検察庁改革法案は廃案、黒川検事長は退任が筋−維新の「人気」には警戒必要

政府・与党は18日、検察庁法改正案について今国会での成立は断念することを決めたが、強行採決の断念を決めただけであって、時期臨時国会などで依然として検察庁法改正案の強行採決は行うつもりである。黒川東京高検検事長の検事総長就任も実現するつもりだ。これらは絶対に阻止しなければならないが、政府=安倍政権の終わりの始まりに乗じて、日本維新の会が「躍進してきている」。同会も検察庁改革法案には賛成である。「自公対日本維新の会」の構図で、二大政党制もしくは大政翼賛会を成立させてはならない。

現黒川東京高検検事長の検事総長就任を阻止しなければならないのは、黒川氏が検察制度を悪化させてきたとみられるからだ。マスコミやウィキペディアによると、後に厚生労働省事務次官を務めた村木厚子氏が、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長時代に、自称障害者団体「凛(りん)の会」に偽の障害者団体証明書を発行、不正に郵便料金を安くダイレクトメールを発送させたとという「凛(りん)の会」が起こった。2009年6月、大阪地方検察庁特別捜査部長の大坪弘道氏や同部副部長の佐賀元明氏の捜査方針のもと、村木氏は虚偽公文書作成・同行使の容疑で、同部主任検事の前田恒彦氏により逮捕された。

法務省。

しかし、この逮捕事件は大阪地方検察庁特別捜査部所属で、障害者郵便制度悪用事件担当主任検事であった前田恒彦氏が、証拠物件のフロッピーディスクを改竄した結果生じた冤罪事件であった。その改竄の証拠が明らかになり、同年10月1日には、当時の上司であった現職の大阪地検元特捜部長・大坪弘道氏及び元副部長・佐賀元明氏が、主任検事の前田氏による故意の証拠の改竄を知りながら、これを隠したとした犯人隠避の容疑で、それぞれ逮捕されるという異例の事態となり、検察庁のトップである検事総長・大林宏氏の辞職の引き金となった。

この事件の「後始末」を担当したのが、黒川弘務氏である。黒川氏は2010年8月松山地方検察庁の検事正[に就任したが。すぐに異例の抜擢を受けて、2010年10月法務省大臣官房付に異動され、「検察の在り方検討会議事務局」と称する事務局を担当した。既に述べたように当時は、検察改革の重要性が喧伝され、取り調べの可視化などの最重要課題の実現が期待されたが、まったく不十分なかたちでうやむやにされた。その一方で、検察の取り調べ権限だけが大幅に拡大されるという真逆の事態に陥り、従来から歪みが指摘されてきた検察制度は一層歪んできた。

その最たるものが、民主党政権時代に起こった小沢一郎幹事長(当時)に対する検察審査会を使った「陸山会事件」である。東京地検特捜部は2010年1月、政治資金規正法違反容疑で石川知裕衆議院議員や小沢氏の秘書である大久保隆規氏と小沢氏の秘書1人を逮捕。また、秘書を告発した別の市民団体が小沢氏に対しても政治資金規正法違反容疑で告発した。2月に秘書3人が起訴され、起訴状では20億円を超す虚偽記載とされ、政治資金規正法の虚偽記載罪では過去最大の金額となった。一方で、小沢は嫌疑不十分で不起訴処分となった。

結局、2011年9月26日に東京地方裁判所(登石郁朗裁判長)は大久保被告の2007年の7000万円の架空記載の事案についての、私設秘書との共謀については無罪としたものの、それ以外については銀行口座記録と政治収支報告書の不一致から21億7000万円の記載を虚偽記載として全て認定した。また、大久保被告は2007年の7000万円の架空記載以外の事案で会計責任者として、相手業者に不動産登記を遅らせるように交渉していた事実など、一連の不動産取引に深く関わっていたことから、秘書2人との共謀を認定し、小沢一郎氏の秘書3人に対し有罪判決を言い渡した。

2013年3月に大久保被告と元私設秘書の有罪が、2014年9月に石川被告の有罪がそれぞれ確定した。しかし、2012年4月26日に東京地裁(大善文男裁判長)は小沢氏に対し「秘書に任せていた」などの供述は信用できないとしたが、秘書との共謀が立証されていないとして無罪判決が下された。一審無罪判決を受けた小沢一郎氏は民主党において党員資格を回復したが、指定弁護士は控訴した。その結果、2012年11月12日の東京高裁の控訴審でも第一審の判決を支持。同月19日に上告を断念したことで、小沢氏の無罪判決が確定した。

この陸山会事件は、不動産を取得した年に政治資金規正法にその旨、事実を記載しただけのことで、公認会計士も認める当然の政治資金記載処理である。要するに冤罪なのだ。これらの一連の裁判騒動は、米国にとっては許しておけない民主党の首脳である「鳩山一郎首相−小沢一郎幹事長」失脚させるための政治的謀略であった。その背後で、得体の知れない検察審査会を操ったのが黒川氏と言われる。

黒川氏が米国と安倍第二次政権の意向を受けて、戦後最大の政治謀略を演出したことは想像に硬くない。これ意向、森友学園問題、これに関した財務省の公文書改竄問題、加計学園問題、桜を見る会前夜祭などの重要刑事事件案件で検察庁が全く動かなかったように、黒川氏は「政府=安倍第二次政権」の「守護神」として立ち居振る舞いを演じていると見られている。

黒川東京高検検事長は延長された任期が終了する8月8日までには、退任しなければならない。通常、検事総長の任期は3年だが、慣例に従って2年で退任する。2018年7月15日に就任した現検事総長の稲田信夫氏の場合は、通常であれば、今年の2020年7月15日に退任することになる。しかし、原田明夫検事総長(当時)が2001年7月2日から2004年6月25日まで、ほぼ3年間にわたり任期いっぱいまで務めた前例がある。稲田現検事総長は今年8月8日を超えて在任にする必要がある。また、秋の臨時国会で検察庁改正法案を廃案にも持ち込む必要も当然である。

法務大臣は個別の案件について、検事総長に対してのみ「指揮権発動」をすることが認められているが、人事に関して指揮権発動ということになれば、異常と言うほかはない。仮に、原田検事総長が政府=安倍政権側に屈することになれば、民主主義の根幹である三権分立制度の崩壊という事態になるしかない。「法が終わるところ、暴政(=独裁)が始まる」(松尾邦弘・元検事総長=2004年6月25日から2006年6月30日=らが検察庁法改正案批判のために英国の政治思想家ジョン・ロックの著書「政治二論」から引用した言葉)である。

さて、政府=安倍政権と対立するそぶりを見せながら、これを支持しているのが日本維新の会だ。政経評論家の植草一秀氏のメールマガジン第2635号「維新礼賛報道に総力投入する工作者」からの引用で恐縮だが、選挙ドットコムがJX通信社と共同で実施した「ハイブリッド調査」、つまり電話とインターネット調査を組み合わせた調査がある。それによると、日本維新の会が吉村洋文大阪府知事のパーフォーマンスを主として急上昇しているのだ。

自民 電話 26.7% ネット 13.1%
維新 電話 15.2% ネット 11.6%
立憲 電話 16.5% ネット 4.2%
共産 電話 7.0% ネット 3.9%
国民 電話 1.3% ネット 0.5%
れいわ 電話 2.1% ネット 1.9%
支持政党なし 電話 22.6% ネット 59.8%

ツイッターで検察庁改正法案の今国会での成立を断念させたように、SNSなどインターネットが政治に大きな影響力を与えている現実を考慮しなければならない。この点からすれば、電話およびネットで支持率を同程度に急上昇させている日本維新の会には注目しなければならない。

ただし、れいわが電話およびネットで善戦していること、さらに、ネットでの「支持政党なし」が圧倒的に多いことを考慮すれば、立憲と国民の有志議員に日本共産党、れいわ新選組が政策で連合する「政策連合」を結成すれば、自公・日本維新の会に対抗できる第三極を形成することは可能だし、また、早急にそうしなければならない。

カギを握るのは、新型コロナ感染症防止対策と経済社会活動の両立を図れる抜本的なコロナ禍対策を低減することだ。100兆円規模の思い切った財政支出(真水)も必要だが、それだけを続けると大不況下の中のハイパーインフレをもたらす。大規模なスタグフレーションに陥るのである。これを防ぐためには、①PCR検査に加え産生される抗体の定性的性質や定量分析がともにできる精度の高い抗体検査(高度な抗体検査装置が必要)を併用して、症状にあった治療を症状の段階に応じた診療施設で行う②正しい感染地帯を国民に知らせる「GPS個別追跡型」の新型コロナ感染拡大防止策を講じる−の双方が不可欠だ。

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