感染の実態がつかめぬまま新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国民1人当たり一律10万円の現金給付などを盛り込んだ総額25兆6914億円の今年度補正予算が30日の参院本会議でれいわ新選組を除く与野党各党の賛成で可決、成立した。しかし、れいわの山本太郎代表が指摘するように、コロナ禍へ対処するための補正予算としては全く足りない。加えて、安倍晋三首相が何の根拠もなく、連休明け5月6日を改正インフル特措法に基づく非常事態宣言の終結をしたから、その延長はせざるを得なかった。もともと、そのつもりだったのだろう。国民の生存と経済社会の大混乱が生ずれば、政府=安倍政権はより強硬な手段に出てくる。最悪の場合は、日本国憲法に非常事態条項を盛り込む動きが強まる恐れ無しとしない。日本は今、民主主義国家存亡の事態にも立たされている。
今回の2020年度(第一次予算)が極めて不十分な内容であることは、真水が25兆円程度に過ぎないことだ。その真水でさえコロナ禍対策予算は高々18兆円。残りの7兆円はコロナ禍が終息した際に、経済をV字型に回復させるための「Go to予算」。実態は特定の業界を支援する利権支出に過ぎない。米国でさえ、真水で2兆ドル(1ドル=107円として214兆円)の財政出動を行い、4500億ドル(48兆5000億円)の追加財政出動も行う。
今回成立した日本の補正予算は米国の人口、国内総生産規模と比べるとれいわの山本太郎代表が繰り返し述べているように、スズメの涙だ。医療崩壊を食い止めるための財政措置を始めとして、コロナ禍の前に経済社会の悪化を引き起こした消費税の強硬増税を止め、取り敢えずは消費税率をゼロ%にするとともに、医療崩壊を防いだうえで、日本国憲法が保証している国民の生存権を守り企業の事業継続を保証すること、加えて各国が既に対処している食糧・食料危機に備えるため、少なくとも、100兆円程度は必要であった。補正予算案に反対したれいわ新選組だけが、正しい判断をした。
特に、喫緊の医療崩壊と厚生労働省が実態をつかもうとしないPCR等検査に対する財政支援措置の少なさはひどいものである。これについては、日本共産党の志位和夫委員長が安倍首相を追及している(下記の動画)。もっとも、同党は政府が国民に対する生活支援金を限られた世帯30万円給付から1人あたり10万円給付に補正予算案を組み替えたことから、賛成に回っている。また、「野党共闘」を維持するため、従来主張してきた消費税減税も事実上放棄した。立憲民主党、国民民主党は確実に政府の補完政党であり最早、「野党共闘」に国民は全く期待していない。立憲、国民の中の国民を守るという志がある政治家が結集することを支持・支援し、れいわと組んで早急に政策連合を樹立するべきだ。
さて、このところPCR検査で陽性と判定された患者が少なくなっているが、政府=安倍政権による自宅待機、休業要請の結果が出てきたとみるのは、全くの筋違いだ。厚労省が日々、「関係者」を通して垂れ流す感染確認者が、いつの時点のどの検査機関によって検査された検査総数のうちの判定結果であることが全く明らかでないからだ。
検査機関は、国立感染症研究所、空港や港などに設置された検疫所、地方衛生研究所・保健所、PCR検査が可能な医療機関、大学の感染症研究機関、民間の検査会社からなるが、大型連休に入ったこともあり、検査人数は軒並み少なくなっている。マスコミは毎日、厚労省の「関係者」からの「感染確認者」の垂れ流し人数だけでなく、検査機関、検査日、検査人数の内訳を確認すべきだ。というよりも、厚労省はこれらを明確にして毎晩、記者会見で公式に発表すべきだ。こうした重要な統計は本来、厚労省はリアルタイムで把握すべきである。
なお、朝日新聞が4月30日付13面(多摩版)に掲載した「広がる検査拠点 課題も」の記事によると、かかりつけ医がPCR検査が必要と電話診察で判断した場合に、PCR検査ができるだけ受けられるように、「鳴り物入りで」東京都医師会・地元医師会と都内の区市町村自治体が共同でPCR検査に必要な検体を採取するために設立を進めているPCRセンターには、「受け入れ限度を超える要請が相次ぎ、多くの『検査待ち』住民が発生している」状態。
東京都全体で47センターの設立が計画されているが、同記事などによると、➀検査を受けるにはかかりつけ医の診断が必要で、その場所も公開されていない②「医療検査センター」と混同される③PCRセンターの設置には、医師や検査技師、看護士が必要なことはもちろん、センターの感染を防ぐための防護服、N95マスクなど医療用防備品が必要だが、圧倒的に不足している④国からの財政支援措置(設置・運用費用全額を負担すること)が不可欠なのに、言い出しっぺの安倍首相や加藤厚労省など政府=安倍内閣には、その気は全く無い-など問題だらけだ。日本共産党の志位委員長による動画は、次の通り。
なお、東京新聞が4月23日付け2面で掲載した「韓・独、積極PCR 奏功」の記事によると、各国の累計PCR検査数は次の通りだ。日本のPCR検査数は、中東の人口970万人のアラブ首長国連邦(UAE)の累計100万件に比べても遠く及ばず、各国に恥ずかしいほど極めて低い。これでは感染の実態が分からないから、終息時期もさらに分からなくなる。いくら営業停止・自宅待機を要請(強制)しても感染防止、コロナ禍終息には役に立たない。
さらに、東京新聞が4月30日の新聞に掲載した一面トップ記事によると、新型コロナウイルスに感染して抗体が産生されたかどうかを調べる抗体検査(血液検査、15分で結果が分かる)を希望により男女202人行った新宿区と立川市のクリニック(理事長は感染症に詳しい久住英二医師)の結果によると、一般市民の4.8%、医療従事者の9.1%が陽性(抗体を確認)であり、全体で5.9%が陽性だった。つまり、抗体検査を受けた国民の中で、5.9%が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染していたことになる。
ただし、抗体が産生されても万全ではない。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はさまざまな治療薬が投与されたことに対して変異して耐性と毒性を強化している。だから、体内で産生された抗体で新型肺炎(COVID-19)を防げるかというと、それは人により異なる。場合によっては、PCR検査で陰性に転じても再び陽性になる事例も少なからず報道されている。
さて、話を元に戻すと、症状がある患者さんがPCR検査を受けられないため代替検査として受けたにしても、抗体検査で5.9%が陽性というのは非常に高い。東京都の人口は、2015年で927万人。仮に現在900万人としても、単純計算で最大53万人になる。これは極端な数字だが、東京都の実際の感染者数はNHKが4月30日午前10時半時点として発表している感染確認者4106人よりも、はるかに多いことは確実だ。要するに、厚労省発表の感染確認者数は「氷山の一角」に過ぎないのである。大日本帝国の大本営発表と同党である。こんな状況では、いくら「休業要請・自宅待機要請」を行っても意味がない。
世界保健機構(WHO)の勧告に従って、「検査・検査・検査と隔離」が基本かつ根本的な対策で、「休業要請・自宅待機」も責任ある「休業補償・生活保証」を伴わない限り、医療崩壊阻止・感染拡大阻止に役立たないまま、日本の経済社会に危機的状況をもたらすことは目に見えている。
朝日デジタルが2020年4月30日23時00分に投稿した「首相交代、自民からか、衆院選でか 朝日世論調査」と題する記事によると、「支持層別で見ると、自民支持層は『疑似政権交代』(政権のたらい回し)が76%、『衆院選による』19%。これに対し、無党派層は『疑似政権交代』が28%、『衆院選による』57%と逆転した。立憲民主支持層は『疑似政権交代』8%、『衆院選による』87%だった」。
コロナ禍を収束させ、独裁国家化を防ぐ真の対策は、➀今や急速にし進行している医療崩壊を瀬戸際で阻止する②医療施設や高齢者介護施設、感染した家庭が真の「集団感染(クラスター)」であり、真のクラスター対策を実施する③PCR等検査を早急かつ大規模に進め、症状に応じて患者を隔離すること④企業に対して営業保証を約束し、国民に対しては生活支援金を継続的に給付し、日本国憲法に定められた生存権を守ること④直近に迫っている製品不足、食糧・食料危機に備えること、そのためにも当面、消費税率はゼロ%にすること➄スタグフレーションに備える-ことなどである。
これらの真の対策を実行できるのは、自公両党から選出された政府=安倍政権ではない。もちろん、安倍政権の補完勢力である立憲、国民でもない。両党の「国民生活が第一」を志とする政治家が両党を離れて組織化するとともに国民の期待を裏切りつつある日本共産党が「共産主義」の呪縛を逃れて国民政党になり、その支援をすること、そして、れいわ新選組と合流して「政策連合」を早期に結成することこそが、救国の道である。