来夏の参院選で真正野党大勝なければ軍事独裁政権の樹立ー森ゆう子立憲参院幹事長は代表選出場を

立憲民主党の代表選が11月19日告示され、30日に投開票が行われる。マスメディアの報道によると、野党共闘に否定的な衆参の国会議員が出馬する公算が大きい。しかし、10月31日の総選挙で立憲(立民)が惨敗したのは野党共闘が原因では絶対にない。枝野幸男前代表をはじめとした立憲執行部が日本労働組合総連合会(連合)の野党分断工作に負け、野党共闘に優柔不断だったためだ。現在でも、自公連立政権と日本維新の会、政権にすり寄った国民民主党の衆参での議席数を合計すれば、「緊急事態宣言」を付加した憲法改正=改悪は可能だ。その場合は、日本の国会は事実上否定されて議会制民主主義は破壊され、事実上の利権ムラ独裁政権・軍事独裁政権が樹立されることになる。

立憲代表選、野党共闘を進化させる候補者の出馬が不可欠

今回の総選挙では「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)」が接着剤になって野党側が曲がりなりにも野党共闘体制を築き、選挙戦を戦った。市民連合で野党側のパイプ役(橋渡し役)の中心人物は法政大学法学部の山口二郎教授だ。山口教授はYoutubeの「デモクラシータイムス」で野党側の敗北要因を総括している(https://www.youtube.com/watch?v=12XIZTzWbas。図は、山口氏の動画による)。

まず、総選挙の結果の議席数を与党対野党で明確にすると、下記のようになる。自民、公明、維新の「現世ご利益政党」の大勝だ。

今回の総選挙で自公連立政権と閣外協力を実施しているその補完勢力の議席数は、衆議院で「緊急事態宣言」を盛り込む憲法改正=憲法改悪を行える状況になった。これに参院議員の現有勢力を加えると、臨時国会でも憲法改正=改悪発議が可能な情勢になっている。

山口教授は総選挙で立憲民主党が惨敗した理由について、「野党共闘路線が間違っていたのではなく、野党共闘路線がいわば付け焼き刃的な性格までにしか進まず、強化と深化が足りなかったからだ」との趣旨の総括をしておられる。実際、小選挙区では野党側は議席数を伸ばし、接戦に持ち込めた小選挙区もたくさんあった。接戦区で最後に自公側に敗北したのは、「立憲共産党」などといった旧い反共攻撃に打ち勝つ腹が立憲側(特に、枝野前代表)になかったからだ。そのため、比例ブロックでも得票数が伸びず、比例復活もならずの小選挙区が続出し、接戦区で多数の議席を失うことになった。

このように、100の小選挙区では勝っているところは差が広まり、負けているところでは差が縮まっている。立憲が「立憲共産党」などという旧い反共攻撃に打ち勝てるだけの反論能力を有していれば、接戦区を制することが出来ていた可能性が高い。さらに、問題は比例ブロックだ。

比例ブロックでは立憲が伸び悩んだ。また、小池百合子都知事(肺がんなど重病説が声高に噂されており、今年12月に病気理由で辞任、都知事再選挙の可能性も出ている)の「安保法制反対派」の排除宣言騒動で安保法制賛成派の希望・国民民主党の比例ブロック票968万票は激減した。維新とれいわに流れた可能性が強い。比例ブロックでの投票行動は党首(代表)の人格・情熱・論理的で説得力のある政策の訴えに大きく左右される。維新に流れたのは、枝野前代表が連合に籠絡され、日本共産党がかつてのソ連時代の共産党(スターリン主義)、毛沢東時代の中国共産党、北朝鮮の労働党とは全く異なることを声を大にして反論できなかったためだ。もう一度、政治経済評論家で政治活動家でもある植草一秀氏の指摘を引用しておきたい。

政治経済評論家で政治活動にも携わる植草一秀氏は、枝野代表の発言についてメールマガジン第3078号「政治刷新に革新勢力は必要不可欠」で次のように紹介している。

「『野党共闘』というのは皆さんがいつもおっしゃっていますが、私の方からは使っていません。あくまでも国民民主党さんと2党間で連合さんを含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦う。(日本)共産党さんとは(共産、社民、れいわの3党と一致した政策に)限定した範囲で閣外から協力を頂く」

こういう信念のない代表が率いる党には国民が投票したくなくなるのも無理はない。この点、枝野前代表は全く反省していないし、伝えられる立憲代表選の立候補者も日本共産党の現実の姿と、「共産主義」の背後に隠された事実は全く知らない。山口教授は連合の問題点も指摘している。ただし、連合にはまだ未練があるようで、サイト管理者(筆者)はこの点、山口教授と見解を異にする。

 

連合は新会長に「ものづくり産業労働組合(JAM)」の副会長だった芳野友子氏を選んだが、芳野氏の反共攻撃は異常だ。本来なら、会長と組む事務局長に就任した相原康伸事務局長(61)の後任である日本教職員組合(日教組)委員長の清水秀行氏(62)が諌める必要があったが、全く存在感がなかった。連合は野党共闘の強化・深化を阻止する役割を果たすことに集中するだけだった。もともと連合が自公連立政権の補完勢力であることは以前から明らかだったが、今回の総選挙をきっかけに自動車労連の単産であるトヨタ労組が自民党と手を組むなど、連合六三別の自公連立政権の補完強化ぶりは際立っている。

山口教授は地方の小選挙区では連合の支援は必要と語っているが、連合依存の立憲民主党の候補者に対してはれいわ新選組の山本太郎代表以下の街頭演説(街宣)を見習う必要があると言いたい。連合に依存しなくても当選できるように、街宣を徹底的に行って本物の政治家になる努力を積み重ねるべきだ。さらに言えば、次の図のように芳野友子氏は岸田文雄政権の「新しい資本主義実現会議」のメンバーにちゃっかり収まっている(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/list.pdf)。このメンバーでは、「旧い資本主義実現会議=利権資本主義実現会議」にしかならない。40%以上になっている非正規雇用の利害は代弁されない。マルクス主義流に言えば、消費税のさらなる増税による搾取で大格差社会に移行するだけだ。

山口教授はまた、「消費税率5%への引き下げ」はれいわ新選組を野党共闘に組み込むための戦術に過ぎなかったと述べている。要するに、消費税減税・ゼロ%への引き下げ・廃止には無関心なのだ。消費税は増税のたびごとに日本経済を悪化させ、その税収は高所得者の所得税減税・法人減税の穴埋めに使われている。消費税(付加価値税)という制度自体が、非正規労働者を搾取する税制として機能しているのである。「社会保障の充実のために消費税の増税が必要」などと言った政府・財務省・マスコミに、国民は全く騙されている。また、消費税の代理納税者は企業など法人だ。大企業と中小企業の下請け制度が一般的になっている日本型資本主義では、親会社から消費税を含めた納入価格の据え置きを求められる。親会社からの要求に従うことが出来なければ、取引を拒否される。消費税を製品価格に転嫁できないのである。

このため、営業利益が赤字の企業であっても、消費税を納税しなければならない。実際は滞納せざるを得ず、最終的には倒産にいたる。また、非正規労働者を雇用すれば、非正規労働者の給与は仕入れ控除できる。このため、中小企業でも正社員の非正規化が進む。これらのことを正面から訴えているのが、山本太郎代表率いるれいわ新選組である。真正野党は消費税率のゼロ%から廃止を選挙公約の目玉にかかげて次期参院選や総選挙に望む必要がある。ただし、利権ムラ独裁政権を経て軍事独裁政権が樹立されていなければのことである。事実上の軍事独裁政権が樹立されれば、真正野党は必ず政治的に弾圧される。

立憲民主党は、「ジェンダーフリー」を強く訴えたが、「同性婚」を憲法・法律で認めろとは人倫に反するのではないか。問題は、能力が同じでも男女の賃金に大きな格差があることだ。性差によることなく、「同一労働・同一賃金」を実現することが「ジェンダーフリー」の本来の訴え方だ。「男女の賃金格差をなくす」などと訴えれば良いものを、「ジェンダーフリー」などと和製英語を使うから、女性にもそっぽを向かれる。

「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)」が野党共闘の接着剤になったことは確かだが、経済政策に弱い。①共生の経済政策(消費税の減税や税率ゼロ%から廃止へと進めることなど)訴えること②アベノミックスが非正規労働者に対する搾取理論になっていること③アベノミクス(消費税の大幅増税)が経済開発協力機構(OECD)諸国には見られない日本のゼロ成長をもたらしていることーを強く認識する必要がある。山口教授の労を多とはするが、単に、れいわ新選組を野党共闘に取り組むための戦術だったなどと平然と言ってのけるのはいかがなものか。

こうしたことを根本から反省し、総括しなければ野党は分断され、憲法改正=改悪が行われて、日本の国会は機能を停止し、事実上の軍事独裁政権が誕生することになる。立憲の代表選では国民民主党出身の泉健太政務調査会長と立憲民主党最大派閥で、枝野前代表の後継者とも言える逢坂誠二衆議院議員が立候補の意向を表明(枝野前代表の院政につながる)、また、西村智奈美衆議院議員が女性の立候補を求める議員らへの働きかけを続け、必要な推薦人の確保を目指して詰めの調整を行っている。小川淳也衆院議員は最低20人の推薦人集めに難航しているとも伝えられる。しかし、これらの立候補予定者には総選挙での敗北の真因が分かっているとは言い難い。

今は、衆参の両院で真正野党が圧倒的に不利な状況に立たされている。最も重要なことは野党共闘を強化・進化させ、「非常事態条項」を盛り込んだ憲法改正=改悪を接待的に阻止することだ。そのためには、「消費税減税研究会」を組織し、れいわ新選組の山本代表と共同代表を務めるなど、山本代表と近い馬淵澄夫衆院議員と「国民の生活が第一」を貫き、新潟大学在学中から起業し、胆力が強く、二度の政権交代を果たした実績のある小沢一郎衆院議員から政治活動の「ノウハウ」を受け継いでいる森ゆう子参院議員(参院幹事長)らが出馬することが必要だろう。この危機的状況の中では、年齢とか党の若返りとかは重要ではない。場合によっては、立憲民主党が自公連立政権補完派と自公維連合政権反対派に分党するべきだ。

「水と油」は同居できないという教訓を肝に命じる必要がある。そして、わずか400万人の連合六産別に依存せず、政治に対して諦め、無関心でいざるを得ない国民(俗に無党派層)に対して、「主権者国民」としての自覚を持っていただくことの出来る真の野党共闘が形成される必要がある。なお、日本共産党に対しては、現在では社会民主主義路線を歩んでいるが、同党の掲げる「科学的社会主義」が不明確だ。このことも、「旧い反共攻撃」を保守反動陣営から受ける結果になっている。経済体制が市場性資本主義経済体制が歴史の最後の段階のものであるかは不明だ。個々の政策だけでなく、時間はかかるが「科学的社会主義」の「止揚」も欠かせない。


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