解散・総選挙に向けて野党は「異次元財政出動」を柱に理念・政策連合構築を

安倍晋三首相が28日、辞任を表明したことで日本の政界は激動期に入った。自民党は副総理兼財務相の麻生太郎選挙管理内閣の下、新総裁を選出。新総裁は「危機管理内閣」を組閣して、野党の先手を打って消費税減税を含む政策パッケージを錦の御旗に、年末までに解散・総選挙に打って出るだろう。野党は立憲民主党と国民民主党の大部分が新党合流する見通しだが、消費税減税など不公平税制の見直しや積極財政への経済政策の抜本的転換はもちろん、電力総連を中心とする連合の切り崩しで「原発ゼロ社会」の綱領規約案さえ維持が困難になってきた。このままでは、「新55年体制」が形成されてしまい 、「日本一新」は不可能だ。連合の圧力をはねのけ、理念と基本政策で一致した「政策連合」を結成することが結成が急務だ。

◎追記:29日の新型コロナウイルス感染者は、東京都で午後15時現在、4日連続の247人になった。東京都基準の重症者は前日比2人増の32人。64%が感染経路不明。7日移動平均の感染者数は206.9人、陽性率は4.2%。全国では845人が新規感染し、 11人亡くなられた。重症者は3人増の230人。27日には速報値で1日に2万6201件のPCR検査が行われたので、瞬間推測陽性率は3.2%。

一応、安倍政権の実績を振り返ってみよう。レガシー(政治的成果)は詰まるところ何もない。むしろ、負のレガシーしかない。安倍政権は何よりも日本国憲法を破壊する憲法破壊内閣であった。首相官邸が「内閣人事局」を創設して高級官僚の人事を掌握し、集団的自衛権の行使を禁じてきた従来の内閣法制局の解釈を変更させ、集団的自衛権の行使を可能にする「安保法制」を強行採決して、成立させた。加えて、「イージス・アショア」を見限る「代償」として、「敵基地攻撃論」を打ち出し、日本の安全保障戦略を憲法とは真逆の方向に大転換させようとしている。

これは、表向き、北朝鮮を対象にしているとされるが、ことはそういうものではない。米国のポンペオ国務長官は、恐らく軍産複合体の意向を受けて、中国が世界最大の経済・軍事大国化することを恐れ、トランプ大統領が始めた「米中貿易戦争」とは次元の異なる「中国包囲網路線」を展開しつつある。東アジア諸国やオセアニア諸国、南アジア諸国などに「対中包囲網有志国連合」を結成させるつもりであることから、「敵基地攻撃論」は中国も狙いに定めている。今後、習近平国家主席を国賓待遇で訪日させようとした新中国グループの政治家、企業経営者には「踏み絵」を迫ってくるだろう。安倍政権が戦後の対米従属体制の維持に「尽力」したお陰だ。

一方、アベノミクスの破綻は、コロナ禍の下で破綻したことが完全に明らかになった。これについては、本日29日付の朝日新聞3面の「アベノミクス 光と影」が参考になる。朝日デジタルでは、2020年8月29日5時00分に公開した(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14602387.html?iref=pc_ss_date)。簡単明瞭な図表があるので引用させていただきたい。

アベノミクスの成果

アベノミクスの成果

完全失業率は低下しているが、コロナ禍関係で平均賃金の6割支給が最大の休業者は6月には236万人(総労働人口に占める割合は約4%程度)いる。今後、解雇や雇い止めなどで失業率はかなり上昇すると予測されている。なお、名目GDPの比較も下図に示している(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sokuhou/sokuhou_top.htmlより)。

名目GDP
通年換算
472兆円
10〜12月期
507兆円
4〜6月期
名目GDP
ドル建て
5.5兆ドル
10〜12月期
4.8兆ドル
4〜6月期

最も重要な指標は実質GDPの大きさと実質賃金指数である。実質GDPは政権発足時より減少している。これは改正インフル臨時特措法で緊急事態宣言が発出されたことがあるが、8年間の四半期実質GDPの前期比伸び率の単純平均値がマイナス0.1%と、無謀な量的金融緩和政策を長年続けてきたことなどの経済政策失政により、実質GDPが極めて低い水準で推移したことが真の原因だ。実質GDPが順調に拡大していたなら、8年館も経ってGDPがかえって減少するなどのことはありえない。

また、実質賃金指数は4.4%も低下している。これに対して、財務省の法人企業統計によると、今年第1・四半期の内部留保(当期利益から株主への配当、役員報酬、法人税を控除したもの=利益剰余金)534兆7240億円。如何に大企業を中心に企業に有利な政策が行われてきたかを物語っている。これは、法人税率が低すぎるうえに、勤労者の賃金が不当に安く抑えられたことの結果だ。さらに、安倍首相はアベノミクスにより名目国内総生産(GDP)を600兆円に拡大することを国民に約束したが、これもまた夢のまた夢であった。安倍政権の時代には円安誘導政策が行われたから、ドル建ての名目GDPはむしろ減少している。

いかに、安倍政権がアベノミクスなどともったいぶって、国民の第多数を占める勤労者を無視し、支離滅裂かつ無茶苦茶な経済政策を行ってきたかということが分かる。さて、9月の初めにも決まる次期自公政権では、今年第3・四半期の実質GDP(第一次速報値の発表は11月16日午前8時50分)が第2・四半期の大幅な落ち込みの反動増で前期比プラスになることを見越しており、これが確認できれば解散・総選挙に打って出る公算が大きい。とすれば、総選挙の時期は12月8日か15日の線が濃い。ただし、新型コロナウイルス感染状況によるところもある。

その場合、自民党内には安藤裕衆院議院、西田昌司参院議員ら現代貨幣理論(MMT)を真面目に勉強している議員が少なくない。消費税の5%への引き上げとコロナ禍対策のためと称して積極財政に打って出る可能性もあるなくはない。国民の切実な課題は、暮らしの安定と豊かさだから、その場合は、自公支持に回る可能性が少なくない。ただし、自公政権が続けば、憲法破壊行為は続く。

立憲民主党の枝野幸男代表(立憲のホームページより)

立憲民主党の枝野幸男代表(立憲のホームページより)

これに対して、国民民主党を事実上吸収合併する立憲民主党の枝野幸男代表は消費税減税には否定的であり、積極財政などは及びもつかないようだ。合流新党では社共生社会の実現や社会保障の充実などの心地の良い文句が盛り込まれているが、問題は財源をどう調達するかだ。不思議なことに、これには言及がない。

また、国民からできるだけ多くの国会議員を獲得するため、電力総連を中心とした日本労働組合総連合会(連合)の手によって玉虫色の表現であった「一日も早い原発ゼロ社会の実現」という「文言」さえ「「二項対立的(注:原発ゼロ社会実現化原発存続かの対立)思考に陥ることなく、科学的知見に依拠する」」という文言に書き消されようとしている(https://digital.asahi.com/articles/ASN8W6RPBN8WUTFK005.html)。これでは、共生主義をうたい文句にしても、実が伴わない。結局、富裕層と労働組合貴族の既得権益を墨守するための「新55年体制」構築の幕開けであったということになりかねない。

国民民主党の玉木雄一郎代表

国民民主党の玉木雄一郎代表

これでは、れいわ新選組は野党共闘には乗りたくても乗れない。国民民主党の事実上の後継政党になる玉木雄一郎新党は、財政政策についてはそれなりのものを持っているが、原発に対する態度が、世界の潮流ではコストがかかりすぎて危険であるとの烙印が押されている原発の再稼働を容認するなど、原発ゼロ社会から新エネルギー体制樹立への転換というエネルギー政策の抜本的改革を打ち出し得ていない。このため、自民党の補完勢力と言われる。

玉木新党がそうでないならば、「原発ゼロ社会」を明言すべきだ。そして、①立憲主義を守る②大規模PCR検査、抗体検査を含むコロナ禍対策の抜本転換③新自由主義に基づく緊縮財政から「異次元積極財政」への転換④消費税廃止を中心とした不公平税制の抜本的改革(所得税の累進構造の強化と法人税への累進税制度の導入など)④時限を明確にした原発ゼロ社会の実現ーなどを共通政策として、政権奪取を目指す真正野党が確かな「野党共闘」すべきである。




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