自民、維新とともに「緊急事態条項」盛り込む憲法改悪に乗り出すー来夏の衆院選が正念場に

10月31日の総選挙で立憲民主党の枝野幸男代表(当時、以下同じ。特別国会終了後に代表辞任)が事実上、連合の野党分断工作に遭い「野党共闘」否定発言を繰り返したことで、立憲が大惨敗、代わりに自民党が単独絶対安定多数の議席を獲得する大勝を果たし、維新が大躍進した。自民党とその補完勢力はともに憲法改正=憲法改悪派。10月31日の総選挙で衆議院では憲法改正を発議できる総定数議員数の三分の二以上の議席数を確保した。自民党の茂木敏充新幹事長は読売新聞とのインタビューで、「緊急事態条項」を付け加えて憲法改正=改悪に極めて積極的な意向を示した。来夏の参院選が勝負になる。

日本国憲法に「非常事態条項」追加目論む自民党と補完勢力

政治経済評論家で政治活動にも携わる植草一秀氏は、枝野代表の発言についてメールマガジン第3078号「政治刷新に革新勢力は必要不可欠」で次のように紹介している。

「『野党共闘』というのは皆さんがいつもおっしゃっていますが、私の方からは使っていません。あくまでも国民民主党さんと2党間で連合さんを含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦う。(日本)共産党さんとは(共産、社民、れいわの3党と一致した政策に)限定した範囲で閣外から協力を頂く」

日本共産党を含む真正野党の共闘は理念・政策・連合政権構想面で一致して、成立したはずだ。枝野代表の野党共闘の意義を否定し、連合だけを支援団体にして、日本共産党など他の野党との共闘は事実上否定した。枝野代表はイソップ物語での「コウモリ」としか言いようがない。大阪10区で比例復活もならず敗退した辻元清美氏は敗因について「維新の突風のような風が吹いた。立憲民主党の立ち位置、主張が明確ではなかった」(https://digital.asahi.com/articles/ASPCF53DTPCFPTIL007.html?iref=poltop_list_n)という形で表現している。野党共闘のメリットを枝野代表がまともに訴えないから比例区で惨敗する結果になってしまった。辻元氏のような総括にならざるを得ない。

さて、読売新聞の茂木幹事長(竹下派会長代行)とのインタビューを引用させていただきたい(11月13日午前5時00分にネット配信、https://www.yomiuri.co.jp/politics/20211112-OYT1T50355/)。

自民党の茂木幹事長は12日、読売新聞のインタビューに応じ、衆院選で憲法改正に前向きな日本維新の会や国民民主党が議席を伸ばしたことを踏まえ、改憲論議を加速し、緊急時に政府の権限を強化する「緊急事態条項」の創設を優先的に目指す方針を示した。茂木氏は「新型コロナウイルス禍を考えると、緊急事態に対する切迫感は高まっている。様々な政党と国会の場で議論を重ね、具体的な選択肢やスケジュール感につなげていきたい」と述べた。(中略)

敵のミサイル発射基地などを自衛目的で破壊する「敵基地攻撃能力」の保有については、「ミサイル能力の向上で脅威が深刻化しており、厳密な言葉で言えば、『敵基地反撃能力』も含めて様々な選択を検討する必要がある」と強調。公明党が保有に慎重であることに関しては、「公明党もスタンド・オフ・ミサイル(長射程巡航ミサイル)能力には理解を示しており、認識は共有できるのではないか」と指摘した。

自民党の考える「緊急事態条項」とは次のようなものだ。自民党の憲法改正草案に記載されているが、衆議院に初登院したれいわ新選組の山本太郎代表らが東京・新宿駅東南口で行った街頭演説(街宣)で改めて明らかにした。

れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で
れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で

 

茂木幹事長は事実上安倍派(96人)に属する高市早苗政調会長が自民党の方針として、「防衛費」と称する軍事費を国内総生産(GDP)比2倍以上にすることを明らかにしている。茂木幹事長の狙いは、「コロナ禍」第六波を利用して、「火事場大泥棒」を考えている公算が大きい。政治的用語を使えば軍事独裁政権だ。歴史的には、国家社会主義労働者党率いるアドルフ・ヒトラーがワイマール憲法に「全県委任条項」を付け加えて、「合法的」に軍事独裁政権を樹立したナチス・ドイツの例があるが、それと同じようなものだ。

しかし、山本代表が示しているように災害対策基本法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336AC0000000223https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000150)を使い、コロナ第六波が襲来した際に適用すれば、憲法改悪などしなくても法律で対処できる。

第一条 この法律は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう
二 防災 災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)による健康被害・経済社会への被害は、厚生労働省の医系技官たちが根本的に誤った対策を取り続けたことから「人災」の側面が加わった面もあるが、発生源からすると基本的には天災だ。NPO法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長と朝日記者出身でフリージャーナリストの佐藤章氏のロングインタビューによると、人類はまだパンデミックを起こすほどの生命体を作成できるだけの能力は保有していない(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2021100900003.html)。また、日本でSARS-CoV-2が作成されたわけでもなく、自公政権の水際対策の失敗などによってコロナ禍が生じたことや国民の健康・日本の経済社会に大きな打撃を与えたことからすれば、やはり政令によって「災害指定」すべきだ。

災害対策63条では次のように定められている。

(市町村長の警戒区域設定権等)
第六十三条 災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、人の生命又は身体に対する危険を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、警戒区域を設定し、災害応急対策に従事する者以外の者に対して当該区域への立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該区域からの退去を命ずることができる。

れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で
れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で

 

災害対策63条1項を使えば、最悪の場合、住民に対する補償金とのセットで、次のような対策を高じることが可能になる。

れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で
れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で
れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で
れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で
れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で
れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で

災害対策基本法などを使えば、憲法に軍事独裁国家樹立することのできる「緊急事態条項」を盛り込まなくても十分な対策が可能である。そもそも、日本国憲法は第99条によって、次のように定めている。

第十章 最高法規
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
② 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で
れいわ新選組の11月10日の新宿駅東南口の街頭演説で

 

日本は21世紀初頭に小泉純一郎首相ー竹中平蔵総務相ラインで弱肉強食主義の新自由主義路線が採用されて以降、経済成長がほとんどないことに象徴されるように経済社会情勢がどんどん悪化し、大格差社会に突入している。これは、新自由主義をさいようした時の内閣・政権が日本国憲法に従ってこなかった結果だ。日本国憲法は最高法規として、内閣総理大臣と内閣は日本国憲法を尊重し、養護する義務を負うと定めている。また、第11条から13条では、「公共の福祉」に反しない限り、国民の基本的人権の保障と国民の幸福追求の尊重を認めている。日本に居住する在日外国人(在日韓国人・北朝鮮人を含む)もこれに準ずるだろう。

第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

茂木幹事長など自民党が日本国憲法に「基本的条項」を盛り込むことに意欲的だが、それが実現した場合は、経済情勢の悪化が続くうえ、ナチス時代のドイツと同じように、国民(日本に居住する在日外国人も含めて考える必要がある)の基本的人権の保障と国民の幸福追求の尊重は空文化する公算が極めて大きい。真正野党が野党共闘路線を継続・強化しなければ、自公維国民4党による憲法改正=改悪が野党勢力が、実現してしまう状況になっている。

参議院の会派別の所属議員数は次のようになっている(https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/196/giinsu.htm)。

このうち、参議院の定数は245人だから、改憲発議に必要な三分の二は164議席だ(改憲反対派の勢力が82議席必要)。上記の表からすると、来夏の参院選での海鮮議席のうち明らかな野党は立憲民主・社民会派の23議席、日本共産党の6議席、沖縄の風の1議席の合計30議席だ。非改選議席は立憲民主・社民党の22議席、日本共産党の7議席、れいわ新選組の2議席、沖縄の風1議席、碧水会の2議席の34議席。国民民主党は日本維新の会と組む意向を明らかにし、自公連立与党の補完戦力であることを鮮明にしたから野党ではない。

無所属議員と欠員を取り敢えず無視すれば、来夏の参院選で48議席は獲得しなければ、参院でも憲法改正=改悪発議が可能になる。改憲反対議席30議席をかなり上回る野党側の議席増が必要になる。野党がバラバラの状況で来夏の参院選に臨めば、現有議席の維持すら困難になることは火を見るより明らか。今回の総選挙で立憲民主党が大惨敗したのは比例ブロックでの獲得票が大幅に減少したためだが、これは枝野代表が連立与党を支持する連合の分断工作にまんまと、あるいは意図的に引っかかったためだ。野党共闘体制を大幅に強化・深化し、総選挙で善戦したれいわ新選組の「れいわニューディール」政策を生かして、来夏の参院選に臨まなければ、支持政党なし層(無党派層)は動かず、日本の未来は暗澹(あんたん)たるものにならざるを得ない。

自民党内部の権力争い、最終段階にー悪徳ペンタゴン支配は不変

なお、朝日記者出身でフリー・ジャーナリストの佐藤章氏によると、自民党内部での権力闘争が最終段階を迎えたようだ。安倍晋三元首相は清和会(92人)の領袖になり、自民党の最大派閥になったが、宏池会から分かれでた麻生派の麻生太郎副総理が森友事案のころから安倍元首相と深刻な対立状態に入っていたようだ。菅義偉・二階俊博幹事長連合軍に対立するため一時休戦に入っていたと見られる(https://www.youtube.com/watch?v=l1hcWrOLNvY)。

しかし、麻生派(池田勇人首相が形成した宏池会から分派して現剤、53人)の宏池会(岸田派46人)の領袖である岸田文雄総理・総裁との大宏池会(99人)形成に意欲を燃やしているようだ。これに、茂木幹事長は竹下派である。大宏池会と竹下派を加えれば、安倍派の清和会を抑え込むことができる。最終戦争になったきっかけは、林芳正衆院議員(山口3区)を外相に起用したことだ。

ただし、「米官行政電」の悪徳ペンタゴンの日本支配体制は変わらない。来夏の参院選では悪徳ペンタゴンの正体を主権者国民の前に明らかにする必要があるだろう。


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