二度目の限定的緊急事態宣言延長決定へ

今年2021年に入って1月8日に再発令され2月7日に解除予定の緊急事態宣言が、飲食店を対象にした限定的なものであるため、延長されることが濃厚な情勢になってきた。最も効果のあるコロナ禍対策は、東京オリンピック/パラリンピック中止問題もあり、菅義偉内閣の総辞職だ。

1月24日日曜日コロナ感染状況

本日1月24日日曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の1月16日日曜日の1592人から606人減少し、12日ぶりに1000人を下回る986人、重症者は前日と同じ156人だった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は1202.9人、PCR検査人数は9701.1人だから、瞬間陽性率は12.40%。東京都独自の計算方式では9.8%。感染者のうち感染経路不明率は55.75%だった。
全国では、午後23時59分の時点で新規感染者数は3990人、死亡者数は56人が確認されている。重症者は前日比2人減の1007人。
【参考】東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、123日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人減の0.91人、東京都は前日比0.03人減の0.90人となっている。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

政府=菅政権による緊急事態宣言の解除条件としては、➀深刻な感染段階を脱却できていること②1週間の新規感染者数や病床逼迫状況(ステージ4から高くともステージ3以下になっていること)③特に、1週間の新規感染者数を最も重要な指標とするーことが報道されている。これらを「総合的に勘案して(考慮して)」政治的に決定されることになる。例えば、最も重視している「直近1週間の10万人あたり新規感染者数(PCR検査の多寡による新規感染者のブレを防ぐため、7日移動平均で=過去1週間の新規感染者数の平均人数=の1日あたりの新規感染者数にすることがより妥当だ)」では、この数字が人口10万人当たり25人未満になることだ。

東京都に当てはめると、都の人口は1400万人だから、7日移動平均での1日あたりの新規感染者数は25×140÷7=500人以下になること。緊急事態宣言が再発令されてから16日目の移動平均での1日あたり新規感染者数は1289.4人。ただし、移動平均ではない1日そのものの新規感染者数はも11日連続1000人超えが続いている。このところ、1日の新規感染者数はPCR検査のばらつきがあるため、前週と同じ曜日で比較する必要があるが、前週比では減少傾向にある。

しかし、非常事態宣言は11都府県に限定され、しかも、飲食店だけが対象であるという限定的なものだから、国民(住民)の接触率はあまり低下してない。残りの2周間程度で移動平均で500人以下に抑えるのは困難な情勢だ。数理感染状況シミュレーションモデルの開発が専門の西浦博・京都大教授(理論感染症学)が14日までに明らかにしたところによると、シミュレーション時点での感染者数の推移は次のようになっている(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021011400899&g=soc)。

東京都の感染状況が2番目に深刻な「ステージ3」に下がった時点で解除すると、1カ月半後には再び宣言が必要な感染規模に戻る可能性があるとする試算をまとめた(中略)。

西浦教授の感染拡大シミュレーション
西浦教授の感染拡大シミュレーション

試算では、宣言で再生産数が0.88に下がった場合、都内で確認される1日当たりの感染者は2月24日に500人を下回り、感染状況が最も深刻な「ステージ4」から、政府が宣言解除の目安とする「ステージ3」相当に下がる。西浦教授によると、この段階で宣言が解除され、再生産数が1.1になると仮定すると、約45日後の4月中旬に1日1000人を超える規模に戻ってしまうという。
一方、昨年春の宣言時のような強力な対策で再生産数が0.72になった場合、2月25日に感染者が1日100人を下回る。宣言を解除し、再生産数が1.1に戻っても1日当たりの感染確認が1000人を超えるのは7月中旬だった。

西浦教授のシミュレーションには予測が当たらないなどの批判もあるが、およその拡大傾向を示すものとして参考になる。要するに、限定的な緊急事態宣伝では感染拡大を止めるのは無理であり、さらに、ステージ3になっから(政治的に)解除したとしても、再拡大が始まるということだ。また、今回のモデルでは英国で変異した感染力が非常に強く、英国政府が重症化率も1.3倍高いと発表した英国型ウイルスの影響はシミュレーションに盛り込むことができなかったことが推測される。

英国型変異ウイルスはが静岡県だけではなく、東京都でも英国に渡航歴のない女児が感染していることが確認されており、世界保健機構(WHO)が少なくとも50カ国の国で感染が拡大すると警戒を呼びかけているように、今後、日本でも市中感染が拡大していく恐れがある。その場合は、新規感染者数の予測曲線は上方に移動する。

Go To トラベルを急いで再開すれば、その可能性は非常に高くなる。しかも、朝日デジタルによると(https://digital.asahi.com/articles/ASP1R7R92P1QUTFK01H.html?iref=pc_ss_date_article)、2020年度第3時補正予算案は第三波襲来前に編成されたものたから、Go To トラベル予算が1兆円含まれている可能性があると報道している。真水の19兆3761億円のうち、コロナ禍対策は4兆円程度と極めて少ない。

政府=菅政権がコロナ禍対策にまともに取り組んでいるとは思えない。むしろ、菅首相が記者会見で口を滑らせたように、コロナ禍を利用して国民回保険制度の解体などを行い、米国のディープステート(軍産複合体と多国籍金融資本・企業)に便宜を図ろうとしている。それはさておき、本来は補正予算案を抜本的に組み換え全額、コロナ禍対策に充てるべきだが、衆参の予算委員会では理事会で決まった質問・答弁の時間がわずか2日間と短いため、お茶を濁す程度の議論(質問・答弁)しかなされないようだ。

しかも、1000人超えの感染者の増大で自宅療養者数が8418 人、入院待ちの感染患者数は6113人と合計1万4351人もいる。これらの感染患者が抗ウイルス剤(アビガン=錠剤=、レムでシビル=点滴=)の投与などを中心とした治療を受ける体制は、はっきり言ってないから、病床の充足率だけを表面的に計算するだけでは意味がない。ステージ3になったから直ちに宣言を解除するという政治判断をすべきではない。

政府擁護のフジテレビ系列のFNNのYoutube動画だということを踏まえる必要があるが、予定通りに2月7日に非常事態宣言が集結するという可能性はほとんどないだろう。

 

参考までにステージ3/4の基準(https://corona.go.jp/news/pdf/jimurenraku_0811.pdf)と、日経新聞による大都市県の状況を示しておく(https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-infection-status/)。

政府分科会のコロナ感染ステージ
政府分科会のコロナ感染ステージ
政府分科会のコロナ感染ステージの具体的数値
政府分科会のコロナ感染ステージの具体的数値

【政府分科会のコロナ感染ステージの具体的数値】

東京都 70.15人 0.91倍 73.9% 107% 140.3人 12% 61.5%
大阪府 39.8人 0.94倍 74.2% 64.5% 72.1人 11% 54.7%
愛知県 37.48人 0.97倍 66.7% 24.5% 75.2人 9.2% 49.4%

ただし、機械的に解除判断をするべきではないだろう。これとは真逆に、政府=菅政権は機械的に判断して、新型コロナ特措法に行政罰を加えたり感染症法に刑事罰を加えたりする(https://www.tokyo-np.co.jp/article/81517/)強権的姿勢が強い。

新型コロナ特措法や感染症法の改正案に設けられる罰則規定とその問題点
新型コロナ特措法や感染症法の改正案に設けられる罰則規定とその問題点

 

しかし、この方法では国民・社会に必要な協調体制が整わず、逆に分断と格差をもたらすことになり、コロナ禍収束とは真逆の方向にすすむことになる。それよりも、日本国憲法第29条第3項「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」に従い、国民の生命と暮らしを守るための医療体制の全面的な再編・整備や休業補償の大枠を決めることが先決だ。



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