検察は「ルビコン川を渡った」−ローマ=自民党本部が「本丸」−解散か総辞職へ

辣腕検事として知られ、郷原コンプライアンス法律事務所の郷原信郎主任弁護士の断言によると、河井克行前法務相、河井案里参院議員を公職選挙法(買収)容疑で18日逮捕に踏み切ったということは、「検察はルビコン川を渡った」ことを意味するとのことで、ローマ=自民党本部を「本丸」に定めているという。このことは自民党内部でも承知しており、早期解散か「花道引退論」による内閣総辞職後の解散を目指す動きが活発化している。内閣の支持率は各種世論調査で危険水域に相当する30%前後以下に落ち込んでおり当然、事実上自民党公認の小池百合子現職知事に対しても不利に働かざるを得ない。

郷原弁護士によると、通常は国政、地方自治体の選挙告示日前後から買収行為を行った者を逮捕・起訴の対象にしてきた。日本の選挙土壌からして、告示日よりかなり前からだと逮捕すべき人物があまりにも多すぎるからだ。大概は、検察が逮捕に踏み切ろうとしても法務相刑事局が止めていたようだ。

河井夫妻の場合は、昨夏の参議院選挙の3カ月以上前から、河井前法務相が「中間リーダー」になって、溝田顕正参議院議員(当時)を落選させ、妻の河井案里容疑者を当選させるため、事実上の買収活動を行ってきた。これは、自民党党本部の最高責任者=安倍晋三総裁が自分に敵対してきた溝田参院議員(当時、5期参院議員を務めてきた重鎮)に対して河井克行容疑者の妻の河井案里容疑者を刺客として送り込むとともに、1億5000万円の巨額の買収資金を供与し、溝田陣営側の多数の広島県の各地方自治体の首長、議員らに現金を配って、「寝返り」をさせてきたためだと見られている。

検察としては、夏の参院選告示のかなり前からであるとしても、国民の血税が原資の政党助成金から通常の10倍に当たる1億5000万円もの巨額の資金供与がなされてきたことを重視し、しかも、本来は国政選挙の総責任者である二階俊博幹事長の一存では供与できない金額であることから、その実質的な最高責任者は安倍総裁であると見ており、少なくともある程度の確証は得ていると推察される。

だから、郷原弁護士は「検察はルビコン川を渡った」と表現し、「本丸」は自民党本部に党総裁の椅子がある安倍総裁と推測しているわけだ。ちなみに、この故事は次のような歴史的事実に基づく。

ルビコン川を渡ったユリウス・カエサル

古代ローマの共和制末期の紀元前70年頃からローマが大量の奴隷を大量の奴隷を国内に入れたため、大地主貴族や一部の商人はどんどん儲かっていったのに対して、一般の中小地主の多くは、安い労働力や国外から輸入した安い穀物に対抗出来ずに没落し、社会の中に大きな格差が生まれてしまった。このため、剣闘士スパルタクスが紀元前73年にスパルタクスの反乱を起こすなどローマは大混乱に陥った。スパルタクスの乱の鎮圧によりどうにか混乱は収まっがその後は、軍人ポンペイウスと、経済界を支持層に持つクラッスス、平民から人気があったカエサル(シーザー)の3人が政治をコントロールする「三頭政治」が、紀元前60年に確立する。

しかし、しかし、クラッススが死んでしまうと、当時国外の様々な地を平定(カエサルの「ガリア戦記」)して大きな実績を残していたカエサル対して、ポンペイウスはローマの元老院は恐れをなし、カエサルの追放ないし殺害を企てる。そこで、カエサルがローマへ戻るために、軍も一緒に引き連れて渡ったのがルビコン川であり、この時にカエサルは、「後戻りできない」という決断をして、有名な「賽は投げられた(さいはなげられた)」という言葉と共に、ルビコン川を渡ってローマ市内に進軍、ボンペイウスを追い出し暗殺、元老院貴族を滅ぼして、強大な権力を持つ執政官の地位に就く。

ルビコン川

ちなみにルビコン川はイタリア北西部に位置し、一つの境界線(国境)として認識されていた場所で、実際は小さな川だが、カエサルがこのルビコン川を渡るということはローマの政権に反逆することであり、ローマ市内の制圧に失敗すれば、自分の死刑を意味することを承知していた。そのため、「熟慮の末、後戻りできない決断をする」という故事として「ルビコン川を渡る」という言葉が用いられるようになったという歴史的経緯がある。

郷原弁護士が「検察がルビコン川を渡った」と表現したのは、河井夫妻の逮捕は中間目標であって、本丸は自民党本部の安倍総裁だろうという意味である。その根拠は、公職選挙法第221条「次の各号に掲げる行為をした者は、三年以下の懲役若しくは禁錮こ又は五十万円以下の罰金に処する」にある。第一項では、当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき」になっている。

要するに、公選法に言う買収罪というのは、「当選を得る、又は得させる目的」で、選挙人又は選挙運動者に対して「金銭の供与」をすることである。「供与」というのは、「自由に使っていただいて結構」ということだ。金銭の提供を受けた側(地方自治体の首長や県市町村議員)がその認識をしていたことを立証できれば良い。マスコミは「現金の提供が票の取りまとめを依頼する趣旨だったかどうか」が裁判での争点になると解しているようだが、それは狭い捉え方でしかない。供与の時期は問わず、「当選を得る、又は得させる目的」であることを認識していたことが立証できれば、それで公選法に言う「買収罪」になる。

これについて、広島地検は大規模な東京地検特捜部、大阪地検特捜部の応援を得て、現金の供与を受けた側の多数の供述を得ている。資金供与を受けた溝田派の首長、県市町村議員が「政治資金規正法」を意識して「政治資金収支報告」に供与額を献金として記載していてもだめである。供与を受けた側も、起訴ないし略式起訴される。広島県の政界は大騒動になる。河合容疑者夫妻の買収はもちろんほぼ確実である。

次に、「ルビコン川を渡る」目標である「自民党本部」である。これについては、第五項「第一号から第三号までに掲げる行為をさせる目的をもつて選挙運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾したとき」に言う「交付罪」が相当する。交付罪容疑で自民党本部の交付責任者(恐らく、安倍総裁)を逮捕・起訴することが検察の最終目的になるだろう。

二階幹事長は、河井案里容疑者側(実質的には河井克行容疑者)1億5000万円振込の事実は認めているが、①支部の立ち上げに伴う党勢拡大のための広報紙の(制作)配布費用に充てたと報告を受けている②公認会計士が厳重な基準に照らし、各支部の支出をチェックしている−などと言い訳をしている。しかし、たかが党勢拡大用のパンフレットの作成に1億5000万円も必要だろうか。

広島県によると、昨年7月の広島県の人口は281万人。世帯数は明記されていない。100万世帯がいいところだろう。パンフレットは版下を作成すれば後は印刷代と紙代だけだから、1部10円程度だろう。だから、全世帯に配布するとしても、1000万円から1500万円、人件費も入れると高々2000万円。河合案里容疑者の昨年の政治活動資金収支報告書は最初のものと問題がないように修正したものとの2つあり、これらを含めた昨年の政治資金収支報告では2500万円程度であり、1億5000万円とはほど遠い。公認会計士が厳密にチェックしているとも言い難い。

。朝日デジタルによる

また、河井克行・案里容疑者の買収資金約2600万円に河井案里容疑者の昨年の政治活動資金を加えても5000万円程度にしかならず、国民の血税から自民党が得た政党助成金の中から賄われたと見られる1億5000万円のうち、1億円程度は使途不明だ。こちらの使途不明金の流れの解明も、検察の河井夫妻逮捕の主要目的だ。

こうした経緯から、安倍首相(総裁)側近からは早期解散の「観測気球」が上げられている。しかし、早期に解散すれば、甘利明・小渕優子不起訴疑惑から始まって森友学園、財務省での公文書改竄問題、加計学園疑惑、桜を見る会前夜祭疑惑、桜を見る会疑惑に加えて、今回の河井夫妻逮捕問題、コロナ禍対策の遅れと支離滅裂さから、安倍内閣、自民党の支持率は大幅に低下している。

。参議院会長を務め参議院のドンと呼ばれた青木幹雄氏の経験則(青木の法則)によると、内閣支持率と自民党支持率の合計が50%を割り込むと、自民党は国政選挙で敗北するという。政権を忖度するマスコミ世論調査でさえ、この50%を少し上回る程度に内閣・党の支持率は急低下しているから、当選回数の浅い国会議員を中心に早期の解散・総選挙による正面突破には落選不安が続出している。少なくとも、50議席は失うとの見方が、非大手メディアから出ている。

また、新型コロナウイルス感染者も、移動自粛要請を取り下げたこともあり、再び増加に転じている。朝日デジタルによると、昨日6月23日の全国の感染確認者は57人であり、2020年6月23日19時35分に投稿した「東京で新たに31人が感染 19人は感染経路が不明」によると、「東京都は23日、新型コロナウイルスの感染者が31人新たに確認され、60代の男女計2人が死亡したと発表した。(中略)現時点で感染経路が不明な人は19人いたという」。

小池百合子都知事率いる東京都が「東京アラート」の運用を廃止した直後から、感染確認者数がジワリと増大してきている。小池現職都知事が、東京アラート制度を簡単に止めてしまったことは、この制度が全く科学的根拠のないものだったことを如実に示しており、その背後には都知事選の選挙対策が狙いであったこと、それに選挙対策のために気前よく使ってきた財政調整基金の枯渇がある。都民の血税を使って、テレビコマーシャルにもよく出ていた。都税の不正使用である。こうしたことから、「自粛要請」は「自衛要請」に変更した。これは、自粛協力基金は出さないし、新型コロナウイルス感染防止対策は自己責任ということだ。

さらに、これまでは世界保健機構のテドロス・アダノム事務局長はブラジルなど南半球が冬入りし、感染確認者、死亡者数が急増していることから、パンデミックは新たな局面に入りつつあるとして。。、「新たな警戒宣言」を発出した。自民党の不祥事(端的に言えば、憲法・法律無視の安倍首相)とコロナ禍のため、早期に解散・総選挙を行って正面突破を図ることはできない。また、「ルビコン川を渡った」検察。。の最終目標は安倍首相にあると見られているが、これは選挙の有無には関係ない。

このため、自民党内では安倍首相の花道退陣論が出ている。8月24日に佐藤栄作首相(故人)の首相在任最長記録を更新するから、それを花道に退陣するということだ。石破茂元幹事長や菅義偉官房長。。官、石原伸晃元幹事長、河野太郎防衛相らをかつぐ声がある。石破元幹事長は党員の間に人気はあるが、党所属国会議員には人望がない。安倍首相が影響力を残せる岸田文雄政調会長は発信力が弱く、まともな政策がないから人気がない。これに、政局感には優れていると見られるが、権謀術数の(安倍首相は9月に予定されている党役員人事で幹事長から外したいとの意向と言われている)の二階俊博幹事長が絡む。。

要するに、首相の「解散権」を封じ込めようと言うものだ(日本国憲法では首相の解散権を明示的に定めているわけではない。本来は、内閣不信任案が可決された場合のみ解散することができるというのが筋だ。天皇の国事行為としての解散は、国政に関する権限を有しない天皇を政治利用するものでしかない)。

朝日デジタルによる

二階幹事長と石破元幹事長、小池現職都知事は戦術的に「仲が良い」が、小池候補が再選されたとしても、都政を投げ出して国政に復帰することはないというのが、一部メデイアの見方だ。ただし、国民新党の前原誠司衆院議員ら国民民主党の一部と日本維新の会が急接近している。「共同代表」のような形を使って、自民党か維新か、それとも両方を支援するかも知れない。ただし、年も年だし、総理大臣に就くようなことはまず、あり得ないだろう。

その意味で重要なのは、有権者の都民は主権者としての力を示せる投票を棄権すべきでは。。。。。。ない。小池現職都知事候補の実像を主権者都民はよく知るべきだし、実像を知った反小池陣営が最終的に、宇都宮健児候補とれいわ新選組代表の山本太郎候補の合計得票数が小池票を上回りそうな状況になれば、両者が1対1で対話を行い、それぞれの政策を取り入れることで候補者を一本化するという手もあり得る。フランスの大統領選では、どの候補も一回目の投票で有効投票数の過半数に達しなかった場合、決選投票を行い、三位の陣営がどちらの候補の支持に回るかで、勝敗が決まる。

。今回の都知事選で有権者の都民は、最後に何が起きるか分からないから、期日前投票は出来るだけ引き伸ばし、当日投票という戦術をとるべきだ。投票所はたくさん設置されているから、新型コロナウイルス感染を避けるための適当な距離は取れるだろう。


ただし、自民党が解散・総選挙に打って出た場合のことを考えると、現代貨幣理論(MMT、通貨発行権を持っている政府と中央銀行を合わせた統合政府が通貨発行権を持っている限り、財政破綻は有り得ず、長期デフレからの脱却とコロナ禍対策のためには、インフレ率を考慮しながら反緊縮=積極財政に転換することが最善の策と提言している)を視野に入れて、コロナ禍を「災害」に位置づけ、使途の制限を撤廃し、地方債を発行して財源に充てるという山本候補の政策が一番優れていると思う。財務省も財政破綻は否定している。

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