朝日新聞は11月30日付1面トップで、来夏開催予定とされる五輪/パラリンピックのコロナ対策1000億円規模とする「報道」を行ったが、具体的な内訳は示されていない。NHKも同様の報道を行ったが、双方とも根拠のない「報道」と言わざるを得ない。来夏開催予定とされる東京オリンピックは年内にも中止を発表し、延期費用やコロナ禍対策費用は現下のコロナ禍対策に回すべきだ。
本日11月30日月曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では午後15時の速報値で新規感染確認者は、1週間前の23日月曜日の314人より3人少なが、過去2番めの311人、東京都基準の重症者は前日3人増加で、緊急事態宣言後では最多の70人になった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は418.3人、PCR検査人数は5776.4人だから、陽性率は7.24%。東京都独自の計算方式でも6.4%。感染者のうち感染経路不明率は57.85%だった。ステージ3/4の陽性率は10%。
国内の感染状況(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/)は、23時59分で1439人が新規感染し、26人の死亡者が確認されている。
東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、11月29日時点の実効再生産数は全国が前日比0.04人減少して1.01人、東京都では前日比0.02人減少の1.00人となっている。
【追記12月1日午前4時】昨日11月30日は表記データに誤りがあり、数回訂正しました。大変失礼いたしました。ご迷惑をおかけしましたことをお詫びいたします。
朝日新聞(朝日デジタルではhttps://digital.asahi.com/articles/ASNCY5V31NCYUTIL00H.html?iref=pc_ss_date)の1面トップ記事を引用させていただくと次のようになっている。
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大会に伴うコロナ対策は政府、都、組織委の調整会議が12月上旬にも中間整理を公表し、骨格が固まる予定。関係者によると、感染予防や拡大防止に必要な物品をリストアップするなどした結果、現時点の対策費は1千億円規模になったという。ただ、対策費は今後の感染状況やワクチン開発の進展、観客を制限するかどうかによって増減する可能性がある。政府主導の調整会議は、観客の入場制限についての判断を来春に先送りしている。
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普通は、新聞社が1面トップ記事で掲載する場合、別の面を使い、関連記事・解説記事を掲載するのだが、それもない。それ以上に、「ただ、対策費は今後の感染状況やワクチン開発の進展、観客を制限するかどうかによって増減する可能性がある。政府主導の調整会議は、観客の入場制限についての判断を来春に先送りしている」と「予防線」を張っているのも問題だ。
また、NHKの報道記事(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201130/k10012737721000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_001)では次のように「報道」している。
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東京オリンピック・パラリンピックの大会経費は、従来の計画では予備費を除いた総額が1兆3500億円となっていますが、関係者によりますと、大会の1年延期で競技会場の再契約に伴う費用や新たな期間の人件費などが必要になり、追加経費はおよそ2000億円となる試算を組織委員会がまとめたことがわかりました。またこれとは別に、12月はじめに政府が主導する会議で主な内容がまとまる見通しの大会の新型コロナウイルス対策の経費は、現時点でおよそ1000億円規模が見込まれていることがわかりました。
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コロナ第三波の今後の行方の問題のほか、行方次第では本体会に参加する最終予選さえ開けない競技種目が半分程度残っていると見られている。仮に開催できたとして、その場合の観客の規模(無観戦観客なのか観戦観客を制限するのか、それとも安倍晋三前首相が語っていたように完全な形で行うのか=このシナリオは破綻しているが=)はどうするのか。また、コロナワクチンが健康に被害がなく、効果的な抗体を産生できるかも本当のところは不明だ。また、RNA型ワクチンのためひとりに対して二回接種しなければならないとの情報もある。
仮に、「完全に安心できるワクチン」が開発できたとしても、高齢者、持病のある方、医療機関や検査センターの従事者、高齢者介護施設など接種する順番があり、オリンピック大会関係者にはとても間に合わないことが予想されている。加えて、コロナ禍の拡大で大半のスポンサー企業は今期は赤字の見込みで、今年年末に終了する契約を更新する余裕はないだろう。こうした確固たる情報に乏しい中で、「コロナ対策費費は1000億円」と報道しても、オリンピック大会組織委員会(森喜朗会長)などからのリークで、実際のところは最低限の水準でしかなくて、それ以上の費用がかかることは間違いない。
朝日新聞が報道しているように、「五輪・パラの開催経費は昨年末の時点で1兆3500億円。組織委が6030億円、都が5970億円、国が1500億円を負担することになっていた。開催都市契約では、組織委の収支が赤字となった場合、損失は東京都が補い、それも困難であれば、国が補塡(ほてん)することになっている」と指摘しているように、延期にかかる追加総額やコロナ禍対策が賄えない場合は、国民、都民が血税で負担しなければならなくなる。
国際オリンピック(IOC)のトーマス・バッハ会長側はさる10月の中旬に、日本側に対して「開催中止」の打診を行ったとの見方が有力であるが、日本側が拒んだという。なお、バッハ会長は欧米でのコロナ禍が来夏開催予定とされる東京オリンピックに与える巨大な悪影響を考慮しておらず、新型コロナ感染症の専門家からは、IOCの「はぐれガラス」とも揶揄されている。
いずれにしても、東京オリンピック開催強行がまず政府や東京都、大会組織委の念頭にあったために、日本のコロナ禍対策が歪んでしまったのは偽らざるところだ。来夏への延期に伴う費用やコロナ禍対策のための費用は、日本が第三波の襲来に持ちこたえるための財政資金に回すべきだ。来年3月の聖火リレー開始直前に「中止」発表をするよりも年内に発表して、財政措置は第三次補正予算に振り向けるのが妥当である。