遅れ始めたワクチン接種ーデルタ株など変異株の影響か(WHOの危機意識追加)

政府=菅義偉政権が頼ってきた「ワクチン一本足打法」が「黃信号」から「赤信号」に変わりそうだ。背景には、感染力と症状悪化力(毒性)、世界中でワクチン耐性の強いデルタ株の市中感染がまん延してきたことにあると見られる。コロナの感染には「季節敵要因」があるというのが世界の定説だ。日本では初夏と夏に小流行し、冬に大流行するという形で表れるが、東京オリンピック/パラリンピックを強行開催する今夏は、東京都など関東圏を中心にデルタ株が次第に市中感染を広げているから、その相乗効果が強く懸念される。

東京都コロナ第5波本格襲来ーデルタ株の影響、本格化か

東京都はコロナ第5波が本格襲来した模様だ。本日7月3日土曜日は前週比182人増加した。前週比増加は6月16日水曜日から19日土曜日を除いて17日間続いており、新規感染者の7日間移動平均は563.1人になっており、ステージⅣの500人をかなり上回ってきた。複数のメディアによると、世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長は2日、新型コロナウイルスの感染状況についてインドで確認されたデルタ株が急速に広がる中、「今回のパンデミックの中でも非常に危険な時期を迎えている」と述べている(https://news.yahoo.co.jp/articles/54da54538771d3344bae5584594b17326a21692f)。東京オリンピック/パラリンピック開催にも重大な影響を与えることが予想される。

ワクチン接種の遅れ、デルタ株など変異株の影響か

各種のマスコミが報道しているように、「ワクチン一本足打法」に頼り切っている政府=菅政権は、ワクチンを確保できなくなり、相当に慌てているようだ。大規模接種会場や職域接種が中止になり、全国の基礎自治体にもワクチンが届かない。ここでは、朝日デジタルの「ブレーキかかるワクチン接種 募る不満『政府も手探り』」(https://digital.asahi.com/articles/ASP72722JP72UTFK011.html?iref=comtop_7_01)を引用させていただきたい。

新型コロナウイルスのワクチン接種が加速するなか、ワクチンの供給不足を理由に新規予約を停止する自治体が続出している。菅義偉首相が全国に「1日100万回接種」の号令をかけて目標に届いたいま、何が起きているのか。大阪市は2日、診療所による個別接種と区民センターでの集団接種で、12日以降の新規接種の停止を決めた。市は19日以降に供給されるワクチンについて、国に約53万回分を要求しているが、見通しは立っていない。そのため2回目接種分のワクチンが足りなくなる懸念があり、1回目の新規予約を停止した。(中略)

一方、ワクチンを感染対策の「切り札」に掲げる菅義偉首相は、今月から始まる東京五輪を見据えて、「1日100万回接種」「7月末までに高齢者接種を終わらせる」と公言。自治体にそのための体制を整えることを求めてきた。政府を挙げた自治体への働きかけもあり、6月に入って「1日100万回接種」は達成し、65歳以上の高齢者向けの接種も伸びてきてきた。

ところがここに来てブレーキがかかる。高齢者に加えて、基礎疾患のある人など64歳以下への接種も始めた自治体にとって、これからが「本番」。にもかかわらず、海外から入ってくるファイザー製ワクチンの供給スピードは7月以降減速する。国から自治体に2週間ごとに配送されるワクチンは、7月は先月に比べ約3割減の予定。さらに国は8月以降の配送量を明らかにしておらず、自治体は見通しが立てられずにいる。ある官邸幹部は「(政府も)手探りでやっている。自治体側には、準備したのにモノが来ないという不満は当然ある。いったん歩みを緩めて調整するしかない」とこぼす。

混乱に拍車をかけているのが、政府が並行して進めた米モデルナ製を使う企業などの職域接種と自治体の大規模接種だ。5千万回分の供給量に対し申し込みが殺到し、ワクチン不足が露呈。自治体の大規模接種のうち1200万回分は急きょファイザー製を回すことになった。そのファイザー製だが、厚生労働省によると、6~7月にかけて自治体は約1億回分を希望。しかし、国からの供給は約6千万回分にとどまり、大きなギャップが生じている。

ファイザー製は、年内に1億9400万回分(9700万人分)の供給を見込む。うち約1億回分を自治体に配送しており、政府は「供給量が足りないことはない」と強調する。首相周辺は「在庫が足りないところに多く供給する方法で調整したい。それでもダメなら、(すでに予約済みの)2回目の接種をずらしてもらうしかない」とし、後ろ倒しになる可能性を示唆する。首相に近い自民党議員は、世論の反発に気にもむ。「(4日投開票の)都議選はあやふやで終わるかもしれないが、衆院選は戦えなくなる」

政府=菅政権がワクチンを確保している量は不明だ。少なくとも、確保量が不足してきているのは間違いない。ワクチンを新規に確保出来ないのは、デルタ株が世界各国の市中で市中感染が蔓延しており、米国ファイザー社やモデルナ社などmRNA型ワクチン製造の大手製薬メーカーに対する供給要請が殺到しているからだと見られる。南米で猛拡大しているラムダ株の問題もある。

NHKWebによる
NHKWebによる

既に、英国のアストラゼネカ社とオックスフォード大学が共同開発したウイルス・ベクター型のワクチンの安全性・有効性は、デルタ株を含め各種の変異株に対して現株より相当劣ることが明らかになった。また、米国のファイザー社とドイツのビオンテック社が共同開発したmRNA型ワクチン(極低温保存が必要)やモデルナ社が開発した同じくmRNA型ワクチン(低温保存が可能)も、変異株のために改良したワクチンを三回目に接種しなければならないとの報道も出ている(https://forbesjapan.com/articles/detail/41442)。

新型コロナウイルスのワクチン接種が進む米国では、「3回目の接種」の必要性が指摘され始めている。米食品医薬品局(FDA)の医薬品評価研究センター(CDER)のピーター・マークス博士は、5月18日、ファイザーとバイオンテック、モデルナの3社のワクチンを完全に接種した人が、免疫を維持するために、1年以内に「ブースター注射」が必要になる可能性があると述べた。しかし、他の専門家は早ければ6ヶ月後にブースター注射が必要になると述べている。

ファイザー社製のワクチン接種
ファイザー社製のワクチン接種

ファイザーのアルバート・ブーラCEOは先週、同社がバイオンテック社と共同開発したワクチンの2回目の接種から6〜12ヶ月以内にブースター注射が必要になるだろうと述べた。バイオンテックのウグル・シャヒンCEOは先月、2回目のワクチン接種後の約8カ月で、体内のコロナウイルスの抗体反応が低下し、これが「ブースト」の理想的な時期になると述べていた。ジョンソン・エンド・ジョンソンのアレックス・ゴースキーCEOは今年2月、新たな変異株に対抗するためには、インフルエンザの予防接種のように、年に1回、コロナウイルスワクチンを接種する必要があるかもしれないと述べていた。

しかし、一般人への3回目の接種が必要だと判断するのはまだ早いと指摘する声もあがっている。元CDC長官のトム・フリーデン博士は先週、ロイターの取材に、「現時点では、3回目の接種の必要性は明らかになっておらず、すべての人に年1回のブーストが必要だと説くのは、まったく不適切なことだ」と述べていた。「ブースター注射が必要かどうか、いつ行うべきかを最終的に決めるのは、そこから金銭的利益を得る企業のCEOではなく、公衆衛生の専門家であるべきだ」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症学者のモニカ・ガンジー博士は、ロイターの取材に話した。

米国を代表する感染症の専門家のアンソニー・ファウチ博士は先月、3回目の接種の必要性については、夏の終わりか秋の初めになれば、データに基づいたより良い判断ができるようになるだろうと述べた。(以下略)

従来はワクチンの接種は二回で良いとされていたが、大手製薬メーカー側から変異株の出現に三回以上の接種をしなければならないとのアナウンスが流れて(流されて)いる。損害賠償を免れている(免責条項)があるから、「濡れ手に泡」だが、真の安全性・有効性を証明しない限り、「市場制資本主義の倫理」にかける。mRNA型ワクチンは遺伝子レベルの新型ワクチンであり、中長期的な安全と有効性は全く不明だ。大規模な第三相の治験が必要になることは明らかである。三回目の接種も含め、過去に接種を受けた世界の諸国民のヒトゲノム解析も徹底して行う必要がある。

なお、新潟大学の岡田正彦名誉教授のサイト(https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/)によると、①接種者が増えるほど変異株が出てくるため、いたちごっこになる②強力すぎるワクチンのせいでウイルスが凶悪化し悲劇をまねく恐れがあるーとあり、岡田名誉教授は「結論は、いくらワクチン接種に励んでも集団免疫は永久に期待できず、したがって接種を受けない理由も科学的に正当化できるということです」と指摘している。

「現代の緒方洪庵」と称されるNPO法人の医療ガバナンス研究所理事長の上昌広理事長・医師は東京新聞7月1日付で次のように語っている(https://www.tokyo-np.co.jp/article/113771)。

市区町村が行う接種は大都市圏で遅れている。そういうところで職場接種は機能する。感染の「第5波」が起こるのは大都市圏なので、職場接種から手を引くことはあり得ない。ワクチンの確保は政権の仕事。及第点はつかない。

東京新聞のインタビューに答える上昌広氏
東京新聞のインタビューに答える上昌広氏

どんな国でも国民の約5割は進んで接種し、約1割が反ワクチン層。残りは無関心層。5割までは順調に進む。1日100万回打てることはいいことだが、このペースで打てる期間は短い。その先、無関心層に打ってもらうことが(世界各国が集団免疫を確保することで)カギになる。

上理事長(や東大先端研の児玉龍彦東大名誉教授)は、新型ワクチン接種推進派である。ただし、反ワクチン派の中にもフェイク・ニュースをSNSで流す人たちとは異なって、岡田名誉教授など理論的裏付けをもってワクチン接種に反対する医科学者も多数存在する。上理事長が「無関心派」と称する各国の国民をワクチン接種に向けるためには、世界の有力医学雑誌で論争を展開し、結論を得る必要があるだろう。

東京オリンピック/パラリンピックのコロナ対策は無意味ーもともと中止が必要だった

東京オリンピック/パラリンピックの強行開催に向けて、政府、東京都、オリ/パラ組織委は、選手団関係者の隔離期間をなくすなどさまざまな特例を設けて、「強行開催一直線」だ。一週間前には、最大「一万人」での有観客を考えていたようだが、最近では菅首相や入院療養から復活した東京都知事は「無観客」ということを再び主張するようになった。しかし、「無観客」でもオリ/パラ選手団とボランティア、オリンピック関連業者など日本の国民との接触は生じる。また、選手団に対する毎日の検査は呆れたことに精度が通常は30%、最大で50%の抗原検査に過ぎない。開幕中のプロ野球などでは、最新鋭の検査装置と試薬を使ってPCR検査を行っている。

抗原検査では、いくら行ったとしても必ず、コロナ陽性者を見逃す。一人の陽性者からとんでもない多数の感染者が出てくる。だから、バブル方式は必ず破綻する。自民党の衆院議員・額賀福志郎元財務相(竹下派の幹部)がワクチン接種後一週間後に新型コロナに感染したことから、自民党竹下派を中心にバブル方式に批判が出ている(参考記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/4557a9831f1dca5b5ef20e68e118d9db324629a2)。丸川珠代五輪相(清和会)は、ワクチンを一回接種すれば「一時的な免疫」を獲得できるという厚生労働省の見解を無視した非科学的な発言を行った。官僚があわてて「一時的な」を「一次的な」と言い換えたが、「一次的免疫」とは医学的・科学的に根拠のない言葉である。

衆院は28日、自民党の衆院議員・額賀福志郎元財務相が新型コロナウイルスに感染したと発表。額賀氏は20日に地元・茨城県行方市で1回目のワクチンを接種後、26日に発熱。28日に都内の病院を受診したところ感染が判明し、即日入院した。感染してから発症するまで、おおよそ4~6日。額賀氏はワクチン接種後に感染した可能性がある。実際、接種後の感染事例は海外で相次いでいる。

ワクチン接種の“優等生”であるイスラエルは、総人口の6割以上が少なくとも1回接種を終えている。ところが、現地メディアによると、先月の感染者891人のうち半数は2回接種を終えていたという。一時は2ケタまで抑えた1日の新規感染者数はあっという間に300人を突破した。米国でも大リーグ(MLB)やプロゴルフ、プロバスケットボール(NBA)の選手やスタッフがワクチン接種後に感染。東京五輪も選手を毎日検査して社会から隔離する「バブル方式」を採用するが、ワクチンを打っていても感染が広がる恐れがある。

改めて気になるのは、ワクチンの感染予防効果の有無だ。昭和大医学部客員教授の二木芳人氏(臨床感染症学)がこう言う。「ワクチンを2回打ったからといって、完璧にウイルスから守られるわけではありません。まして、1回接種ではなおさらです。とはいえ、イスラエルや英国はワクチン接種を進め、感染拡大を一時は抑え込みました。感染予防効果はある程度期待できる一方、2回目を打ち終わっていない人が一定数いることや感染対策の緩和、インド株(注:デルタ株)の強い感染力などの要因が重なり、感染者が増えているのでしょう」

NHKWebより
NHKWebより

東京オリンピックの強行開催は、①安倍晋三首相が河井克行法相(当時)に対して、自民党が正式に河井克彦・案里候補陣営に支給した一億五千万円の「とりあえず半分(とり半)」を横領したという「とり半」」を疑惑隠す②菅官房長官がセガサミーホールディングスの里見治(はじめ)会長に対して、日本オリンピック協会(JOC)と密接な関係がある嘉納治五郎財団に東京オリンピック/パラリンピック招致のための買収資金5億円を振り込ませた疑惑(https://www.dailyshincho.jp/article/2020/02171700/?all=1&page=2)を隠す③トーマス・バッハ会長らオリンピック貴族が米国テレビ局NBCから巨額の放映権料を手に入れるための一大商業イベントを無に帰しない(放映権料を獲得する)ーためだけに行われる。オリンピックに青春をかけてきたアスリートは、商業主義の駒にすぎない。

菅政権は、東京パラリンピックは中止を決めているようだが、東京都内のコロナ感染がひどくなり、あるいは、選手団関係者がデルタ株その他の変異株に感染して、開催したオリンピックが続行不可能になれば中止するのはもちろんだ。ただしかし、最悪の事態を避けるべく、東京オリンピックも観客の有無にかかわらずすぐにでも中止すべきだ。

【追記】明日7月4日は東京都議選です。国民主権を行使して東京都政の刷新、引いては国政刷新のため、東京都民の皆様は必ず投票に行きましょう。


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