解散9月総選挙10月中旬の公算大か−反安倍陣営は戦争法制破棄・原発稼働停止・消費税減税・積極財政で「政策連合」形成急務

東京都知事戦で小池百合子現職都知事が反小池陣営分裂の隙を突いて「圧勝」した形になったことから、安倍晋三政権は9月臨時国会招集、冒頭解散して10月中旬に総選挙を行う正面突破作戦に出る可能性が出てきた。反安倍陣営は新自由主義=自己責任を名目とした実質的な弱肉教職主義を否定し、共生主義を理念に「戦争法制放棄・原発稼働停止・消費税減税・積極財政」での政策連合形成が急務になっている。

投稿記事の基本的な内容は、7月7日午前零時48分に配信された植草一秀氏のメールマガジン第2675号「都知事選結果を踏まえた総選挙戦略」を踏襲するものだが、一抹の不安と付け加えたい内容がある。

植草氏は同メールマガジンで、安倍政権は9月に安倍首相が臨時国会を緊急招集して冒頭解散に踏み切り、10月中旬(11日ないし25日)に総選挙を実施する公算が極めて大きいことを主張しておられる。全文ではないが、ある程度の内容は公開プログhttp://uekusak.cocolog-nifty.com/のトップ記事「10月総選挙に向けての反自公結集が急務」で閲覧できる。

6月19日に安倍首相、麻生太郎財務相、甘利明自民党選挙対策委員長、菅義偉官房長官の3A+Sが東京虎ノ門のホテルレストランで会食した。この会食会合で麻生財務相が「敗軍の将、兵を語る」で2009年7月21日に解散に追い込まれ、8月30日の総選挙で大敗し、政権交代を許した「苦い経験」に鑑み、9月解散論の主戦論を展開した公算が大きいというのである。

2017年9月28日の衆議院解散

安倍総裁の任期は一応、来年2021年の9月までであり、衆議院議員の任期は10月で終わる。しかし、安倍首相の失政が続出しており、任期満了解散は誰が見ても追い込まれ解散になり、反安倍陣営・反自公陣営に選挙対策に十分な時間を与えることになるから、政権を奪取される公算が極めて高い。

このため、10月総選挙の主戦論で合意がなされたと推測するわけだ。サイト管理者(筆者)の調べもつけくわえて理由を述べると、①(昨日6日の新型コロナ感染確認者は全国で167人、日本の首都の東京で102人と都知事選直前から急激に再拡大しており、第二波の可能性もあるが)秋を過ぎて冬になれば新型コロナ感染の第二派が襲ってくる可能性がさらに高くなり、冬以降は解散・総選挙が封じ込められる

②国債オリンピック委員会(IOC 、トーマス・バッハ会長)は今年の10月を来夏の東京オリンピック延期開催の可否を決める最終期限と考えているが、医学専門家の間ではワクチンの開発にめどは立たず、開発したとしてもかえってヒトの体に危害を及ぼす可能性が高いとの見方も根強いことから、日本を含む世界各国で感染拡大収束の見通しが立たず、延期開催中止の決定を行うことがほとんど確実③米国の11月の大統領選挙でドナルド・トランプ大統領に、コロナ禍対策の失敗に加え人種差別の火に油を注いだこと、コロナ禍大不況に陥っていることから、再選の可能性がほとんど亡くなっており、トランプ大統領との近さを強調してきた安倍首相は極めて不利な状況に追い込まれている−ためである。

この主戦論を強力に後押ししたのが、7月5日に行われた東京都知事戦だ。今回の都知事選では、反小池陣営が分裂したことから「無党派層」を取り込めず、逆に小池現職陣営が取り込むことになり、「圧勝」をもたらす結果になった。要するに、3A+Sは反安倍陣営が瓦解しており、新型コロナ感染の第二波の徴候が出てきているにも拘らず混乱なしに投開票を行えたと判断している。とすれば、麻生財務相が経験した苦い教訓に鑑みて、10月中旬の総選挙による正面突破作戦が最良の選択肢になるというわけだ。

植草氏はこのため、①大企業の御用組合であり、安倍政権の政策(戦争法制を容認し、原発稼働を容認し、消費税増税を容認する基本姿勢が明確な)全国労働組合総連合会(連合)と日本維新の会との連携に右旋回し、さらには立憲民主党との合流説を再燃させている国民民主党とは手を切ること②立憲・共産・社民・れいわが戦争法制廃棄、原発廃炉、消費税減税で足並みを揃えて「政策連合」を構築するべきだ−と提案している。

サイト管理者も植草氏の指摘に賛成したい。ただし、不安もあるので以下にそれを記したい。まず、れいわの山本太郎代表が出馬会見を行った際に明らかにしたことだが、第一に、都知事選で反小池陣営の統一に関して3月5日と25日に打診に行った際、宇都宮健児候補が候補統一を拒否したことである。

第二に、恐らく立憲側が①れいわ新選組を選挙確認団体(選挙の公示日から投票日までの選挙運動期間中に一定の条件の下で政治活動を許されている政治団体のこと。許されている活動は,演説会,街頭演説,政治活動用の自動車と拡声器の使用,ポスター,立札,看板の掲示,選挙に関する記事を掲載した機関誌やビラなどの頒布。首長選挙なら候補者を出すか支援している政党または政治団体。支援組織も可能だ)として認めない②消費税率の5%への引き下げを拒否した−ことだ。

第三は、れいわが専門機関に依頼して3006人に対し都知事選の投票対象者調査を行ったところ、小池現職候補が52%であり、無党派層全体が統一候補に投票すると仮定しても、小池現職候補に勝てる見込みはなかったということで、候補者の統一ということ自体がほとんど無意味であったこと。

無党派層の小池現職支持は、①小池現職候補が利権企業とマスコミと結託してテレビでの主要候補者討論会を拒否する一方、東京オリンピックの来夏延期開催が決定するやいなや突然、テレビのニュース番組に露出したこと②都税を使ってテレビコマーシャルに出演するなどステルス選挙を行うとともに、1兆円規模の財政調整金を「自粛要請強力基金」としてばらまき、いわゆる無党派層を巧みに取り込んだこと③「東京アラート」制度を1週間で止めるなど専門家からはコロナ禍対策が支離滅裂との批判を浴びていたが、小池現職都知事候補のコロナ禍対策が再選に向けて一貫していたこと④選挙戦終盤の感染確認者急増に都民が疑問を持たなかったと見られること−などによると思われる。

今回の都知事選でれいわの山本代表が反小池統一候補の擁立に協力しなかったことを批判する向きも後を断たないが、その背景にはこうした理由があったことを考慮する必要があるだろう。

特に、立憲側か消費税減税を拒否したことは反小池統一候補擁立の重大な妨げになった。やはり、立憲内にも連合の組織票を当てにする政治屋がいることは否めない。2009年に成立した民主党が短期間に瓦解した理由に、実質的に利権大企業の御用組合であり、大企業の要望を受け入れ。安倍政権の新自由主義政策を支持する連合を支持基盤とする政治屋がいることは否めない。これが、国民の野党に対する不信感を根強くさせる原因になった。

次に、国民民主党内にも消費税減税研究会の共同代表である馬渕澄夫衆院議員のように消費税減税に賛成する議員が少なからずいる。「国民の生活が第一」の自由党から合流した小沢一郎衆院議員ら旧自由党衆院議員も消費税減税に賛成しなければ変節したことになる。

加えて、消費税減税は緊縮財政から積極財政への転換へ抜本的転換の際のひとつの政策要素である。自民党議員にも総務会長代理(衆院議員)や西田昌司党税制調査会幹事(参院議員)ら100人程度の議員が現代貨幣理論(MMT)を習得して、積極財政、消費税率ゼロ%を提言している。何でもありの安倍首相が彼らの提言を受け入れる可能性もなくはない。その場合は、「政策連合」の提言政策がかすんでしまう。「政策連合」としても、MMTを詳細に調べ、自民党が積極財政と消費税ゼロ%を打ち出してきた場合は、これまでの新自由主義路線、緊縮財政路線との矛盾を理路整然と大々的に批判し、反撃する必要がある。コロナ禍が収束したら、「財政再建」のために、消費税率をまた引き上げると言ってくるだろう。

こっそり現代貨幣理論の正しさを認める財務省のホームページ

野党議員の中に、どれだけMMTを理解し、財務省の官僚と太刀打ちできる議員がいるか、いささか心もとない。野党の中でMMTに一番精通しているのは、「とんでもないポピュリズム」として攻撃されているれいわ新選組だろう。こうしたことからすれば、立憲の執行部がMMTをしっかり理解しておくこと、国民民主からMMTに基づく積極財政論に賛成する国会議員を引き抜いて「政策連合」を強化することが不可欠である。日本の現下の最大の問題は、コロナ禍によって悪化が加速しているデフレ大不況である。場合によっては、大恐慌に陥りかねないし、供給力も蒸発してしまえば、大恐慌よりもさらにひどい大スタグフレーション(大不況下のハイパーレーション)に陥りかねない。

現下の日本の最大の問題は、新型コロナ感染防止対策であり、失われた30年を取り戻すことである。安保法制の廃棄や原発即時稼働を訴えても、野党に失望している「無党派層」と呼ばれる政治不信層、無関心層の心には響かないだろう。

早急に「政策連合」を形成するとともに、政策連合に属する立候補者は共通基本政策を理論的に深め、政治不信の「無党派層」に分かりやすく説明できる心情と能力を持つ必要がある。

※追記:現在の新型コロナウイルス感染再拡大の規模とスピード、検察が河井克行前法相容疑者、河井案里最議員容疑者逮捕の本丸である「自民党本部の最高責任者」の捜査に乗り出せば、解散・総選挙にストップがかかる可能性はある。ただし、後者については、公設秘書を使って香典配布の公職選挙法違反に問われた菅原一秀前経済産業大臣に対して東京地検特捜部が6月25日、起訴猶予としたことから、可能性はあまり高くないと見られる。

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