4日の都議選で選挙に弱い菅自民党が明瞭になったが今の立憲・枝野代表では政権奪取に疑問(広島収賄側全員不起訴追記)

7月4日日曜日に行われた東京都議選では、「自公」で過半数(64議席)が喧伝されたいたものの、自民党33議席、公明党23議席で合計56議席と過半数にはほど遠かった。安倍晋三首相の際の菅義偉官房長官(いずれも当時)が首相に就任して以来、重要な選挙では6連敗だ。コロナ禍対策の度重なる失敗と東京都民の8割が望んでいない東京オリンピック/パラリンピック強行開催を企てているためだ。もはや、菅総裁の顔では来る総選挙で自公政権には勝ち目はないというのが本来の見方だ。自民党上層部では醜い権力争いが行われているのは確かで今こそ、これも利用して、真正野党が理念と政策で強力な共闘体制を構築すれば政治権力を国民の手に取り戻すことができるはずだが、野党第一党の枝野幸男代表の決断力に疑問を持つ国民も多い。枝野代表が、①オリ/パラ中止②抜本的なコロナ禍対策転換③日本共産党との共闘に反対する連合の影響力の駆逐③れいわ新選組とも共闘するだけの度量ーを示さない限り、秋までに行われる総選挙で政権奪取を実現することは難しいだろう。

東京都のコロナ感染者数の推移

複数のメディアによると東京都の6日火曜日の新規感染者数は、新型コロナウイルスの感染者が新たに前週火曜日比117人増の593人、死者は1人。1週間前の火曜日より117人増えた。感染者が前の週の同じ曜日に比べて増えたのは17日連続となった。ただし、6月16日水曜日から19日土曜日を除いて直近20日間、前週同曜日比で増加している。7日の移動平均では前週火曜日比121.7%増の602.3人になり、6月30日からステージⅣの500人を超えている。本来何まん延防止等特別措置(の継続)ではなく、補償付きの緊急事態宣言に切り替えるべきところだ。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

東京都議選の本当の意味と総選挙での政権奪還に向けて

本稿は、読書家の清水有高氏のYoutube番組「一月万冊」にレギュラーとして出演している朝日新聞出身でフリージャーナリスト・佐藤章氏の取材と現状分析、政権提言にサイト管理者(筆者)の考え方を加えたものです。まず、7月4日の東京都議選の結果を示しておきます(https://www.youtube.com/watch?v=v4yn3uFTTzo)。

清水有高氏の「一月万冊」より
清水有高氏の「一月万冊」より

自公両党で都議会の過半数は確実と言われていたが、ひと桁台に激減すると言われていた地域政党の都民ファーストが僅差で都議会第二党になり、日本共産党と同様に善戦したため、自民党は全く伸び悩んだ。立憲も議席数ではほぼ倍増したが、当選率で見ると自民党とほとんど同じ。つまり、立憲も伸び悩んだと言って差し支えない。これは、オリ/パラについて、「中止か延期」とはっきりしない公約を掲げたためだ。なお、都議選の投票率は過去2番目の低さ 42.39% だった。普通は投票率が低いと、自公勢力が圧勝するはずだった。ところが、参院広島選挙区補欠選挙では投票率が低かったにもかかわらず、野党統一候補が勝った。日本の国民の間で激震が起きていると捉えるべきだ。

次に、自民党が重要選挙で6連敗した事実を挙げておく。植草一秀氏のメールマガジン第2973号「天の網が菅義偉氏を絡め取る」から引用させていただきたい。

①1月17日投開票の沖縄県宮古島市長選では、社民・社大・共産・立民が推薦した前県議の座喜味一幸氏が、4選を目指した自民・公明推薦の下地敏彦氏に勝利。宮古島では陸上自衛隊が地対艦・地対空ミサイル部隊の弾薬を保管する目的で弾薬庫の建設を進めている②1月31日投開票の北九州市議選では自民党現職6名が落選。自民党の退潮は鮮明③3月21日投開票の千葉県知事選では自民党県議から出馬した関政幸氏を前千葉市長の熊谷俊人氏が圧倒④4月25日の国政三選挙で自民党が三敗=惨敗=全敗⑤6月20日投開票の静岡県知事選で自民党推薦の岩井茂樹元国土交通副大臣が現職の野党連合候補である川勝平太氏に大敗。得票数は川勝氏95.7万票に対して岩井氏62.5万票⑥7月4日の東京都議選で事実上、自民党が惨敗

オリ/パラの真夏開催については、コロナ感染第5波が落ち着く秋の10月に延期するべきだとの声があるが、大営利イベントの興行主である国際オリンピック委員会(IOC)が、秋には米国でバスケットなどプロ・スポーツ大会があり、その放映をしなければならないから、夏季開催はNBCの放映権量獲得のため日本に強要したものだ。「金権主義」に堕しているため、再延期はIOCが認めないから、選択肢にはない。東京都も日本政府もオリ/パラ組織委も主権を放棄して、唯々諾々とIOCに従っているだけだ。

また、都民ファーストが善戦したのは、オリ/パラ無観客を公約にしたことと、小池百合子都知事が都議選最終盤に同党に肩入れしたことが大きい。政府=菅政権は開幕式2万人、一般競技1万人を目標にしていたから、「無観客試合」を公約にしたことは自公と一線を画する上で有効だったと言えなくもない。ただし、東京オリンピック/パラリンピック中止を求める陳情を東京都議会で採択した際に、立憲と日本共産党は賛成したものの、都民ファーストは自民、公明党と一緒になって反対し、陳情を葬り去った経緯がある。また、「無観客試合」にしてもオリンピック関係者とボランティア、物資納入業者など日本の大会関係者、ひいては日本国民との接触は避けられず、感染拡大を助長する。あくまでも、選挙対策に過ぎない。

なお、都民ファーストの木下富美子立候補者(板橋区)が選挙期間中に無免許(免許停止)で事故を起こし、都議会議員(2期目)に選出されたものの発覚して、都民ファーストから除名されたが議員辞職はしていない。「善戦」し、キャスティング・ボートを確保したとは言え、体質は自民、公明両党に似ており、カメレオン政党、こうもり政党でしかない。

また、小池都知事は「政界渡り鳥」と揶揄され、都立病院などの公的病院の独立行政法人化を進めるなど都民の貧富の格差を拡大する新自由主義政策を推進している。しかし、都民の多くは小池都政に騙されているから、昨年7月5日の東京都知事選挙で小池都知事が圧勝したことに象徴されるように、小池都知事の人気は高い。その小池都知事が都議選の最終局面で「都民ファースト」に肩入れしたことも、都民ファーストの「善戦」につながったと見られる。ただし、勝利したわけではない。

小池都知事としては、「都民ファースト」を善戦させ、自公勢力を過半数割れに追い込むことで、自民党に圧力をかけることができるようにしたかったのだろう。その背景には、2019年夏の広島選挙区での大型買収事案で二階自民党幹事長が検察側から、①1億5千万円の河井克行(東京地裁で執行猶予なしの懲役3年、即時控訴し保釈を申し入れたものの東京高裁は、安倍氏側との接触を遮断するため即時に却下)・案里(執行猶予5年、懲役1年4カ月と実刑にほぼ等しい判決が確定)夫妻陣営への資金供与の最高責任者が安倍総裁(当時)②供与された資金の流れーなどがある程度解明できる政治資金収支報告書などを返却してもらったことがある。これに加えて、佐藤氏によると、河井陣営に渡った資金のかなりの額が、河井克行氏から安倍氏側に渡ったという「取り敢えず半分(とり半)」疑惑がある。

【追記:7月7日午前零時】中国新聞をはじめ複数のメディアによると東京地検特捜部は6日、東京地裁から公選法違反の罪で懲役3年の実刑判決を言い渡された河井克行元法相(58)から現金を受け取った地元議員ら100人全員を不起訴とした。これは、①大規模買収事件の真相(買収資金を河井陣営に渡す指示をしたのは、政敵である溝手顕正参院議員を落選させ、失脚を図るための当時の安倍総理総裁である疑いが濃厚)を究明するため、林真琴検事総長率いる検察側が地元議員らと司法取引を行った(参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210601/k10013061231000.html)②収賄側の地元議員の起訴等については検察審査会にまかせて、安倍疑惑(ならびに、溝手顕正陣営によるとパンフレットの有権者全戸配布や立て看板の設置には3億円程度の膨大な資金が必要であることから、当時の菅官房長官が管理していた官房機密費が投入された疑惑)の追及に不退転で全力を注ぐ強い意志の表れーであることを意味するものと思われる。要するに、安倍総理・総裁の犯罪を徹底的に追及する林真琴率いる検察側の強い意思の表れだろう(参考:https://www.youtube.com/watch?v=0JD1g0Lm__U)。政界激震の前兆だ。

こうなると、3Aに加えて、このところ二階幹事長とすれ違いがある菅首相の連合軍に対して、二階幹事長の力が強くなるはずだ。ところが、「政界の一寸先は闇の状態」という言葉があるように、現状ではそうはなっていないようだ。第一に、二階氏に人望がなく、二階派も要するに「半グレ(半分愚連隊)」派でしかないため、菅首相としては自民党内最大派閥の事実上の領袖である安倍前首相の属する細田派(清和会)や麻生派(安倍前首相と気脈を通じている甘利党税制会長は二階派)の支持を取り付けることを優先しており、「すきま」の出てきた二階幹事長が不利になっているようだ。第二に、二階幹事長の小選挙区である和歌山3区は、総理・総裁を狙っている世耕弘成(ひろしげ)自民党の参院幹事長の祖父で経済企画庁長官を務めた世耕弘一の地盤でもあることから、総選挙の際に、同区から出馬する可能性があることだ。

自民党の選挙の総責任者は幹事長(二階氏)だから本来ならそういうことは許されないが、自民党の総責任者は菅総裁。世耕氏のほうが二階氏よりも「人望」があるから、自民党を離脱し、無所属として出馬するといったウルトラDを行ってもおかしくはない。当選すれば、二階幹事長を煙たがっている菅首相との「密約」で自民党に復党すれば良い。ただし、東京オリンピック強行開催がデルタ株の市中感染拡大とも相まって東京都に甚大な被害をもたらす可能性もある。その場合は、①菅首相がそれでも「エビデンス」はないといって総裁の座に留まる②人が良いだけの岸田文雄前政調会長を暫定的に総裁のポストに置き、総選挙を戦うーといったシナリオが考えられる。

小池都知事は本来、二階幹事長の盟友であり、女性初の総理・総裁を目指しており、「菅総裁」の顔では総選挙を戦えないと考える自民党議員も多いことから、二階幹事長の権力が絶対的であれば、「無観客開催」の責任を取って都知事を辞任し、総選挙に出馬したいところだろう。ところが、自民党内で二階幹事長が浮足立っているため、なかなか踏み切れないところもある。その場合は、都議選で「入院」して雲隠れし、その際にこっそりと都民ファーストを支援していたように、新たな「小池劇場」を創作する可能性もある。

なお、こうした自民党内の権力闘争は、対中軍事包囲網作りを急ピッチで勧めている米国のディープステート(闇の国家:軍産複合体と多国籍金融資本・企業他国籍金融資本・企業)も熟知していると思われる。ディープステートはもちろん「媚中派」と呼んでいる二階幹事長の失脚を狙っている。このため、ジャパン・ハンドラーズやCIAが菅首相+3Aを支援する可能性も視野に入れておかなければならない。その場合は、それを踏まえた(ディプステートに加担した)「小池劇場」を創作することになる。

清水有高氏の「一月万冊」より
清水有高氏の「一月万冊」より

ただし、いずれにしても、政府=菅政権の命運はコロナ第5波の中でのオリンピック強行開催がどのうような展開を見せるかにかかっている。コロナ第5波がひどければ、ディープステートは自公政権を支援するため、立憲の枝野代表ー福山哲郎幹事長をテコ入れする可能性もある。米国の二大政党である民主党と共和党もディープステートの傘下にあることは同根だが、枝野代表らに日本労働組合総連合会(連合)を使って野党分断工作を展開する可能性がある。具体的には、立憲と日本共産党、れいわ新選組の分断だ。原発にこだわる国民民主党も利用するだろう。国民民主党はいずれ、自民党に吸収されていく運命にある。

このようになれば、日本は対米隷属植民地であり続け、日本にとって最も不幸なことになる。佐藤氏が指摘するのは、枝野代表が「曖昧なこと」でごまかさず、胆力をつけることだ。そして早急に真正野党の野党共闘党首会談を開き、理念(反新自由主義)と政策(①政府コロナ感染症対策本部分科会など「感染利権ムラ」の解体と政府から独立した日本版疾病予防センター(CDC)の創設を含むコロナ禍抜本対策②東京オリンピック/パラリンピック中止③枝野代表が公約に明記することを言明した消費税減税(https://mainichi.jp/articles/20210626/k00/00m/010/306000c)を含む共生主義に基づく経済政策③対米独立外交と東アジア共同体の創設ーなど国民に分かりやすい骨太の政策を打ち出すことだ。

佐藤氏は同時に、影の内閣(シャドウ・キャビネット)を公表し、政府の中に小沢一郎衆院議員を副総理として迎え、民主党時代に創設に失敗した「国家戦略局(各種利権ムラの解体が目的)」の再創設と連合を納得させるための「原子力政策」の抜本的転換を図るようにしてもらえば良い。また、立憲の幹事長には中村喜四郎衆院議員を起用し、小沢氏とともに総選挙対策を指揮してもらうーなどを提言している。サイト管理者(筆者)はこれに同意したい。枝野代表がこうした腹をくくった布陣を敷かない限り、自公連立政権は打倒することはできない。

なお、れいわ新選組は今回の都議選では一議席も獲得できなかった。佐藤氏の著書「職業としての政治家・小沢一郎」では、小沢氏が、山本太郎代表はその将来を期待して「雑巾がけからやり直せ」と叱咤激励をしている。山本代表も、「消費税を廃止する」ことが政治活動の究極の目標ではないだろう。最終的には、自公連立与党政権を打倒し、独立国家日本を創出することが政治活動の究極の目標であるはずだ。れいわ新選組には柔軟性を期待するとともに、枝野代表も真の日本改革を目指すなら、消費税減税を総選挙の公約に盛り込むよう支持したことを着実に守り、れいわ新選組を暖かく迎えるべきである。


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