菅首相、2週間程度延長よりもコロナ禍対策抜本転換が必要

複数のメディアによると菅義偉首相は3日、3月7日の予定だった「緊急事態宣言」を2週間ほど延長することを表明した。小池百合子都知事に対する先手を取ったと言われるが、実質的にはいつもの「支離滅裂、小出し、右往左往」がまた繰り返された形だ。しかし、思惑通りに「緊急事態宣言」を解除できるかは定かではない。首都圏などコロナ感染震源地などで全員PCR検査するくらいのコロナ禍抜本転換が先だ。コロナ感染患者が重症化しやすいことを判定できる抗体検査も保険適用し、広範囲に行うべきだ。

3月4日コロナ感染状況
複数のメディアによると本日3月4日木曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の2月22日木曜日の340人から61人減少してして279人だった。東京都基準の重症者は前日比1人減の51人だった。死亡者数は23人と厳しい。なお、7日移動平均の新規感染者は269.1人で、前週の同じ木曜日の7日移動平均と比べて96.2%だった模様
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は269.1人、前週木曜日比率も前日の96.2%に上昇した。PCR検・抗原査人数は61610.0人。陽性率は東京都独自の計算方式(7日間移動平均での7日間移動平均での新規感染者数を、同じく7日間移動平均の検査人数で除したもの)は3.2%。感染経路不明率は49.28%。少し上昇気味で、ステージ3/4の50%から大幅に減少しているとはとても言えない。

全国では午後23時59分の時点で新規感染者数は1170人、死亡者数は67人、重症者数は前日比9人減の398人。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、3月3日時点の実効再生産数は全国が前日比0.07人増の0.94人、東京都も前日比0.09人増の0.96人だった。このところ、上昇ピッチが速くなっている模様だ。

マスコミ各社の報道によると、菅首相は首都圏での、➀新規コロナ感染者の下げ止まり②医療ひっ迫体制の継続ーなどから、解除日を2周間程度延長することにした。これに加えて、英国や南アフリカ、ブラジルなどで変異した変異株が特に首都圏で、ジワリと市中感染していることが理由のひとつであるのは確実だ。

取り敢えず、本日2月4日付朝日新聞の1面トップ記事(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14820530.html?iref=pc_ss_date_article)を一部引用させていただきたい。

4都県では、1月上旬のピーク時より新規感染者数は大きく減ったものの、2月中旬以降、減少ペースが鈍っている。新型コロナ対策を厚労省に助言する専門家組織の会合資料によると、1週間の新規感染者数を前週と比較した数値では1月下旬から2月上旬には、0・5~0・7など1を下回り、減少していた。だが、2月中旬以降には減り方が鈍くなり、3月2日時点では神奈川と千葉がともに0・94、東京0・83、埼玉が0・73だった。

医療現場への負荷も2月上旬より改善したが、4都県の病床使用率の指標は、2番目に深刻な「ステージ3」にとどまる。

首都圏の医療ひっ迫状況
首都圏の医療ひっ迫状況

こうした現状に、日本医師会の中川俊男会長は、首相の延長表明に先立つ3日の会見で「緊急事態宣言を延長すべきだ」と発言。解除までに十分に感染者を抑えなければ、4月以降に感染がまた拡大する「第4波」を招く恐れがあると指摘し、「(今後)本格化するワクチン接種を妨げかねない」と訴えた。政府分科会の専門家も解除後のリバウンド(再拡大)を懸念し、与党内で延長容認論も出ていた。

東京都では7日移動平均での新規感染者の前週と同じ曜日に対する比率(前週比)目標を70%に置いているが、3月3日は94.3%、4日は96.2%で、目標に遠く及ばない。秘策があるかと言えば、ないだろう。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

この記事では触れられていないが、「飲食店」自粛要請という対象を絞った「限定的緊急事態宣言」は効果がなく、失敗しているということだ。2月前半まで新規感染者の減少傾向が続いた大きな要因としては、➀冬場から春場にかけて新型コロナウイルスの「活性化力」が鈍るという季節的要因②新型コロナウイルスは「幹部分」が残り続け、変異種が出現しては消滅することで波を描くというこれまでの経験③日本国民が用心して、「飲食店」の営業自粛にとどまらず、不要不急の外出自粛を行ったことーなどによる。ただし、人の移動指数は2月に入ってから上昇基調がしており、その影響は3週間後になるから、コロナの活性化力にもよるが、下げ止まりから再度減少傾向に転じるかは余談を許さない。

なお、新型ワクチンの効かない南アフリカ型、ブラジル型(E48K変異型)の変異株がどうも感染拡大のスピードを速めているようだ(https://news.yahoo.co.jp/articles/ff4677e835e16f59037eb319634eaff90c955670)。日刊ゲンダイの3月5日号の続報によると、兵庫県神戸市では2月12日〜18日の1週間で、新規感染者のうちの15.2%の英国型を含む変異株が発見され、うち、5件がE48K変異型の変異株だったという(国立感染研究所調べ)。E48K変異型の変異株の活性化力は不明だが、感染力が強いうえ、新型コロナワクチンも効かない。新型コロナとの戦いが当面、変異株に移って行く兆候が強まっている。

米国アップル社が公開している人の移動指数(交通機関による)
米国アップル社が公開している人の移動指数(交通機関による)
新型コロナウイルスには「幹部分」がある
新型コロナウイルスには「幹部分」がある

 

政府=菅政権や都道府県各自治体が勝手に決めたステージの段階の数値にこだわることはあまり意味がなく、十分な補償体制を整えることを前提にして新型コロナウイルスの幹部分を持つ無症状感染者を早期に発見し、保護、隔離、治療することが重要であるし、そのためにも国費を投入しての(財政支援を行っての)治療できる簡易医療施設の設営も含めた医療体制の抜本的拡充が不可欠だ。政府系の「感染症対策専門家」はPCR検査など必要ないと言っていたが、自分たちの失敗を認めないでコッソリ、PCR検査の拡充が必要だと言い始めている。

政府コロナ対策本部の資料
政府コロナ対策本部の資料

 

コロナ禍対策の抜本転換と、安全かつ有効な新型カロなワクチンを開発・接種して集団免疫を日本国民が獲得することが、「コロナ禍収束」への道のりだ。なお、今夏に強行開催予定の東京オリンピック/パラリンピックについては3日、政府、東京都、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック(IPC)の責任者の5者協議(テレビ会議)が開かれたが、海外からの協議観戦者についての受け入れは3月中に判断するということになった。要するに、先送りだ。ただし、複数のメディアによると「受け入れ困難」との見方が強まっている。

日本人のみを観戦客として受け入れることも考えられるが、夏場にかけては、NPO法人の医療ガバナンス研究所の石昌広理事長・医師が指摘するように、季節要因から新規感染者が増加すると思われるので、これも困難だ。強行するなら「無観戦観客競技大会」になる公算が大きいが、大会に参加する最大2万人の選手団をを迎えなければならないので、空港貿易体制も含め、これもコロナ対策で実務上、大きな問題が残る。

加えて、変異株感染の流行も否定できないし、夏場は新規コロナ感染者拡大時期である。現実的な観点から、聖火リレーや東京オリンピック/パラリンピック大会強行開催に反対している島根県の丸山達也最悪は「2周間程度では緊急事態宣言解除のメドは立たない。排水の陣(注:コロナ禍対策の抜本的転換の意味と理解できる)で臨み、1カ月は延長するべきだ」と強調している。最悪の場合を想定し、早くコロナ禍対策の抜本転換を行ったうえで、日本を混乱に陥れないためにもオリ/パラ中止を宣言した方が良い。


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