安倍政権の消費税増税強行にコロナ禍が追い打ちをかけ、日本経済の先行きは非常に厳しい。大不況に陥ることはもちろん大恐慌に暗転するとの見方も強まってきている。そんな中で、昨日9月5日に合流新党の代表選出選挙が始まったが、枝野幸男候補の消費税に対する態度が曖昧だ。泉健太候補は「消費税ゼロ・凍結」と複数回にわたる定額給付金の実施を訴えているが、枝野候補は「直間比率の見直しを含む税制改革」を訴え、消費減税も選択肢のひとつと主張したものの、「与野党で協力しないと法改正できない。選挙の争点というのは違うのではないか」と消費税の減税さえ明言しない。消費税を強行増税するたびごとに実質国内総生産(GDP)が大きく落ち込んできたことは紛れもない事実であり、これにコロナ禍が追い打ちをかけている。この緊急事態に「消費税率の5%」への引き下げさえ明言できない枝野氏は、日本経済の現状を理解しようとしないように見えると言われても仕方があるまい。「消費税率ゼロないし凍結」を野党共闘の目玉にするべく、合流新党の中堅・若手議員は枝野候補の外堀を埋めるべきだ。そうすれば、参院選も制することができる。
本日9月8日午前8時50分、内閣府から今年第2・四半期の第二次速報値が発表された。第一次速報値では前期比年率27.8%減少だったが、同28.1%減に下方修正された。家計最終消費支出が前期比8.6%減少から8.3%減少に若干上方修正されたものの、設備投資が前期比1.5%減から同4.5%減に大幅下方修正されたためだ。
その家計最終消費支出の動きだが、関連する家計消費支出は物価の変動を加味した実質ベースで今年の6月の前年同期比1.2%源から、7月は再び同7.6%減と再び大幅に落ち込んだ。つまり、日本の経済は経済の二大エンジンである家計消費と設備投資がボロボロになっているのだ。
なお、厚生労働省が9月1日に発表した今年7月の有効求人倍率は1.08倍で、前月に比べて0.03ポイント低下している。アベノミクスのウリも残るは平均株価だけになったが、これは日本銀行や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの公的機関が力づくで株価を下支えしてのことだ。日本の産業構造の転換は後れており、企業の国際競争力は、一貫した法人税減税にもかかわらず、失われている。
さらに、内閣府が7日発表した7月の景気動向指数は、景気の現状を示す「一致指数」が傾向的に悪化していることから、基調判断が12カ月連続で「悪化」になり、比較可能な2008年4月以降で最長になっている。政府=安倍(実質菅義偉)政権は、今年第3・四半期から日本型に変異した新型コロナ感染症対策を事実上投げ出し、「Go To Travel=Go To Trouble」政策など経済活動再開に躍起になっていることから、第3・四半期以降、景気は「V字型」に回復してくれることを期待しているようだが、そうは行かない。
安倍晋三首相が政権運営に行き詰まり、持病をきっかけ(追記9月9日:河井克行・案里問題での真相が明確になることを恐れたことがストレスの原因だろう。菅官房長官も当時の黒川弘務東京高検検事と公明党とともに河合克行・案里問題にかかわっていたと見られる。本件については郷原信郎氏のブログ・サイト=https://blogos.com/article/483251/?p=2に詳しい=)に政権を投げ出して菅氏に「あとを頼む」と虫の良いことを言っているが、そうは問屋が降ろさない。安倍首相には、政治には要らぬ口出しをせず、しっかりと療養し、回復していただくことが先決だ。そして、安倍政治の結末は、ご自分で責任を取ってもらわなければならない。
これに関して言えば、日本の景気・経済情勢が悪化している根本的な原因は、新自由主義に基づく緊縮財政・量的金融緩和政策のポリシー・ミックスが決定的に間違っていたことにある。これに、「自己責任・政府無責任原則」の新自由主義に基づく弱肉強食の権力の私物化=利権政治、社会保障削減政策を大胆に展開してきたことが加わる。コロナ禍が新自由主義政策の根本的な誤りを決定的に露呈させた。
その最たる象徴が、二度にわたる消費税の強行増税である。これに対して、立憲の枝野候補が新自由主義と対決する政治を行うというのなら、真っ先に「消費税凍結・税率ゼロ%」を打ち出して当然だ。しかし、代表選では、「相手のあることだから」と言ってお茶を濁す。これでは、衆議院選挙(総選挙)を制し、参議院選挙も制するという決意がないことの証左と言われても仕方があるまい。それとも、デフレ下で消費税の減税を行えばデフレ不況が一段と深刻になるから、むしろ増税して物価を上げれば良いとでも思っているのであろうか。そう勘ぐりたくもなる決断の遅さだ。
また、枝野候補は、「(民主党の失敗は)内側で徹底してやるべき議論をメディアに向かってしゃべってしまったこと。自分の主張を正当化し、仲間の足を引っ張るということには毅然(きぜん)とした姿勢をとる」と主張した。こういう独裁体制を採ってきたことこそが立憲の支持率を低下させてきた原因であるのに、それをみとめて反省しようとしないばかりか、さらに強圧的な態度を取る。これに対して、泉氏は「当選回数などで自分の言いたいことが言えない政党ではいけない。幹部が偉そうに振る舞う政党ではいけない」と述べ、枝野候補の独裁的体質を暗に批判した。
枝野候補は、革マル派系列との噂が絶えない。こうした政治・経済認識では、野党第一党の党首・将来の総理大臣の資質はない。れいわ新選組の山本太郎代表が枝野氏を批判するのも当然だ。それに、いつも健全な「日米同盟を基軸」にした外交を展開すると述べる。日本が対米隷属の外交を強いられてきことは、まともな国民なら誰でも知っていることだ。「日米同盟」という名の対米隷属外交から決別し、米国(の軍産複合体=日本を私物化しようとする多国籍業と軍事勢力)に対して、国益と世界平和を守る観点からはっきり物を言う真の日米関係を築く腹づもりもないらしい。
枝野氏は埼玉5区で当選を続けているが、選挙基盤は必ずしも強くない。枝野氏を覚醒させるため、山本氏自身が同選挙区に出馬し刺客になってもおかしくない状態だ。既に、東京都では立憲の重鎮が当選している選挙区に候補者を擁立している。これらの選挙区は、先の東京都知事選でれいわに対する投票数の多かった地域だ。野党第一党の枝野氏側から何も言ってこなければ、候補を擁立するのは当然のことではないか。
枝野氏が真の立憲民主党を目指すと言うのなら、自らが立憲主義を身につけなければならない。それには、党内での言論封殺を止めることから始めなければならない。枝野氏は、菅直人首相(当時)とともに小沢一郎衆院議員を冷遇し、マスコミを通して米国から攻撃されている小沢氏を守ろうともせず、結果的に小沢氏を民主党から追い出した民主党悪徳七人衆の一人であった。合流新党の結成までこぎ着けられたのは、小沢氏のお陰ではないか。反省すべきはこの点である。
立憲、国民の中堅・若手議員には消費税の凍結や廃止を通して日本経済再建の一丁目一番地にしようとする者が多い。自民党の中にさえ、安藤裕衆院議員や西田昌司参院議員ら中堅・若手議員100人の間で、消費税減税を求める声が強まっている。ただし、彼らには自らが正しいと思う政策を実現しようとする信念がないから、自民党を離党する覚悟はない。何よりも、総選挙や参院選で落選することを恐れるだけの集団に過ぎない。だから、立憲や国民の中堅・若手議員が、枝野氏に鈴をつけ、少なくともコロナ禍が集結するまでは消費税を終結するという目玉政策を掲げるよう外堀を埋めるべきだ。そうして、真の「野党共闘」を実現し、「日本一新」を行わなくてはならない。
◎追記(9月9日午前7時20分):娯楽要素が多いがインターネット新聞である「note」が行っている合流新党代表選挙の立憲パートナー、国民サポーターによるネット投票(https://note.com/yatou9/n/n04c3a0001042)では、泉候補が枝野候補を圧勝している。一応、同じ人物が同じ端末から複数回の投票を行えないように制限はしている。ただし、立憲パートナーか国民サポーターであるかは確認できないし、利権集団に属する安倍政権支持者が枝野候補を貶めるために泉候補にネット投票を行っている可能性もあるので、ネットでの投票結果として参考にすれば良いと思う。まず、両候補の見解のポイントが示されている。実際は、枝野候補の見解は「日米同盟を基軸にする」とか「消費税減税」を曖昧にするなど、より既得権益体制派のようだった。
次に、ネット投票の途中経過である。
これを見ると、泉候補が「圧勝」している。枝野候補が心底、これまでの政治行動を反省しない限り、国民の支持を得ることはできないだろう。合流新党がれいわを含む政権奪取のための確かな「野党共闘」を組んで総選挙に勝てなければ、合流新党の両院議員総会で代表に選ばれたとしても、辞任は必至だ。
なお、国税庁によると「平成 28 年4月に消費税法の一部が改正されました。主な改正内容は次のとおりです。 平成 31 年 10 月1日から、消費税及び地方消費税の税率が8%から 10%へ引き上げられ、この税率引上げと 同時に消費税の軽減税率制度が実施されます」という。消費税げ税・消費税凍結・消費税廃止はいずれも参院議院で成立しないと実現しないが、定額給付金・持続化給付金の名目で国民と企業に返せば良い。赤字国債の発行も、参議院を通過する必要はあるが野党に転落した自公両党に加えて日本維新の会が反対すれば、これらの政党は参院選でも惨敗し、新自由主義を捨てなければ政権復帰は不可能になる。