「改正」された感染症法とコロナ特措法の問題点と新規感染者数減少理由追加
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政府=安倍晋三、菅義偉政権は東京オリンピック/パラリンピック強行開催を敗戦前の「国体護持」のように至上目的としコロナ禍対策に失敗したのに、行政罰と罰金を盛り込んだ感染症法改正案とコロナ対策特措法「改正案」を国会に提出し3日、自民、公明、維新、それに野党第一党として反対すべき立憲民主党の賛成多数で可決成立した。両方の問題点を指摘するとともに、新規感染者減少の理由について、「季節要因」があることを付け加えさせて頂きたい。

2月4日コロナ感染状況
本日2月4日木曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の1月28日木曜日の1064人から334人減少して734人、重症者は前日から10人減って115人になった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。死亡者は25人だった。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は708.4人、PCR検査人数は8630.7人だから、瞬間陽性率は8.21%。東京都独自の計算方式では5.2%。感染者のうち感染経路不明率は49.36%だった。
全国では、午後19時40分の時点で新規感染者は2576人、死亡者は104人。重症患者は前日から5人減少して892人になっている。東京都で25人、神奈川県で14人、埼玉県神奈川県で10人埼玉県で南アフリカの変異株ウイルスが2人確認された。ひとりは南アへの渡航歴があり、もうひとりはその濃厚接触者
【参考】東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月3日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人減の0.76人、東京都は前日比0.03人減の0.76人となっている。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

政府=菅政権が、行政罰と罰金を盛り込んだ感染症法改正案とコロナ対策特措法「改正案」を国会に提出したのは、改正新型インフルエンザ特措法(新型コロナにも適用されるので新型コロナ特措法案とも言われる)に基づく都道府県の首長(知事)が、主として営業時間短縮に応じない事業者や「積極的疫学調査」(東京都や神奈川県では保健所の医療資源不足問題から事実上、行えなくなっている)に応じない国民が存在すると訴えていることが名目だった。なお、過料は事業者の場合、20万円以下。住民の場合は入院拒否者に50万円以下、濃厚接触者追跡調査拒否に30万円以下になっている。

しかし、知事の要請に事業者や住民が調査に応じないのは、政府=安倍、菅政権が営業自粛に伴う損失補填や生活保障を十分に行わなかったからだ。安心して治療・療養できる体制が確保されていないことから、取引先や濃厚積極者に迷惑がかかると思った人々も少なくない。このため、東京商工リサーチによると、2020年(1-12月)の全国企業倒産(負債総額1,000万円以上)は、件数が7,773件(前年比7.2%減)、負債総額は1兆2,200億4,600万円(同14.2%減)だったが、「新型コロナウイルス」関連倒産は、累計で792件に達している。政府=菅政権の経済支援打ち切りで、企業倒産は今年2021年にはさらに増える見込みだ。加えて、コロナ禍で自主廃業に追い込まれた中小零細企業、個人事業主は全国5万件に及ぶという(https://www.tokyo-np.co.jp/article/79901)。

本年2021年は一部を除いて、十分でなかった支援策も打ち切られるため、倒産、自主廃業件数がさらに多くなることが予想されている。パンデミックに対する最も基本的な政策は十分な補償と医療供給体制の確保を前提とした感染者の早期発見と保護・隔離・治療だ。取り敢えずは、社会的検査・大規模検査の実施・水際対策の徹底などでコロナ制圧に成功した中国や台湾、ニュージーランドでは、経済が持ち直している。韓国も、コロナ専門医療施設の新設やドライブスルー方式を採用し、新型コロナ感染者(特に、感染のスプレッダーになっている若者の無症状感染者)の早期発見に努めており、制圧効果に波はあるものの、その方向に向かっていると推察される。

中国の実質経済成長率は昨年2.3%のプラス成長だったし、台湾は2.98%と中国を上回った。ニュージーランドも「感染封じ込めによる経済活動の正常化で景気は底入れしており、7-9 月の実質 GDP 成長率は前期比年率+66.78%と大幅プラス成長となるなど、底入れが確認された」(http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2020/nishi201217newzealand.pdf)。韓国は第三波の影響で昨年は1.1%減と22年ぶりのマイナス成長に陥ったが、世界銀行見通しの米国のマイナス3.6%よりは良い。パンデミック基本対策に加えて、有効なワクチンの接種に成功すれば、本年の実質成長率はプラスに転じ、数年後には1人当たりのGDPが日本を上回ると見られている。

抑圧に成功したか、しつつある国では、生活補償や営業損失補填を十分行った上で、パンデミックの基本対策である徹底的な検査と保護・隔離・治療を行っている。パンデミックへの基本対策を全く行わなかったのが、東京オリンピック/パラリンピック強行開催を国民の生命や生業より優先させてきた日本だ。日本政府=安倍・菅政権がPCR検査を今も抑制しており、安倍政権の際には若干の経済支援を行ってきたが、菅政権は経済支援を打ち切るのが基本方針だ。加えて、Go To トラベル/イートを中心としたGo To キャンペーンを強行し、全国にコロナ第三波を強力に助長してきた。だから、「感染拡大と経済悪化の悪循環」を繰り返している。死亡者は、内船扱いだったダイアモンド・プリンセス号も含めて2月3日で6085人に達している。

下図はデモクラシータイムスの「山田厚の週中ニュース2月4日版」(https://www.youtube.com/channel/UCIIhko3gMRId9cCteX1eu-Q)による図だが、Go To キャンペーン/イートが第三波を急激に助長、感染者が急拡大したために、医療体制が崩壊し、死亡者が急増していることを示している。入院待ち、自宅療養者が、容態が急激に悪化(免疫暴走などによる)して、亡くなられるという方が連日報道されている。PCR検査も断トツに少ないが、それでも少しは上昇の兆しを見せていたものの、最近ではまた減少傾向にある。東京や神奈川県を中心に、感染者数が多くなって保健所の医療資源が足りなくなり、濃厚接触者を追跡する「実質的疫学調査」が破綻したためだ。

PCR検査と死亡者数の主要国比較
PCR検査と死亡者数の主要国比較

にもかかわらず、政府=菅政権はパンデミック対策の基本原則に軌道修正するよう諌言した民間議員の経済財政諮問委員会の新浪剛史サントリーホールディングス社長の勇気ある諌言を無視した

それどころか、緊急事態宣言下での行政罰と罰金を科すことを盛り込んだ感染症法とコロナ特措法を改悪。さらに、コロナ特措法では、緊急事態宣言の前から部分的に私権制限を行う「まん延防止充填措置」を盛り込むという「改悪」も強行した。改悪の問題点は、➀感染症法とコロナ特措法の双方に行政罰・罰金と補償をセットで盛り込んだが、補償の内容が曖昧で、政府=菅政権の「さじ加減」ではいくらでも少くできる②コロナ特措法緊急事態宣言前に実施することが可能な「まん延防止策」を盛り込んだが、これも発動の要件がを曖昧にしているーなどの重要な問題点がある。日本国憲法が保障している基本的人権破壊の入り口になる。

東京新聞2月4日付け3面から感染症法と新型コロナ特措法の法的問題について、引用させて頂きたい(https://www.tokyo-np.co.jp/article/83913)。法律としもは余りにも問題が多すぎる。肝心なところは、政令で勝手に決められる。国権の最高機関であり、唯一の立法機関である「国会」を有名無実化する内容でしかない。内閣法制局の威信も挟持も能力も地に落ちたものだ。立憲民主党への国民の失望感は深まるばかりだ。

新型コロナ関連改正法の問題(東京新聞から)
新型コロナ関連改正法の問題(東京新聞から)

立憲が、自民党の二階俊博幹事長と立憲の福山哲郎幹事長との間で、当初の法案から刑事罰規定を前科にならない行政罰に変更することと、罰金の減額で合意したのは、高所得者層とGo To トラベル/イートを2020年第3次補正予算案に残すための「さる芝居」に過ぎなかった。立憲が未だに選挙基盤が弱く、「無党派層」と呼ばれる政治不信層を取り込めていないため、さも手柄を立てたように見せかけ(てあげる)るためだったと推察される。なお、政府=菅政権は来週の施行を目指す(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210204/k10012848811000.html)。

基本的には、補償規定を盛り込んだものの、補償額を曖昧にしているため、事業者、新規感染者・濃厚接触者は苦境に立たされるだろう。なお、労働基準法では第76条で「労働者が前条の規定(業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合)による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない」と明確に定めている。コロナ禍は、勤労者個人の責任によるものではなく、自然災害だが政府=安倍、菅政権の「政策」の失敗が大きく助長したものだから、最低でも事業者に対しては完全な損失補填、勤労者に対しては100%の収入補償を行うことを明記しておく必要がある。

立憲が明確な補償規定を盛り込むことを要求せずに、安易に妥協した国民に対する背信行為は重大だ。地方選挙で自公推薦候補が敗退を続ける中で、本年には必ず行われる解散・総選挙で政権を奪還できなければ、執行部は総辞職するのが筋だ。さて、感染症法とコロナ特措法が改悪されたことで、重大な問題が発生する。第一は、倒産または自主廃業に追い込まれる中小零細企業が相次ぎ、日本経済の供給能力が大幅に毀損されることだ。このことは、必要な財政出動がインフレ率の急上昇、購買力平価に連動する円レートの急激な下落によって出来なくなってしまうことだ。

第二は、中小零細企業や個人事業主が倒産または自主廃業に追い込まれることで、非正規労働者を中心に解雇・雇い止めが多発し、失業率が急上昇することだ。経済情勢の悪化が続いている中で、金融市場・不動産市場ではバブルが生じている。それでも、現代版ケインズ理論である現代貨幣理論を創造的に運用すれば、経済悪化を食い止めることができるはずだった。コロナ禍対策にすべてを集中し、中央政府(政府と日銀)の通貨発行権を用いて大規模な積極財政を行えば、「抜本的コロナ禍対策」が可能になり、経済再建の足がかりになっただろう。それが極めて不可能になってしまう。

第三は、「積極的疫学調査」(濃厚接触者の追跡調査)が観戦者の数が急増しており、保健所がパンクしているから、実質的に破綻していることだ。このことは、首都圏や大阪府を中心とした関西圏で、「濃厚接触者」の追跡が実質的に行われなくなっていることに示されている。濃厚接触者の「定義」も緩められているが、PCR検査は基礎疾患を持った住民や高齢者に限られるようになった。

このため、感染の震源者(スプレッダー)になっている無症状の若者を早期に発見することが不可能になった。無症状発見者を早期に発見・保護・隔離・治療する体制を整えないとコロナ感染の波は収まらない。下図は、東京が事実上、積極的疫学証左を諦めた内容を示すもの。その次の図は、無症状感染者対策こそ、真のコロナ禍対策の根本であることを示す図だ。神奈川県はこれより先に、積極的疫学調査を断念した。

積極的疫学調査を諦めた東京都
積極的疫学調査を諦めた東京都
無症状感染者の発見が最も重要
無症状感染者の発見が最も重要

要するに、「新型ワクチン接種一本足打法」(稲村剛史サントリー社長)に切り替えることになる。これは大変危険なことだ。さて、最近の新規コロナ観戦者者数の減少について触れて起きたい。菅首相は2月2日夜の記者会見で、「飲食店」に対象を絞った限定的緊急事態宣言は成功していると自画自賛した。しかし、証拠(エビデンス)は示せなかった。

新規コロナ感染者が確認された場所
新規コロナ感染者が確認された場所

東京・世田谷区(保坂展人区長)調べによると、新規感染者数は家庭が最も多く(職場で無症状感染者になり帰宅後、他の家族に感染を拡大していると思われる。自宅療養を命ぜられて他の家族が感染者する事例もあとを立たない)、次が職場、医療機関・福祉(介護)センター、などになっている。飲食店は10%に過ぎない。

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飲食店を生贄(いけにえ)にした限定的な緊急事態宣言が効を奏しているわけではない。サイト管理者(筆者)も陽性率の低下が急激であることに疑問を感じていたが、NPO法人である特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長(感染症にも詳しい医師)によると、季節要因が影響しているという(https://www.youtube.com/watch?v=dJS4LDkW0Lc)。つまり、新型コロナウイルスは普通の風邪よりもはるかに危険な感染症であるが、分類としては風邪に属する。

風邪は冬に国民の多くがかかり、夏風邪という言葉も用いられるように夏にも発生する。菅政権のもとで最初に発令されたのは今年1月8日。その後、最初は超高水準横ばい状態だったか、その後、次第に新規感染者数は減少してきている。東京都では当初、7日間の移動平均で一千人を超える新規感染者が出たが、昨日2月3日の時点では、708.4人であり、東京都基準の陽性率も6.2%まで低下している。陽性率は厚生労働省のステージ区分では10%が3/4だから、それ以下だ。2月2日には節分の日を迎え。翌日3日は立春。暦の上では、冬季は12月から2月までなので、新規感染者の減少傾向が続く可能性がある。

これまで投稿させていただいたように、感染力と毒性の強い変異株の市中感染の影響やアップル社が公表している人の移動指数も考慮しなければならない。しかし、季節要因のせいで新規感染者の減少が続けば、場合によっては1週間の移動平均で東京都の新規感染者数が500人を下回る可能性がある。政府=菅政権は聖火リレーを開始し、東京オリンピック/パラリンピックの強行開催に踏み切るだろう。しかし、コロナの幹に感染した無症状感染者は放置されているので、コロナ禍が収束したことにはならない。新たな波が起きてしまう。オリ/パラ開催は夏だから、夏に新たな感染の波が起きる公算は大きい。その場合は重大な事態に陥る。

コロナ変異株によるコロナ感染の波
コロナ変異株によるコロナ感染の波

このシナリオが実現すれば、日本の国内は大混乱に陥る。国民や選手の生命、生業が東京オリンピック/パラリンピックよりはるかに大事だから、やはり、オリンピックは早期に中止を公式発表する必要がある。そして、コロナ禍対策の抜本転換を図る事が必要だ。

野党第一党の立憲が明確かつ有効な政策体系で野党共闘を勧め、政権交代するしか道は残されていないが、東京オリンピック/パラリンピックが強行開催され、不測の事態が起きた場合には間に合わない可能性が濃厚だ。それでも、秋には必ず総選挙が行われる。立憲は野党第一頭としての挟持を持ち、「市民と野党との共闘」を樹立して、「影の内閣(シャドウ・キャビネット)」を発足すべきだ。


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