安倍晋三政権の政策路線を継承する菅政権が内閣人事局による高級官僚捜査と検察庁・警察庁に対する支配を一段と強めることが予想されており、日本の行政権力による日本国民の「独裁的支配」が一段と進むことが見込まれている。しかし、政権運営には菅首相の答弁に不安があることに加え、コロナ禍対策など解決困難な課題が山積しており、政権運営に大きな不安がある。一方で、真の意味での日本の総決算が見込まれている総選挙での野党共闘も政府=菅政権の実質的な補完勢力である国民民主党が潜り込んでいることと「消費税減税を総選挙の争点にはしない」と立憲民主党の枝野幸男代表が明言していることから、明確な理念と財源を明確にした政策で最も菅政権に対抗する姿勢を強めている山本太郎代表率いるれいわ新選組が野党共闘から離反する公算が大きい。日本の国民および経済社会は崖っぷちに立たされている。
◎追記:21日の新型コロナウイルス感染者は、東京で7日ぶりに100人を下回る98人。東京都基準の重症者は前日と変わらず27人。20代ないし30代の若者は46人でそれ以外の年齢層は全体の53%。PCR検査検査人数や陽性率は不明。日毎の新規感染者数が不安定になっており、各種の集会を取り止める基礎自治体も少なくない。なお、月曜日は新規感染者数が少なくなる傾向がある(PCRなどの検査人数によるものと思われる)。https://www.fnn.jp/articles/-/87083より。ただし、前週の80人よりは増加している。全国では313人が新規感染、7人が亡くなられた。17日には速報値で1日に1万9071件のPCRなどの検査が行われたので、推測瞬間陽性率は1.6%。
本稿では、デモクラシータイムスが報道した9月18日にYoutubeで公開したインタビュー番組「山口二郎のええ加減にせえ」(https://www.youtube.com/watch?v=0P-qdF0BZkQ&t=1519s)をたたき台にして、論じていきたい。山口氏は菅首相の出身大学であると法政大学法学部の教授であり、社会民主主義を支持する立ち位置におられる。
Youtubeのインタビュー番組は前半部分で大手マスメディア、特にキーテレビ局が菅首相について、「秋田県から苦労して首都圏の神奈川県・横浜市を訪れ、法政大学法学部政治学科を卒業後、横浜市の市議会議院を務め、国政入りした苦労人」としてもてはやしている。このため、「ご祝儀相場」もあるだろうが、日本の国民が苦労話に弱いことに、スポンサーである日本経団連の要請で大手マスメディアがつけ込んで大宣伝をしていることから、60%〜70%と異常に高い内閣支持率になっている。
しかし、山口教授がインタビュー番組でも述べているように、立春出世するタイプの人間には、①競合相手を様々な手を使って蹴散らし出世するタイプの人間②世の中の不条理にめげず、苦労している人たちに対して憐憫の情けをもって接し支援、その応援で出世するタイプの人間ーのニ通りのタイプかある。菅首相は官房長官の時代、検察庁や警察庁・警視庁を使って安倍前政権のさまざまな疑惑に蓋をする役割を演じてきた人物で、間違いなく前者のタイプだ。
ある程度正論を語り、安倍首相(当時)にとって都合の悪い石破茂前幹事長や、自民党の主流派閥であった宏池会を引き継ぐ、政調会長であった岸田文雄岸田派会長を安倍善首相とともに叩き潰す「上からのクーデター」(元参院議員の平野貞夫氏)を行って、首相の座を手に入れたのも、上記の観点からすれば容易に理解できる。菅首相は、新自由主義を掲げる保守反動で自民党の補完勢力政党である日本維新の会ともつながりが深く、事実上の宗教政党でもある公明党との連携も深い。
将来的には、自公+維新+国民が大連立政党を構成することになるだろう。この事態が続けば、令和時代の日本は間違いなく戦前のような日本型ファシズム社会に成り下がってしまうだろう。しかし、大連立政党であったとしても、山口教授の指摘するように、次のような重大な問題がある。
第一に、菅首相は官房長官の時代から、説明責任を果たすことができないことで有名だ。また、記者会見で「消費税は増税する」とか「政府として憲法改正に前向きに取り組む」など、日本国憲法・法律の知識についても持ち合わせがない。大不況期には消費税の増税などは行えないし、内閣は日本国憲法を遵守しなければならない。これでは、秋の臨時国会、年初の通常国会では十分な予算委員会などで答弁ができない。
次に、政策の面でも次の課題がある。これは、総選挙での課題でもある。
山口法政大学法学部教授によると第一に、新型コロナウイルスは簡単には収束しない。菅政権は経済活動を重視し、ワクチンを収束の最後の手段として入手に全力を挙げているが、コロナ型のワクチンは簡単に開発できるものではない。例えば、2003年ころ発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスに対するワクチンは未だに開発できていない。
新型コロナウイルスには世界のメガファーマ(巨大製薬会社)が開発にしのぎを削り、治験を進めている。しかし、ワクチンの開発には、①ヒトに有害な作用を及ぼすことがないか安全性を徹底的に確認する必要がある②新型コロナウィルスは変異しやすく(武漢型、欧米額、日本首都圏型などの変異がある)、ワクチンが開発されたとしても、すべての型の新型コロナウイルスに有効な抗体が産生されるかどうか不明③特定の地域の新型コロナウイルスに有効な抗体が産生され、また、安全であるかを確認する第3相の大規模な治験に耐えなければならないーなどの問題がある。
ワクチンの治験が十分でなければ、人体実験になる。ワクチンを急いで接種して健康を害すれば、その場合は誰も責任は取れないだろう。
特に、第3相の大規模な治験が難関である。なお、日本政府=安倍前政権のコロナ対策は、①東京オリンピックの開催を強行するために、初動が決定的に後れた②PCR検査、抗体検査などの検査が医療先進国のはずの日本としては決定的に少なかったために、いまだに全容が把握できていない③新型コロナウイルスは感染しても無症状の場合が少なくなく、無症状者が感染拡大の拡大の震源地になるなど感染力が極めて強く、政令で指定した第Ⅱ類感染症用の対策では、感染拡大の防止が極めて困難である。
有効な治療薬も少しずつ確認、承認されているので、感染震源地(エピセンター)、周辺地帯、その他の地帯に分けて、大規模検査を含む検査体制の確立と実際の検査、感染が確認された患者の適切な医療施設への保護・隔離・治療が必要だが、安倍前政権と同様菅政権にもそうした動きが見られない。感染拡大防止策を国民に任せるだけでは不十分で、その場合は感染拡大と経済活動の悪循環が起きてしまう。
なお、秋から冬にかけてインフルエンザとともに新型コロナウイルス感染の第三波が起こることが予想されている。
第二に、新型コロナウイルス感染拡大が日本の経済活動に大きな影響を与えるのはこれからで、新自由主義に基づく「緊縮財政による財政再建路線」では、経済社会への悪影響を食い止めることはできない。そのために来年の通常国会で行わなければならない2021年度予算の編成は形だけのものになる恐れがある。財務省サイドでは、生活支援金や持続化給付金制度、雇用調整助成金制度の打ち切りを考えているばかりか、「財政再建」と称して新たな増税策を打ち出す構えである。消費税の増税は、財務省にとって有力な財源になる。下図は2012年のものだが、昨年2019年10月に消費税率が10%に引き上げられた後も、日本経団連(会長・ 中西宏明日立製作所会長)はさらなる引き上げを要請している
第三に問題になるのが、お家芸であるはずの「国家安全保障戦略」を打ち出せなくなる公算が大きいことだ。長くなるが、重要なことなので説明させていただきたい。
日本国憲法を完全に破壊する「敵基地攻撃論」は日本の「国家安全保障政策」の要(かなめ)になり、現代が「米中新冷戦」の幅広い展開の時代に変貌していることから、米国の指示で米軍とともに自衛隊が事実上の先制攻撃によって中国と北朝鮮と戦うはめに陥る公算が大きい。結果として、米国と自衛隊では中国に勝ち目はないから、日本は国家としては存亡の危機的状態に陥りかねない。そうした事態になることは絶対に避けなければならない。
朝日新聞の9月21日付け1面の「電磁波戦 沖縄に新舞台」の記事に(朝日デジタルでは、https://digital.asahi.com/articles/ASN9N6TX3N9BUTIL05Y.html?iref=pc_ss_date)よると、「防衛省は、電磁波を使って敵の攻撃を防ぐ「電磁波戦」の専門部隊を、沖縄本島に新設する検討に入った。(中略)防衛省幹部は「諸外国に比べ自衛隊のウサデンへの対応は遅れている」と明かし、防衛の穴ができぬよう、将来的に、沖縄本島以外にも電磁波戦の部隊を配置していくことも検討されているという」。ウサデンとは防衛省内部の隠語だが、宇宙、サイバー、電磁波攻撃隊の総称である。
このうち、少なくとも電磁波攻撃部隊を沖縄の自衛隊基地に置く。在日米軍基地も同じだろう。注目すべきことは沖縄本島以外にも置くとしていることで、次の図を示している。つまり、中国も領有権を主張している尖閣諸島にも電磁波攻撃部隊(基地)を設置する公算が大きいことである。
本サイトでもしばしば指摘してきたとおり、「敵基地攻撃論」の狙いは北朝鮮ではなくて中国である。中国の高性能の精密中長距離誘導ミサイルに対して米国の米軍が歯が立たなくなったことが明らかになったので、同国では対抗できる高性能の精密中長距離誘導ミサイルの開発を急ピッチで進めており、並行してポンペオ国務長官が当時のソ連に対抗するため中国を資本主義国化するという「関与政策」が大失敗だったとして、政治・軍事・経済的に大規模な「中国包囲作戦」を展開、中国が米国をしのぐ経済・軍事超大国になるのを防ごうとしているのだ。
日本の河野太郎防衛相(当時、現在は行革・規制改革担当相だが、沖縄担当相でもある。防衛相時代の発言については、日本共産党の志位和夫委員長の次の発言を参照されて下さい。https://www.youtube.com/watch?v=7CWgVyq-VYg。諸般の事情から、志位委員長は敵基地攻撃論に言う「敵」として、中国であることは明確にはしていない。
それはさておき、中国も領有権を主張している尖閣諸島に電磁波攻撃部隊(基地)を設置したらどうなるか。東アジア共同体研究所の孫崎享所長(外務省国債情報局長、イラン大使、防衛大学教授を歴任)の「日本の領土問題」(ちくま書房)の第二章「尖閣諸島をめぐる日中の駆け引き」によると、①尖閣諸島は日本も中国も領有権を主張している。しかし、民主党(当時、以下同じ)の菅直人政権は尖閣諸島について、「領有権の問題はそもそも存在しない」とし、尖閣諸島めぐる動きについては「国内法で粛々と対応する」とした。このことは将来、中国が「国内法で粛々と対応する」道を開いた。双方が国内法で粛々と対応する方針をとれば、武力紛争につながる
②日中間には尖閣領有権問題は棚上げにするとの暗黙の合意があった(注意:1972年の日中国交回復交渉での田中角栄首相と周音来首相との会談、1978年の日中平和条約交渉での園田直外相と鄧小平副首相との会談で暗黙的に合意している。日本の外務省はこの事実を公表していないが中国側は証拠を保有している)
③紛争を避けるため、日中双方は尖閣諸島周辺も含め漁業協定を締結してきた(2000年発効)。ここでは不慮の事故を避けるため、「中国の船が違反操業をしている時には日本は操業の中止を呼びかけ、その地域から中国船を退去させる、違反の取り締まりは中国側に通知し、中国側に処理を求める」ことを主な内容としている。
しかし、日中双方で、この尖閣諸島棚上げ問題を風化させる動きが進んでいる。多少長くなるがまず、日本側の経緯について述べる。植草一秀氏のメールマガジン第2726号の「尖閣中国漁船衝突の知られざる真実」の内容を総合すると、民主党政権誕生後の2010年2月2日、米国のカート・キャンベル国務次官補が訪日し、国会内の民主党幹事長室で小沢一郎氏と会談した。キャンベル国務次官補は翌拾の2月3日、ソウルの韓国大統領府で金星煥(キム ソンファン)外交安保首席秘書官と面会した。その会談内容の要約が公電として在韓米大使館から本国へ送られた。
これをウィキリークスが暴露したのだが、内容は「両者(キャンベル、金)は、民主党と自民は『全く異なる』という認識で一致。キャンベルは、岡田克也外相と菅直人財務相と直接、話し合うことの重要性性を指摘した」というものである。つまり、米国は日本政治のトップを鳩山由紀夫首相-小沢幹事長ラインから菅直人-岡田ラインに変更する方針を固めたということである。
結局、鳩山首相は高級官僚の反対(マスコミへのリーク)によって、普天間基地を最低でも県外に移転するという公約を守ることができなくなった一方で、小沢幹事長は陸山会問題で幹事長の座を追われることになり、民主党第一次政権が崩壊した。これは、自公両党と日本一新のための革新政権という保革二大政党制の確立が早くも頓挫し、菅首相を中心とする保守二大政党が成立するという事態になったことを意味する。背後に、米国の工作があったことは言うまでもない。
なお、カート・キャンベル国務次官補は小沢幹事長ーキャンベル国務次官補との会談の前に、海上保安庁を管轄下に置く国土交通省の大臣であった前原誠司国交相と会い、「前原氏は小沢氏を信用するなと発言するとともに年末の沖縄知事選での伊波洋一氏(宜野湾市長、辺野古への基地建設反対の立場)選出のリスクを指摘したと伝えられている」(植草氏)。その後、菅氏は4月に訪米、首相になるための米国への忠誠宣誓を行い、6月の民主党代表選で小沢氏を破り民主党二期政権として菅直人政権が誕生した。山口教授の言う「保守ニ大政党制」の誕生である。
菅政権は、米国や経団連から環太平洋パートーシップ(TPP)の締結や消費税増税を迫られ、実行に移すようになる。そのかたわら、尖閣諸島の棚上げ合意を否定するようになり、2010年6月8日、菅直人内閣は尖閣諸島の領有権に関する質問主意書に対する答弁書として、「尖閣諸島に関する我が国の立場は、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しないというものである」として、棚上げ合意を翻した。
この立場に立って2010年9月7日、尖閣海域で創業していた中国漁船を海上保安庁巡視船が拿捕し、日本政府(国交省管轄下の海上保安庁)は中国漁船船長を逮捕、勾留した。しかし、中国側の強い抗議を受けて菅首相は沖縄県那覇市の那覇地方検察疔に中国漁船船長を釈放させ、中国に帰国させた。那覇地検は外交情勢を勘案して、釈放し帰国させたと強弁したが、地検には外交問題を判断できる権限などはない。
政権上層部の指令によったものであったことは明らかであったが、実際は菅首相の指示であった。このことを政府系の産経新聞に垂れ流したのが現在、国民の代表代行に就任した当時の国交相兼沖縄担当特命相であった前原誠司衆院議員である。ヤフーニュースが転載している(https://news.yahoo.co.jp/articles/24f508e7b941d12e7cd57dc3f369e66e9b8f0c2b)が、垂れ流し内容は「前原誠司元外相が産経新聞の取材に対し、10年前の平成22(2010年)年9月7日に尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の領海内で発生した海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件で、当時の菅(かん)直人首相が、逮捕した中国人船長の釈放を求めたと明らかにした」といううものだ。
この問題は、菅政権が日中漁業協定を無視したことから起こったものだが、仮に「尖閣問題に領有権の問題は存在しない」という立場を取るにしても、検察側としては国内法に従って逮捕・勾留は続けておき、そのうえで、法務相の指揮権発動という形で船長の抑留を解き、中国に帰国させるという手続きが国内法に則った対処の仕方であった。これは、敏腕検事としての業務を果たし、現在は弁護士として活躍されている郷原信郎氏の指摘するところである。
郷原弁護士は「『尖閣船長釈放問題」、検察に責任を押し付けた菅政権、総括なくして野党の復活なし』と題するブログ(https://blogos.com/article/483467/)で、民主党の首脳を厳しく戒めているが、立憲攻撃のために政府系の産経新聞社に垂れ流した前原氏に対しても返す刀で、「当時、菅首相の不当な指示に、国交大臣として異を唱えることなく唯々諾々と従っておきながら、今になって、自分は菅首相の不当な命令を受けた被害者であるかのように語る前原氏の態度も信じ難いものだ」と厳しく批判している。
前原衆院議員はもちろん、財務省出身の岸本周平衆院議員が将来の消費税増税を事実上明言したこと、さらに玉木雄一郎代表も現在のところは消費税減税と100兆円の積極財政を主張しているが将来は「国民は税金で国の借金は返済しなければならない」と暗に消費税の増税を示唆している(https://www.youtube.com/watch?v=AklzR64BlDc)のを視聴しても、国民が消費税増税と原発再稼働を求める自公政権(菅政権)の補完勢力であることは明らかだ。
この問題は、最後に改めて論じる。次に中国側の動きだ。孫崎氏の著書によると、中国は1992年2月に開かれた全国人民代表大会乗務委員会第24回会議で、「中華人民共和国領海および隣接区法」は「台湾及びその釣魚島(尖閣諸島を中国はこう呼んでいる)を含む附属諸島は中華人民共和国に属する島嶼である」と明文化された。これは、ソ連が崩壊し、中国国民の間で共産主義思想に対する幻想的な支持が崩壊した時期である。中国の人民解放軍(軍部)もこれに賛意を証明しているというのが偽らざる事実である。
この後、中国は1988年に日本を訪問して、日本型資本主義経済の発展に驚き、中国経済発展のヒントを得た鄧小平副首相が、権力を掌握してから進めた改革・開放路線に力を入れるようになり、「赤い資本主義国」として経済成長・発展に成功。日本の国内総生産(GDP)は日本が長期デフレ不況にあえぐ中、軽く日本の経済を追い抜き、今や米国に次ぐ世界第二の経済・軍事大国になっている。
また、科学・技術の発展も目覚ましく日本の選択科学の論文数や先端技術の特許件数では米国と肩を並べるほどに成功しつつある(日本の中には中国政府の偽の発表だとする反週国派も根強いが、世界最大の情報網を持っている米国の外交の責任者であるポンペオ国務長官が対中政策を転換したことを踏まえて、反中国論を展開する必要がある)。
こうした状態で、南西諸島とりわけ尖閣諸島に「電磁波戦の専門部隊」ないしは「基地」を置けばどうなるかは火をみるより明らかだ。前提として、米国の建前は日本の施政下にある地域は日米安保条約に従って防衛の義務があるとしているが、バンデンバーグ決議(自国を自国で防衛しない国に対しては、そうでない国に対しては防衛義務はない。米国では交戦権は議会が持つ)に拘束され、日本が「専守防衛」の義務を果たさない限り、安保条約だけでは日本に対する防衛義務はないことは知っておかなければならない。
仮に、尖閣諸島に「電磁波戦専門部隊・基地」を設置すれば、中国は必ずこれに対抗してくる。その場合、日本が「専守防衛」行為を行えば、米国も「新米中冷戦」体制を敷いているから、応援にかけつけるだろうが、それで尖閣諸島の施政権をなお確保できるかは不明である。施政権を確保できなければ、日米安保条約も借り子の虎に過ぎない。
◎追記:この「米中心冷戦」については、日本の貿易状況を正しく把握して、軍事力ではなく言葉の真の意味での高度な「積極的平和外交」を展開していくことが最良の解決策になることを付け加えておきたい。孫崎氏によると、「南沙諸島への対応で、中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国と軍事的紛争を避ける合意を行っている。ここでも中国国内で平和的に解決を推進するグループと、軍事力で少しでも中国の検疫を広めようとする勢力が存在するという勢力が存在する」という。日本は後者のグループと連携するべきだ。
結局、菅政権には早期解散に持ち込んで、総選挙で勝つことに最大の力点を置くしか道はない。しかし、日本の国民の生存権を脅かし、日本経済を崩壊てきた新自由主義に基づく安倍政権の後継政権でしかないから、日本の経済社会の再建は不可能だし、既に述べたとおり、外交・防衛面においても米国と中国の股咲きに会うだけだ。
こうなると、菅首相も71歳だし、長くはないのではないか。そこで、次の総選挙での野党の共闘動向が問題になってくる。山口法政大学教授は「野党共闘」に楽観的だが、サイト管理者(筆者)はそうは問屋が卸ろさないと考える。山口教授は、新・立憲民主党の結成に95点の評価を与えている。その理由は、下図に示す通りだ。
しかし、立憲の枝野代表ー福山哲郎幹事長の首脳は、既に述べたように菅政権補完勢力の国民を野党共闘に取り入れる一方、「消費税ゼロ%」は総選挙の争点にしないと明言し、頑なな施政を続けている。これでは、真の戦後政治の総決算と日本一新を目指している山本太郎代表率いるれいわ新選組との総選挙での選挙協力、連携は得られない。また、日本共産党が「先進国型共産主義」についての説明を避けているため、自民や日本維新の会などの保守(反動)勢力からの「反共攻撃」を受けることになる。これは国民に不安を与え、野党共闘にマイナスになる。下図は毎日新聞社が17日行った時期総選挙での政党投票率だ。鵜呑みにしてはいけないが、無視してもいけないだろう。れいわが3%になっている。
枝野代表ー福山幹事長の立憲首脳は他の世論調査と自党の世論調査の結果も踏まえ、まともな真の「野党共闘」に向けてしっかりとした対応を対応を取るべきだ。
①立憲主義②原発ゼロ社会の実現③共生主義ーを「錦の御旗」にしても、抽象さは免れないから、民主党不信から始まった野党不信、政治不信、政治無関心層などの「無党派層」の琴線を動かすには不十分で、投票率の60%以上への引き上げは極めて困難だろう。解決の道としては、①枝野ー福山首脳が党内論議の風通しを良くする努力をする②最高顧問格で山本代表とも近い小沢一郎衆院議員や泉健太政調会長、「消費税減税を考える会」「不公平税制をただす会」の代表を務めた馬淵澄夫衆院議員ら立憲内のベテラン、中堅、若手国会銀の立憲首脳ラインの制圧ーが必要である。