9月20日の東京新聞とのインタビューで新・立憲民主党の枝野幸男代表が「消費税率ゼロは与党の了解が必要」として、「票集めのスローガンにするつもりはない」と明言したことで、消費税率の少なくとも5%への引き下げを野党共闘の条件にするとしているれいわ新選組との総選挙での協力は、泉健太政調会長や馬淵澄夫衆院議員らが枝野代表を翻意させない限り、不可能になった。
◎追記:9月20日は、東京都の新型コロナウイルスの新規感染確認者は162人。重症の患者は、19日から2人増えて27人。20代〜30代の若者は69人だから、それ以外の世代は57.4%。全国では481人、4人の方が亡くなられた。17日には速報値で1日に1万9071件のPCR検査があったため、推測瞬間陽性率は2.5%。
◎東京都のモニタリングサイトは、https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/。厚生労働省はhttps://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1です。
新・立憲(以後、立憲と表記)の枝野代表の発言の内容はは東京新聞20付1、3面に掲載されているが、東京Webではhttps://www.tokyo-np.co.jp/article/56455?rct=politicsに投稿されている。下記に関連記事を引用させていただく。
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―首相指名選挙で「枝野幸男」と書いた他の野党との選挙協力は。
「菅義偉氏より枝野の方が(理念が)近いと判断していただいたことを重く受け止めたい。どのような連携なら国民の理解を得られるかについて、お互いに努力していく。(今回の合流に参加しなかった)国民民主党とも懐深く対応し、最大限の連携を模索していきたい」―新型コロナウイルスの経済対策として「消費税ゼロ」の可能性は。
「現在も国債を財源に財政出動をしており、経済がさらに悪化する状況ならあり得る。ただ、消費税が下がるかもしれないと国民が思ったら買い控えが起き、消費を冷え込ませて景気対策としては最悪だ。やるなら決めてから2カ月で実行しなければいけない」―「消費税ゼロ」を次期衆院選の公約に掲げるか。
「選挙の票集めのスローガンに使うつもりは全くない。理想だけ叫んで政権を取っても立ち往生する。単なるパフォーマンスではなく、本当にやるのであれば消費税減税を含む緊急経済対策について与野党協議のテーブルをつくり、土俵に乗せる必要がある」
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ここで、新・国民民主党(以降、国民)の総選挙での連携の部分も引用させていただいたのは、国民の国会議員の中にはもちろん電力総連出身の労組議員が原発ゼロ社会の実現に反対していることもあるが、15日の国民の設立大会の際に、財務省出身の岸本周平議員が、赤字国債は「必ず返さなければなりません。そして、将来の社会保障のためにも必ず財源が必要です」と消費税のさらなる増税(少なくとも、消費税率の欧州連合=EU=の付加価値税率の最高税率の20%への引き上げ。もっとも、EUの付加価値税は複数税率になっており、生活必需品には付加価値税はかからない)を示唆した、というより明言したためだ。
「社会保障の財源のために消費税を増税する」というのは、本サイトでしばしば述べてきたように全くのウソである。繰り返すが、一般財源であるためどんな用途にも使える。消費税による税収は、①高額所得者層=富裕層の減税②法人税の減税③自公支持層を実質的に選挙のために買収するための利権支出の増加④米国製軍事兵器の在庫一掃セールの爆買いーなどのために使われてきた。
確かに、日本は医療技術の進歩で平均寿命が長くなり、世界でも類のない超高齢化社会に突入しており、2022年には団塊の世代が後期高齢層(姥捨山のような言葉)に突入するため、年金・医療・福祉などの社会保障費が増大していくことから、国内総生産(GDP)に対する社会保障給付費の割合は増加している。しかし、従来の主流派経済学の立場に立ったとしても、所得税や法人税も増税一直線で進むべきであった。そして、利権支出は廃止し、米国製軍事兵器の言い値での爆買いなどは行うべきではなかった。
ところが、特に小泉純一郎政権以降の自公与党政権は、政権の支持層に利益を供与する一方で、社会保障費は最大限切り詰め、超高齢化社会の到来が早くから予想されていたにもかかわらず、「男女共同参画(根本は女性の給与の増加)・少子化対策」には何の手も講じてこなかった。前者の例としては、公的年金の被保険者(加入者)の減少や平均寿命の延び、更に社会の経済状況を考慮して、年金の給付金額をカットする制度=マクロ経済スライドという難解な言葉の制度を作った。後者では、教育支援費の大幅削減である。教職員数は大幅に削減し、将来の日本の担い手である大学生に対しては、サラ金並みと言われている有利子の奨学金を「貸与」するため、大卒時には男子卒業者、女子卒業者とも500万円の有利子借金を背負っている。
特に、女子大生は哀れだ。
しかも、勤労者の非正規化を強力に進める一方で、消費税を導入して、非正規の派遣労働者の給与は代理納付消費税額の控除対象にしていることから、非正規化は一段と進む。こうしたことでは、結婚をして、子どもをもうけ、育てたくても経済的事情からできなくなってしまう。出生率が上昇しないのは主として経済的理由からだ。これに、戦後の「民主主義教育」の失敗が重なり、シングルファーザー、シングルマザーが増え、幼児・児童虐待が急増している。
医療制度においても、高齢者の自己負担額は増える一方である。また、構造改革と称して「民にできることは民に」などと言って、国鉄民営化や郵政民営化に加え特区制度を創設し、外国企業を含む民間企業に利益を与えてきた。国鉄民営化では、JR北海道やJR四国などは破綻が見えてきている。郵政民営化では、簡易保険制度潰し(簡保の不祥事などは意図的なものである公算が大きい)の一方で、郵便局会社にがん保険のアフラックの生命保険を販売させたりするなど外資に特権的便宜を与えている。その一方で、大都市の超優良地の郵便局の売却が企てられている。米国を中心にした多国籍企業に対して不動産の売却、取得による利益を供与するためだ。また、農業を中心とする一次産業への株式会社制度の導入や種苗法の改正などは、農業を中心に一次産業を外資に売り渡すものである。
国家公務員や地方公務員「民にできることは民に」ではなく、「官でしなければならないことは官でする」が原則なのである。減らし続けてきた公務員や教職員は正規公務員として増やさなければなならないし、地域の健康に貢献するべき保健所の数も増やさなければならない。国立・公立大学や公立、公営病院の独立行政法人化は止めるべきだ。超高齢化・超少子化の時代に消費税を増税しさえすれば何とかなる、その謝礼として利権集団に利権を与えることを当然としてきたのが、自公連立政権の本質であり、高級官僚の狙いなのだ。
そうした自公政権と高級官僚の手先と化しているのが、国民民主である。その国民と選挙協力を行う一方で、超高齢化・超少子化を乗り切るための政策を必至で追求しているれいわとは選挙協力をしないというのだから、立憲の枝野代表には呆れて物も言えないところだ。野党がだらしないこと(米国によってだらしなくさせられた面もあることは確かだ)が、日本の政治の劣化の最大の原因である。なお、超高齢化社会が続くのは20年前後だ。主流派経済学では乗り切れまい。現代貨幣理論(MMT)のまともで徹底的な考察が必要だろう。
さて、枝野発言には大きな問題点がある。「選挙の票集めのスローガンに使うつもりは全くない。理想だけ叫んで政権を取っても立ち往生する。単なるパフォーマンスではなく、本当にやるのであれば消費税減税を含む緊急経済対策について与野党協議のテーブルをつくり、土俵に乗せる必要がある」という発言だ。消費制率をゼロにするためには、国債を発行しなければならないが、通常の「特例公債(赤字国債)」の発行には、参議院でも発行を認める議決が必要だが、自公と維新、国民が制圧している現状では不可能である。
しかし、過去にはねじれ国会下による与野党対立のため、2011年度予算案は8月26日になってやっと成立し、2012年度予算案は11月に入ってやっと成立した。2012年度法案は2012年度から2015年度までの3年間分の予算について、2016年度法案は2016年度から2020年度までの5年分の予算について、赤字国債を認める内容になっているという事実はある。ただし、消費税ゼロを実現するにはこれでは遅すぎる。
そこで、建設国債(第4条国債)以外に国会の議決(予算案は衆議院の議決が国会の議決になる)以外に、日本銀行に直苦節引受させる国債はないのかと問えば、京都大学大学院の藤井聡教授が「MMTによる令和「新」経済論」で照会している、「国庫短期証券」というものがある。こちらは、日銀の直接引き受けが可能であり、政府の一時的な資金繰りのため毎年度当初に発行されている。2009年2月に政府短期証券(FB)と割引短期国債(TB)が統合されて発行が始まった割引国債だ(https://www.smd-am.co.jp/learning/glossary/YST0577.html)。
コロナ禍の現在、大規模な国庫短期証券の日銀直接引き受けは十分可能だと追われる。立憲の泉健太政調会長はこの点をよく調べたうえで、経済政策をまともに学ぼうとしない枝野代表ー福山哲郎幹事長の執行部ラインに上奏すれば良い。それができれば、国民を野党共闘から追放し、れいわとの総選挙での協力体制(野党として共闘することが最良)である。なお、国民を野党共闘に入れるには、①原発ゼロ②消費税凍結③立憲主義ーを踏み絵にしなければならない。
枝野代表は革命的マルクス主義者同盟(革マル)出身との噂が絶えないが、もしそうなら、もっと真の意味での「革命的精神」を持ったらどうか。なお、日本においてまともな野党が育たなかったのは、日本でのマルクス主義の検討・総括が本格的になされなかったためだ。日本には「近代天皇制」によって明治維新を成し遂げ、非西欧世界では初めて「日本型資本主義経済体制」が構築された。
明治維新を絶対主義体制の成立と捉えたのが、日本共産党の理論的基礎になった「講座派」であり、民主主義革命と捉えたのが社会党の「労農派」だ。戦後は日本共産党が火炎瓶闘争などを行ったために国民から見放され、社会党が最大野党になったが、社会党が議員特権を享受するため「55年体制」が形成され、国会では表で論争し、水面下では手を握るという茶番劇が繰り返された。
こうした中で、米国のCIAの手によって民社党が創設され、事実上の宗教政党であり、国民政党とは言えない「公明党(実態は非公明党)」も創設されたため、日本には理念と政策の裏付けを持った革新的な政党第一党が形成されなかった。日本新党など上記野党とは異なる政党が創設されたが、まともな理念と政策がなかったため、野党の混乱に拍車をかけた。欧州では共産主義に対する真剣な総括が試みられ、ゴーデスベルグ綱領によって共産主義とは決別した社会民主党(社民党)が結成され、保守党との間で政権交代可能な二大政党制が構築された。現在では両党では吸収できない国民層が形成されてきたため、多党化の様相を見せてはいる。
日本でも、取りあえずは共産主義を真剣に総括すべきだろう。日本共産党員の中で、「共産主義」について、哲学・歴史観・経済理論について体系的に説明できる人物がいるとは思われない。最大の不幸はここにある。