6月8日、衆参両院本会議で麻生太郎財務大臣が第二次補正予算案の説明を行ったことから、同予算案の国会での審議が始まった。しかし、予備費が10兆円を超え、うち5兆円は使途がある程度決まっていると説明しても、予備費は予備費であって、本予算にしろ補正予算にしろ、予算は国会で議論して決定するという日本国憲法が定めた財政民主主義を破壊するものであることは明らかである。使途が明らかな5兆円については使い道を精査して計上し、残る5兆円は削除して組み換え、会期を延長して第三次補正予算案を編成すべきだ。

総額31兆9114億円のうち10兆円もの予備費というのは戦後の議会制民主主義史上初の暴挙だ。日本国憲法では第八十三条で「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」と定め、第八十五条でも「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする」と定めている。確かに、第八十七条で「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。2すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない」と定めているが、予備費はあくまでも「予見し難い予算の不足に充てるため」のものであり、かつ「内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない」ものである。

第二次補正予算案について国会で説明する麻生太郎財務大臣=NHKより

10兆円もの予備費を内閣(安倍首相)が勝手に支出し、数の力で国会の事後承認を得るというのは、上に示した財政民主主義を破壊するものである。もっとも、政府=安倍政権は憲法破壊、法律破壊の常習犯であるから、財政民主主義もいとも簡単に破壊してしまう。しかし、これは日本国憲法の第十章「最高法規」で定められた第九十九条の「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」の最重要条項を破壊する行為である。

数の力で憲法破壊、法律破壊を繰り返してきた政府=安倍内閣には一刻も早く退陣してもらわなければならない。さて、第二次補正予算案の予備費であるが、このうち5兆円は自民党と立憲民主党の国対委員長階段で、①雇用調整助成金などに1兆円程度②中小企業などに最大200万円を出す持続化給付金や家賃支援などに2兆円程度③地方向けの医療・介護などに2兆円程度−とある程度用途を「定めている」。

それなら、5兆円分については各省で調べ、具体的な支出内容と金額を第二次補正予算案に定めるべきだ。そして、残る安倍政権フリーハンドの予備費5兆円は補正予算案から削除して組み換え、速やかに第三次補正予算案を編成すべきだ。第一次、第二次補正予算(案)では、国民の税金が、電通、パソナ、トランスコスモスなどおなじみの政商(シロアリとも呼ばれる)に横取りされる構図が明らかになりつつある。これらのためには、16日閉会予定の今通常国会の会期を延長しなければならない。また、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策と国民生活(生存権)の補償・経済活動の両立を実現することに失敗したことも考えると、コロナ禍対策を抜本的に転換し、国民生活と経済社会の安定を実現するためにも、延長は不可欠である。

閉会を急ぐのは、安倍政権が河井克行元法相・案里参院議員に対して、公職選挙法違反(買収)容疑で検察庁が国会の衆参両院議長に逮捕許諾請求状を出すことを恐れているからであろう。具体的には、衆参の議会運営委員会で議論されることになるが、いくら自民党が反対しても衆目の見るところ買収資金が自民党本部から安倍総裁の、恐らく指示の下に拠出されていると見られている以上、内閣総辞職に直結する。

ただし、第二次補正予算案を強行採決して、国会を閉会に持ち込んだとしても、検察庁が河井夫妻を逮捕する公算は極めて大きい。安倍内閣が知らぬ、存ぜぬで通すことはまず無理だろう。もっとも、検察庁が適度に手加減を行い、相変わらず「検察ファッショ」を起こす可能性も考慮に入れておく必要がある。いずれにしても、日本国は国民主権・議会制民主主義・平和主義を三大理念とする日本国憲法を守り、さらに発展させていくのか、コロナ禍にあって最大の危機的状況を迎えている。これらについては、次の日本共産党の小池晃書紀局長・参院議員の記者会見が参考になる。

サイト管理者は共産主義者ではないが、社会主義を市場制資本主義経済体制の欠陥(特に、市場原理主義と自己責任原則一点張りの新自由主義=「政府」の民営化による貧富の格差の大拡大など)を克服するものと位置づけている。社会主義と言えば、かつてのソ連のスターリン主義や習近平国家主席の下の開発独裁型社会主義体制が目につくが、欧州にはゴーデスベルグ綱領により共産主義と決別した社会民主主義の伝統があり、かつてはロバート・オーエンの人道的社会主義やキリスト教など宗教的背景をもった社会主義理念も存在した。

サイト管理者はこれから、日本共産党が未だなお金科玉条にしている「史的唯物論(唯物史観)」の正体をマックス・ウエーバー・大塚史学の「辺境革命論」から明らかにするつもりでいる。

なお、上記の記者会見で小池書紀局長は、8日の記者会見で菅義偉官房長官が7日投開票の沖縄県会議員選挙で辺野古に基地を建設することに賛成した公約を盛り込んだ自民党の当選者が15人から19人に増えたことをもって「沖縄県民にも辺野古に基地を建設することに理解が得られてきた」と暴言を吐いたことに強く反論している。同書紀局長によれば、投票率がコロナ禍と大雨のため、前回から6.35ポイント下がった史上最低の46.85%にとどまったにもかかわらず、①立候補者全員が当選した日本共産党の得票数は前回比95.1%であったのに対し、自民党のそれは同81.8%にとどまったこと②自民党は公約にかかげたにも拘らず、選挙戦では徹底的に辺野古基地建設賛成を隠した−として菅官房長官を強く非難している。

はっきり言って政府の御用新聞である産経新聞は、2020年6月8日10時01分に投稿した「沖縄県議選 自民が議席伸ばす 知事派辛勝も求心力低下」と題する記事(ヤフーニュースに提供)で「共産、社民両党など米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する玉城デニー知事の支持派が25議席を獲得して過半数を維持した。ただ、社民党の現職が落選するなど改選前より議席を減らし、玉城県政の求心力低下をうかがわせる結果ともなった」などと、実態にそぐわない安倍政権の提灯記事を書いている。沖縄県の地元紙である沖縄タイムスの社説も似た論調である。県民の意思を反映した琉球新報の社説のほうがまともである。

埋め立て工事を強行している沖縄県辺野古地帯=琉球新報社のサイトから

辺野古の海岸は地盤が軟弱で、肝腎の滑走路を作ることができない。そのためには、海底の地盤を補強する工事が必要であり強行しているが、工費として2兆5千億円もの膨大な資金がかかるうえ、全て日本の国民の血税で賄わなければならない。また、工期も10年程度かかり、世界で最も棄権な普天間基地の返還もいつになるのか分からない状況である。安倍政権が唱えた「大義名分」は喪失したのである。加えて、正式には沖縄県の了解が必要である。今後も強行するとなると、国と沖縄県の行政裁判が必要になる。安倍内閣には即刻、退陣して頂ければ最高裁も安倍政権に忖度する必要はないから、行政裁判で勝訴の可能性も出てくる。歴史的役割を終えた普天間飛行場はすぐに返還、辺野古への米軍基地建設は即中止し、膨大な工費はコロナ禍で苦境に立たされている沖縄県の県民の生活と経済の再建のために使うべきである。

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