しておく必要がある。現地時間4月16日の日米首脳会談で菅首相が東京オリンピック/パラリンピックの中止を決断、バイデン大統領がこれに同意するというシナリオも流れている。同時に、バイデン大統領との間でワクチン供給支援の約束を取り付けることも考えられる。この場合は、菅内閣の支持率は急騰するだろう。解散・総選挙の主導権は菅首相・二階幹事長が握ることになる。ただし、日本は対中包囲軍事同盟に組み込まれることになる。

他方、河野太郎行革・ワクチン接種担当相は「無観客試合もあり得る」と語っている。なお、4月中に決定予定の国内での競技観戦者数は、5月に延期されたが、大会組織委が追い込まれていることを意味している。大会開催の準備があるため、本来は4月中に決定する必要がある。このため、オリ/パラ開催に必要な物品・サービスの発注は、有観客を前提に発注せざるを得ない状況だ。

ただし、無観客慈愛の場合でも、実質的には国際オリンピック委員会(IOC)のスポンサー企業や選手団とその関係者が10万人前後来日することになる。日本医師会の中川俊男会長は言及を避け、東京都医師会の尾崎治夫会長は医療資源確保の観点から「無観客であっても今の時点で(東京オリンピック/パラリンピックの開催は)(https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202104140000880.html)なかなか、難しい」と語っている。

なお、政府=菅政権は、埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県に「まん延防止等重点措置(まんぼう)」を適用する方針を固め、連立与党側に伝えたという(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210415/k10012977021000.html)が、「緊急事態宣言」でも「まんぼう」でも変異株による感染急増には対応できないと思われる。

河井克彦被告(元法相)公判、総選挙に重大影響か

郷原氏の主張の要点はYoutubeの「郷原信郎の権力を斬る」チャンネルの番組、https://www.youtube.com/watch?v=VO4KrWTbdF8で述べられており、詳細はヤフー・ニュースが掲載した「河井元法相公判供述・有罪判決で、公職選挙に”激変” ~党本部「1億5千万円」も“違法”となる可能性」https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20210414-00232636/)に記されている。重要なことであると思われるので、双方を参考にしながら、サイト管理者(筆者)の理解でまとめさせていただいき、考えを述べさせていただいた。

河井夫妻による大型買収劇事案は「元法相による大型買収事案」として広島県はもちろん、国内で大問題になった。結局、3月23日の第47回公判から4月8日までの第53回公判の被告人尋問で、河井容疑者が前面無罪主張から一転して初公判で主張した買収罪の罪状認否を否認し、「事実関係」は争わないと述べたことから、「買収罪」で実刑判決が下されることがほぼ確実になった。

ただし、河井被告は公判当初から、広島県の基礎自治体の首長や市町村会議員らに対して「現金」を渡したことは認めており、その目的として「自民党の党勢拡大、案里(氏)及び被告人の地盤培養活動(要するに政治活動)の一環として、地元政治家らに対して寄付を行ったもの」との認識は変更していない。この場合に、買収罪での実刑判決ということになれば、党勢拡大・地盤培養活動などのための「政治資金の寄付」であっても、「当選を得させる目的で金銭を供与」すれば、買収罪が成立することを意味することになる。

公職選挙法第221条1項では「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき」は買収罪に当たるとして、「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」と定めている。問題は、選挙期間と地盤培養活動(政治活動)の期間が離れていれば、「当選を得させる」目的であったと論証・立証することが困難になり、検察当局としても抑制的に公選法を適用せざるを得なかったし、それが慣例でもあったことだ。

これまでの検察の実務では、買収罪の起訴事実は、「投票又は票の取りまとめを依頼し、その報酬として」と記載されてきた。本件の克行氏の起訴状でもそのように記載されているが、克行氏はそのような依頼を行ったことは否定しており、県議・市議の側も、明示的に「票の取りまとめを依頼された」と証言している者はほとんどいない。

起訴事実の記載からは、「投票の依頼」か「票の取りまとめの依頼」を行ったか否かが有罪無罪の判断の分かれ目のように思えるが、そのような記載方法自体が、検察当局が、従来、選挙に向けての資金のやり取りのうち、「政治活動」に関するものを買収罪による摘発の対象から除外する「抑制的運用」をしてきたことを前提にするものと言える。

河井克行元法相・被告の被告人尋問の不自然さについて語る郷原信郎弁護士
河井克行元法相・被告の被告人尋問の不自然さについて語る郷原信郎弁護士

 

つまり、郷原弁護士によると、検察庁選挙に関する資金のやり取りのうち、「政治活動(地盤培養活動)」に関するものを、買収罪による摘発の対象から除外するという公選法の「抑制的運用」を行っていた。しかし、第47回公判で河井被告は「事実関係については争わない」と言明したものの、「地盤培養活動などのために寄付をしてきた」との認識は変更しなかった。こうなると、「寄付行為」そのものが「買収に相当する」場合があるという問題が生じることになる。

公職選挙法では上述のように、「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益」などを与える場合は買収行為になる。「寄付」が買収行為にあたらないようにするためには、公選法第192条4項「何人も、前項の期間内(注:3年間)においては、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会)の定めるところにより、報告書の閲覧を請求することができる」に従って、寄付を受けたものの使途を公開できるようになければならない。

「政治資金規正法」でも、第9条で会計帳簿の記載・備え付けを規定しており、第10条で7日以内の明細書の逐次での作成・提出を義務付けている。つまり、次のようになる。

選挙に関して、様々な費用がかかることは否定できないが、その費用は、すべて具体的に特定して、選挙運動費用収支報告書に記載して提出させ、公開する、というのが公選法のルールである(192条第4項)。

ところが、河井被告の場合は、「寄付」を「河井案里候補の当選のために」という暗黙の了解で首長や市町村会議員に手渡している。河井被告は「差し上げた」という表現を用いており、使途自由の「供与」になり、買収罪成立の要件になる。

克行氏の供述によれば、政治資金の財布は4つあり、寄附については、金額などを調整して先方とも協議し、最終的に報告書に記入していたとのことであり、現金の授受の時点で領収書の授受を行わないのは、(検察が従来は見逃してきた)通常のやり方と変わらないことになる。(中略)

克行氏から現金を受領した県議・市議の多くの証言も、「参議院選で案里をよろしく」という趣旨だと認識した旨証言しているが、それは、「克行氏に案里氏を当選させる目的があると認識していた」ということであり、克行氏の「政治活動の寄附」の主張を直接否定するものではない。

結局のところ、県議・市議への現金供与についての「自民党の党勢拡大,案里及び被告人の地盤培養活動の一環として,首長,県議ら地元政治家らに対して,寄附をした」という点について、克行氏の供述の信用性を否定する証拠はない。判決の事実認定も、この点を前提とするものとなる可能性が高いと考えられる。

(その場合は、多少長い引用になりますが、次のようになることが考えられる)

では、県議・市議への現金供与が、克行氏の主張どおり「自民党の党勢拡大,案里及び被告人の地盤培養活動」に関するものだったと認められた場合、それは、公選法違反の買収罪の成否にどう影響するのか。公職選挙法違反の買収罪の成立要件は、(a)「当選を(得る又は)得させる目的で」(b)選挙人又は選挙運動者に(c)金銭、物品その他の財産上の利益を「供与すること」、である。

克行氏は、「案里氏に当選を得させる目的があった」ことは(被告人陳述で)認めている。「供与」というのは、一言で言えば「相手に得させること」である。公選法上の「供与」は、「使途を限定せず、自由に使えるものとして、相手に得させること」、つまり「差し上げること」を意味する。克行氏は、県議・市議に、現金を「差し上げた」と繰り返し供述しており、「自由に使えるものとして得させた」ことに争いはない。

その「当選を得させる目的の」「供与」が、「選挙人」又は「選挙運動者」に対するものかどうかについては、少なくとも、県議・市議が、参議院広島選挙区で選挙権を有する「選挙人」であることは明らかである。(中略)

つまり、克行氏が現金を供与した県議・市議らが、「選挙人」又は「選挙運動者」であることを否定する余地はなく、要するに、「当選を得させる目的」で「金銭を供与」したのであれば、「党勢拡大」「地盤培養」等の政治活動の性格があろうがなかろうが、買収罪が成立することに変わりないのである。

これまでの検察の実務では、買収罪の起訴事実は、「投票又は票の取りまとめを依頼し、その報酬として」と記載されてきた。本件の克行氏の起訴状でもそのように記載されているが、克行氏はそのような依頼を行ったことは否定しており、県議・市議の側も、明示的に「票の取りまとめを依頼された」と証言している者はほとんどいない。

起訴事実の記載からは、「投票の依頼」か「票の取りまとめの依頼」を行ったか否かが有罪無罪の判断の分かれ目のように思えるが、そのような記載方法自体が、検察当局が、従来、選挙に向けての資金のやり取りのうち、「政治活動」に関するものを買収罪による摘発の対象から除外する「抑制的運用」をしてきたことを前提にするものと言える。克行氏が主張するように「党勢拡大・地盤培養活動」に関する「寄附」であっても、「買収罪」は成立するのであり、むしろ、ストレートに、(裁判官は)「河井案里に当選を得させる目的で、選挙人であり、かつ選挙運動者である〇〇に金銭を供与した」、と認定すればよいのではなかろうか。

普通の寄付行為ならば、政治資金規正法や公選法のっとって、逐次かつリアルタイム(7日以内)に政治資金収支報告書に記載していなければならない。ところが、河井被告はそうはしないで「差し上げた」、つまり、使途は自由だから、「寄付」と強弁しても結局のところ公選法違反の「買収」行為にならざるを得ない。領収書の発行も時期や、発行時期に問題があり、その結果として、次のようなことが生じてしまう。

克行氏も、県議・市議等に現金を供与したことについて、「本来であれば、参院選の選挙資金は、自民党本部から広島県連に提供された選挙資金が、広島県内の市議・県議等の自民党政治家の支部組織に提供され、公認候補の溝手顕正氏と案里氏の両方の選挙に関連する政治活動に使われるはずなのに、19年の選挙では、県連は、溝手氏だけを支援し、案里氏の支援をすべて拒絶していたので、県連が果たすべき役割を果たしていないので、やむを得ず市議、県議に県連に代行して党勢拡大のためのお金を差し上げた」と供述している。

つまり、党本部から提供される選挙資金を県連から県議・市議に提供するという本来のルートが使えなかったので、やむを得ず「現金」で、自分が直接手渡すという方法を使ったということであり、克行氏が県議・市議に対して行った現金供与は、金額の規模に差はあっても、広島県連の県議・市議への交付金の提供と、ほぼ同じ性格ということになる。

国政選挙の前に、現金で選挙のための活動資金を提供するのは、克行氏だけの話ではなく、広島の自民党においてかねてから行われてきたやり方である。克行氏の公判供述を前提に県議・市議への現金供与が買収罪で有罪とされるということは、そのような広島自民党のやり方自体が、公選法違反の買収と判断されることを意味する。

そして、そのような観点からは、そもそも、自民党本部が、広島県自民党の「第3支部」、「第7支部」に「交付金」として克行氏に提供した合計1億5000万円も、「案里氏を当選させるための党勢拡大・地盤培養のために、使途を限定せず、自由に使えるお金」として克行氏に「供与」したものなのであれば、克行氏が、案里氏の参院選の「選挙運動者」であることを否定する余地はない以上、1億5000万円それ自体が、公選法違反の「買収罪」に該当する可能性も否定できないということになる。

ここが、自民党的選挙・政治資金が利権政治につながる大きな問題点だ。ただし、1億5千万円のうち、河井夫妻が使ったのは3100万円程度で、残りはまだ闇の中だ。なお、河井被告は被告人尋問で2つの明らかなウソをついている。その第一は、河井案里氏を広島選挙区に立候補させたのは、参議院で不足している「憲法改正」賛成派を増やして、「憲法改正」を実現するためで、宏池会の溝手顕正候補を追い落とすつもりはなかったと述べたことだ。広島県が宏池会の牙城である「保守王国」だとしても、茨城県のように2議席を獲得できるだけの基盤はない。郷原氏の論考には、検察も把握している、溝手顕正氏を追い落とすための裏工作が詳しく述べられている。

第二は、1億5千万円について、河井被告自身のポケットマネーから出したと述べたことだ。これは、自民党の公式見解とも異なるし、上記引用文腸内の「県連が果たすべき役割を果たしていないので、やむを得ず市議、県議に県連に代行して党勢拡大のためのお金を差し上げた」との陳述前後自身が、暗に自民党本部由来であることを認めている。検察側も「ポケットマネー原資説」は簡単に覆している。

なお、郷原氏は河井被告の無理筋の供述の背後に、自民党本部からの働きかけがあったと見ている。

克行氏が、敢えて、このような「信用性の希薄な供述」を行ったことには何らかの政治的背景があると合理的に推測することが可能だ。3月初め(注:3月3日)に保釈された後に、自民党本部側から克行氏に何らかの接触があり、議員辞職の時期を、再選挙が4月25日に実施されないよう「3月15日以降」とすることに加え、上記事項の供述内容についても何らかの「自民党側からの要請」があった可能性もある。

保釈後に、初公判で全面無罪を主張していたのに、保釈後の3月23日からの被告人尋問で有罪が確定になる「事実を争わない」としたことは不自然と言えば不自然だ。

以上の河井氏の今回の買収事案は、自民党の選挙資金支給や政治活動資金支給の在り方に直結する重大事案だ。ただし、焦点は河井被告が「地盤培養」などの政治活動のための「寄付金」と主張していることについての扱いが大きな焦点になる。ただし、原資の1億5千万円の使途は明らかにされていない。本来は全容の解明がなされてこそ、正しい判決を下すことができると思われる。

日本国憲法第6条2項に「天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する」と規定されているから、裁判所が内閣(総理大臣)の配下に入りやすいことはある。ただし、第76条2項で「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」とも定められている。河井被告への判決が言い渡される日にちははっきりしないが、どのような判決が言い渡されるか、主権者国民としては注視する必要がある。

なお、全容が解明されていない1億5千万円の使途については、次の投稿記事も参考にされて下さい。



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