「日本一新運動」の原点(262)ー人間の姿勢が「凝縮系核反応」の成否に直結

日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観
○西澤潤一元東北大学学長が田中角栄氏の見識を誉めた話
東北大学で、いよいよ「凝縮系核反応」に関する産学共同研究が始まることになった。このことは前号で紹介したばかりだが、数人の会員から「似非科学と排除されていた〝低温核融合〟の応用研究に取り組むとは、さすがだ?」と、賞賛の声が寄せられた。同時に、先端技術の開発にこれまで数々の功績がある〝東北大学の科学文化〟が話題になったので、思い出話をしておこう。

(東京電力と東北電力がつくる『電気』に質の差がある?)
新進党を結成して1年ぐらいした時だった。政策について本格的勉強をしようということで、有識者を招いて週1回の朝食会を開くことになった。何回目だったか、電子工学・通信工学で半導体デバイス、半導体プロセス、光通信の開発などで独創的な業績を挙げたことで知られている、東北大学学長の西澤潤一博士を招いて話を聞いた。最先端技術によって日本の産業がどう発展するか、驚くような話で全員が感銘したまでは良かったのだが、しかし質問タイムになって誰も発言しない。

こんな時に限って、いつも私に〝何か言え〟というのが当時の新進党の悪い癖だった。西澤博士の機嫌が悪くなりそうな様子なので、とにかく私が手を挙げながら質問を考えた。思いついたのが、田中角栄大御所から「勉強が足りない」と叱られた話である。ロッキード裁判で悶々としている頃、前尾衆議院議長の使いで田中事務所を訪ねたときだった。

「平野君、東北電力でつくる電気と、東京電力でつくる電気に、質の差があることを知っているか?」との質問だった。「そんな馬鹿なことはないでしょう。田中先生は新潟の出身だから、東北電力の方が質がよいと自慢したいんでしょう」というと、珍しく真顔になって、「そんな次元でワシを見ていたのか。真面目な話だよ。即答できないなら、勉強して自分で答えを考えろ?」ということで解放してくれた。

この話を西澤博士にして、「田中元首相のいうことは真実でしょうか?」と質問してみた。西澤博士の回答が見事で勉強になった。「田中元総理の見識はさすがである。最先端の技術を研究している者にとっては至言といえる。私の研究した半導体を例にして説明する」という話に仰天した。

「半導体の生産は、現時点で活用できる製品の歩留まり率は60%~20%ぐらいだ。これを各国別に見ると、同じ生産方法で日本・韓国・台湾といった儒教文化が残っている国では、歩留まり率が高い。これを調査すると半導体素材の作り方、使用している電力などの微妙な性質、生産に関わる技術者の健全な精神状態などの影響だ、との研究成果がある。

これまでのように、技術が目で見え、数字や形式論理の世界のものしか知らない人々には理解できないかも知れない。最近の量子物理学や素粒子論では、関わる技術者の倫理観というか、人間としての姿勢が研究の進展に関わる場合がある。田中元総理の発想は、産業を動かす電力の質を向上させるのは技術だけではない。人間の志とか倫理観だ。それが国を興す元だぞ、ということを言いたかったのではないか」と西澤博士は教えてくれた。

(岩崎信博士の研究体験談)
そういえば、同じ東北大学工学部教授として活躍していた岩崎信工学博士からも同じような話を聞いたことがある。「ナノ純銀を活用した『核種変換』の再現実験をやるにしても、実験担当者が〝こんなことが、あるわけがない〟との気持ちでやると、真実を解明できない場合がある」との話を聞かされたことがある。素粒子などでは〝人間の思考要素と共鳴する関係にあるのでは?〟と考える今日この頃である。

〇 平成の日本改革の原点 (第7回)
(海部・小沢政権、政治改革に着手)
(1)平成2年1月24日衆議院が解散となる。総選挙は2月18日に施行された。結果は自民党が追加公認を加えて286名の安定多数を得て、リクルート事件などでの退潮に歯止めをかけた。社会党は51名増の136名、公明党は11減の45名、共産党は10減の16名、民社党は12減の14名となった。野党では社会党の一人勝ちで、公明党と民主党は昭和40年代から続けてきた「社公民路線」の見直しが必要となった。

総選挙後の第118回特別国会で、小沢幹事長が改革を目指したのは社会党の国会運営であった。これまでの自社馴れ合い政治では、例えば人事院勧告による公務員給与法案と、それを予算化した補正予算の審議を、時期をずらして別々に行っていた。

それは、社会党が給与法案に賛成しながら、防衛費などを含む補正予算に反対することを恒例的に許容するためであった。政策に責任を持つ政党であるならば、公務員労組のために、給与法案に賛成するなら、同法と一体の補正予算に賛成すべきである。

同じく補正予算に反対なら、給与法案にも反対するという矛盾しない態度をとるべきである。それは、補正予算に防衛関連費が入っていなくても、野党第一党としての〝メンツ〟を守るために反対するのが通常であった。小沢幹事長は、給与法案と補正予算の同日・同時審議を野党に要請した。参議院が与野党逆転の中で、野党も国会運営に責任を持つべきだとして、賛成の理由と反対の理由を同時に明らかにすべきだとしたのである。公明党と民社党は了承したが、社会党は応じなかった。

これまで、自民党と表では厳しい対立を国民に見せながら裏では事実上の連立政治で政権交代への意欲などを失い、一定の議員数を確保して、仲間内で格好をつけておけばよいという政治姿勢を続けていた。これからの国会審議では社会党の我が儘が許されなくなり、矛盾した政治態度を国民から批判されることになる。社会党は怒り「小沢一郎はファッショだ」と大騒ぎになった。小沢幹事長の提案は、国会改革のスタートであった。

しかし、これに恨みをもった社会党左派は、小沢一郎に反発していく。その後、政局の障害となる。小沢幹事長の展望する「新しい政治の枠組み」について民社党は米沢隆書記長を中心に基本的な合意の見通しはついていた。問題は公明党が「平和・人権・福祉」という立党の理念を、自民党を含む新しい枠組みで生かせるかどうかであった。そのため創価学会・秋谷会長秘書役のN氏と私で、『生活者のための船中八策』の原案を策定した。(平野貞夫衆議院事務局日記第四巻、46~51頁)。

それを石田幸四郎公明党委員長が公明党大会の挨拶で発表し社公民路線を凍結する方針に活用した。小沢幹事長が提唱した「新しい政治の枠組み」の基礎工事ができ、政治改革へ本格的に取り組むことになる。4月20日午後8時、小沢幹事長から呼び出しがあり、ホテルニューオータニに行く。部屋に入るなり、「23日に海部首相と会って、政治改革まず選挙制度について腹を聞く。

総理本人が『政治生命を懸ける』といってくれれば僕は責任を持ってやる」真剣な顔で話し始めた。「自民党の派閥政治の弊害も腐敗も、社公民の政権を獲る気のない習性も衆議院の中選挙区制にある。各党がそれぞれに安住でき、野党は自民党に責任を押しつけて、労使交渉のような国会を続けるわけにはいかん。

衆議院は、小選挙区制を中心に比例代表を加味した制度を選挙制度審議会が立案中だ。できれば参議院の選挙制度も一緒に改革したい。現在の両院同じ選挙制度に問題がある。適切な制度を憲法の限界内で研究してくれ」と宿題を出してきた。
(続く)

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