菅政権、新型コロナ対策分科会提言よりもGo To トラベル最優先ー感染拡大狙いと揶揄
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政府=菅義偉政権は、首相官邸(内閣官房)に設けられた新型コロナウイルス感染症対策分科会の緊急提言よりもGo To トラベル/イートの全面推進にこだわっている。政府は日本医師会や東京医師会、各都道府県の医療機関、世論の批判を受けて、政府よりの分科会がやっと20日、「Go To トラベル」の見直しを要求する提言を行い、大阪市と札幌市を「Go To トラベル」政策の対象地域から一時的に外すことにした。しかし、両市への観光にとどまっており、しかも、両市から他の都道府県への観光はGo To トラベルの対象は認めている。普通なら、両市から他の都道府県への観光もGo To トラベル政策から除外すべきではないのか。Go To トラベルを通して感染拡大を推進していると取られても仕方がない。

11月27日金曜日コロナ感染状況

本日11月25日水曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では午後15時の速報値で新規感染確認者は人と1週間前の19日木曜日の522人より48人多い過去最多の570人になった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。東京都基準の重症者は前日比1人増えて61人になった。65歳以上の高齢者も過去最多の86人。感染者500人のうち、1%〜2%は必ず重症化、死亡する。政府=菅義偉政権はコロナ感染拡大を防止する意思があるなら、Go To トラベル/イートは即刻中止が必要で、コロナ禍対策の抜本転換は待ったなしの状況だ。
国内の感染状況(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/)は、23時59分で2531人が新規感染し、31人の死亡が確認されている。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は411.7人、PCR検査人数は5691.9人だから、瞬間陽性率は7.23%。東京都独自の計算方式でも6.6%。感染者のうち感染経路不明率は59.16%だった。陽性率と感染経路不明率がかなり高まってきていることに注意が必要だ。
東洋ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、11月26日時点の実効再生産数は全国が前日比0.04人減少して1.13人、東京都では前日比0.06人減少の1.10人となっている。

東京新聞Webサイト(https://www.tokyo-np.co.jp/article/70787)によると、大阪市や札幌市などからの観光を認めている理由に関して、「西村康稔経済再生担当相は会見で『医療が逼迫している地域の医療がさらに逼迫することを抑える』ためと説明した」という。しかし、小中学生でも分かるように、医療体制の逼迫を抑えるためには、新型コロナ感染拡大を抑制することが先決だろう。それなら、出発可能都道府県からの観光客の受け入れで受け入れた地元の都道府県で感染が拡大しないように、両市を往来ともにGo To トラベルから除外すべきだろう。

内閣官房
内閣官房(首相を直接補佐する組織)

このため、日本医師会や医療機関、世論の批判の高まりに動かされる形で25日、分科会も感染状況が厚生労働省の定めたステージⅢ相当の都道府県は往来ともにGo To トラベルの対象地域から外すように提言した(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/seifu_teigen_17.pdf)。

これに対して、加藤勝信官房長官は26日の記者会見で、「出発分の除外について『不断の検討は行っていきたい』としつつも『感染防止対策を徹底すれば、旅行による感染リスクは低減できると考えている』と指摘し、「官邸幹部は『東京から人が行かなくなると経済が大変なことになる。方針を変える状況にない』と断言した」という。

朝日デジタル(https://digital.asahi.com/articles/ASNCV4HGGNCVULFA009.html?iref=pc_ss_date)は、「加藤氏はまた、札幌、大阪両市のように東京都は一時停止の対象とすることを政府として検討するか問われ、『都から(一時停止を求める)話があるわけではない』とした上で、『広く検討されていくなかで、トラベル事業(の運用)をどうしていくかは、不断に検討がなされている。各都道府県と連携を取っていきたい』と話した」とのことだ。こうした曖昧な回答では、政府=菅政権は国内での新型コロナ感染拡大を推進していると揶揄されても仕方がないだろう。

これに対して、東京都は25日、11月28日から飲食・カラオケ店を中心に、20日間の時短を要請し、協力した店に対し基金40万円を支給することを発表したが、「『もっとTokyo(東京都が支援する都民に限っての都内トラベル支援政策)を停止するのに、Gotoトラベルを続けるのは整合性が取れない』と報道陣から突っ込まれたが『感染拡大している地域への観光と、地域からの旅行の(往来の)両面を止める必要がある』と国の停止対応には不備があると指摘」と政府=菅政権への不満を語ったという(https://news.livedoor.com/article/detail/19282117/)。要するに、感染がさらに拡大した場合、菅政権に責任を求める考えだ。

Go To トラベル/イート政策は政府=菅政権の政策だが、実施にあたっては都道府県の判断も尊重しなければならない。そして、政府=菅政権も都道府県も観光客自身に「感染防止対策」をしっかり行うよう求めている。要するに、新型コロナ感染がさらに拡大した場合の責任の所在は不明で、つまるところ、観光客自身の自己責任という形になっている。要するに無責任体制が敷かれているのだ。

21日からの3連休は「新型コロナは季節性インフルエンザと同じようなものだ」との考え方が国民の間に浸透し、各地の観光客は賑わった。しかし、このところ全国での新規感染者数は2000人規模になっており、感染者の比率も中高年齢層の方が多くなってきている。このため、重症者数も増加傾向にある。本来、政府=菅政権と全国の都道府県としては、地域の考慮は必要だが、大規模検査により新型コロナのスプレッダー(感染拡大者)になっている無症状感染者を早期に発見して、保護・隔離・治療することが当面の基本対策だ、人出が多くなると3週間程度で感染者が急増するとの見方もある。感染者のうち、1%〜2%が重症化している。下図は厚生労働省公表のコロナ死亡者数と重症者数、PCR検査数など(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1)。PCR検査数は民間検査会社のみ増加している。

今回、コロナの第三波が襲来していると言われているが、その原因としては、➀冬入りが全国で最も早い北海道・札幌市で感染者が急増したことから、低音・低湿度のため第二波での無症状感染者に潜んでいた新型コロナウイルスの活動が活発になった②約2兆円をかけたGo To トラベル/イート政策が国民の移動を活発化させ、感染を拡大した③専門家によると、欧州で急拡大し、感染力とヒトに対する攻撃力(毒性)の強いスペイン型に変異した新型コロナウイルスが空港での検疫をくぐり抜けて、日本にも広がってきたーことが挙げられる。

欧州では強力なロックダウン措置(都市封鎖)に踏み切ったことから、新規感染者がピークを打ったかに見えるが、クリスマスのためにロックダウンを緩める動きが出ている。スペイン型コロナウイルスに対する防疫体制が整っているかも、不明だ。こうしたことを考えると12月に入ってから、日本でも「非常事態宣言」の再発出(発令)に踏み切らざるを得なくなる可能性も考えておかなければならない。これに備えて、➀医療機関、高齢者介護施設のPCR検査を思い切って拡大すること②PCR検査の規模を大規模に増やすこと③新型コロナウイルス対策臨時交付金などを使い医療機関の損失補填を行い、医療体制の再整備を図ることーなどを考えておかなければならない。

政府=菅政権が直近の25日に発表した検査体制強化は次の通りだ(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/corona16.pdf)。なお、内閣官房のコロナ関連のトップページはこちらのhttps://corona.go.jp/で、政策・データ等はこちらのサイトに掲載されている。内閣官房のメインサイトはこちらのhttps://www.cas.go.jp/で、メインサイトの右サイドにコロナサイトへのリンクが貼られている。

まだまだ、本格的な大規模検査には遠い。現在の政府=菅政権の「ウイズ・コロナ」対策では、日本の経済社会を守りきれないだろう。国会でいくら論戦しても、国会無視の政府=菅政権ではどうにもならない。審議拒否の手もあるが、菅政権と与野党で野党の出席なしの重要法案の強行採決に踏み切る可能性もあり、臨時国会も12月5日の会期末を控えている。あまり、有効な手立てではない。真正野党側は大規模なコロナ禍対策が重要な景気の下支え政策になることを認識し、国民に分かりやすい政策体系を用意して、解散・総選挙に備えておくべきだ。なお、政府・連立与党が巨額の第三次補正予算案を打ち出し、対抗してくる可能性もあると考えられる。




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