東京都では2日から一段の自粛緩和が行われたが同時にPCR検査での感染確認患者が増加し始め、昨日6月5日は朝日デジタル2020年6月5日23時01分投稿の報道記事によると、全国では44人の感染者が確認された中、「東京都では20人が感染した。1日あたりの感染者が2桁となるのは5日連続。年代別では20代が8人と最多で、感染経路不明は12人だった。50代と80代の女性2人が死亡した」という。6月に入ってからの感染確認者は小池百合子都知事らが「ステイホーム」の要請を行っていた時期に感染された方々であり最早、政府=安倍政権と東京都などの地方自治体(和歌山県など積極的にPCR検査を行ってきた一部の県を除く)の「推進」してきたコロナ禍対策には頼れない状況だ。東大先端科学技術センターのがん代謝プロジェクト・チームリーダーの児玉龍彦東大名誉教授らで構成している新型コロナウイルス抗体測定協議会では、分散型の精密で定量的な大規模抗体検査を柱に、感染拡大防止・患者の治療と経済活動の正常化を両立させるべきだと提言している。
この提言は6月5日夜Youtubeに公開されたデモクラシータイムス主催の児玉教授と立教大学の金子勝特任教授との対談で明らかにされたもの。以下、サイト管理者の責任で、対談の大まかな内容を紹介させて頂きたい。文責はもちろん、サイト管理者です。なお、Youtubeは以下の通りです。
まず、最初に現行のコロナ禍対策の問題点として、「ステイホーム」で感染は止まらず、検査が行われないために無症状の感染者が不明で、このために感染拡大を続けている。このため、判定の結果が分かるのが遅いPCR検査による感染確認患者の数に一喜一憂して、感染確認者数の増減によって「自粛緩和」と改正新型インフル特措法による「緊急事態宣言の再発動=自粛再要請」を繰り返す恐れがあり、このため、国民・地域の住民は安心して安定的な経済社会活動を再開することができずにいる。
この不安定な状況を解決するために、新型コロナウイルス抗体測定協議会ては新型コロナウイルス抗体測定協議会では集団感染が生じている地域とそうでない地域とに分けて、それぞれに適応したPCR検査と抗原検査、抗体検査を大規模に行うことを提唱している。ただし、抗体検査キットには現在、100種類もの検査キットが存在しているが「偽陽性(陰性なのに陽性と濡れ衣になる判定結果)=ノイズ」の「判定」を下す可能性が非常に多いため、抗体(IgGとIgM)の量を精密・定量的に測定できる抗体検査(プレシジョンメディスン=精密医療)が必要だという。
ここで、精密医療(プレシジョンメディスン、診察・診断・治療)を行うための抗体の定量測定が可能な抗体検査について、下図で示しておく。抗体はウイルスがヒトの体内に侵入してきたときにウイルスを撃退するために産生される物質である。IgMとIgGと中和抗体が主なものだが、このうちIgMとIgGの定量的分析が重要だ。IgMはウイルスが体内に侵入してきた際に初期の段階で産生され、IgGはIgMが役割を果たした後、恒常的に産生され、中和抗体とともにウイルスを退治する役割を持つ。
新型コロナウイルスに対する抗体についての研究で、IgMの産生の状況が他のウイルスと異なることが判明してきた。IgMは通常、産生されるとすぐに消滅してその役割を終えるが、新型コロナウイルスの場合は下図のような状況になる場合もあるという。
このため、抗体検査の判定結果について、次のような基準が基本になる。
こうした科学的知見を踏まえ、PCR検査、抗原検査、精密抗体検査を組み合わせて使用し、①症状のある患者はPCR検査を主として行い、症状の進行状況を診断するため精密抗体検査を行い、症状の段階に応じた治療を実施する②症状のない方に対しては、医療機関、介護施設、会社、学校、地域(地方自治体含む)などで健康診断時に精密抗体検査を実施し、陽性の判定結果が出れば、PCR検査も行い、場合によってはCT検査も含め総合的な診断を行い、その結果に応じた隔離もしくは治療を開始する。
新型コロナウイルス抗体測定協議会ではこうした定量分析可能な精密抗体検査を開始しており、福島県のある病院の職員ら(医療・介護従事者)680人に対して行ったところ、簡易抗体検査キットではノイズが多すぎて58人が陽性の「判定結果」になったところ、6人の抗体検査陽性患者を確認できたという。こうした精密抗体検査は東京でも行われており、全国展開が必要だとしている。
新型コロナウイルス感染症専門会議でも5月29日のリポートで全国1万人規模の抗体検査を行うことを提言し、厚労省もその予定だが、定量測定が可能な精密抗体検査を行わなければ、「偽陽性」が続出し、大きな混乱をもたらす恐れがある。なお、初期の時点において、政府=安倍政権、専門家会議がPCR検査を妨害したことは、日本の国民と経済社会に重大な被害をもたらした。その責任を取ってもらわなければならない。また、第二次補正予算案で5兆円のある程度の使途を決めたとはいえ、その5兆円を含む10兆円はやはり、「予備費」に過ぎず、政府=安倍政権が自由に使える。財政民主主義の否定は明らかだ。
なお、効果の定かでない「営業自粛・自宅待機」のために、4月の経済指標は大幅に悪化している。主要指標の2人以上世帯の家計消費支出は名目で前年同月比11.1%減、実質で前月比6.2%減(年率換算53.6%減)と大幅に落ち込んでいる。より総合的な指数である景気動向指数の一致指数は、前月より7.3ポイント低い81.5と3カ月連続で低下が続いている。「営業自粛・自宅待機」→「営業自粛・自宅待機解除」→「新型コロナウイルス感染再拡大」→「営業再自粛・自宅再待機」を繰り返すと、新型コロナウイルス感染症拡大と経済悪化がスパイラル的に進み、どうにもならなくなる。
今や、新型コロナウイルス感染者も救い、経済活動も本来の姿を取り戻すという両立の観点から、精密医療(プレシジョンメディスン)は現在の医療技術の最先端技術になっている。併せて、GPSを使った感染源の個別追跡が必要だ。その実施のためには、①遺伝子工学を含めた専門家の養成②最先端テクノロジーによる先端医療技術・医療検査機器の開発③情報工学の専門家との協同−が必要であり、政府はそのための予算措置をつけなければならない。今の政府=安倍政権では、それは不可能だろう。