デルタ株より危険な新型コロナウイルスの変異株オミクロン株が既に市中感染していることが分かった。日本での第六波の本格到来はまだ統計上で示されていないが日本のエピセンターである東京都の一週間平均の新規感染者数は下げ止まりの傾向を見せている。オミクロクン株の市中感染が明らかになったことで、冬場に新規感染者が拡大するという季節要因とも相まって、今冬はやはり警戒と対策が必要だ。
オミクロン株、日本で市中感染
政府は16日、米国のテキサス州から8日帰国した日本人女性がオミクロン株に感染しており、さらにこの女性と8日から9日にかけて接触した男性(濃厚接触者と記載されるが、これはもはや偽りで、空気感染濃厚者と言葉を変更すべき)がオミクロン株に感染していることが判明した。この男性は川崎市の等々力陸上競技場で開催されたサッカー天皇杯準決勝を観戦しており、空気感染で男性の近くにいた観戦者もオミクロン株に感染した可能性が高い。複数のメディアが伝えたが、例えば時事通信社が報道した記事は次のような内容だ(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021121600884&g=soc)。
厚生労働省と東京都は16日、米国から8日に帰国した都内の20代女性が新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」に感染し、その濃厚接触者の男性のコロナ陽性が判明したと発表した。男性は12日、川崎市の等々力陸上競技場でサッカー天皇杯準決勝を観戦しており、都はオミクロン株感染の有無を確認している。
厚労省や都は、男性の周辺で観戦していた約80人に検査を促すとともに、体調が優れない観客は外出を避け、医療機関を受診するよう呼び掛けている。厚労省と都によると、女性は8日、米テキサス州から成田空港に到着したが、検疫ではコロナ陰性だった。同州からの入国者は当時、検疫施設での待機対象外だったため、自宅に戻り待機を始めた。9日に発熱の症状が出て10日に医療機関を受診。都が全遺伝情報(ゲノム)解析を行ったところ、16日にオミクロン株感染が確認された。検疫以外での判明は岐阜県の男性に次いで2例目。男性は8、9両日に女性と面会。10日には発熱などの症状が出た。観戦後の13日に職場に出勤したが、同日に女性の濃厚接触者と特定され、15日にコロナ陽性と判明した。一緒に試合を観戦した家族3人と、職場の7人が男性の濃厚接触者と特定された。
女性と男性はいずれも、モデルナ製のワクチンを2回接種していた。(中略)松野博一官房長官は今回のケースについて、「いわゆる市中感染が発生したとは考えていない」と述べた。
空港検疫では精度が低い抗原検査しか行われていないので、コロナ感染者3人のうち2人は見逃す。厚生労働省ではPCR検査でも専用の試薬を使えばPCR検査でもオミクロン株に感染していることがほぼ断定できる(最終的にはゲノム解析が必要)と全国の各自治体に通達している。空港検疫所にはどう通達したのか不明。抗原検査を用いる理由として検査結果が判明するまでに必要な時間が30分で済むということがあげられるが、PCR検査の海外での技術革新で、結果判明までに要する時間は30分〜60分に短縮されている。厚労省は空港検疫で抗原検査をPCR検査に切り替えない不作為を続けているとしか言いようがない。
なお、松野官房長官の「いわゆる市中感染が発生したとは考えていない」という発言は論外だが、むしろ事態の重要性・深刻性を逆説的に示したものになる。
空気感染濃厚者(濃厚接触者)のPCR検査、ゲノム解析はサイト管理者(筆者)の調べでは不明だ。しかし、オミクロン株の感染力は、海外の医学誌専門論文や新聞紙(ネットメディアを含む)感染力が強かったデルタ株の3倍から8倍とされている。さらに、Youtubeで新型コロナウイルスについて欧米の有力医学誌や有力新聞社の情報を詳細に伝えているIT企業社長の清水有高氏主催の「一月万冊」の番組では、米紙ワシントン・ポストの記事(ネット記事)を紹介し、南アフリカ最大の医療保険会社のディスカバリー社の発表として、米国のファイザー社とドイツの新興製薬企業美音テック社が共同開発したmRNAワクチン(ファイザー社製ワクチンと呼ばれる)のオミクロン株感染予防効果は33%、感染者の入院阻止効果(重症化を防ぐ効果)は70%という。以前は、感染予防効果、重症化予防効果は80〜90%前後とされていた(https://www.youtube.com/watch?v=dEdfPowzSFY)。
このことは、時事通信社もニューヨーク=時事電で次のように伝えている。恐らく、ワシントン・ポストのネット記事を配信したものだろう。
新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」に対して、米ファイザー製ワクチンの感染予防効果が大幅に低下する可能性があることが、14日に公表された南アフリカでの調査結果で分かった。調査によると、ファイザー製ワクチンの2回接種を完了した人と未接種者を比べた際の感染予防効果は33%と、デルタ株流行時に行った調査で示された80%から大幅に低下した。
オミクロン株の感染力は極めて強いことが世界的に確認されている。また、オミクロン株も現在のmRNAワクチンを主流とする新型コロナ用ワクチンも感染予防効果や重症化予防効果も低下しているから、ブースター接種を行っても感染拡大を阻止できるかどうか不明であり、疑問とされるところだ。下図は12月17日土曜日時点の新規コロナ感染者数の推移と東洋経済オンラインによる16日金曜日時点の実行再生産指数(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)。17日土曜日時点では全国で前日比0.02ポイント増の1.11,東京都では同0.01ポイント減の1.08だったが、いずれも1.0を上回っている。
日本では欧州や韓国などと異なり、爆発的な感染は起きていないが、日本のエピセンターである東京都の7日移動平均での新規コロナ感染者は前週の同じ曜日に比べて100%を上回っている。新規感染者のゲノム解析も不明だが、通常は季節要因から冬場には感染者が急増する(11月下旬には第六波が始まるとの予想があったが、日本の場合は20代〜50代のワクチン接種が遅れたことが予想が的中しなかったと言われており、安心はできない)と言われているから、これに空港検疫体制の「ザル検疫体制」やPCR検査の後進性を考慮すると第六波が年末から年始にかけて始まる公算は大きい。
新型コロナショックによるスタグフレーション危機
2年に及ぶ新型コロナ危機では経済のサプライチェーンを破壊し、第一次、二次石油ショックをしのぐ供給ショックによるインフレをもたらしており、本サイトでしばしば危惧を表明してきたように、30年間の不況が続く日本にスタグフレーションをもたらしつつある。世界的なコロナ対策が必要だが取り敢えず、立教大学経済学部の金子勝特任教授の指摘を下図に示しておきます(https://www.youtube.com/watch?v=t6dcnOW9QEI)。
まずは、日本を取り巻く輸入物価と企業物価を中心とした物価情勢を下図に示す。
ただし、日本の超金融緩和政策は日銀が市中金融機関の国債を買い上げ、それが投機マネーに使われ、実需(個人消費、設備投資)に回っていないほか賃上げに使われていないため、経済成長は極めて低い。超低金利による円安誘導→輸出増(近隣窮乏化政策)が大きな狙いだが、実体経済の成長には全く役に立っていない。
これから来年2022年はスタグフレーションが本格化しそうだ。その原因について金子特任教授は次の説明を行っている。
金子特任教授はスタグフレーションを克服するためには、日本の勤労者の賃上げの必要性を主張しておられるが、企業が賃上げした場合に法人税減税(税額控除)をするなどの愚策を取り止め、法人税減税と連動した企業の内部留保の取り崩しによる国民の賃金を引き上げる必要があると主張している。ただし、企業が内部留保を取り崩して賃上げや設備投資に回さないのは、国内総生産(GDP)の大半を占める内需の盛り上がりを見込めない面もある。だから、超金融緩和による円安での純輸出の拡大(インバウンドによる観光需要の増大含む)に頼ることになるという面がある。サイト管理者(筆者)の観点では、日銀マネーをバブルを生み出す投機マネーにせず消費や設備投資などに回し、賃上げや税金・社会保険料負担軽減、奨学金徳政令のためなどの積極財政を行うとともに、サプライチェーンを回復するための世界的なコロナ収束対策が必要不可欠になるだろう。
また、金子特任教授はバブルの崩壊で国債の金利が急騰(価格は急落)した場合の国債金利の利払い負担が急増することを懸念されておられるが、日銀が市中金融機関から国債を購入した場合(日銀による間接的な国債引き受け)、日銀が政府に要求する国債の利払い費は日銀から政府に日銀納付金として納付される。山本太郎代表率いるれいわ新選組の「れいわニューディール政策」ではこのことを明らかにしているが、れいわも本格的なスタグフレーションに対応したものに修正する必要があるだろう。
なお、米国の連邦準備精度理事会(FRB)は来年の2022年からゼロ金利政策を止め、年3回の利上げを中心にした金融引き締め政策に転換することを表明しているが、これは米国政府が国民に対して新型コロナのための巨額の特別生活支援金を給付し、景気が加熱の様相を呈していることによるところが大きい。ただし、コロナ禍が来年以降、完全に終息する見通しは立っていない。コロナ禍が深刻化すれば、金融引き締め政策への転換は再び転換を迫られる可能性がある。世界の経済の安定化のためにも、人類の知恵を総動員して新型コロナ感染を終息させる必要がある。