日銀の量的金融緩和による資産バブル崩壊の可能性、MMTの創造的適用を(加筆強化)
File source: http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Bank_of_Japan_headquarters_in_Tokyo,_Japan.jpg

政府=安倍晋三、菅義偉政権はアホノミクスと揶揄されるアベノミクスで財政超緊縮路線・超金融緩和政策(市中金融機関保有の国債を買い上げてマネタリーベースを拡大する量的金融緩和政策)を行ってきた。このため、株式・不動産などの資産に資金が「投資」され、コロナ禍による大不況入りにもかかわらず、実体経済とかけ離れた株高・地価などの価格が異常に高くなってきており、資産バブルが発生している。米国では長期金利に上昇の傾向が出てきており、資産バブルが崩壊する可能性が高まっている。現代貨幣理論(MMT)の創造的適用が必要な情勢になった。

1月14日木曜日コロナ感染状況

本日1月14日木曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の1月7日木曜日の2447人を945人下回る1502人、重症者は前日比6人減って135人になった。ただし、木曜日としては過去2番目の多さで2日連続の1000人台(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。連休のためPCR検査数が少なっており、この公表値だけでは状況を把握できない。下記【参考】参照。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は1611.1人、PCR検査人数は10216.6人だから、瞬間陽性率は15.77.%。東京都独自の計算方式でも13.3%。感染者のうち感染経路不明率は63.95%だった。
全国では午後23時59分の時点で、新規感染者数は6605人、死亡者数は64人が確認され、重症者数は前日比20人増加の920人になっている。累計死亡者数は4340人になった、
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、1月13日時点の実効再生産数は全国が前日比0.08人減の1.39人、東京都は前日比0.11人減の1.42人となっている。

東京都のコロナ感染者数の推移

東京都のコロナ感染者数の推移

【参考:14日午後15時】昨日13日の東京都の新規感染者数は1433人だったが、14日付東京新聞によると3日前10日の検査件数は2987件しかなかった(3連休のためと見られる)。しかし、暫定瞬間推測陽性率は47.97%と異常な数値になっている。1週間前の6日は34.94%とやはり異常に高い。東京都は新規感染者数だけでなく、3日前の検査件数も同時に公表しないと、都民・国民に間違ったメッセージを送ることになる。

本日14日に開かれれた東京都の専門家によるモニタリング会議では、「爆発的な感染拡大を疑わせる水準」と判断はしているが、感染拡大(スプレッダー)になっている無症状感染者に対する積極的な対策は打ち出されていない(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210114/k10012814381000.html)。

余談だが、中途半端な改正インフル特措法に基づく「緊急事態宣言」が13日、11都道府県に拡大された。対象都道府県は当初の東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の4都県に加えて、大阪府、兵庫県、京都府の関西3府県、愛知県と岐阜県の東海2県、それに福岡県と栃木県だ。すべて、2月7日までだ。

しかし、宣言が予定通り2月7日に解除できるか定かでない。その理由は、➀対象が「飲食店」に限定されている②経済活動の相互連関性は無視されて、補償金が飲食店の店舗のみに限られ、食品素材の納入業者など関連のある企業には給付されない(こうした批判を受けて、納入業者に売上高が半減した場合という条件付きで最大400万円補償金を支給する方向になった。ただし、手続きが複雑になるうえ、納入業者にも他の取引先はあるし、規模も考慮していない)。しかも、補償金は店舗の規模に関係なく一律1日あたり6万円(1カ月で180万円)と極めて少ない③既に日本国内で、英国や南アフリカ、ブラジルなどで変異した感染力が極めて強いため都市封鎖(ロックダウン)が効かず、南ア型など期待が先立っているワクチンも効かないとの指摘も多いコロナウイルスに国民が感染を始めているーなどだ。

非政府系の専門家や良識のある国民は、ざるのような限定的緊急事態宣言では効果がなく、延長不可避との見方が根強い。今週12日火曜日、水曜日は前週の同じ曜日に比べて新規感染者が少なかったが、それでも曜日に限定すれば過去2番目の感染者数であり、水曜日の減少幅は火曜日よりも少なくなっている。11都道府県では感染拡大傾向が続き、むしろ、緊急事態宣言入りする県が増え、場合によっては全国に拡大する可能性さえある。

営業活動を事実上強制する割には補償金が少ないことから、営業活動を自粛しない飲食店も少なくなり、かえって「密」になっている有様だ。コロナ感染拡大とそれに伴う大不況入りは今後、本格化する。なお、デイリースポーツでは、東京オリンピック/パラリンピック組織委員会の森喜朗会長がオリ/パラ開催に自信がない発言も吐露するようになった(https://www.daily.co.jp/general/2021/01/12/0013999863.shtml)。

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が12日、都内で職員に対する年頭挨拶を行った。

新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、今月に入り、2度目の緊急事態宣言が発令。先週末の行われた複数の世論調査で、東京大会に対して、中止もしくは再延期で今年の開催に否定的な声が8割に達するなど、逆風が吹き荒れる中だ。先日、森会長は「不安はまったくない。(五輪を)やることは決まっている。準備はほとんど終わっている。どうして7月のことを今議論するのか」と開催への自信を示したが、世間からの反発は強く(中略)

ただ、「私がここで考え込んだり、迷ったりすれば、すべてに影響する。あくまで進めていく。これが私の最後の仕事。天命」と、力強く話した。なお、箱物は建設が完了しているが、京オリンピック/パラリンピック大会開催に必要な実務的な準備は放映権を独占する米国NBCテレビやスイスの世界最大手の高級・高性能時計メーカーのオメガ社の準備など実務的な体制は全く整っていない。コロナ感染拡大の下では不可能になる可能性が強い。なお、この組織委は理事(役員)と出向者(政府の館長、東京都庁=1000人規模=、スポンサー企業、電通)からなっているが、公的機関ではない。組織委の収支報告を開示しないためだ。

なお、国債オリンピック委員会(IOC)では、選手と関係者にワクチンを接種することを義務付けるようになったが、橋本聖子五輪担当相は「ワクチンを打てないくても安全な東京オリンピック/パラリンピック大会を実現する」(https://news.yahoo.co.jp/articles/9d8fa7a284cb69a23df4f7ab0a124498a3ff7007)と発言しており、IOCとはきちんとした連携が取れていない。

さて、東京新聞13日付5面の記事によると、民間経済調査期間は緊急事態宣言適用地方自治体の拡大で、家計消費が落ち込むことから国内総生産が少なくとも1兆9000億円落ち込むとの報道を行っている。

新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が首都圏一都三県に加え、京都、大阪、兵庫の関西三府県にも拡大することで、専門家からは国内総生産(GDP)の減少が一兆九千億円に上るとの試算が出ている。失業者増の懸念もあり、政府に対策を求める声が高まりそうだ。

本日14日に内閣府が発表した機械受注統計(季節調整値、https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/juchu/2020/2011juchu.html)で、昨年11月の機械受注統計は、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」の受注額が前月比1.5%増の8548億円と、2カ月連続のプラスとなったことから、政府=菅政権は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」とした。こうした内容を受けて午前10時過ぎに平均株価は一時277円上昇し、このところ上昇傾向が続いている。

平均株価の推移
平均株価の推移

しかし、安倍前政権以降の平均株価の上昇は20年以上の長期デフレ不況を反映していないバブルというのが本当のところだ。2020年11月上旬から平均株価が急上昇しているのは、新型ワクチン開発・効果発揮への先行期待とそれによる経済正常化への先行期待からだが、ワクチン接種を1カ月以上行っている英国や米国ではその効果がまだ出ていない。米国のファイザー社が開発したRNA型のワクチンやアストラゼネカ社が開発したDNA型の遺伝子型ワクチンは基本的に2回接種しなければならず、効果が出てくるのに1カ月かかることがあるが、1回の接種で効果が出てくる場合もあるという。また、英国型のウイルスにはこれらのワクチンが効くとの説も強い。

いずれにしても、あと1カ月ほどは様子をみなければならない。しかし、南ア型など他の変異種には効かないとの指摘も出てきている。そして、今回の新型コロナウイルスはRNA型であるため、自己増殖(コピー)に失敗して、変異しやすい。武漢型、中東型、ミラノ型、スペイン型、日本首都圏(東京都、埼玉県で変異)、英国型、南アフリカ型、ブラジル型と多種多彩だ。

しかも、変異する際に感染力が強くなっているのは確かだが、感染症の症状を重くする力(毒性)が強くなってきている可能性もある。また、これらすべての変異種に新型ワクチンが効くのか、はなはだ不明である。

日本でも死者数が20日間で千人を突破し、現在では昨日13日最終時点で4276人になっている。懸念材料である。少なくとも感染力の強い英国型、南アフリカ型、ブラジル型も日本国内で市中感染が発見されている。国立感染研究所系列の機関以外にも、大学などの研究・調査機関でゲノム解析をする必要がある。「ワクチン神話」であることが明らかになれば、その分のバブルは弾ける。

しかし、今回の11月以前の平均株価の上昇自体がバブルだった。それは、政府(財務省)が主導で超緊縮財政財政(一般歳出を税収内に抑えるというプライマリーバランス論に象徴される)を行ったため、これによる景気悪化を防ぐことを期待して日銀がマネタリベース(銀行が日銀の当座預金口座に保有している預金残高と市中で流通している紙幣・通貨の合計額)を増やすという「量的金融緩和政策」を行ってきたことによる。

日銀は、公定歩合の引き下げや無担保コールレート=オーバーナイト物金利=は既にゼロ金利だったので、伝統的な金利政策は使えなかった。このために行ったのがマネタリーベースを増やすという量的金融緩和政策である。マスメディアで報道されてきた量的金融緩和政策とは、公開市場操作で金融機関から国債を大量に買い入れることによって、銀行が日銀に開設している当座預金口座の預金額(残高)を目標額まで増加させることだ。

2001年3月から行われたが、2006年3月にいったん解除された。しかし、2008年にリーマン・ショックが起きたためコールレートをゼロ%にするゼロ金利政策を採用したものの効き目がなかったため、2013年4月に政府=安倍政権と日銀の合意の上で、2年で2%のインフレ率達成を目標としてマネタリーベースを年間60兆円〜70兆円増やすことにした。

具体的には、市中の既発国債を大量に購入して、市中銀行に日銀当座預金を通して資金を供給してきたのである。同時に、一種の投資信託(株式購入)である上場投資信託(ETF)や社債、不動産投資信託(REIT)などのリスク資産も大量に購入するようになった(財務省出身で日銀総裁の黒田東彦バズーカ砲、異次元金融緩和政策)。

しかし、20年間に及ぶ超緊縮財政政策で長期デフレ不況が進行していたたため、GDPの60%を占める民間最終消費需要が凍りついており、民間企業は将来の供給能力増加につながる能力増強投資は行わず、技術革新投資にも及び腰だったので、民間企業設備投資はなされなかった。このため、安倍政権第二次政権時代の実質GDP成長率は平均して0.4%にとどまり、民主党政権時代の1.6%よりも政策のパフォーマンスは大幅に劣化した。

日銀が大量の既発国債やを購入すれば、国債価格は上昇する。国債価格の上昇は長期金利の低下ということになるが、長期金利の低下は平均株価の大幅な上昇(バブル)をもたらす。

このため利ざやを基本的な収入源としている市中金融機関、特に他方銀行や第二地方銀行などの経営は悪化した。日銀は経営の悪化した地銀、第ニ地銀に直接、大規模な融資しを行ってきた。また、ETFやREITの購入で、株価の上昇が助長されるとともに地価が上昇し、日銀が有力企業の大手(筆頭)株主になっている。

見かけ上は、日本は形のうえでは市場経済を無視した悪しき「ソ連型社会主義」国家になってしまった(参考サイト:https://www.youtube.com/watch?v=ZFHCYGWwSYQ)。

日銀大株主の企業ランキング
日銀大株主の企業ランキング

しかし、量的金融政策の目標である2%のインフレ率は達成できなかった。政府と日銀(統合政府)はインフレ率2%達成をどんどん先延ばしし、もはや、金融専門家なら誰の目にも、インフレ率目標の達成は不可能だと写っている。黒田総裁を中心とした「リフレ派」の完全な敗北である。黒田総裁には任期満了前に失敗を認め、勇退していただく必要がある。後任には、雨宮正佳副総裁の声も上がっている。

しかも、こうした日銀の資産構成の変化は、日銀が不良債権を抱え込むことになるのと同じことである。このため、日銀の株式(出資証券)価格は大幅に下がっている(右列は伸び率)。

日銀の資産
日銀の資産
日銀株価の推移
日銀株価の推移

そこにコロナ禍が発生、日本の国債発行残高は1110兆円程度になっている。これは、いわゆる国債残高の対GDP比率を国債の発行上限とするアナクロニズム的な「財政規律派」の結果だ。消費税増税(1997年3%→5%、2013年5%→8%、2019年8%→10%)に象徴される超緊縮財政と量的金融緩和政策の成れの果てがこの姿である。

こうしたところに、米国の資本市場では異変が起こりつつある。長期金利が上昇し始めたのだ。元来「産業の米」と言われ、4Gの普及の中、コロナ禍によるテレワークの推進強化で、産業界に対する供給不足が深刻になってきたことが原因とされる(https://www.youtube.com/watch?v=EdACtKH_UD0)。ただし、世界の自動車会社(自動車は今やエレクトロニクス・カー)

金融・資本市場は国際化されているため、米国で長期金利が上昇すると世界各国でも長期金利が上昇する。これは、バブルの崩壊に直結する。短期的には、円高から円安への反転を通して、原材料価格の輸入価格が上昇し、「悪い物価上昇」が起きる。最悪の場合は、デフレ大不況と悪い物価上昇が同時に発生し、スタグフレーションに陥る懸念も想定しなければならない。

米国10年物超記載金利
米国10年物超記載金利

この最悪の状態を招かないようにするためには、超緊縮財政を異次元積極財政に転換しなければならない。コロナ禍経済対策としてワイズ・スペンディングの異次元積極財政を行えば、苦境に立たされている非正規労働者や中小企業の強力なカンフル剤になる。

 

 

取りあえずは、緊縮財政・財政再建原理主義から現代貨幣理論(MMT)に基づく「異次元積極財政」を基にして、次のような経済政策体系を打ち出すことが寛容だろう。

第一は、コロナ感染対策の抜本的改革(一度に複数の検体を検査できるブール方式など革新的方法を使っての感染震源地での全員社会的検査、いつでもどこでも何回でも検査を受けられる検査体制の確立、医療従事者、介護従事者への全員検査、国庫負担による医療機関への直接的支援、簡易医療施設の建設=自衛隊の総動員=、コロナ禍の災害指定など)を徹底的に行うことが最重要である。なお、菅首相の支離滅裂さは目に余る。東京新聞のWebサイトから引用させていただく。

菅首相の支離滅裂なコロナ禍対策
菅首相の支離滅裂なコロナ禍対策

第二は、持続化給付金制度の持続②コロナ収束まで1人当たり10万円の定額給付金支給する(高所得者は貯金に回る可能性が極めて高いが、累進課税制度を強化し給付金は所得税・住民税税制の抜本改革を通して国庫に返納していただく。高貴なる者の義務を果たす)。第三は、コロナが収束するまで、社会保険料は納付したことにして免除する(高所得者は免除不可。併せて、社会保険制度の抜本的改革を行う)。第四は、奨学金徳政令を実施することである。第五に、消費税減税(凍結・廃止を含む)を中心とした抜本的な税制改革(所得税・住民税の累進課税制度の強化と法人税への累進課税制度の導入、金融所得の分離課税制度の見直しなど)が必要だ。

収束の兆しが見えてくれば、電気自動車の規格統一を図った上で開発支援のための財政措置を講じることやクリーン・エネルギー(再生エネルギー)体制拡充のための財政支援支援などの産業構造の転換支援策、地震対策の強化などを行うことなどが考えられる。いずれにしても、インフレ率に留意しながら、実弾(財政資金の企業や家計などを中心とした財政資金)を個人や家庭、企業に投入することが必要不可欠である。

インレ率が高くならなければ、現実の為替レートが収束する購買力平価を過度の円安になることから防御できる。民主党リベラル派はMMT支持者が多いから、国際協調も考慮すべきだ。これらのことは菅政権には全く期待できないことだから、真正野党共闘で具体的政策を練ることが必要である。



この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう