G7初のイングランド銀行の利上げとコロナ変異株による供給ショックインフレ(自民党内政局追加)
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G7主要国のうち英国の中央銀行にあたるイングランド銀行(BOE)は16日、金融政策委員会を開き、政策金利を年0・1%から年0・25%に引き上げた。米国も来年2022年に三度にわたる利上げを予定している。急激なインフレに対して早期に対処するためだ。ただ、現在のインフレは基本的にはコロナ禍によるスタグフレーション(不況下の物価高)入の様相が強い。従来の伝統的な金融政策に戻るだけでは不十分であり、現在はオミクロン株を中心とする新型コロナ変異株に対する国際協調的な対応が必要な段階だ。

新型コロナショックによるスタグフレーション

朝日デジタルは次のように報道している(https://digital.asahi.com/articles/ASPDJ7K90PDJULFA022.html)。

主要中銀でコロナ下で利上げに踏み切るのは初めて。物価高が進み、暮らしに影響が出始めていることを重く見て引き締めを決めた。(中略)イングランド銀行(BOE)は昨年3月、新型コロナ下の経済を支えるために政策金利を過去最低水準に下げていた。

しかし、英政府統計局が今月15日に発表した11月の消費者物価指数は、前年同月比5・1%も上昇し、目標の2%を大幅に超えた。夏に移動などの規制が完全解除された反動で個人消費が伸び、供給が一部で追いつかなくなっていることや、移動や輸送が増えてエネルギー価格が高騰していることが背景にある。欧州連合(EU)離脱でもともと減っていた移民の労働力を補えず、人手不足が深刻化していることも拍車をかけている。一方で、英国はオミクロン株の影響もありコロナ感染が再拡大。12月15日の新規感染者数は約7万8千人にのぼり、景気の先行きは再び不透明になっている。

エネルギー高騰を主因とするインフレに悩むのは欧州中央銀行(ECB)も同じだ。EU統計局によると、11月のユーロ圏消費者物価指数は前年同月比4・9%上昇した。ドイツ単独では同5・2%に上ったと、ドイツ政府も発表した。ただ、(欧州中央銀行の)ラガルド総裁はこれまで、「物価上昇は一時的」との見方を示し、金融政策の引き締めには慎重だ。また、ECBは16日に理事会を開き、コロナ禍対策で昨年導入した計1兆8500億ユーロ(約240兆円)分の枠を持つ量的緩和策「パンデミック緊急資産買い入れプログラム(PEPP)」を予定通り来年3月に終了させることを決めた。オミクロン株の不安はくすぶるが、コロナ禍後を見据えて正常化をはかる。

世界の通信社や権威ある大手マスコミも、イングランド銀行の今回の利上げや米国のFRBなどの伝統的な金融政策への復帰を評価している。ロイター電は次のように伝えている(https://jp.reuters.com/article/breakingviews-boe-idJPKBN2IW01Q)。

イングランド銀行(BOE、英中央銀行)は16日、政策金利を0.1%から0.25%に引き上げて、主要中銀で初めて利上げに動いた。英国はまだ景気回復の足場が弱く、新型コロナウイルスの新たな感染の波に見舞われているだけに、これは一種の賭けと言える。だが物価高に利上げで応じるという古くからの政策手法を駆使したことは、最終的に実を結ぶのではないか。

イングランド銀行
イングランド銀行
米国の中央銀行システムである連邦準備制度の拠点になるNYのエクルズ・ビル
米国の中央銀行システムである連邦準備制度の拠点になるNYのエクルズ・ビル

 

ただし、イングランド銀行の利上げの背景には第一に新型コロナ変異株(デルタ株やオミクロン株)による中国や東南アジア諸国、南アフリカなどでの貴金属や部品の生産の停止、サプライチェーンの寸断による供給ショックインフレが起きていることがある。これは、1970年代に第一次、第二次石油ショックによって供給ショック(寸断)インフレが襲来し、世界各国の経済がスタグフレーションに見舞われたことと同じだ。新型コロナ変異株禍は石油ショックと同じような効果を世界の経済にもたらしている。ただし、全世界の諸国がコロナ禍に見舞われているだけに、今回の供給ショックインフレは石油ショック時の供給ショックインフレより深刻だ。

第二は、コロナ禍に対処するため主要国の統合政府が国債発行という形で貨幣を生活支援、企業の事業継続資金として大量に供給してきたことがある。これは需要増インフレだ。欧米諸国では供給ショックインフレと需要増インフレ(デマンド・プル・インフレ)が同時に起きている面がある。一方、日本ではコロナ禍に対する生活支援、企業の事業継続資金が極めて不十分で、日銀が市中銀行から買い入れた国債は投機マネーとなって資本市場に流れ、金融バブルを引き起こしている。ただし、供給ショックインフレは既に起こっており、いずれ消費者物価にも波及する。

朝日デジタルが「一方で、英国はオミクロン株の影響もありコロナ感染が再拡大。12月15日の新規感染者数は約7万8千人にのぼり、景気の先行きは再び不透明になっている」、「エネルギー高騰を主因とするインフレに悩むのは欧州中央銀行(ECB)も同じだ。EU統計局によると、11月のユーロ圏消費者物価指数は前年同月比4・9%上昇した。ドイツ単独では同5・2%に上ったと、ドイツ政府も発表した。ただ、(欧州中央銀行の)ラガルド総裁はこれまで、「物価上昇は一時的」との見方を示し、金融政策の引き締めには慎重だ」とも伝えているように、コロナ禍が終息に向かうとは断定できない。その意味では、今回のイングランド銀行の利上げやFRBの量的金融緩和政策の伝統的金融政策への復帰は、「コロナ禍よりインフレが恐ろしい」という前提があり、やはり「賭け」だ。

東京新聞の20日付けの記事によると、英国の現状は次のようになっている(https://www.tokyo-np.co.jp/article/149971)。

【ロンドン共同】英保健当局は19日、新型コロナウイルスの新変異株オミクロン株の新規感染者が1万2133人だったと発表した。18日から2日連続で1万人を超え、累計は3万7101人。死者は5人増えて計12人となった。家族や友人が集う機会が増えるクリスマスを前に、英政府内で行動規制強化に向けた動きも出ている。
PCR検査での陽性者のうちオミクロン株と疑われる例は19日時点で、英国の4地域の中で人口の大半を占めるイングランドで67%を占めた。カーン市長が「重大事態」を宣言した首都ロンドンでは86%に達した。

TBSは米国ニューヨークの感染状況について「米・NY州 新型コロナ感染者過去最多 先月から再拡大傾向」と題して次のように伝えている(https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4430660.htmlhttps://www.youtube.com/watch?v=gy4CExcegnk)。

アメリカ・ニューヨーク州で、新型コロナウイルスの新規感染者数が2日連続で過去最多を更新しました。ニューヨーク州が発表した17日の新規感染者は2万1908人と、1日あたりの新規感染者数として2日連続で過去最多を更新しました。感染者の半数以上を占めるニューヨーク市では、今年9月に再開したばかりのブロードウェイ・ミュージカルで、出演者らの新型コロナ感染を理由とした上演中止が相次ぐなど、感染再拡大の影響が広がっています。

なお、新型コロナ対策のためのワクチンも、死亡など副作用が強いだけで、感染・重症化予防効果がmRNAワクチンでかなり低下、それ以外のワクチンでは効果がなくなっていると伝えられる。主要国の金融当局者は、新型コロナ変異株を軽視すべきではない。

現在、世界中でオミクロン株による市中での新規感染者が急増している。日本でも空港検疫が3人の感染者のうち2人は見逃すという「抗原検査」をいまだに続けていることから既に検疫をすり抜け、市中感染が始まっている。冬場の季節要因から、オミクロン株による新規感染者が急増する公算が大きい。東洋経済ONLINEが試算、公開している実効再生産数は冬場に入り、基調的に1.10を超えてきている。新規感染者は、指数関数的に急増する。少なくとも感染力がデルタ株の3倍から8倍強いオミクロン株対策が重要だ。12月19日時点では全国の実効再生産指数は前日比0.04ポイント増の1.18、東京都は同0.15ポイント増の1.27に上昇している(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)。

本日2021年12月20日月曜日(土日を挟むから、新規感染者数は月曜日が最も少なくなる)の新規感染者を含めた12月の東京都(日本全国のエピセンター)の新規感染者の推移は次の通り。背景が朱色の項目は前週の同じ曜日に比べて新規感染者数が増加していることを示す。このところ、新規感染者数の7日移動平均が前週よりも大きくなりつつある。7日移動平均の推移はまだ第六波に入ったとは言えないが徐々に増加しており、冬場に入っていることから第六波が襲来しつつある可能性は示していると思われる。

2021年12月の新規コロナ感染者数の推移
2021年12月の新規コロナ感染者数の推移

また、➀生活支援金や事業継続資金給付の充実や産業構造大転換のための設備投資増加のための積極財政によるデフレ心理の一層②消費税の税率ゼロ%または廃止など税制の抜本改革③実体経済の回復によるデフレ不況脱却による自然の金利高で為替相場の円安に対処する(円安による海外投資家の日本の資産の買取を阻止する狙い)③アベノミクスの有効性を偽るための国土交通省などの統計改ざんや安倍晋三、菅義偉、岸田文雄による森友学園関連の公文書改ざんと改ざん隠し(民事訴訟を認諾で終わらせてしまった。ただ、改ざんを指示したと見られる当時の財務省理財局長で国税庁長官に「出世」した佐川宣寿氏との民事訴訟は残っている)のほか、加計学園、桜を見る会、日大背任事件の奥に潜む加計学園傘下の千葉科学大(2004年学部開設)、倉敷芸術科学大(2017年)と日大(2016年)の3大学に対する危機管理学部(防衛省や自衛隊幹部の天下りのために開設された可能性が高い)の開設認可問題(背後に自民党中枢が関係していると言われている)の真相の究明と刑事処分による日本を覆う忖度風潮の一新ーなどが欠かせない(参考:https://www.youtube.com/watch?v=WjZabEdGWhUなど)。

基本的には日本を含む世界諸国の経済はスタグフレーションに陥っている。オミクロン株など新型コロナウイルスの正体を突き止め、新型コロナ変異株の感染流行を終息させる「国際協調」が必要だ。

自民党内政局ー安倍・高市(軍拡疑似積極財政派)VS岸田・麻生(緊縮財政派)が鮮明に

自民党内で、現代貨幣理論(MMT)を悪用した安倍晋三元首相・高市早苗政調会長(軍拡疑似積極財政派)と岸田文雄首相・麻生太郎副総裁(緊縮財政派)の対立が鮮明になっている。宏池会の領袖である岸田首相と宏池会から分かれた志公会の会長であり、麻生派の領袖である麻生副総裁は大宏池会の結成を目指しており、大宏池会が誕生すれば派閥議員総数が97人になり現在では自民党内最大派閥の清和会安倍派の95人を上回る。

日刊ゲンダイは次のように伝えている(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/298923

自民党内で、安倍元首相と麻生副総裁の対立が話題になっている。財政をめぐって主導権争いを繰り広げているのだ。「10月の衆院選直前に、財務省の矢野事務次官がバラマキ批判のいわゆる“矢野論文”を月刊誌に寄稿した。これに激怒したのが積極財政派の安倍元首相で、高市政調会長の下に財政再建派と対決するための“本部”をつくらせたのです。一方の麻生副総裁も、財政健全化の推進本部を党内に立ち上げました」(自民党事情通)

先に動いたのは安倍氏と高市氏だ。臨時国会に先立つ11月29日、それまで政務調査会に設置されていた「財政再建推進本部」を改組して、高市氏が顧問を務める「財政政策検討本部」を発足させた。安倍氏を最高顧問に担ぎ、本部長には安倍側近で積極財政派の西田昌司参院議員が就任。「GDP比2%の防衛費を全力で確保」など勇ましいテーマを掲げて、積極財政を訴える。これに対し、12月7日には岸田総裁(首相)直属組織として「財政健全化推進本部」が党内で始動。こちらの最高顧問は麻生氏で、本部長には額賀元財務相が就いた。(以下、略)

西田参院議員はケインズ経済学の集大成とも言われる現代貨幣理論(MMT)を自民党内に広め、Youtubeの「西田チャンネル」でMMTの啓蒙と対中強硬路線を展開するとともに、実質的に社会民主主義路線(ドイツでは社会民主党と自由民主党、緑の党が連立政権を組み、核禁止条約会議にオブザーバー参加の決定を下した)に転じている現在の日本共産党を未だに「スターリン主義政党」として時代錯誤的に批判している人物として有名だ。

「財政政策検討本部」は現代貨幣理論(MMT)を悪用して、日銀を中央政府の侍女にして貨幣(紙幣)増刷による財源で大軍拡を中心に積極財政を行おうとしている。「財政健全化推進本部」の背後では財務省がバックアップして、「緊縮財政」を強化しようとしていると見られる。いずれも日本の経済を再建どころか破壊するものだ。日本の経済が安倍第二次政権以降、急激に没落してきたのは、異次元金融緩和政策を長年続けてきたにもかかわらず、民間に資金を正しく還流させて、民需(家計の最終消費需要と企業の設備投資需要)を喚起できるようなデフレ心理を一層できなかったことによる。消費税増税を続けてきたことやプライマリーバランス(税収と国債費以外の歳出の差)の黒字化を掲げてきたからだ。このことは、日本経済がケインズが説いた「流動性のわな(デフレ心理が強い場合は貨幣を貯蔵しておこうとする心理)」から脱却できなかったことによる。

このため、円の実質実効為替レートは1ドル=200円程度まで下がっていると試算されているが、現代貨幣理論(MMT)を日本経済に創造的に適用して、原発ムラやクローズドなITゼネコンムラ、厚生労働省の医系技官による感染症利権ムラなど自民党政務調査会がしきる各種利権ムラの撤廃を前提に、消費税率のゼロ%への引き下げもしくは廃止を中心とした税制の抜本改革を行い、日本の遅れた産業構造の大転換を行わなければならない。これが基本だが、自民党内の政局は安倍元首相による森友・加計・桜を見る会問題、参院広島選挙区での取り敢えず半分疑惑、国土交通省の公共事業請負建設会社の事業統計改ざん、日大背任疑惑の背後にある「危機管理学部」開設に伴う収賄疑惑をもみ消す狙いもある。

現代貨幣理論(MMT)の悪用による擬似積極財政=戦前の大軍拡路線(米国のディープステート=闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業=からの「敵基地攻撃能力確保」のための大量の軍事兵器購入)への回帰は、日本を破壊する。財務省が推進してきた緊縮財政路線も、これまた日本にデフレ不況を続けさせ、日本を破滅の道に追いやる。自民党内の政局の行方は極めて重要だが最悪の場合、大軍拡擬似積極財政派による党内クーデターが成功し、「非常事態条項」を盛り込んだ憲法改悪が実現する可能性も考慮しておかなければならない。山本太郎代表率いるれいわ新選組を中心に、自公連立政府の言いなりになり、米国のディープステートの操る日本労働組合総連合会(連合)の支配下に入った立憲民主党の反泉健太代表派と日本共産党、社民党が結束する必要がある。


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