遅すぎる日本学術会議とコロナ対策事案の集中審議、政府はワクチン接種法案と種苗法改正法案の強行成立を意図ー年初に総選挙も

自民党の森山裕委員長と立憲民主党の安住淳国対委員長が10日午後、国対委会談を行い月内に日本学術会議会員任命拒否事案とコロナ禍対策事案についての集中審議を行うことが決まった。これを受けて10月10日から政府提案の法案審議が始まった。政府=菅義偉政権の目論みは、集中審議の前にコロナワクチン接種による健康被害を国が肩代わりする予防接種法の改正案と日本の農業生産者(農家)のタネ自家採種の権利をはく奪する種苗法改正案を成立させることである。これは、日本国民の健康、日本の農家の死活問題、食糧安保政策にかかわる重要事案である。本来は重要法案の審議前に集中審議を行うべきだったが、今となっては両法案に徹底抗戦する以外に道はない。

11月11日水曜日コロナ感染状況

本日1111日水曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では午後15時の速報値で新規感染確認者は1週間前の4日水曜日の122人より195人も多い317人(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)、東京都基準の重症者も前日比5人増加の38人だった。1日の感染の確認が300人を超えるのは、8月20日の339人以来のこと。東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は251.6人、PCR検査人数は4556.6人だから、陽性率は5.52%。東京都独自の計算方式でも5.0%。感染者のうち感染経路不明率は57.47%だった。
全国では午後時23時59分の時点で1546人の新規感染確認者、12人の死亡者が確認されている。大阪府は過去最多の256人が感染し、1人の死亡者が確認されている。
東洋ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、11月10日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増加してと1.26人、東京都では前日比0.01人増加の1.19人だった。悪化傾向が続いている。世界保健機構(WHO)による陽性率は5.0%以下であることを目標にすべき(それでも高いと思う)としているから、東京都は限界値を突破していると思われる。やはり、大規模PCR検査を行って無症状感染者を見い出し、保護・隔離・治療できる体制の確率が不可欠だ。

日本学術会議(以下、会議)会員任命拒否事案は、日本国憲法23条に定められた「学問の自由(➀研究活動と成果の公表の自由②会議をはじめ学術団体や大学の自律性・自治の独立・自由の完全な保障)」を否定する日本国憲法の破壊行為であり、日本学術法(以下、日学法)が定めた会議の推薦による内閣総理大臣の形式的任命制に反する日学法違反行為でもある。本事案は野党が徹底抗戦しなければ、日本を警察畑の杉田和博官房副長官を衷心とする事実上の秘密警察による全体主義独裁国家の樹立を許してしまう。また、最近のコロナ感染状況を見ると、全国的にコロナ第三波の襲来が予想される。それに伴い、今冬は国民の健康被害が相次ぎ、経済悪化はより鮮明になって行くと思われる。本サイトの次の記事をご覧頂きたい。

をご覧頂きたい。

自民党の森山裕国対委員長との会談後、11月中の集中審議で合意したと語る立憲民主党の安住淳国対委員長
自民党の森山裕国対委員長との会談後、11月中の集中審議で合意したと語る立憲民主党の安住淳国対委員長

このため、昨日10日に自民党の森山裕委員長と立憲民主党の安住淳国対委員長が10日午後、国対委会談を行い、菅義偉首相臨席のもと月内に日本学術会議会員任命拒否事案とコロナ禍対策事案についての集中審議を行うことが決まった。しかし、月内というのは、政府=菅政権が今臨時国会の最重要法案と位置づけている予防接種法改正案と種苗法改正法案を成立するための自民党の「くせ玉」に過ぎない。


予防接種法案では予防接種に必要な費用を国(財源は国民の税金と赤字国債)で負担し、ワクチン接種で健康被害が出た場合に、その損害補償は政府(財源は国民の税金と国債)が行うというもので、要するに、主にワクチン開発会社の健康被害賠償義務を免責する「ワクチン接種免責法案」と言っても良い。

10日の投稿記事を再掲するが、政府=菅政権が考えているワクチンは、同日午後、人体被害がなく効果があるかを調べる治験で90%の有効性が開発されたとの報道発表があった米国製薬大手のファイザー社が開発中のワクチンだ。新型コロナウイルスに確実に効く、しかも安全なワクチンであれば良いことは当然である。世界保健機構(WHO)では、高齢者や持病のある人々への接種を優先するとの公式見解を発表している。

しかし、感染症対策の専門家からは、コロナ系のワクチンの早期開発は困難だとの見方があることも確かだ。2003年に中国、韓国、台湾などで流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)に対するワクチンは開発されないままに、現在に至っている。とりわけ、懸念されるのが、抗体依存性感染増強(ADE=Antibody-Dependent Enhancement=)という副作用だ。通常はワクチンを接種すると抗体ができ、ウイルスによって産生され、体内の正常細胞を攻撃する抗原(病原体)を破壊するか、攻撃能力を弱める。

しかし、抗体が求められる機能を発揮せず、逆に人体の免疫細胞に入り込んで、ウイルスをかえって増殖させてしまい、正常細胞をワクチンを摂取しない場合よりも激しく攻撃する場合もある。この副作用をADE(Antibody-Dependent Enhancement)と呼ぶ。免疫学者の間ではよく知られた現象だ。例を挙げてみる。第二次世界大戦以降、世界110カ国に広がったデング熱というものが世界的に広まり、1960年代からその発生数は急激に増加、毎年およそ5000万人から1億人が感染する風土病とされてきた。その後、テング熱はデングウイルスが原因の感染症であることが分かってきた。

このため、テングウイルスに備えるため、「フランスの製薬大手サノフィがデング熱ワクチンを開発。フィリピン政府が接種を大規模に進めたが、2017年に中止した。中止されたのは、それまでデングウイルスに感染したことがない人が、ワクチン接種後に感染すると、重症化リスクがあると報告された」(https://digital.asahi.com/articles/ASN5X6FPVN5PPLBJ00J.html?iref=com_apitop)からで、この重症化リスクがADEである。

また、朝日デジタル(https://digital.asahi.com/articles/ASNCB36J7NC9UHBI056.html)の報道によると、「ファイザーの治験は終了しておらず、結果は専門家の査読を受けた論文として発表されていない。製造や運搬などの課題もあり、(WHO上級顧問の)ブルース・エイルワード氏が『3月までに(ハイリスクの人々に摂取する)』とした根拠は明らかではない」とのことだ。ファイザー社のワクチンは、第3相の治験の第1段階を通過した段階であると言われており、ADEなどの重篤な副作用が出るか否かはまだ不明だ。また、東大先端科学技術センターの児玉龍彦東大名誉教授らによると、今回の新型コロナウイスルは変異しやすく、中国型、欧米型、日本型と複数の型が確認されている。ファイザー社が開発中のワクチンが、中国、日本型の新型コロナウイルスにも有効で安全かどうかは不明だ。

10月11日付朝日新聞4面によると、予防接種法改正案では日本の全国民には接種を受ける義務が生じるが、政令で努力義務を適用しないことができる条項も盛り込んだとしている。けれども、法律の条項ではなく、政令なので内閣の判断で強制接種ということにもなりかねない。第三波襲来が現実のものになってきているが、新型コロナウイルスの攻撃を弱める抗ウイルス剤の開発に力を入れるとともに、ファイザー社などのワクチンに対しては米国のFDA(食品医薬品局)の承認を受けたからと言って、日本でも厚生労働省が安易に承認するものではない。日本に合わせた十分な第3相の治験を行うことが重要だ。

また、世界各国のランキングで人口10万人/100万人当たりで150位程度にとどまっているPCR検査数を大規模に増やすことが必要だ。感染経路不明者の割合が50%以上になっている現在、クラスター対策(感染集団=クラスター=の発生を防ぐとともに、感染者の濃厚接触者を追跡する手法)ではもはや、感染拡大防止には限界だ。10月11日付東京新聞によると、PCR検査を行った後、通常3日後に各都道府県に検査結果届けられるとされている。東京都で昨日10日の新規感染確認者は前週3日の感染者209人より85人多かった294人と公表されたが、3日前の検査数は10月31日分が2251件であったのに対し、11月7日は3334件と1083件も多かった。PCR検査数を増やすほど、感染者は多くなる。増やして陽性率で感染状況を判断する必要がある。

下図は、東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)での11月8日時点でのPCR検査検査件数と実効再生産数の推移のグラフだ。日曜日は各週の中でも、例外的に検査件数が少ない。そこで、世界各国のコロナ感染状況をリアルタイムで表示しているサイトhttps://www.worldometers.info/coronavirus/で調べてみると、11日午後13時45分時点で日本は人口100万人当たり2万2942件。これは、米国の54万1193人、ドイツ27万8886人、英国54万1193件、フランス27万9353人、韓国5万3359人などと比べて、大幅に見劣りがする。また、実効再生産数は10月初旬に一時低下傾向を示したが、最近では1.25人となり、放置しておけば感染者数は指数関数的に増大してしまう。

東洋経済ONLINEによるPCR検査数と実効再生産数
東洋経済ONLINEによるPCR検査数と実効再生産数

日本でのコロナ禍対策の問題点を考えてみると、➀東京世田谷区など一部の基礎自治体を除き、無症状患者を含めて誰もがPCR検査、抗体検査を受ける体制は確立されていない②無症状感染者が感染拡大の温床になっている③全国の実効再生産数(1人の感染者が何人に新型コロナウイルスを感染させるか、その人数)は1.0人を超えて上昇しているーことを踏まえると、児玉龍彦教授の指摘するように、感染震源地(エピセンター)を特定し、エピセンターでは全員検査を行う②エピセンターの周辺地帯ではPCR検査と抗体検査を組み合わせる③非エピセンターでは主として抗体検査を行うーなどの検査体制の大規模な拡充が必要だ。安全性と有効性が十二分に確認されていないワクチンに簡単に飛びつくのは、危険でしかない。

児玉龍彦東大名誉教授による今朝システムの構想
児玉龍彦東大名誉教授による今朝システムの構想

次に問題になるのが、種苗法改正案だ。以下の記事は、日本共産党の田村貴昭衆院議員のインタビュー記事(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-11-07/2020110706_01_0.html)をサイト管理者(筆者)なりに解釈したものである。種苗法とは、米や野菜、果物の新品種を開発して登録した場合、開発者=育成権者の知的財産権を保護し、生産・販売の権利を認める法律のことだ。現在の法律では、農家が購入した種や苗を育てて収穫し、収穫後に得た種を翌年、再び自分の農地で種(苗)として使うこと=自家増殖=は可能になっている。改正案では、登録品種については25年〜30年の間は自家増殖は禁止され、種苗として使うためには育成権者に多額の「許諾料」を払わなければならないとするもので、育成権者以外の農家は営農を続けられなくなる公算が極めて大きくなる。

近年はトウモロコシや野菜など海外のアグリビジネスから毎年、種を買わなければならなくなっているという状況になっており、日本の農家にとって重い負担になっているが、この状況が全国各地で見られるようになる。また、2018年には主要作物種子法が廃止され、「農業競争力強化法」が成立し、「国の研究機関や各県の農業試験場などの公的機関が持つ種子を含む農作物についての知見を海外のアグリビジネスを含む民間に提供すること」が求められた。国の研究機関や各県の農業試験場などの公的機関は開発した種子を農家に安く提供していたが、海外のアグリビジネスにも知見の提供を要求できることになった。

海外のアグリビジネスが日本の農業に参入するためには、「農家の自家増殖を認めることと、国の研究機関や各県の農業試験場などの公的機関が開発した種子を農家に安く提供すること」が大きな障害になっていた。このため、海外のアグリビジネスに日本の農業を売り渡すことを目的として「農業競争力強化法」を制定し、種苗法改正案を臨時国会で成立させることで、日本の農業を海外のアグリビジネスに売り渡すという安倍晋三政権と菅政権の目的は一応、達成する。

しかし、種苗法改正案によって日本の農家は大きな打撃を被り、既に40%以下に下がっている日本国民による食糧自給率は大幅に落ち込むことになる。また、海外のアグリビジネスが日本の農業を制覇することにもなる。これは、日本の食糧安全保障戦略上、軍事的安全保障戦略以上に極めて深刻な問題である。「腹が減っては戦ができない」というのは厳然たる事実であるからだ。対米隷属外交の行き着くところは、日本の完全な属国化だ。

なお、菅首相は今回の臨時国会で第3次補正予算案の編成を各省庁に指示した。巨額の補正予算を成立させるようだが、元参院議員の平野貞夫氏は、複数の関係者からの情報として菅首相が来年1月の通常国会で解散・総選挙を行うという見方を示した。【追記11月12日午前8時】なお、コロナ第3波の襲来とも関係してくることを考慮に入れる必要はある。それにしても、日本学術会議会員任命拒否事案の集中審議は日程が遅すぎる。安住国対委員長はいつも、自民党の国対委員長に負けてばかりいる。また、任命拒否問題は多くの国民にとって分かりにくい事案でもある(https://www.youtube.com/watch?v=D_POdF1oYkg)。

予防接種法の改正案や種苗法改正案は、日本の行く末を大きく左右する。本来は上記2法案の審議をする前に、国民に対する周知徹底の意味も会って集中審議を行うべきだった。安住国対委員長がいつものことながら、交渉に失敗したのは明らかだ。このため、野党としては第一党の立憲民主党が日本共産党、れいわ新選組と協調体制を確立し、政権奪還に向けて強力な政策体系を構築し、野党連合政権の構想の国民への提示も含めて、政権奪還のための「野党共闘」を構築する必要がある。

なお、大統領選挙に当選したバイデン氏が米国を牛耳っている軍産複合体(共和党のアイゼンハワー大統領が離任演説でその存在と警告を行った。米国の軍部と軍事産業および関連産業。最近では多国籍企業やGAFAMなどIT大手企業もグループ入りしている可能性がある)を背景にしているだけに、なおさら深刻な問題である。ベトナム戦争は軍産複合体に与しない民主党のケネディ大統領が謎の暗殺事件に見舞われ、ジョンソン副大統領が大統領に就任してから激化した。東京新聞11月11日付3面によれば、脱炭素化のためにバイデン次期大統領は原発を利用するという。当然、日本も原発推進策を一段と強化することになる。日本は今後も、対米隷属化外交を続け、最終的には米国の完全な属国になるのだが、それで良いのだろうか。

ただし、軍産複合体とは距離を置いていたトランプ現職大統領は米国政治史では慣例だった「敗北宣言」を行っていない。政権のスムーズな移行が進むか今後の動向を見守らなければならない。日本時間で11日午後16時の段階では、政権の円滑な移行に協力していない。

バイデン大統領が誕生した場合、➀米国民の分断を解消し、真の民主主義国家を樹立できるか②「米中新冷戦時代」を克服できるかーの手腕を問われることになるが、戦争なくしては存在できない軍産複合体を背景にしている限り、それは困難だろう。郵便投票の遅れで遅れたが、バイデン氏が「勝利宣言」を行った後も、米国メディアはトランプ現職大統領を批判し続け、日本のテレビメディアも米大統領線のニュースを繰り返し報道、日本学術会議会員任命拒否事案は取り上げげなかった。「目隠し作戦」が指令された疑いが残る。

日本は現在、米国の完全な従属国家化の道を選ぶのか、それとも、日本国憲法の理念である➀基本的人権の尊重②国民主権③平和主義ーに立って、ノルウェーのヨハン・ガルトゥング(1930年10月24日 – )が提起した、戦争のない状態を平和と捉える「消極的平和」に対し、貧困、抑圧、差別など構造的暴力のない状態としての「積極的平和」を実現するための、言葉の真の意味での「積極的平和主義外交」を選択するのか、その分水嶺に立たされている。



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