開催経費が膨れ上がる一方の東京オリ/パラは中止し追加予算額はコロナ禍対策に充当を(東京・首相忘年会継続追記)
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アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスで2013年9月7日(日本時間8日)、安倍晋三首相(当時)が応援に駆けつけ。「Fukushima in under control」などの虚偽宣伝を行い、招致賄賂疑惑も出たが、2020年度オリンピックを開催する国際オリンピック委員会(IOC)委員の投票で開催地が東京都に決まった。招致時は開催総経費は7300億円と見られていたが、その後3兆円規模に膨れ上がった。そこに、新型コロナ禍が発生し、今年3月に来夏への延期が決まった。東京オリ/パラ組織委員会(森喜郎会長)は中間発表として、来夏への延期に伴う追加費用を2000億円程度、これとは別途に新型コロナウィルス対策費に1000億円程度かかると発表した。

12月17日木曜日コロナ感染状況

本日12月17日木曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では午後15時前の速報値で新規感染確認者は1週間前の12月11日日木曜日の602人より220人多い過去最多の822人になった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。重症患者数は3人減少の66人と公表しているが、東京都が医療逼迫のステージを3から感染状況と同様に、最高警戒レベルの4に引き上げたこととやや辻褄が合わない。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は565.9人、PCR検査人数は7112.4人だから、陽性率は7.96%。東京都独自の計算方式では6.9%。感染者のうち感染経路不明率は57.13%だった。ステージ3/4の陽性率は10%。陽性率もかなり上昇している。東京都のモニタリング調査によると、7日移動平均の感染者数は初めて500人を上回った。感染経路不明率も60%に接近し、瞬間陽性率も8%を超えた。ステージ3/4の陽性率は10%。
小池百合子都知事は年内に新規観戦者が1000人を突破する事態もあり得るとして、年末年始特別警報を発令した。病床確保のため、基礎疾患のない70歳以上の高齢者でコロナに感染した患者は新たに確保した宿泊施設で受け入れを検討していると発表した。
全国では午後23時59分時点で過去最多の3211人の新規感染者、38人の死亡者が確認されている。重症者は605人。15日には速報値で、1日に3万9197件のPCR検査、抗原検査などの検査が行われたが、政府=菅義偉政権の「公約」である1日20万件には程遠い。
自衛隊の医療版では到底医師、看護士が足りないから、自衛隊には無症状・軽症観戦者を保護するための医療施設の建設を要請し、医療体制がしっかりしている全国の地方自治体から財政による手当を前提として応援に駆けつけていただく必要がある。本来なら、改正新型インフル特措法を改正して、➀感染集中地域(エピセンター)での全員検査②十分な休業補償措置ーを盛り込んだうえで、「緊急事態宣言」を再発出すべき時だ。
ただし、菅首相は相変わらずはしご会食をしており、時事通信社の首相動静によると、午後19時37分、東京・日比谷公園のフランス料理店「日比谷パレス」着。小田尚読売新聞東京本社調査研究本部客員研究員、粕谷賢之日本テレビ執行役員、政治ジャーナリストの田崎史郎氏と懇談している(https://lite-ra.com/2020/12/post-5732.html?utm_source=onesignal&utm_medium=button&utm_campaign=push)
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、12月16日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人減少の1.10人、東京都では前日比変わらずの1.14人となっている。15日時点ではそれぞれ1.11人、1.14人。

ただ、この見通しには、➀実際の参加国数②外国人を含む観戦者の規模③新型コロナ禍の規模の推移と対策費ーなど主要な点が見通せず、極めて不確定の「追加費用」だ。要するに、当てにはならない。スポンサー企業の多くはコロナ禍で2020年度は減益、赤字が見込まれ、年末までの契約更新には無理があり、確実な追加拠出は困難との見方が強い。結局は、国民・都民に対して国税、住民税の負担がかさむだろう。「オリンピック」税だ。今は、コロナ第三波の襲来時であり、自衛隊が大阪市や北海道・旭川市に派遣された「有事」であることを考えると、第三次コロナ禍対策に充当するのが先決だ。

新国立競技場
新国立競技場(https://sports.smt.docomo.ne.jp/ol2020/column/20200127_662.html)による

全国紙を発行する新聞社は東京オリ/パラのスポンサーになっているから、「大会中止」などの国民目線からは当然の報道は避ける。ただし、アリバイ作りに注文をつける記事ないし社説は掲載する。例えば、毎日新聞社が新型コロナ禍発生直前の2019年12月8日付に掲載した「五輪経費『3兆円』に さらなる肥大化が心配だ」(https://mainichi.jp/articles/20191208/ddm/005/070/015000c)と題する社説によると、招致時の総経費は約7300円。

ところが、この時点でも総経費は3超円規模に膨れ上がっていることを認めざるを得なくなっていた。オリ/パラ総経費は開催に直結する「大会経費」と道路整備などの「大会関連経費」に分けられるが、大会経費だけで総額1兆3500億円に膨らんでいることを指摘している。大会関連経費は明示していないが、総額で3兆円の数字は出しているから、1兆6500億円程度ということになる。しかし、毎日の社説では、会計検査院が「大会関連経費」として、「水素社会実現に向けた燃料電池産業車両の導入補助や、地域の農産物や食文化を映像化して海外に発信する取り組みの支援」などが盛り込まれていることを問題にしていると指摘している。

当時の段階で、政府の支出は1兆600億円、東京都は1兆4100億円、大会組織委員会は6000億円の合計3兆700億円と3兆円規模の巨額に達しているとし、さらに、「マラソン、競歩コースの札幌移転に伴う費用も確定しておらず、経費はさらに膨らむだろう」と、取り敢えず批判している。



さて、少し横道にそれるが、今年に入って新型コロナ禍が日本でも発生したが、政府・東京都・組織委の今夏開催への固執で初動態勢が後れ、新型コロナウイルス感染症(CoVid-19)を指定感染症Ⅱ類相当の感染症に政令指定し、変更もしていない。これによって、コロナ禍の実態を覆い隠し、検査利権を独占できるからだ。これについては、次の投稿記事も参考にしていただきたい。

しかし、政府=安倍政権(当時)と東京都のPCR検査抑制策によるコロナ実態隠しも虚しく、3月になって東京オリ/パラの来夏への延期が確定した。途端に、3月初めの東京マラソン実施を認めた小池百合子都知事が手のひらを返したように「都市封鎖(ロックダウン)」を絶叫し始め、政府=安倍政権も「新型インフル特措法」を改正、緊急事態宣言を4月7日に発出した。解除は5月25日だった。遺伝子工学に詳しい児玉龍彦東大名誉教授によると、第一波は欧州のミラノ型に変異した新型コロナウイルスが日本に持ち込まれて起こった。

夏の第二波は、ミラノ型が日本の東京都・埼玉県(首都圏)で日本・首都圏型に変異して発生した。第二波は若者の感染者が多かったが、無症状感染者も多く存在したと見られる。しかし、政府=安倍政権は来夏の東京オリ/パラ強行開催のため、なおPCR検査を抑制し、無症状感染者を放置した。この無症状感染者をスプレッダーとして第三波が始まったころ。欧米ではスペインにバカンスに行った欧米諸国の観光客が、スペイン型に変異した新型コロナウイルスに感染し、冬入りでコロナウイルスの活動が活発し始めたことと相まって、深刻な第二波が起こった。

このスペイン型の新型コロナウイルスが日本の検疫・防疫体制をくぐり抜け、日本・首都圏型のコロナウイルスとともに、日本では第四波が襲来した。本サイトでは、厳密に言えば第四波だが便宜上、第三波に統一している。第三波襲来となったスペイン型コロナウイルスは、Go To トラベルで東京から全国に拡散、全国でいち早く冬入りした北海道の札幌市や旭川市で深刻になってしまった。旭川市では中核病院で大規模な集団感染(クラスター)が起こり、自衛隊医療班出動要請になった。

竹中平蔵パソナ会長の影響力が強い維新の保健所削減・社会保障制度切り捨て府政・市政の悪政がたたり、新型コロナ感染状況、病床逼迫状況とも人口比で東京都よりも悪化し、旭川市と同様、自衛隊の医療班に出動を要請せざるを得なくなった。自衛隊への出動要請は、「有事」である。有事のさなか、政府=菅義偉政権はGo To トラベルを強行し、全国での冬入りと相まって全国で新規感染者が過去最多を更新し、重症者、死亡者も急増した。

このため、新聞社を含む世論調査で菅内閣の支持率が劇的に低下した。これに危機意識を感じた菅首相は12月14日夜、突然、12月28日から来年の1月11日までGo To トラベルを含むGo To キャンペーンを一時停止すると発表した。延長は未定だが、「Go To トラベルが全国に新型コロナウイルスを拡散したエビデンスはない」との考え方を崩していない。だから、延長を行わなければ、説明がつかなくなる(もっとも、菅首相は初めから国会や国民に対して説明する意思は持ち合わせていない)。国家的有事にあたっては、「リスクを最小化する」という行動を取らなければならない。「国民の生活が第一」よりも「自分ファースト」の考え方の持ち主であるから、こうした考えに基づく行動は一切取らない。



話を元に戻すと、東京オリ/パラの中止に追い込まれれば政権にとっては大打撃になるのて、政府=菅政権はあくまでも強行する構えを崩していない。フランスの通信開始AFPの取材を受けた小池百合子東京都知事も同様だ。中止は選択肢の中にはない。まずは、大会組織委が来夏への延期に伴う追加費用の中間報告を行った。これについては、同じく毎日新聞社がアリバイ作りに「東京五輪の追加経費、現実的と言えるか」(https://mainichi.jp/articles/20201211/ddm/005/070/125000c)の社説を展開した(12月11日)。引用させて頂きたい。

東京五輪・パラリンピックの延期に伴う追加経費が総額2940億円になると発表された。東京都が1200億円、大会組織委員会が1030億円、国が710億円の支出を受け持つ。ただ、不確定要素が多い。新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大を続けており、どのような形での開催になるかが明らかになっていないためだ。組織委のスポンサー収入は、協賛社がどれだけの追加拠出に応じるかどうか、交渉次第だ。チケット収入も、観客数の上限が来春まで決まらない見通しで、変動する可能性がある。

懸案のコロナ対策には960億円が計上された。国が560億円、都が400億円を負担する。しかし、観客数が決まらないため、実際にどれだけの費用がかかるかが見通せない。これでは、現実的な想定に基づく算定といえるのか、首をかしげざるを得ない。政府は海外からの観客受け入れを想定している。だが、外国人観客が入国する際の水際対策の費用は、今回の経費には盛り込まれていないという。外国の選手団と交流するホストタウンや事前キャンプ地でも感染対策が必要となるが、これも大会経費に含まれていない。

問題は費用だけではない。全国各地で医療体制の逼迫(ひっぱく)が懸念される中、大会向けに医療スタッフをそろえるのはきわめて困難となる。ワクチンの確保や接種も大きな課題だ。

ここまでは、正論だが結局、「組織委の資金が不足した場合、最終的には都民や国民が負担を強いられることになる。大会の簡素化で300億円を削ったが、不十分だ。コロナ下で開催するというのなら、一層の節減の努力が求められる」という結論であり、規模を縮小してコロナ禍の中でも開催を強行するべきだという論陣だ。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、表面的には、無観客試合などは認めていない。規模を縮小すると言っても、「オリンピック」と言うのなら、限度がある。その場合は、コロナ禍対策に相当の追加費用がかかってくる。まず、第三波の行方に見通しが立たないこと、今年の第二波は夏に起こったことが挙げられる。第二は、海外や国内からの観戦客の受け入れ体制が明確でないことだ。

NHKはスポーツ庁がコロナ対策として、計上した追加費用を報道している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201215/k10012766231000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_001、スポーツ庁のサイトには見当たらない)。

政府は15日、今年度の第3次補正予算案を決定し、スポーツ庁は東京大会に向けたコロナ対策などの経費として857億円を計上しました。

具体的には、東京大会の延期に伴う追加経費のうちパラリンピック経費の一部や、選手の検査体制の整備などのコロナ対策費として、710億円、海外の選手団との交流事業に取り組むホストタウンと呼ばれる自治体のコロナ対策費の支援として127億円、国立競技場など国が所有するスポーツ施設のコロナ対策費で20億円となっています。

前にも述べたが、ホストタウン(全国510自治体)に対して総額127億円、1ホストタウン当り2490万円というのではとても足りないだろう。医療施設の建設・確保、感染症対策背紋の医師や看護士の確保も不可能だろう。養成するにしても、時間がかかる。加えて、観戦者やボランティアに対するコロナ対策費用も計上する以前に、目処が立っていない。こうした中で、政府よりのNHKでさえ、国民の第大数がオリンピックの中止を求めている世論調査を12月15日の朝、発表した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201215/k10012763511000.html?utm_int=all_side_ranking-social_002)。

NHKは、今月11日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行いました。調査の対象となったのは、2164人で、58%にあたる1249人から回答を得ました。(中略)

来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催についてどう思うか聞いたところ、「開催すべき」が27%、「中止すべき」が32%、「さらに延期すべき」が31%で、「中止すべき」が「開催すべき」を上回りました。10月に同じ質問をした際には、「開催すべき」が40%、「中止すべき」が23%、「さらに延期すべき」が25%で、「開催すべき」が「中止すべき」より多くなっていました。

IOCは公式的には再延期は考えていない。要するに、NHKの世論調査では78%が「開催は中止スべきだ」と判断していると読むのが正しい。追加費用の金額がどの程度のものになるのか、現時点では。見渡せない。結論を先にのばすほど、被害は大きくなる。太平洋戦争末期、ポツダム宣言が発表された7月26日から受諾する8月14日までに、広島と長崎に原爆が投下され、おびただしい尊い犠牲者が出た。この時は、「国体護持」が大きな焦点になったが、今回は「東京オリ/パラ」が「国体護持」に相当する。



ここでも、あらゆるケースを想定して、「リスクを最小限にとどめる」思考様式が不可欠だ。大会組織委は世論を無視して、「準備」を進めているが、不確定要素が大きすぎる中では、言葉の真の意味では「準備」は進められないだろう。12月16日をもって西村康稔経済再生担当相の「勝負の3週間」は失敗・敗北に終わった。聖火リレーは公式的には、来年3月24日に開始されることになっているが、その日がデッド・ラインになる。しかし、その前に、「オリンピック中止」を公式に発表し、予算措置されている追加費用は、コロナ第三波対策に充当するべきだろう。



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