欧州での新型コロナ再拡大に伴い、新型コロナ感染症(Covid-19)に対する「飲み薬(服用薬)」が世界的に話題になっている。しかし、日本では厚生労働省・医系技官の情報入手不足による服用薬の入手が非常に遅れている。加えて、服用薬は発症後3〜5日以内に飲まなければ効果がないとされている。日本でのコロナ第六波の予兆が出始め、早ければ11月中旬、遅くとも下旬から第六波襲来が伝えられる中、岸田文雄自公連立政権では対応できない。
Covid-19への期待と不安、自公連立政権の出遅れ
mRNA型の新型ワクチンに期待が集まったが、重症化はある程度防げても感染は防げないようだ。また、産生される抗体の有効期限も高々半年。「ブースター接種」などと言って、三回目のワクチン接種を行わなければならない情勢だ。また、インフルエンザワクチンに比べて、接種直後の死亡者数や重症者数が格段に多いという副作用問題もおろそかにされている。こうした中で、ワクチン接種先進諸国の欧州(ロシア)で季節的要因から既に新規感染者が再拡大している(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/、https://www.youtube.com/watch?v=OQngwlcffv8など)。デルタ株の亜種のうちのひとつが、感染再拡大の主流になっているようだ。
こうしたことから、ワクチンではなく最近開発され、英国で承認された経口服用薬(飲み薬)に大きな注目が集まっている。新型コロナ感染症に有効とされる服用薬は、米国の製薬大手メルクが開発したモルヌピラピルとファイザーが少し遅れて開発したパクスロピド。朝日デジタルはそれぞれ次のように伝えている。
米製薬大手メルクは4日、新型コロナウイルスの飲み薬「モルヌピラビル」の販売を、英当局が承認したと発表した。軽症者から中等症の患者向けの経口薬として、世界で初めて実用化される。重症化リスクのある人向けに処方される。
英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)の発表によると、服用は1日2回で5日間。症状が出てから5日以内に服用を始めるよう求めている。モルヌピラビルはウイルスの増殖を防ぐことを狙った薬で、メルクと米バイオベンチャー「リッジバック・バイオセラピューティクス」が共同で開発。治験では、軽症や中等症の患者が入院するリスクを半減できたという。
米製薬大手ファイザーは5日、開発中の新型コロナウイルスの飲み薬が、ワクチン未接種で、重症化しやすい持病などがある人の入院リスクを89%減らせたとする臨床試験の中間結果を発表した。米食品医薬品局(FDA)に近く緊急使用許可を申請する。
臨床試験に参加した約1200人を分析した。新型コロナを発症後、3日以内にのんだ389人のうち、入院は3人で、死者はゼロだった。一方、偽薬をのんだ385人では27人が入院し、7人が亡くなった。副作用も軽いものがほとんどで、割合も偽薬と変わらなかった。結果を受け、第三者機関は、試験規模を拡大するための参加者の追加を中止するよう推奨した。
米国NY市場のダウ平均はこれを受けて反発・上昇している。しかし、経口服用薬には発症後3日から5日以内に一日2回、5日間服用しなくてはならない。そのためには少なくとも、PCR検査の全員検査が不可欠だ。最近は政府(厚労省)が新型コロナの感染経路がエアロゾル感染(感染者が深呼吸する際に肺の奥からコロナウイルスが散布される)=空気感染であることをしぶしぶ認め始めたが、空気感染に対する積極的な対処策を講じていない。「積極的疫学調査」などとたわけたことを行って、PCR検査を徹底的に抑制した自公連立政権と厚労省医系技官(トップは福島靖正医務技官)の責任は重すぎる。
さらに、医療体制の再編・抜本強化はそっちのけにして、「自宅療養」と称し「自宅放置=自宅遺棄(第五波で600万人、入院患者80万人)」政策(政策とは言えないが)を採るつもりの岸田政権の罪は非常に重くなる。医療制度での国民皆保険は完全に破綻した。これに加えて、厚労省医系技官はCovid-19用の服用薬に対してほとんど関心を示してこなかった。メルク社では1千万人分のモルヌピラピルを製造しているとされるが、大半は米国政府が買い付けている。朝日出身記者で五月書房取締役であり、フリージャーナリストの佐藤章氏が、「現代の緒方洪庵」と呼ばれるNPO法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長への取材で明らかにしたところによると、日本はマレーシアと同じ程度の15万人分しか確保できないそうだ(米国は170万人分)。
メルクの日本法人は、厚労省に対してモルヌピラピルの有用性・有効性について積極的に働きかけていたが、厚労相の医系技官(直接的には健康局結核感染症課)はほとんど無視したようだ。日本での経口服用薬の安全性確認はこれからだが、厚労省としては安全性を確認しつつ、確保に前向きな姿勢を打ち出すのが当然のことだ。冬の第六波は夏の第五波に比べて新規感染者が5倍に膨れ上がるという情報もある。「自宅療養者=自宅遺棄者」も含めて日本全国で少なくとも1000万人が感染するとも言われている。PCR検査の徹底的抑制とともに医療体制の抜本的再編に加え、経口服用薬の入手にとってもまたしても遅れを取った。
そのうえ、岸田政権は入国規制を緩和するという。要するに水際対策もしないということだ。新型コロナウイルスは現在、ほとんどがデルタ株の亜種(http://www.tokyo-eiken.go.jp/lb_virus/worldmutation/)。欧州ではデルタ株の変異種(AY4系統)が猛威を奮っているというが、このデルタ株変異種が日本(主流はAY2系統)に上陸するのも時間の問題だ。季節的要因とデルタ株変異種の日本上陸で第六波は大変厳しいものになるだろう。主権者日本国民はこのことを肝に銘じておく必要がある。ただし、服用薬も万能ではない。Covid-19に対する有効性がまだ十分ではなく、生産数量も限られている。副作用も真の意味では明らかにされていない。
コロナ禍対策をとっても、根本的に誤ったコロナ禍対策を取り続けてきた自公連立政権とその補完勢力である維新と国民民主党では対応できまい。立憲民主党は枝野幸男代表が大企業と同じ主張を行う日本労働組合総連合会(連合・芳野友子会長)の野党共闘分断策に遭って、強力な野党共闘体制の構築に失敗した。臨時国会前に開かれる代表選では日本共産党の支援を受けて競り勝った小川淳也(香川一区)衆院議員が立候補する予定だが、①維新が自公補完戦力であり、自公両党よりもさらに強力な新自由主義政策を打ち出していること(ベーシックインカム論の導入で、日本の社会制度を解体しようとしている)が理解できない②大企業・高所得者層による主権者国民の搾取装置になっている消費税については、さらなる増税の必要性を訴えているーなど大きな問題がある。
政調会長の泉健太衆院議員(京都3区)も立候補するとの予想だが、泉氏は国民民主党から移籍し、連合による立憲民主党支配から脱却することはできないだろう。世代交代にはならないと言われるが、れいわ新選組の馬淵澄夫(奈良一区)衆院議員も出馬し、代表選では「野党共闘」の在り方・深化をめぐって徹底的に論議すべきだろう(https://www.youtube.com/watch?v=HARiDZfuVTM)。「水と油」は共存できない。立憲民主党のリベラル派と日本共産党、れいわ新選組、社民党が理念・政策・共闘体制で早期に合意し、特に、①抜本的コロナ対策②平和主義の再構築③原発ゼロから再生可能エネルギーへの大転換④共生の経済政策(かなめは当面、消費税率をゼロ%にし、将来は廃止する)ーというインパクトある政策を打ち出すべきだ。
連合六産別の会員(400万人)よりもとてつもなく多い国民主権諦め層(いわゆる、無党派層)に動いてもらうためにはそれしかない。来夏の参院選挙では「ねじれ国会」を実現することが最大の課題だが、少なくとも、憲法改悪発議ができないようにするため三分の一を上回る議席数を必ず確保しなければならない。
清和会(安倍派)離れを加速する岸田文雄第101代政権
明日10月10日に特別国会が開かれ、第101代内閣の岸田文雄内閣・政権が誕生する。自民党内リベラル勢力とも言われる宏池会の岸田首相は安倍派と麻生派の協力を得るため、甘利明氏を幹事長に据えたが、甘利氏が神奈川13区で勝利できなかった(比例復活)ため、辞任した。甘利氏幹事長起用は順当に考えれば、安倍晋三・麻生太郎両氏の意向によるものと考えられるが、後任には、竹下派会長代行の茂木敏充衆院議員(栃木県第5区)を指名した。政調会長は安倍晋三善元首相の「家来」とも言える高市早苗氏だが、総務会長は首相を務めた福田赳夫氏の孫の福田達夫氏が就任している。細田派の領収である細田博之氏が衆院議長に就任するため、清和会の領袖は安倍元首相になる。
清和会は岸信介首相、福田赳夫首相(当時)の流れを組む派閥だが、双方の系列の議員が存在する。福田総務会長は前者とは距離を置く。岸田首相は、宏池会から分かれ出た河野派(その後は麻生派)と谷垣 禎一(たにがきさだかず、自転車事故などで政界引退)グループによる大宏池会を再結集するとともに、竹下派の支持を得て党内基盤を固め、安倍元首相率いる弱肉強食主義の新自由主義と少しは離れていく可能性もある。政治経済評論家の植草一秀氏や朝日新聞出身のフリージャーナリスト・佐藤章氏もその可能性を指摘している。
【追記10月11日午前5時】岸田首相が二世議員で宏池会の「エース」とされる林芳正衆院議員(山口3区:宇部市中心)を外相に起用したが、同区は一票の格差問題から安倍元首相の選挙区である山口4区(下関市中心)と合区になる。林氏は東大法卒後、三井物産や林家のファミリー企業に勤め、ハーバード大学大学院に特別研究生として留学した経歴の持ち主。いわゆる「秀才」で安倍元首相の経歴とは全く異なるが、加えて、安倍元首相と異なり中国派とされる。つまり、岸田首相は安倍元首相を敵に回した形になる。対中軍事包囲網の確立に余念がない米国ディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)の動向にもよるが今後、自民党内は宏池会と清和会の対立が先鋭化することになる。
しかし、自民党自身が吉田茂首相(当時)の下に、自ら進んで対米隷属路線を敷いてきた。対米隷属下にある岸田首相としてはやはり対中対決路線、憲法改悪路線を覆すことはないだろう。維新や国民民主党ともに憲法改悪路線を突き進んでいく公算が極めて大きい。また、「政官業政電」の悪徳ペンタゴンの序列通り、財務省・財務事務次官率いる財務省に弱い。緊縮財政から離れることはないだろう。【追記12月14日午後17時41分追記:極めて限定的な住民税非課税世帯とコロナ禍困窮学生への一律10万円の支給】や【追記11月10日午後18時23分:親の年収が960万円以下の世帯の場合に】18歳以下の生徒・児童らへの定額給付金が10万円から5万円と地域振興クーポン兼配布に姿を変えたのはその証左だ。主権者国民としては安倍・菅時代の数々の不正を目くらましするようなこうした手法に騙されてはないない。また、真正野党側はこうした自民党内の構造変化を踏まえる必要がある。
東京都新規コロナ感染者数下げ止まりの様相
東京都の新規コロナ感染者数が下げ止まりから反転上昇の様相を見せてきた。新規感染者はこのところ前週比増加・減少を繰り返している。9日火曜日は2日連続増加した。7日移動平均の対前週比は8月24日以来、100%を超えた。また、全国レベルでの新型コロナウイルスの実効再生産指数も再び上昇傾向にある。東京都の実効再生産数は0.94まで上昇している(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)。
現在のコロナウイルスはデルタ株の亜種だが、欧州で猛威を振るい始めているのはAY4系統。本来、岸田政権は水際対策を強化してAY4型の日本上陸を絶対的に阻止する水際作戦を強化しなければ逆に緩和しようとしている。愚かとしかいいようがない。十分な警戒が必要だ。