非常事態宣言集結に必要な実効再生産数−PCR等検査の拡充、絶対に不可欠

ゴールデンウイーク以降の新型コロナ感染者数の減少で、コロナ禍に伴う都道府県による「営業自粛・自宅待機要請」の解除、さらには政府による非常事態宣言の解除に向けて、数値目標の議論が活発になってきた。しかし、巷で議論されている数値目標以上に、基本再生産数、実効再生産数、集団免疫率の3指標が重要である。特に、実効再生産数(社会の構成員のうち、新型コロナウイルスに対する免疫力を確保した人数の割合を考慮した感染者1人あたりの感染拡大数)が重要だ。この数値が1以下にならないと感染の拡大はとまらないが、各都道府県で議論されている数値目標には実効再生産数が入っていない。今回の新型ウイルスは変異を遂げやすく、武漢型、欧州型に加えて、これらの型よりもさらに感染力と毒性の強いウイルスに変異している可能性が強い。情緒的な数字で単純に要請や宣言を解除すると、日本の経済社会に甚大な禍根を残す結果になる。

本論に入る前に、今国会に政府=安倍晋三政権が国会に強行提出した検察庁改革法案が国民主権の民主主義社会では当然の三権分立制度を完全に破壊するものであることを強調しておきたい。11日の衆院予算委員会で、立憲民主党の枝野幸男代表は、政府=安倍政権が今国会に強行提出した検察庁改革法案について、安倍政権特に疑惑満載の安倍首相を検察が告訴しないようにするための立法であると追及し、「感染症危機を乗り越えるよりも自分に都合のいい法律を作ることを優先した。火事場泥棒のようだ」と強く批判した。

※検察庁改革法案:①役職定年「満63歳を過ぎたら次長検事・検事長・検事正、満65歳を過ぎたら検事総長は役職を退く」②特例規定「次長検事・検事長は内閣が、検事正は法務大臣がそれぞれ認めれば、最大3年間在籍を延長できる」というのが骨子。

同法案は、内閣が任命し、天皇が認証する認証官である検事総長を内閣に都合の良いように任命できるようにする法案だ。もともと、日本では三権分立制度が徹底されて来なかった経緯がある。とりわけ、第二次安倍政権が成立してからは、その不徹底度がひどくなった。モリカケ疑惑、桜疑惑は国民に対する背任罪、贈収賄疑罪、公職選挙法違反罪で立件できるはずだったが、検察はそうしなかった。背後で法務省事務次官出身の東京高検検事長の黒川弘務検事長が暗躍していると理解されている。

今回の検察庁改革法案は、こうしたことを完全に合法化する内容(高等検察庁検事長の定年は63歳だが、検事長など検察官は内閣の判断によって定年を延長できる)であるが、検察庁は政府の一機関だとしても、時の総理大臣さえ起訴・公判に持ち込める権力を持っているから、その内部人事に対して内閣が介入するなどのことがあってはならない。ところが、第二次安倍内閣は、従来の内閣が踏襲してきた法律の解釈を勝手に変更し、憲法が禁じている集団自衛権を認める「安保法制」を強行採決するなど、数の力に物を言わせてきた事実があり、憲法違反の法律を制定することなど朝飯前だから、今回の検察庁改革法案も強行提出してきた。

自公両党の得票率は低下してきているが、国民の半数が選挙に対して棄権を行っているので、自公に与する有権者の20%から25%は必ず選挙に行くことからすれば、小選挙区では自公両党が僅差で勝つことになり、民意とはかけ離れた国会議席を獲得できる。こうした日本の国民の政治に対する無関心さも、自公両党の横暴を許している。

そんな中で、コロナ禍の現在、リアルのデモを行うことが出来ないから、著名な芸能人も含めて600万から700万人が9、10両日の週末、ツイッターで「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグのついたツイートを行い、ネットデモを行った。今回のコロナ禍では、PCR等の検査を阻止する一方、医学的・感染症学的・科学的根拠のない休業・自宅待機を要請(命令)、国民にコロナ禍の責任があるとの立場を取っておきながら、その裏で今国会後半はコロナ禍対策に集中すべきところ、「火事場泥棒」を行う。

こうした安倍政権の極悪非道ぶりに、心ある国民がネットデモを行ったのだろう。安倍政権は何とも思っていないようだが、後半国会でコロナ禍対策のひどさ、火事場泥棒の卑劣さが際立ってくると、内閣支持率の低下と国民の政治意識の高まりは同時的に進行するだろう。朝日デジタルが2020年5月12日5時00分に投稿した「検察庁法改正、内部に異論『唐突な印象』成立急ぐ政権」でも、「衆院内閣委での採決を13日にも、と想定していた自民党にとっては、思わぬ世論の反発。あるベテランは『なぜこのタイミングでこんな法案を進めるのだろう』と首をひねる」とあるくらいだから、来年秋までの総選挙で自公両党が大きなしっぺ返しをくらう可能性は否定できないし、そうしなければならないだろう。総選挙が実施できるよう期日前投票に加え、郵送投票、場合に寄っては電子投票の準備もしておかなければならない。

話が長くなったが、本論に入る。「営業自粛・自宅待機要請」の解除、さらには政府による非常事態宣言の解除に向けては、①新規感染者の数の移動平均、PCR検査数の移動平均②前者から算出した陽性化率③新型コロナウイルスに感染して重症・重篤化された患者さんを受け入れることができるベッド数−などが話題になっている。

東京都福祉保健局による。ページの上部にトップページから本ページに到達するための経路が書かれている。「東京都福祉保健局>医療・保健>感染症対策>新型コロナウイルス感染症のPCR検査の陽性率・陽性者の発生動向について」でたどり着けます。

第三のような医療機関側の完備体制の確立は明らかに必要だが、政府はウソをついてはいけない。5月12日付3面の「病床数『使えない分加算』」と題する記事によると、新型コロナウイルス感染症の入院患者向けに確保した病床数が、国と都道府県で大きく食い違っているとし、その例として「安倍晋三首相は先月国会で『三万二千床』と答弁。(しかし)都道府県が厚生労働省に報告したのは計約一万四千床にとどまった」と指摘している。これはその一例に過ぎないが、今回のコロナ禍で全国の医療機関は院内感染した医療機関も含め、防疫体制も整わないため、診察を拒否せざるを得ず、そのことも手伝って医療業界全般が大きな経営難に陥っている。

日本医師会では4兆円の財政措置が必要だと訴えているが、政府は1千500億円程度の医療機関支援措置と1兆円の特別地方交付金交付税の増額で事足れの基本姿勢であり、必要があれば「第二次補正予算案編成」と言っている程度。切迫感と緊急事態との認識に欠けている。「営業自粛と自宅待機要請」は「検査・隔離・治療」と異なるので、感染症対策とは言い難いが、それでも継続すると日本の経済社会に甚大な影響を与える。

このことからすれば、第二次補正予算案を早期に編成して、医療現場の要請にまず応えなければならない。「検察庁改革法案」などは今国会で審議すべき内容ではない。さて、感染者数やPCR検査の要請判明率の移動平均であるが、ゴールデンウイーク入からこれらが減少してきているため、何となく解除ムードになってきている。

しかし、最近の感染者数の減少はゴールデンウイーク入りに伴うPCR検査の減少によるところが大きい。厚生労働省の次の数字がこれをよく示している(マウスのクリックで拡大)。

検査が少なくなれば、「新規感染者数」も減ってくるのが当然だ。次に、最大の焦点になっているのが、PCR検査数に占める要請判定者の割合(陽性化率)だ。陽性化率が低ければ低いほど、死亡化率が低いというデータはあるようだ。しかし、日本の新型コロナウイルス確認者は、PCR検査数が極端に少ないため、陽性化率も含め国内感染者の実態は明らかでない。「専門家会議」副座長の尾身茂氏さえ、11日の衆院予算委員会で「実際の感染者数は現在の10倍か20倍か30倍か誰にも分からない」と語っているくらいだから、現在の確認者数よりは少なくとも「かなり」多く、普通は「相当」多いと考えるのが正しいだろう。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議=24日午前、東京都千代田区

こうした国内感染の実態が明らかでない状態で、限られた「陽性化率」では、「解除」の参考程度にはなっても、科学的な根拠とは言い難い。それに、何よりも「陽性化率」は「感染収束」の直接の根拠にはならない。感染収束を正しく判断できるのは、①基本再生産数(1人の感染者が何人を感染させるか)②実効再生産数(社会の構成員のどの程度の割合の人数が免疫を確保しているかを考慮した場合に、1人が何人を感染させるか。 その割合をpとすると、実効再生産数=基本再生産数×pということになる)③集団免疫率(社会の構成員のどの程度の割合の人数が免疫を確保しているかを示す数字)だろう。

少なくとも、実効再生産数が1未満(1よりはかなり低くなることが望ましい)でないと、感染者数は増え続け、1を超えると、感染者数は指数関数的に増える。実効再生産指数の計算の仕方は参考例として山中伸哉教授が自身のサイトで公開。朝日デジタルが2020年5月13日5時00分に投稿した「最新の実効再生産数、ほぼ横ばい 今後は県別も算出へ」と題する投稿記事によると、厚労省のクラスター班に加わっている北海道大学教授の西浦博教授が「12日夜、オンラインで(実効再生産数)推定方法の詳細を解説した。感染の広がりを示す重要な指標の一つ「実効再生産数」が国内で4月中旬以降、0・7前後の横ばいで推移し、感染拡大は免れていることを明らかにした」という。詳細は調べる必要があるが、ノーベル医学生理学賞受賞の山中教授は、感染者数を計算式に入れる必要があると指摘しているのでやはり、国内の陽性者数をできるだけ正確に測る必要があるだろう。

東大先端科学センターの癌・代謝プロジェクトチームリーダーの児玉龍彦氏によると、今回の新型コロナウイルスは非常に特異な性格を持っていることが知られている。それは、普通のウイルスの場合は、ウイルスがヒトの体内に入ってくるとIgMというものが比較的早期に大量に産生され、その後はIgGというものに変わって持続的に産生される。そして、ウイルスを害のないものに変える中和抗体というものが産生される。

しかし、今回の新型コロナウイルスの場合は、IgMの産生が極めて遅く、つれてIgG抗体や中和抗体の産生も遅れがちのようである。逆に、IgMの産生が早く、https://www.covid19-yamanaka.com/index.html大量に産生されると免疫の暴走が起こり、逆にヒトの体内を攻撃して、重症・重篤・死亡化するということが分かってきたようだ。つまり、このウイルスに感染すると、従来のようには免疫がなかなか確保できないようだ。

この場合は、集団免疫は獲得しにくいということになる。上記のpはかなり低いことになるわけだ。しかも、有効再生産数は、検査の数を多くしなければ正確には掴めない。朝日デジタルに2020年5月12日23時45分に投稿された「武漢で1カ月ぶりに患者 集団感染の疑い、責任者は処分」と題する記事によると、「発症者が出た団地では住民約5千人の全員検査が行われている。国営新華社通信のウェブサイト『新華網』は12日、市当局が全市民に検査を実施する計画を進めていると報じた。実際、市民には『10日間で市民全員を検査する』との通知がすでに届き始めている」という。

これは、自覚症状のない感染者が血液疾患や糖尿病などの持病をもった方を感染させ、重症化・重篤化・死亡化させる可能性がかなり高いことを意識し、無自覚・軽症状感染者が感染拡大を防止するため「隔離」に力を入れるということだろう。

東京・台東区の永寿総合病院でも、自覚症状のない感染者が入院患者の見舞いに訪れて入院患者に感染させ、重症化・重篤化・死亡化をもたらしたと報告されている。PCR検査が必要ないという「専門家」は少なくないが、大きな理由としては、①高い技術力が必要である②PCR検査には薬剤が必要だが、その薬剤が不足してきている③PCR検査で陽性が判明しても、対処のしようがない④PCR検査をすれば、希望者が殺到して医療崩壊を招く−などを挙げている。

しかし、米国でのゲーツ財団などで調査によると、自分でできる検査キットと専門家によるPCR検査の結果は大して変わりがないという。また、PCR検査は看護師なども行っているし、それほど技術を要するものではないという専門家もいる。さらに、鼻の奥だけでなく、唾液でも検査できることが分かってきたが、その場合は検査はより簡単になる。

PCR検査に薬剤は必要だ。しかし、中国のBGIやスイスの大手製薬会社(メガ・ファーマシー=メガファーマ)が新型コロナウイルスに対処した検査ツールキットを開発したのに、日本では厚労省が国立感染研などと結託して国産開発を優先させ(実用レベルの開発はできなかったらしい)、輸入努力をせず、結果的にPCR検査キットの確保が遅れてしまうという重大な政府=安倍政権の失敗を招いた。

PCR検査で陽性が判明しても、対処のしようがないなどというのは暴論だろう。政府や東京都の専門家会議の専門家は、アビガンなどを回しているという話もある。また、PCR検査をしないから、院内感染や介護施設でのクラスター感染をもたらし、医療崩壊をもたらしてきた。

加藤勝信厚労相が、PCR検査を妨害したのもこうしたところによるところが大きい。これに関して東京新聞は12日付20面の「厚労相『誤解』発言の声」と題する記事で、厚労省が加藤厚労相の国家答弁のように3月13日、23日に都道府県に対して、検査基準の目安に該当しなくても柔軟に対応するよう連絡したとしながらも、次のような新型コロナで死亡した男性の遺族のコメントを掲載している(今月八日の衆院厚生労働委員会で野党共同会派のや柚木=ゆのき=道義議員の代読)。
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(この男性)家族が泣きながらPCR検査を頼んだのに断られ、発熱から六日後に検査を受けたものの、入院後に呼吸困難となり亡くなったという。「私たちはコロナの犠牲者ではありません。どこかの偉い人たちが考えた基準によって犠牲になっています」
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最近は、検査基準を変更したり、地方の医師会と自治体がPCR検査の検体を検査希望者から採取するPCRセンターの設置を容認したが、財政措置をしないから、検査機関があまり増えない。また、かかりつけ医(主治医)とPCR検査のできる検査会社との連携にも積極的に取り組んでいるようには見えない。普通の医療機関では、防疫体制が整っていないことも加わって、「風邪の症状のあるものは診察お断り」または「電話診察」ということになっている。

こうした状況で、PCR検査数の拡大が可能なはずがない。なお、最近は陰性なのに陽性と判定する擬陽性、陽性なのに陰性と判定する偽陰性もあることからPCR検査に加えて、抗原検査や抗体検査、CT撮影など、新型コロナウイルス感染症に対して総合的な診察と対症療法であっても治療が必要だ。副作用の問題はあるが、早期発見すればアビガンなどを服用することに寄って、重症化を防げる。

第二次補正予算案を早期に結成し、①医療機関の積極的財政支援②非正規労働者や学生の困窮状態など経済社会の緩和−を行動に移すべきである。そういったことをせずに、「休業・自宅待機要請」や「緊急事態宣言」の解除をする客観的な数値として、PCR検査数は無視して感染確認者数の減少だけを報道したり、陽性化率を上げるだけの垂れ流し「報道」だけで、PCR検査等検査数、実効再生産数などが上がってこないのは、日本の経済社会に重大な禍根を残す。