参院議員広島選挙区補選、れいわ新選組が公認候補擁立(追記オリ組織委会長交代混乱)

2019年夏の参院議員広島選挙区で選出された河井案里参院議員(当時)が大型買収事件で公職選挙法違反に問われ1月21日、広島地裁で「懲役1年4カ月執行猶予5年」の実刑寸前の判決を受けたが、控訴しなかったことで有罪が確定。2月3日に議員辞職願を山東昭子参院議長に届け受理されたことで、4月25日に補欠選挙を行うことになった。本来は自民党は補選に候補者を擁立する刺客はないが、当選の見込みがあるので早々と立候補することを内定している。これに対して、野党側が及び腰なのでれいわ新選組の山本太郎代表が昨日21日、公認候補者を擁立することを記者会見で発表した。自民党(系)の候補者擁立は広島県民、ひいては国民をなめきった政党としてはあるまじき行為だが、野党側のふがいなさにも呆れる。なお、東京オリンピック/パラリンピック組織委員会会長の辞任騒動事案については最後に触れる。

2月12日コロナ感染状況

本日2月12日金曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の2月5日金曜日の577人から270人減少して307人、500人以下は6日連続。重症者は前日から1人減り102人だった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。ただし、15人の死亡者が確認されている。
全国では午後23時59分の時点で、新規感染者数は1301人、死亡者数は63人で重症者数は前日比12人減少の701人。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は426.9人、PCR検査人数は6630.6人だから、瞬間陽性率は6.44%。東京都独自の計算方式では5.1%。感染経路不明率は48.28%。PCR検査人数が減少している。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月11日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増の0.74人、東京都は前日比0.01人減少の0.78人となっている。下げ止まりの兆しは出ているが、慎重な見極めが大切だ。NHKでは東京都、愛知県、岐阜県など一部の都県で感染減少のスピードが鈍ってきているとしている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210212/k10012862521000.html)。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

河井案里前参院議員は2020年6月に逮捕・勾留、起訴されて2月3日に議員辞職願い届けるまで、1日も働いていない。しかし、逮捕から辞職までの期間だけでも、約2200万円もの歳費(国会議員としての給料)その他を受け取っている。すべて、血税が原資である。本心に問えば、歳費その他は貯金しておき、悪あがきしないで素直に買収の罪を認め、弁護士費用は最小限にして、残りは全額国庫返納すべきところだ。

ただし、河井案里前(元)参院議員は安倍晋三首相、菅義偉官房長官(参院選当時、以下肩書は当時)による自民党内の権力争いの駒(こま)でしかなかったというのが本当のところだ。安倍首相は、宏池会と清和会の因縁の対立で、自らの政敵である広島県選出の岸田(文雄)派(保守本流とされる宏池会の後継派閥)所属の溝手顕正参院議員(当選5期、参議院幹事長、参議院予算委員長・議院運営委員長・国家基本政策委員長・総務委員長・懲罰委員長・政府開発援助等に関する特別委員長、自由民主党広島県支部連合会会長を歴任)を引きずり降ろしたかったというのが、本当のところだ。

当選すれば、参院幹事長(自民党4役のひとり)になると見られており、安倍首相に抵抗する可能性があった。参院議員の広島県(人口280万人)選挙区(2人区)では自民党と野党側がそれぞれ一議席分け合う傾向(ただし、得票数一位は自民党候補者)が続いており、自民党が立候補者を溝手氏と河井案里氏を二人擁立するということは常識ではあり得なかった。このことから、河井案里氏を追加公認したというのは明らかに安倍首相の溝手参院議員つぶし(ひいては宏池会系派閥つぶし)が狙いであったと言える。岸田文雄政調会長を総裁の座を譲らなかったのも、宏池会系派閥(憲法改正には基本的には反対)つぶしの一環だろう。

このため、本来なら選挙支援金として、通常は参院選選挙区各候補者には1500万円を支給するというのが慣例だったが、溝手現職参院議員候補には1500万円を支給したものの、河井案里陣営には党公認で1億5千万円もの巨費を支給した。これで、溝手陣営側の市町村の首長や市町村議会の議員を買収して、後援者も抱き込み、当選させろという意味だ。そして、選挙指導のため、安倍首相は安倍事務所の腕利きの部下を送って選挙工作を行った。このうち、1億2千万円が血税の政党助成金である。

これに対して、菅官房長官も積極的に応援した。手始めに、子飼いの河井克行衆院議員(当選回数7回)を選挙工作の総責任者とし、自らも積極的に応援した。「パンケーキおじさん」としてソフトな印象を売り込もうとしたのも、このころである。河井衆議員は、明確な買収工作に該当することを避けるため、「地盤培養工作」に見せかけ、夏の参院選挙時期よりかなり前から大々的な買収工作を行った。河井案里候補も一部、買収工作を手伝った。

パンケーキおじさんとして河井案里候補を支援した菅義偉官房長官(当時)
パンケーキおじさんとして河井案里候補を支援した菅義偉官房長官(当時)

河井衆院議員は夏の参院選での論功行賞として2019年9月11日、第2次安倍内閣第4次改造内閣で法務大臣に起用された。しかし、参院選での河井案里候補の選挙運動に関して、選挙スタッフ(宣伝カーのウグイス嬢ら)に法定の上限額を超える報酬を渡していたという公職選挙法違反疑惑を「週刊文春」で報じられたことを受けて、同年10月31日、すぐに安倍晋三首相に法務大臣の辞表を提出し、受理された。河井案里参院議員選挙の際の巨額買収行為が発覚するのを恐れたためだ。

しかし、広島地検の文春への恐らくリークは、検察庁が描いていた稲田伸夫検事総長の後任として林真琴名古屋貢献検事長を検事総長に昇格させることに対する官邸側の妨害工作を察知していたためだ。案の定、安倍首相は2020年2月7日に退官する予定であった黒川弘務東京高検検事長を、2020年1月31日の閣議で定年後も半年間勤務延長させることを決定。黒川検事長が安倍内閣の「黒い霧」を隠蔽する種々の工作活動をおこなってきたからだ。その後の2020年3月13日に、検察官の定年を現行の63歳から65歳まで段階的に引き上げ、幹部の定年は政府が認めれば最長3年まで延長できるようにする検察庁法改正案を国会に提出してきた。

しかし、安倍内閣にとって都合の悪いことに、2020年5月20日、新型コロナウイルス感染症流行拡大で緊急事態宣言が出されていた期間中の同月1日から2日、および13日にかけて東京都内の知人の産経新聞記者の自宅を訪問し、産経新聞社の記者2人と朝日新聞社の元検察担当記者の社員とともに賭け麻雀をしていたことを『週刊文春』が報じた。これも、検察側から文春へのリークである可能性が濃厚だ。このため、安倍内閣は高額の退職金を受け取れるよう大甘の処分をしたうえで、黒川検事長の辞任を認めた。ただし、黒川東京高検検事長の定年延長への世論の批判は非常に強かったが、全く気にしていなかった安倍内閣としても、検察庁法改正案の成立は断念せざるを得なかった。

河井克行衆院議員・河井案里参院議員は結局、広島地検によって6月18日、広島県内の首長や地方議員ら94人に投票や票の取りまとめを依頼し、計約2,570万円(実際は3060万円)の報酬を渡したとして、妻の案里参院議員と共に東京地検特捜部によって逮捕された。法務大臣経験者の逮捕は戦後初。そして、7月8日、公職選挙法違反(買収)の罪で妻の案里参院議員とともに起訴された。河井案里参院議員は今年1月21日、広島地裁から「懲役1年4カ月、起訴猶予」のほとんど実刑相当の判決を下され、控訴を断念して議員辞職した。河井克行衆院議員の公判は続いているが2月末までにも公判は終了、3月中に判決が言い渡される見込みだ。

この皮克行衆院議員・案里参院議員夫妻に対する買収工作事案は、➀自民党内部の権力闘争②自公政権と検察庁の政治闘争ーが事件の本質で、決着はまだ着いていない。自民党内部部は官房長官から首相に「栄転」した菅首相・菅内閣の不祥事が続き、内部では内紛が続いている。また、林真琴検事総長率いる検察庁は自民党公認(安倍総裁と二階俊博幹事長が決済)の1億5千万円の使途の流れが明確になっておらず、その追求を行っているためだ。

河合衆院議員が買収工作に使った資金は2千9百万円で、案里前(元)参院議員が使った資金は160万円。分かっているのはこれだけで、差し引き1億1940万円の使途は不明だ。朝日新聞社で経済武器者、アエラの編集部記者などを歴任したジャーナリストの佐藤章氏によると、1億1940万円の一部は複数の人物(ひとりは自民党に在籍した元大物政治家らしい。参考サイト:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210125/k10012831671000.html)に渡ったあと、残りの行方が不明だ。

佐藤氏によると、参院選広島選挙区では「裏金」も含めて数億円の選挙費用がかかるという。残りの資金がそれに使われた可能性があるが、それでも足りない。このことら、同氏は血税が原資の内閣官房機密費から菅官房長官が支給したのではないかと見ており、林真琴検事総長率いる検察庁では慎重に捜査を勧めているという。内閣官房長官を務めた政界大物が、ふとしたことから口を滑らせたこともあり、内閣官房機密費が選挙に使われることはよくあることだ。

このことが林真琴検事総長率いる検察当局の調べで明らかになれば、政界に激震が走る。また、自公連立政権は崩壊することになる。可愛夫妻買収事案の捜査過程で、広島県内に拠点を持つアキタフーズの自民党農水族への贈賄疑惑が発覚した。同社は昨年2020年7月4日、東京地検特捜部と広島地検の家宅捜査を受けたが、収賄側は少なくとも元農水省で北海道2区選出の
吉川貴盛衆院議員(北海道2区)。吉川議員は昨年2020年12月21日、体調不良を理由に議員辞職の意向を表明し[、翌22日、代理人を通じ大島理森衆議院議長に辞職願を提出。今年2021年1月12日には、自民党に離党届を提出し、翌13日には受理された。そのすぐ後の同月15日には、東京地検特捜部が収賄罪で起訴した。

もうひとりは、自民党農水族のボスと見られる元農相で、政権でも首相のアドバイザー役の内閣官房参与を務めた西川公也・元衆院議員。西川氏は昨年の2020年12月8日、収賄疑惑を否定したうえで「一身上の都合」を理由に突然、辞任した。要するに、河井夫妻事案の本質は、自民党の内部抗争と政官業癒着体質である。これに、内閣官房機密費の私的利用(血税の着服)が加わる。

自民党は4月25日の北海道2区の衆院議員補選では、公職選挙法違反や政官業癒着体質を反省したわけではなく、勝ち目がないと見て自民党の出馬を見送った。ただし、ダークホースとして菅首相が親交を深めている日本維新の会系統の候補を裏で支援する意向だと見られている。北海道2区では立憲民主党と日本共産党の候補者一本化調整が進んでいないが、政策を軸にしてだらしない立憲と、中身が分からない「生産手段の社会化」を掲げる日本共産党が候補者一本化の調整を行わなければ足元をすくわれることになる。

同じ4月25日に行われる羽田雄一郎参院議員(立憲参院幹事長、羽田孜元首相の息子。PCR検査を受けられず救急車の中で急逝した。野党議員は下級国民扱いだ)の弔い合戦だから勝ち目はない。これに対して、広島県での参院議員補欠選挙では、溝手氏が野党候補を20万票ほど引き離していたから、楽に勝てると思い込んで立候補者を擁立しようとしている。無所属として出馬する可能性もあるが、当選すれば自民党入りすることは確実だ。

広島県が抱え込んでいる重大事案を考慮すれば、河井夫妻買収事案の真相究明と政官業癒着体質批判、それにコロナ禍対策の抜本転換を求めて早急に統一候補を擁立しなければならないはずである。しかし、野党側の動きは鈍く、見送ることも考えているようだ。だらしない野党側にカツを入れるため、「通貨」の本当の意味を知らない単純な財政再建原理主義者たちから財政政策に批判を受けることを覚悟で立候補をすると宣言したのが、山本太郎代表率いるれいわ新選組だ。

参院議員広島補選での公認候補の擁立を発表するれいわ新選組の山本太郎代表
参院議員広島補選での公認候補の擁立を発表するれいわ新選組の山本太郎代表

山本代表は昨日11日の記者会見で、➀2月28日までに立候補者を公募するが、選考過程で適任者が見当たらなければ山本代表自身が立候補することも選択肢としては排除しない②野党共闘を排除するものではなく、むしろ、促進することが狙いであり、通産省(現経済産業省)官僚出身の湯﨑英彦広島県知事が主張しているように国庫負担による生活支援・企業存続を前提に、無症状感染者を早期に、発見・保護・隔離・治療するための重点地区(エピセンター)の全員検査などコロナ禍抜本対策を実現することなどで統一候補を擁立することにはやぶさかではない③既成野党制力が無関心を続けるなら、中央政府(政府と日銀)の通貨発行権を用いて政府が国債を発行して大規模な財政政策を発動してコロナ禍対策に充て、消費税は廃止するという本来の主張を掲げて選挙戦に臨むと語った。

敏腕検事として活躍された郷原信郎弁護士は、参院広島選挙区での自民党(系)候補の擁立に対して法の支配を無視するものだとして非常に憤っておられ、広島県民に賢明な選択を呼びかけている(https://www.youtube.com/watch?v=gIeplBUQa5M)。

郷原信郎の日本の権力を斬る第61回
郷原信郎の日本の権力を斬る第61回

野党側が、特に立憲が無関心なら、総選挙でも政権交代は期待は出来ない。むしろ、4月の3つの補選で野党側が勝てば、自公連立政権は崩壊する。そのことを意識して、野党側はれいわを無視することなく、統一候補を擁立する必要がある。政府=菅政権を正しく批判している日本共産党は前向きに対処できるかとは思うが、経済政策立案の今根拠理論がない(資本論は市場経済による資本主義体制の崩壊を「予言」しただけのものと理解されている)ため、経済政策に疎い。立憲は、枝野幸男代表ー福山哲郎幹事長ー安住淳国対委員長の執行部に気概がない。れいわのコロナ禍対策、経済政策を基本にすべきだ。

なお、東京オリンピック/パラリンピック組織委の森喜朗会長の辞任についてはまず、NHKの報道を引用させていただく(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210212/k10012861901000.html?utm_int=news-sports_contents_list-items_007)。

女性蔑視と取れる発言の責任を取って辞任する意向を固めた東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長は12日開かれる組織委員会の会合で辞意を表明する見通しです。後任の会長は川淵三郎氏が引き受ける意向を示していて、5か月後に開幕が迫った東京大会に向けて難しいかじ取りが迫られることになります。

ところが、本日午後14時ころの各種メディアの報道によると、政府=菅政権が後任の会長として就任が予定されていたJリーグ出身の川淵三郎氏の起用に反対したため、取り消しになった。スポーツ報知の報道によると次のような内容だ(https://news.yahoo.co.jp/articles/861c0eb1420bd7bddee4757a2a3fd3ab63bb9e14)。

女性蔑視(べっし)発言で辞意を固めた東京五輪組織委の森喜朗会長(83)の後任問題が12日、白紙に戻った。森会長は11日に五輪選手村村長で元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏(84)=日本トップリーグ連携機構会長=に就任要請し、川淵氏も受諾していたが、このプロセスを政府などが問題視。川淵氏の就任に難色を示したため、組織委が起用を見送る方針を固めた。

本日午後15時から組織委の理事・評議員の合同会議は開かれるが、出席見込みの川淵氏は会長就任を要請されても受諾しないと語っている。菅首相は国会の答弁で、森発言問題に関しては「東京オリンピック/パラリンピック大会組織委員会」の人事については、組織委が決めることとして逃げ回っていた。このニュースはすぐに海外諸国に報道され、日本の混乱ぶりが改めて明らかになる。結局、合同部会の冒頭発言で森会長は「女性蔑視の発言を行ったことはない」と開き直りの発言を行った後、発言が世界的な問題になったことを踏まえ、辞任することを正式に表明した。

冒頭発言が開き直りの発言であったことについては、取り敢えず東京新聞のサイトから引用させていただく(https://www.tokyo-np.co.jp/article/85567/2/)。

【「女性蔑視」は解釈の仕方、意図的な報道あった】
そしてコロナ対策ということで、第一段を政府にとりまとめていただきましたが、結局そのためにわれわれの想像もつかないような、1年延期するということ、これは当時の安倍総理の発案で、IOCとの間で合意を得たわけであります。したがってその1年、計画しましたのも半年になりました。私どもとしては、あくまでオリンピック、パラリンピックを開催するという強い方針で、今、準備を進めていた矢先でありまして、そういう中で会長である私が余計なことを申し上げたのか、まあこれは解釈の仕方だと思うんですけれども、そういうとまた悪口を書かれますけれども、私は当時そういうものを言ったわけじゃないんだが、多少意図的な報道があったんだろうと思いますけれども。まあ女性蔑視だと、そう言われまして

上記発言を本サイトの投稿記事と比較されたい。

「(日本オリンピック委員会の)JOCは、3日午後、臨時の評議員会を開きオンラインも含めて51人が参加するなかで、ことし6月の役員改選に向けた規定の改正が報告され、女性の理事の割合を40%以上にする目標も示されました。評議員会に出席した東京大会組織委員会の森会長(JOC名誉会員)は、会合の最後にあいさつし、女性の理事を増やす目標に対して『女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる』と発言しました。そのうえで、自身が会長や名誉会長を歴任した日本ラグビー協会で女性の理事が増えていることを例にあげ『今までの倍、時間がかかる。女性というのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげて言うと自分も言わなきゃいけないと思うのだろう。それでみんな発言する』など、女性理事に苦言を呈する表現の形で「女性蔑視」発言をしている。

なお、公益財団法人・東京オリンピック/パラリンピック大会組織委員会の定款(https://gtimg.tokyo2020.org/image/upload/production/dnibzgn6uy1agqu6oynt.pdf)では、評議員会が理事を専任し、理事の中から会長、副会長を選ぶことになっている。第16条1項「理事、監事及び会計監査人の選任及び解任」、第23条2項「理事のうち1名を会長とし、会長以外の理事の中から副会長、専務理事、常務理事を置く」。大雑把に言えば、評議会が株主総会、理事会が取締役会(執行部)になっている。新会長は未定だが、誰が会長に就任しても、辞任した森氏を「名誉会長」、「名誉顧問」などにつけて、オリ/パラ強行開催に「突き進む」可能性は残されている。

組織委の評議員会と理事会の合同部会の後、武藤敏郎事務総長(大蔵省・財務省の事務次官を務めた経歴を持つ)が記者会見を行い、新会長の選任については理事会に御手洗冨士夫名誉会長(キヤノン社長を経て第2代日本経済団体連合会会長を務め、現在は名誉会長)を座長にアスリートの起用を重視した新会長候補者選考委員会を設置して、新会長候補者を選定(一人の選定が望ましいが、複数選定することもあり得る)、理事会で決定する②辞任した森前会長のポストを用意することは現時点では考えていないーなどを明らかにした。ただ、武藤氏は森前会長の「実績」を強調しており、森前会長の活動再開の可能性に含みを残した。

いずれにしても、聖火リレーは3月24日から開始の予定だから、5カ月という期間はない。地方の基礎自治体からは開始の1カ月前に、ひとつでも緊急事態宣言が発令されているなら、聖火リレーは止めて欲しいという要望がある。政府=菅政権が、宣言を2月23日までに解除するかどうかが問題になる。なお、聖火リレーなしのオリンピックというのは、海外から猛烈な批判を浴びそうだ。菅首相はオリ/パラ開催がもうひとつの政治生命維持要因になっているから、21日までに解除する可能性はある。ただし、新規感染者数は新型コロナの活性期が終わることが予想されるが、アップル社が毎日公表している人口移動指数では、21日日曜日の週から新規感染者が増え始める可能性がある。

最大の焦点は、米国のバイデン大統領が初めて公式に語ったように、新しい後任会長が東京オリンピック/パラリンピックを「安全にできる科学的根拠がある」こと、また、実務的にも開催準備と競技を行えることを示せるかどうかが焦点だ。


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